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北の奔流は北国の爺様が実釣に基づいてお届けする四季の情報です。

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どうにも納得できない魚道の話

米代川扇田堰堤の新魚道(07/04/12)

天然遡上に拘るアユ師は、河川の流れを分断する堰堤の存在が気になります。
今春、米代川上流部における最大のネックであった扇田の堰堤に新魚道が完成しました。
今季鹿角地区への大量遡上を期待させるその工事の全容を眺めてまいりました。
果たしてどれほどの機能を発揮し、そしてどれだけのアユ師に感動を与えてくれるのでしょうか。
ついでですから、魚道の分類や構造などもちょっとだけ勉強してみました。

  
現在ゲートは開いた状態、左岸の新魚道側にはまだ越流していません。
堰堤の中央には旧来の階段式魚道が見えてますが、これが撤去されなかったことが、不幸中の幸いとならなければいいのですが・・・。

  
粗石付き斜路式魚道(?)のズームアップですが、程よい流量だけとは限らない川の流れ、高流量時など千変万化の流れに対応できて、計算通りの機能が発揮されればいいけどなぁ・・・心配。

  
左岸から眺めると、カマボコ型の断面がよく解りますね。
阻流板代わりに埋め込んだ粗石って意外に小さくて少ないんだけど、きちんと役目を果たせるのか。
遡上魚に上流側を意識させるための「呼び水水路」などはなくてもいいのか?
阻流板なし、休息プールなしのフラットな構造、これでも助走路とする水深が確保できるのね?
アユのように泳力があるサカナなら、ここを一気に遡ると言うことなんだろうがねぇ・・・。
カマボコの中央にも充分な流れが出来ればいいけど・・・、低流量時には乾燥路面だったりして。
オラにはなんとなくピンと来ない構造に思えるんだけどだなぁ・・・。
アオサギやゴイサギの格好の餌場にならなければいいけど・・・。
もうじき出る結果が、大いに期待(心配)されまする。

魚道の分類

ネット上で調べた結果、一般的には次のように分類されるようです。
現在最も機能的と思われている方式は、デニール式とアイスハーバー型でしょうか。

越流式 階段式
プール式
アイスハーバー型 隔壁の一部を非越流とし、裏側を休息場とした
バーチカルスロット式
隔壁に設けた縦溝から水を流す方式
潜孔式
隔壁下部に設けた潜孔から流す
 
ストリーム式 粗石付斜路式
傾斜水路、イボ型突起などで流速を妨げる方式
デニール式
阻流板により緩流帯を造りだす
 
多自然型 迂回水路式
落差のある場所では長大な水路が必要
 
オペレーション式 フィッシュポンプ式
機械力で汲み上げる方式
エレベーター式
同上



魚道その後(07/5/16)

だいぶ収束しては来ましたが、5/16現在はまだ雪シロの続く米代川です。
農業用水の取水で扇田頭首工が閉じられ、大量の水が魚道側に越流しています。
はっきり言って、こんな魚道って見たこともないオラ。
直感的には旧来の階段魚道の方がまだマシな気がしてきました。
水量が多ければかくの如き泡立つ激流。
少ない時は必要とする水深が得られない、とんでもないシロモノに見えてしまいます。
今、二ツ井付近に到着している遡上本隊は、あと20〜30日でここに押し寄せて来るはずです。
上流鹿角地区のアユ釣り、今年こそ以前の栄華を取り戻せるのか・・・。
ここがうまく機能するか否かにかかっているのですが・・・、んん、何とも心配なこった。

  

  

  



07遡上観察のページから(07-06-19)

6/19現在の遡上本隊は、まだ二井田橋付近だと言う。
扇田橋付近で見えるのは、まだまだまばらな魚影でしかない。
昨年のあの武者震いの出そうな光景を期待していたが、がっかりだ。
本流でもここまで遡上速度が鈍いのは、いったいどうした訳なのだろう。
扇田堰堤新魚道を30分ほど観察したが、アユらしい影が必死に遡る光景確認は僅かに1回のみ。
アオサギとゴイサギが1羽ずつ、時折水中に首を突っ込んではサカナをくわえている。
右岸の旧魚道側の方が、よくサカナが見えている・・・って、新魚道、やっぱり心配していたような水の流れ方だった。
これって、はたして・・・。

  




(BLOG 絵日記から) 08-01-15(火) 魚道の話(1)

秋田県内水面漁連のHP掲示板に「遊漁者Aさん」からの米代川扇田魚道に関する質問に対して、秋田県水産漁港課からようやく回答が出されましたな。
新魚道により恩恵を受けたいとする者からすれば、昨年のような天然遡上不振の時にこそ、機能が発揮して欲しかったところでしょうが、1年目は見事に期待が裏切られた形になっておりました。
遊漁者の不安が徐々に増幅している折、2年目はそんな諸々を払拭するような素晴らしい遡上が見られることを願うオラでしたが、
残念ながら想いは虚しく砕け散ろうとしているところです。

我が友「遊漁者Aさん」に言わせますと、今回出された回答の中には、魚道機能を断念しなければならない致命的欠陥があったそうな。
去年の遡上期にアユ師たちが見たあまりに酷い光景は、まさにそのことが原因であって、それぞれが抱いたであろう不安は的中することになるでしょうとのこと。

さてその致命的欠陥とは何ぞや・・・。
このあと彼の話を伺いながら、ついでですから我ら遊漁者にとって、関心の高い魚道の話を暫く続けてみたいと思っています。
皆さんのご意見やご感想を、是非お聞かせくださいませな。



(BLOG 絵日記から) 08-01-16(水) 魚道の話(2)

魚道とは、サカナが段差を往来するための通り道。
サカナが労せずして通過出来るものでないとしたら、それを魚道と呼んではいけません。
川の中の得体の知れない構造物でしかありませんよね。
海からの天然遡上が減少している近年ですが、上流鹿角地域に再び天然アユを呼びたいとの願いが叶って、血税が投入され完成したのが、今話題になっている米代川扇田の新魚道と呼ばれるモノです。
内水面漁連のBBSの中で「遊漁者Aさん」は、その魚道機能を否定する重大な欠陥を見つけたと言っています。
各種資料を紐解くうちにそれが何のことだったか、オラもはたと気付いてしまいましたもんね。

県の二度にわたるご回答を合わせますと、
「この魚道は水路タイプに分類される粗石付斜路式で、天端の勾配が一般的な10分の1で造った」と堂々と述べておられます。
実はこのことが去年の遡上期にオラたちが見た悪夢のような光景の元凶だったのです。
魚道先進地に見る資料では、粗石付斜路式魚道は勾配を20分の1以上にすると、水が激しく走り過ぎて役目を果たさないことが実験的に解っていると言っています。
勾配10分の1が一般的なのは、プール式に分類される階段魚道などのもので、米代川では斜路式の限界とされる勾配を、さらに2倍以上に強めて造った訳で、秋田県の勇気ある挑戦と言えるのかも知れませんが、そんな蛮勇のために多額の公費を注ぎ込んだってのがとても納得できませんな。



(BLOG 絵日記から) 08-01-17(木) 魚道の話(3)

まだまだ続く魚道の話。
先ずはちょっと物理のおさらい。
今回の現場に当てはめた時、ある地点の流速vは次の式で表されるんじゃなかったっけ? 
(間違ってたらゴメン)

  v=v0+at

    v0 :初速度  a :加速度  t :時間

即ち初速度v0.(=1.28m/sec)で斜路に流れ込んだ水は、加速度aを一定とした時、t時間後(流下するほどに)に流速vに達すると言うことを表したかったのですが・・・。
上の式が正しいとすれば、下に向かうほど速くなる流速を抑えるためには、加速度を限りなく「0」に近づけるか、「−」になるような工夫をすることになります。
そこで、斜路式魚道本体に適度な粗石を配置することで、阻流効果を得る訳です。
粗石は阻流効果のほかに、上流側に適度な水深と、下流側には遡上魚の休息場たる緩流帯を発生させる役目も担っています。
また、人工的に澪筋を発生させて、サカナの通り道を確保する役目もありそうです。

さて、扇田の構造物はどんな塩梅かと見てみましょう。
あまりに走り過ぎる水は、粗石に衝突して噴水となったり剥離流となって、石裏に緩流帯を作る目的を全く果たしてはいませんね。
さらには、プレキャストブロックの継ぎ目や溝で発生する夥しい白泡流や乱流は、遡上魚の進行方向まで見失わせているようです。
このままでは、遡上魚がこの構造物直下に辿り着いても、出口(固定堰上端)を通過することは極めて困難でしょうな。
サカナに優しい「ほんまもんの魚道」が造られる事を期待してたのになぁ・・・。



(BLOG 絵日記から) 08-01-18(金) 魚道の話(4)

しからば理想的な「粗石付斜路式魚道」って、どんなんかなと調べてみたのよね。
1.   適度の勾配(粗石付斜路式魚道にあっては1/20以下   )に抑えられていること。
2.   適度の水深(対象魚体高の2倍以上)が得られること。
3.   適度な粗石の大きさや配置(自然河川に近い澪筋の発生)であること。
4.   剥離流、白泡流、乱流などの発生がないこと。
5.   必要に応じて遡上魚の休息場が設けられていること。
6.   呼び水などによって、対象魚に対して容易に上流側を意識させられること。
7.   魚道入り口(下流端)は遡上魚が見つけ易い位置にあること。
8.   魚道出口(上流端)の水位変化に対応できていること。
9.   降下魚介類への配慮がなされていること。
10.  景観への配慮がなされていること。
11.  魚食鳥類など外敵に対応できていること。

となりそうですが、話題の構造物はどの項目もクリアできていないように感じますね。
したがって、アユの遡上期になると構造物の取り付き付近の白泡に向かって、盛んにジャンプする光景は目にするでしょうが、出口の固定堰を越えて行く魚影は殆ど見られないかも知れません。
各種遡上魚のジャンプって、釣り人からすると胸がワクワクする光景ではありますが、サカナたちにしてみれば行く手を阻む障害物を何とかして越えようと必死にもがいている姿に他なりません。
何度も何度もトライした挙句に力尽きて流下してきたところを、待ち構える大型魚や魚食鳥類の餌食になることもあるでしょう。
魚道と言うからには対象魚に優しい構造で、ストレスなく高効率に通過してもらいたいものです。
予算が少ないため流路を短くする必要があったと言うなら、斜路幅員を狭めたり流路を折り返す、或いは他の形式で検討するなど、幾らでも工夫の余地はあったと思います。
また既設の階段魚道に、最新の理論に基づいて手を加えるだけでも、遡上効率の飛躍的向上は可能だったと思われますが・・・・・。



(BLOG 絵日記から) 08-01-19(土) 魚道の話(5)

執っこく今日も魚道の話です。
北東北近隣では、斜路式の魚道が上手く機能している例を未だ知らないオラです。
記憶にある秋田県内の例をちょっとだけご披露しますと・・・。
先ずは、阿仁川本城頭首工(現在は改修されております)。
ここは全断面魚道構造ですが、段差が大き過ぎるため遡上魚は難儀しつつ左岸に設えた斜路に集まる傾向にあります。
そこは短いけどかなりの急勾配(おそらく1/5ぐらいでしょうか)で、阿仁川の主Mr.Kikutiに言わせると、これでも遡上量の多い年なら結構遡るんだとか。
オラの近年の遡上観察では、ついぞここを遡る光景は見ていないんよ。
遡上期の阿仁川では、根小屋の堰堤が云々されるけど、遡上アユにとってこの本城堰堤こそが最大の難所でしょうな。

次に、岩見川戸島のカミ堰堤右岸。
数年前、遡上がピークになった頃合をみて、観察に出かけたことがあった。
ここも粗石なしの斜路式、勾配は推定1/10、かなりの勢いで水が走っていた。
何度も何度もトライする遡上アユ、力尽きて落ちてくるところを、地元の方が網で掬っていましたな。
遡上の少ない近年では、残念ながらここが魚道と言う魚止めになっているようですぞ。

と言う訳で斜路式の魚道としては、なかなか成功例を見ることが出来ないのです。
プール式の魚道とは違って設計者の意図する流れを創出することが極めて難しい形式なのでしょうな。
だからこそ、実績のある先進地関東中部方面などに倣うことが必要とされるのです。
・・・って、前々から何度も言ってるでしょうが。
オラだんだん腹が立ってきたぞ。



(BLOG 絵日記から) 08-01-20(日) 魚道の話(6)

北東北各河川には、数多くの魚道が存在しております。
しかし、災害で破損したままだったり、或いは流れの筋が変化したり、もともとの構造が悪かったりで、まともに機能している箇所はそれほど多くはないような気がします。
そんな中、オラの知る範囲で大いに健闘しているのが、阿仁川根小屋の堰堤左岸の階段式だよ。
一般には、阿仁川上流部の釣況を左右すると言われているここの魚道機能ですが、阿仁川に精通したオラたちの間では、この直下まで一定の群れが来てさえくれれば、その年の上流部での好釣果は確信できるのです。
固定堰左岸隅にツバメの巣みたいにへばり付いた小さな扇形階段魚道、段差は少し厳しいながら充分な水深にも助けられ、意外に高効率で群れが上流を目指すことが出来る優れものなのです。
ここでは、固定堰の越流に向かって果敢にジャンプを繰り返しながらも、遡上アユの群れは次第に左岸魚道側へと吸い寄せられるのだそうです。
これって、魚道本体の構造に多少の難があっても、当を得た取り付け位置と、遡上魚に上流方向を見失わせない配慮による成功例でしょうな。



(BLOG 絵日記から) 08-01-21(月) 魚道の話(7)

最後は、魚道を語るとき、何度か出てきた流れの種類についてひとくさり。

[剥離流]
  • 水が堰堤隔壁などを落下する時、構造物や川床から剥離してその間に空洞を作る状態の流れ。
    滝のような流れとでも申しますか・・・。

[白泡流] 
  • 障害物などで発生した夥しい白泡を含んだ流れ。
    激しい白泡流は密度を著しく低下させ、浮遊魚の泳力を奪う。

[乱流]
  • あらゆる方向からの流れがぶつかり合って出来る複雑な流れ。
    魚にストレスを与え、遡上方向を見失わせる流れである。

[噴流]
  • 噴水が吹き上げるような勢いの激しい流れ。
    北東北各地の施設を見たうちでは、唯一扇田でしか確認していない貴重な流れだ。
   

魚道の設計をする上で、上記の発生の回避が大原則。
巷で評判の宜しくない階段魚道にあっても、上記を克服する知恵を出すだけで、遡上魚に優しい施設に変貌するのです。
段差を見直し、隔壁断面に剥離流を起こさぬためのRを付けるなど、僅かの改修費用で、飛躍的な遡上効率向上が図れるはずです。
こんなご時勢だけに、莫大な公費をつぎ込んで「博打」を打ってはいけません。
遡上魚の生態も知らぬまま、ヘンな見栄を張って珍妙な構造物など造ってはなりませんて。
一番はアユで村興しに成功している先進地に学び、魚道専門家の教えを乞うことですがな。

これで魚道の話、一先ずどんどはれぇ・・・です。



(BLOG 絵日記から) 08-01-26(土) 魚道の話(8)

またもや魚道の話の続きです。
釣友の「遊漁者Aさん」も、扇田の魚道に関しましては、県水産漁港課からの回答を読み、もうすっかり呆れ果てしまい、この話しには触れたくないと申しておりますので、代わってオラが改修案などをひとつ・・・。
あくまでも、素人の戯言ではありますが・・・。
先ずは既存の階段式魚道の改修をしましょう。
1. 魚道本体の段差を20センチ以下にする。
2. 隔壁にR加工(面取り)をする。
3. 中央付近から両側に折り返して、魚道入り口を2ヶ所、固定堰(水叩き)側に移動する。
4. 固定堰を加工できないとすれば、流量を安定させるため魚道横の隔壁に溢流部分を設ける。

それじゃ新魚道と呼ばれるチン構造物の後始末はどうすれば・・・。
せっかく大枚をはたいて造ったのではありますが、どう手を加えても改良は難しいと思われますので、この際潔く跡形も無く取り壊すべきでしょう。
さもなくば遡上期になると魚食鳥類がわんさと押しかけ、野鳥生態観察のスポットとして全国に知れ渡ることになりそうな気がしています。
それはそれでムラ起しの役目を果たすのでは・・・って、笑い話もありましたなぁ。





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