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・南九州の日豊本線に沿って/青井岳越え
261.  青井岳駅界隈(かいわい) ・日豊本線 /石門(信)〜都城

〈0003:17-2−6:境川を渡る〉横位置。
0003:深い谷間に架かる境川橋梁を見上げ


〈0002:bO945の3:「柿の里 野上集落」、日豊本線・山之口−楠ヶ丘(信)〉





〈0004:bO942の3:青井岳駅旅客列車発車〉





「」の発車

〈0005:bR10622:青井岳駅貨物列車の発車〉縦位置





〈0006:bR10244.都城旅客列車発車シーン〉





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〈紀行文
 日豊本線が宮崎から都城へ向かう時に通過する「青井岳越え」のシリーズのハイライトであるサミットの青井岳トンネルを挟んで撮った三枚の写真をご覧に入れたい。そこで、この沿線風景を語る前に、この間に横たわる鰐塚山地(日南山地)の地形を予め説明しておきたい。
この直径がほぼ40qの広がりを持つと云われる山地は北に宮崎平野、南に都城盆地を控え、東は日向灘に面する日南海岸に迫り、西側は九州山地から日向灘へ流れ下る大河の大淀川に囲まれていた。そして、北から次第に高度を上げる標高500m以上の主な山稜は山地の中央部に集まっていて、最高峰の鰐塚山(1,119m)、一柳岳(968m)と北東から南西に連なっていて、数多くの支脈を分けていた。特に主脈の先で北西に分岐する大支脈には青井岳(563.2m)を擁する青井岳山系が標高 400m前後の山々を連ねている。また大淀川の谷の東側には東岳(898m)を始めとする標高 600ほどの山々が散在していた。これらの山地を源に流れ下る主な河川には、鰐塚山の西麓を源にする別府田野川(りゅうたのがわ)が田野盆地を流れて他の支流と合流して清武川となり東流して日向灘へ注いでおり、この支流には松山川、井倉川、山住川が合流している。それに鰐塚山の南面に源を発して青井岳の東麓を深い谷を刻んで北流して大淀川に合流する境川がある。それに鰐塚山地の最南部から西流して都城盆地の北縁を流下して大淀川に合流する沖水川がある。それに東岳や青井岳からの水を集めた大淀川水系の東岳川が南流している。一方の大淀川は九州山地に源を発して都城盆地の端をかすめて鰐塚山地の北部を縁どるように流れて宮崎平野に至って日向灘に注いでいる。これらの河川には河岸段丘がそれぞれ良く発達していて、これらの台地はほぼ昔堆積した火砕流のシラス土壌に覆われている。これらの河川の多くの支流たちはさらに種々の方向をとり、山地は網の目のように複雑に深く浸食されている壮年期の地形を見せていたのだった。
この山地の主稜の西側にほぼ沿うように縦断するのが日豊本線であって、先ず北から宮崎平野の大淀川、そして清武川、山住川、井倉川、再び清武川、続いて松山川を七回、境川を渡り、青井岳山系の青井岳南肩の下を抜けて、東岳川、そして沖水川と渡って都城盆地へと至っているのである。
 さて田野駅を出て町外れを抜けてから築堤を下って、盆地の最も低い所を流れる清武川の本流を渡り、再び厳しい登り勾配の大築堤を駆け上ると緑濃い日向杉の山林が左右から迫ってきて、やがて清武川の支流である松山川の蛇行して流れ下る谷をさかのぼることになる。何回も谷を渡りトンネルを抜けて登り詰めると山中の石門信号場が現れる。この先の4つ目のトンネルヲ抜けると車窓に大淀川に流れ下る境川の清流が眼下に見えてくる。やがて深い谷を刻んだ境川を上路プラットトラス+プレートガーダーの長さ 133.5mの境川橋梁で渡ると青井岳駅に侵入する。
この駅の北には青井岳がそびえていて、その山頂はやや緩傾斜であるものの、標高の割にには急斜面で、特に東部は大淀川へ流れ下る境川が深いV字谷を刻んでいるのだった。この青井岳の南部の鞍部は古くは宮崎平野と都城盆地を結ぶ唯一の交通路であって参勤交代にも使われた“薩摩古道”が山之口の町から青井岳集落を結んで残っている。鉄道はこの道に沿って作られたと思われる位であった。
この境川は田野盆地が属していた清武郷を領していた銘杉材の山地で知られる飫肥(おび)藩と都城の属する薩摩藩との境を成していることから、この名が付けられているとのことであった。実際に、境川の上流で尾根を越えた辺りの地域は飫肥藩と薩摩藩との了知争いが耐えなかったというのであった。青井岳駅を発車して、標高 約290mのサミットである長さ 1,529mの青井岳トンネルを抜けると、左右の車窓からは、「シイ・カシ・タブ・クス」などの暖帯特有の照葉樹の自然林の中を下ッて行くと云う貴重な景観が楽しめるだろう。そのような山間を蛇行しながら猪之川内トンネル、猪之川内川鉄橋(47m)、そして山之神トンネルを2つ抜けて下ると樹林の山の中腹に設けられた楠ヶ丘(くすがおか)信号場を通過した。やがて古大内川(ふるおおうちかわ)に沿うようになり桂ケ谷下(かつらがしも)鉄道橋(長さ 42m)、桂ケ谷上(かつらがかみ)鉄道橋(長さ 82m)の2つの煉瓦造りのアーチ橋を渡ると、周囲が開けてきて都城盆地に入ったようだ。そして、東岳川に架かる山ノ口川橋梁(長さ 206m、プレートガーダー 9連)を渡ると、まとまった集落が現れてきて山之口駅となる。駅名の示す通り鰐塚山地の入口に当たり標高 約160mであった。次いで田畑の中を走り餅原(もちばる)駅、川を渡り、トンネルで小さな峠を抜けた。この先は大淀川へ合流する沖水川を渡ると住宅地に入り、右カーブの途中に三股駅があった。その後も住宅地の中を走り、左手に高層ホテルが見えてくると間もなく都城に付く。
ここから青井岳駅の素描を試みてみた。この緑濃い山と深い谷川に囲まれた山間の青井岳駅は島式ホーム1面2線の地上駅であって、この北側には緑一面の青井岳がそびえており、まさに駅名の通りの“青いだけ”の駅であった。ここの宮崎方の先にはすぐに「長さ 134m、上路プラットトラス 2連の両側に、プレートガーダー 1+2連」の境川鉄橋が、一方の都城方はすすぐに青井岳トンネルのトータル(坑門)が見えていた。この駅は峠のピークに当たっていて、下りの隣駅の山之口からは9.8Km、上り隣の駅の田野からは11.3Kmも離れていて、そレぞれの間の山中には上下列車交換のみが可能な楠ヶ丘(くすがおか)と石門の二つの信号場が後年設けられている。この青井岳駅の構内は意外に広々としていて、列車交換や保線用の側線を備えていて、工事・資材運搬車両が留置されていて、その奥には新しい防腐剤の臭いがあふれる枕木が積まれていた。
そして、宮崎に向かう上り側はゆるく左にカーブしたホームを持ち、出発をした後はほぼ、真東に向いているため比較的早くに陽が差し、太陽の角度によっては正面プレートのギラリが狙えたし、直ぐに深い境川の谷に架かる高いトラス鉄橋を渡ってダッシュして行く所が狙える撮影名所でもあった。駅の東側に架かる境川橋梁は青井岳駅の直前にあって、待避線が長く上り勾配になっているので下り列車は停止直前まで力行するのも魅力であった。そこで、境川鉄橋を下から見上げるように撮影したのであった。
この駅のホームから跨線橋を渡って、急な傾斜の階段を下ると駅前のロータリーに出た。そこで振り返えって階段を眺めると、天国への階段を思わせる不思議な感覚に襲われた。そこには青井岳温泉(後に国民宿舎青井岳荘となった)の案内板がポツンと立っていた。ここは県道青井岳停車場線の終点で、バスが転回場に使ってていて、ここから約300mほど下ると国道269号(田野と山之口の中間)に出た。駅の前には人家が3軒程しか見えないが、駅脇を谷へ入ると附近には小さな集落があり、駅近くを流れる境川の支流の妙寺ヶ谷川にはウナギがいると云うとのことだった。
この駅は、HP〈秘境駅へ行こう!:2012/05/22更新〉によると、
http://hp1.cyberstation.ne.jp/hikyoueki/
『85位:青井岳駅(日豊本線)・宮崎県都城市
駅前に人家3軒 /離れた所に10数軒の集落あり。深い山中。列車交換駅。』とあった。
 さて、三枚目の柿の里の写真の撮影メモを開いてみた。それには、青井岳駅に別れを告げ国道を右折して約5kmほど南下した辺りが国道が日豊本線に近づいているように感じられ、右手に走湯神社への入口を示す案内板を見付けて狭い砂利道を下った。この先は野上集落に入るらしく、この段段畑の耕された谷底には古大内川(ふるおおうちかわ)の流れがあり、その先を日豊門線が勾配のついた築堤で通っていたのが眺められた。沢山の柿の実を付けた樹木を見付けて前景に上り列車を捕らえた。この野上集落から走湯神社の裏を通る十二鹿倉林道を北へ約2kmほど進ンで、分岐を左へ、川を渡って右に坂を登れば楠ヶ丘信号場に通じていたのだった。この道筋は「薩摩古道」とよばれる江戸時代の街道で山之口から野上を経て山を巻くように越えて青井岳の集落へ通じていたのであった。この当たりには大正生まれの煉瓦瓦アーチの鉄道橋が現役で使われていたので再度の訪問を期していたが果たせなかったのは心残りである。

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・「南九州の日豊本線に沿って」シリーズのリンク
158. 「宗太郎越え・第1鐙川橋梁」 (日豊本線・市棚→宗太郎)
019.夜明けの日向路(JR九州・日豊本線)
159. 日豊海岸の日向灘沿いを行く (日豊本線・美々津〜日向市の間)
150.SL最後の牙城「大淀川橋梁を行く」・日豊本線/宮崎−南宮崎
032. 南日向の大堂津にて・日南線
・「青井岳越え」シリーズ・日豊本線/宮崎−都城 間
029. 夕暮れのいわし雲とC57・日豊本線/日向沓掛−田野
262. 田野駅のC5552発車・日豊本線/田野付近
302. 門デフの貴婦人 C57154の発車・日豊本線/日向沓掛付近