古典棋譜鑑賞室  道策の棋譜 全41局

道策のプロフィール

<道策の碁に関する呉清源九段のコメント>
棋力13段といわれる碁聖道策師は、いまその譜を並べ直してみても、敬服に値する棋士であることを、痛感いたします。
当時の古風な力碁に対して合理的な思考を打ち出して、近代的感覚の第1歩を踏み出した功績は偉大なものというべきでしょう。
道策師は合理的布石を創案し、手割による考え方から、相手を凝り形にする手法を好んで用いました。また、たとえ、手割上は損でも、大場に先鞭出来る場合は、平気で石を捨てて打つ、つまり、述語で言う「打ち越し」を実行しているのでその点学ぶべきものがあります。石を外まわりに導き、石をいっぱいに働かせて打っています。
道策の打ち碁の中から特色のある34譜を選抜しました。この34局によって、碁聖道策師の優れた碁の考え方をご自分のものとして、一段と碁を進められることを希望いたします。

<道策の碁に関する酒井猛九段のコメント>
道策の碁には、碁のあらゆるものがある。強烈無比の攻め、鮮やかな凌ぎ、雄大極まりない大作戦、そして時にはものすごい地のからさ、それが次の瞬間には全く別の方向に転換したりもする。必要な時に必要な手がおのずと湧いてくるという観があり、盤上に響き渡る一手一手は、何度並べても感動を呼ぶのである。それはまさに天来の妙音でもあった。

<道策の生きた時代と名人碁所>
徳川時代の名人碁所とは江戸幕府の役職で、棋士昇進の検定、外国人との対局の按配、将軍家の指南などの重要な職務があり、碁界の4家元が協議の上、寺社奉行に推薦し、老中から免許が下附されることとなっていた。従って、棋士にとって最大の願望は名人碁所になることであった。徳川300年に名人碁所となった人物は8名であり、人名、期間、当時の将軍は下記の通りである。
本因坊1世算砂 1603年〜1623年 21年間 家康、秀忠
井上1世 中村道碩 1623年〜1630年 8年間 家光
安井2世算知 1668年〜1675年 8年間 家綱
本因坊4世道策 1677年〜1702年 26年間 家綱
井上4世道節因碩 1710年〜1719年 10年間 家綱、吉宗
本因坊5世道知 1721年〜1727年 7年間 吉宗
本因坊9世察元 1770年〜1788年 19年間 家治、家斉
本因坊12世丈和 1831年〜1839年 9年間 家斉、家慶
道策(1645年〜1702年)がどういう時代に生きて、だれを目標にしてきたかと考えるとなかなか面白いと思う。

参考図書
A.日本囲碁大系3   道策
B.囲碁古典名局選集 玄妙道策
C.碁神道策 
解説 呉清源九段
解説 酒井猛九段
福井正明九段
shoseki.jpg (188506 バイト)


道策の棋譜鑑賞にあたり、上記2冊に掲載の全棋譜を選択しました。下記の一覧表の最右欄にあるAは呉清源九段の著作から、B及びbは酒井猛九段の著作からで、AB及びAbは両九段の著作に共通している碁です。尚、bは酒井九段が道策流入門としてポイント解説している碁です。

棋譜鑑賞は、
1.まず、棋譜だけを見て、smile_aceの感想(***smile_ace感想)を記し、
2.後に、呉九段、酒井九段、或は福井九段の解説と変化図を示し、
3.初中級者が分かりにくいところをsmile_aceが補足説明(***smile_aceコメント、***smile_aceの変化図)しています。
4.また、smile_aceが理解出来ないことについても記録(***smile_aceの疑問)しました。

ご意見(smile_aceの疑問についてのご意見など)、お問い合わせなどはメッセージボードにお願いします。

   

年代順に表示
No対局日西暦対局者 対局者 勝敗 碁のコメント
01寛文7年10月20日
 御城碁
1667 先 安井 知哲 本因坊 道策 白5目 生涯のライバル安井知哲との御城碁 道策23歳
02寛文7年 1667 先 本因坊 道策 安井 算哲 黒中押 後に暦学者渋川春海と改名した算哲との対局
03寛文8年6月8日 1668 先 安井 知哲 本因坊 道策 白4目 1局目と異なり平凡な碁に見える Ab
04寛文8年6月25日 1668 先 本因坊 道策 安井 知哲 黒14目 左下のハネダシの味についてのご意見を頂きたい碁
05寛文8年7月20日 1668 先 本因坊 道策 安井 知哲 黒17目 「打ち越し」で足早に打って中央に100目の大地を作った碁
06寛文8年12月18日 1668 先 安井 知哲 本因坊 道策 白11目 部分的な競り合いに強い知哲を大局観で制した道策の碁
07寛文9年6月19日 1669 先 本因坊 道悦 本因坊 道策 黒3目 師道悦との絶品の師弟戦
08対局日不明 先 本因坊 道悦 本因坊 道策 黒3目 師道悦との師弟戦 華やかな攻防(玄妙道策)
09寛文9年7月7日 1669 先 安井 知哲 本因坊 道策 白10目 薄い大模様を変幻自在に勝局に結びつけた碁
10寛文9年9月22日 1669 先 杉村 三郎左衛門 本因坊 道策 白6目 2世本因坊算悦との碁があるほどの大先輩三郎左衛門との対局 AB
11寛文9年10月14日 1669 先 安井 知哲 本因坊 道策 白4目 右上へのコウダテから参考になる変化が出来た碁
12寛文10年3月17日 1670 2子 菊川 友碩 本因坊 道策 菊川友碩は道策とのこの一局により囲碁史に名を残した AB
13寛文10年8月9日 1670 先 安井 知哲 本因坊 道策 黒中押 知哲の傑作
14寛文10年10月17日
 御城碁
1670 先 安井 算哲 本因坊 道策 白9目 天文学者の算哲が初手天元に打った碁
15対局日不明 先 南里 与兵衛 本因坊 道策 黒中押 大先輩の南里与兵衛が初手天元で道策を破った碁
16寛文12年5月16日 1672 先 南里 与兵衛 本因坊 道策 白中押 南里与兵衛の初手天元2局目には道策も貫禄を示した
17寛文12年9月8日 1672 先 安井 知哲 本因坊 道策 白8目 玄妙不可思議の局(玄妙道策)
18延宝元年12月2日
 御城碁
1673 先 本因坊 道策 安井 算哲 黒12目 算哲とのめぐるましい一局 Ab
19延宝2年11月24日
 御城碁
1674 先 安井 算哲 本因坊 道策 白6目 返し技の冴え(玄妙道策) AB
20延宝2年 1674 先 安井 知哲 本因坊 道策 白5目 算知と道悦の争碁のさなかに打たれた一番弟子同士の対局
21延宝2年 1674 先 安井 知哲 本因坊 道策 黒6目 道策らしからぬ、中盤、終盤のミスで、序盤の優位を失った碁
22延宝2年 1674 2子 安井 知哲 本因坊 道策 白中押 実戦図がそのまま詰碁になった死活が出来た碁
23対局日不明 3子 福尾 玄故 本因坊 道策 黒勝 石を攻めながら中央を囲った黒が勝った3子局
24延宝3年8月6日 1675 先 安井 春知 本因坊 道策 白中押 絶妙の手造り(玄妙道策)
25延宝3年10月20日
 御城碁
1675 先 安井 算哲 本因坊 道策 白18目 安井家の研究不足を衝いた道策の快勝譜
26延宝4年 1676 先 安井 知哲 本因坊 道策 白9目 盤上の超能力者(玄妙道策) AB
27延宝6年10月14日 1678 先 井上 因碩 本因坊 道策 白14目 実弟の3世因碩との碁
28延宝9年9月30日 1681 先 本因坊 道悦 本因坊 道策 白中押 師道悦との師弟戦で師の大石を葬る Ab
29天和2年4月17日 1682 4子 ペイチン ハマヒカ 本因坊 道策 白14目 琉球の名手親雲上浜比賀との4子局
30天和2年 1682 先 本因坊 道策 本因坊 道的 黒1目 16歳で本因坊跡目となった道的との黒番の碁
31天和2年12月 1682 先 本因坊 道的 本因坊 道策 黒1目 碁聖対神童(玄妙道策)
32天和3年1月28日 1683 先 井上 因碩 本因坊 道策 白13目 奇想天外の局(玄妙道策) AB
33天和3年11月19日
 御城碁
1683 2子 安井 春知 本因坊 道策 黒1目 生涯の一局 Ab
34対局日不明 2子 桑原 道節 本因坊 道策 黒中押 後の名人因碩との2子局
35元禄9年11月29日
 御城碁
1696 2子 安井 仙角 本因坊 道策 黒1目 道知少年との争碁で有名な安井家4世仙角との対局
36元禄10年6月6日 1697 2子 小倉 道喜 本因坊 道策 白中押 道策、道知の門下の道喜との2子局
37元禄10年6月10日 1697 2子 小倉 道喜 本因坊 道策 黒5目 道喜の雪辱戦、黒20から手を変えた
38元禄10年6月26日 1697 先 熊谷 本碩 本因坊 道策 白中押 道策門下五虎の1人本碩との対局
39元禄10年8月12日 1697 先 熊谷 本碩 本因坊 道策 白1目 滋味あふれる名局(玄妙道策)
40元禄 5子 雛屋 立甫 本因坊 道策 白中押 類見ない大技の決まった碁
41対局日不明 2子 境 道哲 本因坊 道策 白中押 門下の上手格道哲との2子局
以下は全て、玄妙道策のみ収録分で道策流入門としてポイント解説している碁です。ポイント解説だからこそ、道策の素晴らしい構想が心に残ります。 碁のコメント欄は、全て玄妙道策の酒井九段の表現を拝借しました。
対局日にセットしてあるリンクで直接検討ファィルのダウンロード画面になります。
42寛文8年6月25日 1668 先 安井 知哲 道策 白2目 怒涛の追い込み
43寛文10年9月18日 1670 先 安井 知哲 本因坊 道策 白5目 臥龍昇天
44寛文年間 先 道策 本因坊 道悦 黒中押 どう動く
45寛文年間 先 道策 安井 算哲 黒12目 小に似て
46延宝6年1月12日 1678 井上道砂因碩 本因坊 道策 持碁 ドンピシャリ
47天和2年12月20日 1682 安井 算哲 本因坊 道策 白15目 宙天から舞い降りる
48対局日不明 先 道策 青木 愚碩 黒15目 大きく味良く
49対局日不明 先 正木 主計 本因坊 道策 白中押 しびれ薬

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