年末調整

毎月の源泉徴収税額の合計額と年税額が一致しない理由
1.源泉徴収税額表は、1年間、毎月の給与の額に変動がないと仮定して税額を決めていますが、年の中途で給与額が変動する場合があります。
2.源泉徴収税額表は、賞与が年間で給与5か月分支払われるとして作成してあります。
3.年の中途で扶養親族等に異動がある場合、その異動後の月から修正しますが、遡って源泉徴収税額を修正しない。
4.配偶者控除や生命保険料控除、地震保険料控除、住宅取得控除などは、年末調整でしか控除されない。

年末調整の保険料控除申告の留意点

生命保険料・損害保験料控除
• 証明書を添付します
• 一つの損害保険契約が、地震損害保険契約と長期損害保険契約に該当する場合には、選択によりいずれか一方に該当するとして、地震保険料控除の控除額を計算します。
社会保険料控除
• 生計をーにしている親族の負担すべき社会保険料(国民年金・国民健康保険・介護保険等)の保険料で、申告者本人が支払ったものを記載します。
• 国民年金保険料は11月に日本年金機構から送られてくる証明書を必ず添付します。20歳以上の学生は原則、国民年金に加入していますからその保険料も対象です。
• 介護保険料は控除の対象ですが、支払った本人以外の人は申告できません。
小規模企業共済掛金控除
下記のもので、本人が支払った金額を申告し、その掛金を支払ったことの証明書類を添付します。
• 独立行政法人中小企業基盤整備機構と契約した共済契約(旧第2種共済契約を除きます。)に基づいて支払った掛金
• 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金
• 地方公共団体が条例の規定により実施するいわゆる心身障害者扶養共済制度で一定の要件を備えているものに基づいて支払った掛金

年末調整の住宅借入金等特別控除申告の留意点

住宅借入金等特別控除申告書
• 住宅借入金等特別控除は、最初の年度は確定申告により行います。翌年から年末調整で控除を受けます。申告書に必要事項を記入し、金融機関の残高証明書を添付して会社へ提出します。
• 住宅借入金が連帯債務の場合、申告書に本人の債務負担割合に応じた借入残高を記入し、備考欄に他の連帯債務者から、例のような文言及び住所、氏名を記入し押印します。なお、連帯債務者が給与所得者の場合、勤務先名及び勤務先の住所地も記入します。(例)「私は連帯債務者として借入金等の残高◯◯円のうち△△円を負担することにしています。」
• 住宅借入金等特別控除を受けているときに、住宅借入金等の借り換えをした場合、借り換えによる新たな住宅借入金等の当初金額が、借り換え直前の当初住宅借入金等残高を上回るとき、その借り換えをした年以降の各年において、次により計算した金額を住宅借入金等の年末残高とします。申告年の住宅借入金等の年末残高×(借り換え直前の当初住宅借入金等残高÷借り換えによる新たな住宅借入金等の当初金額)

端数処理

賃金(給与)の端数処理方法

労働基準法上認められている端数処理方法は、次のようになります。

(1)割増賃金の計算
A.1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げます。
B.1か月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、Aと同様に処理します。
なお、割増賃金計算上の労働時間の端数処理について、1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは、賃金支払の便宜上の取扱いと認められています。
(2)平均賃金の計算
C.賃金の総額を総暦日数で除した金額の銭未満の端数を切り捨てます。なお、平均賃金を基にして休業手当等を計算する場合は、特約がなければ円未満の端数処理はAと同じです。
(3)1か月の賃金計算
D.1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことが出来ます。
E.1か月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことが出来ます。
なお、E・Dの取り扱いをする場合は、その旨就業規則に定めることが必要です。

厚生年金保険料の端数処理

日本年金機構では次のように端数処理を行います。事業所では同じように処理をしないと通知書と金額が一致しなくなります。

事業所の保険料額
被保険者ごとの標準報酬月額と標準賞与額に、それぞれ保険料率を乗じて得た額を端数処理をしないで合計します。ただし、その合計額に1円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てします(被保険者ごとに端数処理は行いません)。
被保険者の保険料(被保険者負担分)
被保険者の給与から厚生年金保険料を控除します。控除する金額は、その被保険者の標準報酬月額に保険料率を乗じた額の半額となります(折半)。折半した額に1円未満の端数が生じるときは、端数処理を行います。
事業主が給与(賞与)から被保険者負担分を控除する場合
被保険者負担分の端数が50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円となります。(例)12,345.50円⇒12,345円,12,345.51円⇒12,346円。
被保険者が、被保険者負担分を事業主へ現金で支払う場合
被保険者負担分の端数が50銭未満の場合は切り捨て、50銭以上の場合は切り上げて1円となります。(例)12,345.49円⇒12,345円,12,345.50円⇒12,346円。
なお、事業主と被保険者の間で特約がある場合には、特約に基づき端数処理をすることができます。例えば、被保険者負担分の端数は1円未満切り捨て、被保険者ごと端数部分を事業主負担とすることもできます。
事業主負担分の計算方法
事業主負担額は、「事業所の保険料額」から「全ての被保険者の給与から控除した保険料額」を差し引いた金額となります。本来、事業主が負担すべき金額は、被保険者の標準報酬月額に保険料率を乗じた額の半額となります。ただし、被保険者の給与から保険料を控除する際に端数処理を行いますので、事業主負担分と被保険者負担分は、必ずしも一致するとは限りません。

社会保険料の納付額の端数処理

会社は被保険者から本人負担分を徴収し、会社負担部分と合算して国へ社会保険料を納付します。会社(法人)が国に対して支払う(納付する)社会保険料は、国が会社(法人)に対して有する債権ですので、「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」第2条により1円未満の端数が切り捨てられます。

国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律
第二条 国及び公庫等の債権で金銭の給付を目的とするもの(以下「債権」という。)又は国及び公庫等の債務で金銭の給付を目的とするもの(以下「債務」という。)の確定金額に一円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てるものとする。
2 国及び公庫等の債権の確定金額の全額が一円未満であるときは、その全額を切り捨てるものとし、国及び公庫等の債務の確定金額の全額が一円未満であるときは、その全額を一円として計算する
3 国及び公庫等の相互の間における債権又は債務の確定金額の全額が一円未満であるときは、前項の規定にかかわらず、その全額を切り捨てるものとする。
通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律
第三条 債務の弁済を現金の支払により行う場合において、その支払うべき金額(数個の債務の弁済を同時に現金の支払により行う場合においては、その支払うべき金額の合計額)に五十銭未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて計算するものとし、その支払うべき金額に五十銭以上一円未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭以上一円未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を一円として計算するものとする。ただし、特約がある場合には、この限りでない。
2 前項の規定は、国及び公庫等(国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律に規定する国及び公庫等をいう。)が収納し、又は支払う場合においては、適用しない

国の年金の端数処理

日本年金機構の端数処理の方法です。

年金額の端数処理
年金額の計算において1円未満の端数があるときは、法律により50銭未満は切り捨てられ、50銭以上1円未満は1円に切り上げられています。65歳以後の年金は、老齢厚生年金と老齢基礎年金の2つの年金になり、それぞれの年金で端数処理されます。
各支払月の支払額(2か月分)の端数処理
各期支払額における1円未満の端数が生じたときはこれを切捨て、切り捨てた端数の合計額を2月期の支払額に加算して支払います。また、端数の合計額にさらに1円未満の端数が生じたときは切り捨てします。

雇用保険の被保険者負担額の端数処理

雇用保険の被保険者負担額(以下「被保険者負担額」という。)に1円未満の端数が生じた場合には、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第3条に基づき、債務の弁済額に50銭未満の端数があるときには切り捨て、50銭以上1円未満のときには切り上げることとなります。なお、端数が生じた場合の端数処理は現金で支払う時点で行うことから、1円未満の端数が生じた場合の取扱いは、以下の1または2のとおりとなります。

ただし、これらの端数処理の取扱いは、労使の間で慣習的な取扱い等の特約がある場合にはこの限りではないので、例えば、従来切り捨てで行われていた場合、引き続き同様の取扱いを行ったとしても差し支えはありません。

1.被保険者負担額を源泉控除する場合
被保険者負担額の端数が、50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げとなります。事業主が、源泉控除した後の被保険者に実際に支払う賃金(支払金額)が弁済すべき債務(弁済額)となるので、賃金支払の時点で端数処理を行うことになります。
(例1)総支給額243,088円で、被保険者負担率が5/1,000のとき、243,088円×5/1,000=1,215円44銭(被保険者負担額)、243,088円-1,215円44銭=241,872円56銭(弁済額)。この時点で端数処理を行うが、弁済額の端数が50銭以上のため切り上げとなり、241,873円が弁済額となります。243,088円-241,873円=1,215円が結果として被保険者負担額となります。被保険者負担額の端数が50銭未満(44銭)なので切り捨てた形となります。
(例2)総支給額243,800円で、被保険者負担率が6/1,000のとき、243,800円×6/1,000=1,462円80銭(被保険者負担額)、243,800円-1,462円80銭=242,337円20銭(弁済額)。この時点で端数処理を行うが、弁済額の端数が50銭未満のため切り捨てとなり、242,337円が弁済額となります。243,800円-242,337円=1,463円が結果として被保険者負担額となります。被保険者負担額の端数が50銭以上(80銭)なので切り上げた形となります。
2.被保険者負担額を被保険者が現金で支払う場合
被保険者負担額の端数が、50銭未満の場合は切り捨て、50銭以上の場合は切り上げとなります。この場合、債務者(弁済者)は、事業主ではなく被保険者となるので、弁済すべき額は被保険者負担額となり、この額そのものについて端数処理を行うことになります。
(例1)総支給額243,088円で、被保険者負担率が5/1,000のとき、243,088円×5/1,000=1,215円44銭(被保険者負担額=弁済額)、弁済額の端数が50銭未満(44銭)のため切り捨てて、1,215円を被保険者負担額として事業主に支払うこととなります。
(例2)総支給額243,800円で、被保険者負担率が6/1,000のとき、243,800円×6/1,000=1,462円80銭(被保険者負担額=弁済額)、弁済額の端数が50銭以上(80銭)のため切り上げて、1,463円を被保険者負担額として事業主に支払うこととなります。

年次有給休暇

法律で定めている年次有給休暇中の給与
年次有給休暇を取得した期間(時間)の給与は、①平均賃金、②所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金、③健康保険法における標準報酬日額(労使協定必要)のうち就業規則において定めた賃金が支払われます。
(労働基準法第39条第7項)
月平均所定労働時間
「(365日-1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間」で算出した時間のことを、年間所定労働時間と呼びます。この年間所定労働時間を12で割ったものが、月平均所定労働時間になります。