自動車塗装の自分史とSL蒸気機関車写真展〜田辺幸男のhp
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・蒸気旅客列車 “CHESSIE SEFTY EXPRESS” を追って・CSX鉄道網

021. “Chessie Sefty Express”を牽くSLとDL
     〈自己主張とコーポレートカラー〉


〈0001:〉 
安全特急号のSLとD

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〈紀行文〉
 アメリカ人ほど自己主張を尊ぶ人種も珍しいと思う。子供の頃から自立心を養い、自らの考えを即座に主張できるように議論の訓練をやっているのだと云われている。そのようにして育てられて成人し、他人の主張も謙虚に聞く態度も併せ持っている。そのことで民主主義の基本が出来るのであろう。
 自己主張については企業や団体の中でもも同様で、そのための有効手段の1つとして、コーポレートカラーがトレードマークやシンボルマーク、スローガンなどに混ざって活用されている。例えば、コカコーラ・レッドと云う色名らしい言葉があるが、別にあの茶褐色の液体が赤く見えると云う訳ではないだろう。トレードマークを描くのに使用する白地の赤色のことで,コカコーラのコーポレートカラーは白と赤であると云えよう。この赤色はアメリカの強烈な紫外線などにも耐えうる耐候性が深く吟味されているとかで、退色して黄味がかった赤色の看板などにお目に掛かったことは一度もなかったが、こんな所にも気を遣っていると聴いたことがある。
黄色のフィルム箱のコダックも有名である。コダックは純粋なアメリカ語で,アルファベットの中でも特にカ強く,鋭いKの字が大好きであった創立者ジョン・イーストマンが、Kで始まりKで終る文字の組合せを考えた結果、KODAKの社名が完成したと云う。
 これほどには有名ではないが、鉄道の世界でもコーポレートカラーは重要視されている。近年になって、中小の鉄道会社は大鉄道会社とパートナー関係を結んで、全米にわたる鉄道システムを作り、効率の良い貨物輸送で社会に貢献しようとしている。そのために機関車や貨車には統一したコーポレートカラーで塗装し、派手なシンボルマークやスローガンを描いて走らせることで、企業PRをするのである。
 ここに登場したSLとDLは、“Safety・Express”(安全特急)と銘打った企業PRと社会教育の一環として行われた蒸気機関車の牽引する特別旅客列車の運転会でのシーンである。
旅客列車のほとんど消えてしまったアメリカでは、列車から見た踏切の安全を体験して、自動車ドライバーとしての踏切安全の助けになる教育をしようと企画された1980から2年間にわたる沿線での行事であった。
 今日はイースト・ルイビルを起点としてセントルイスに向かう途中の田舎町までの往復の旅である。
目的地に到着後は、ホスト役のSL♯614は列車から切り離されて、後補機として狩り出されたDLと仲良く連結して、留置線で憩う姿を捕らえた珍しい写真である。
 このSL列車の後押しをして来たDLの派手な黄色のコーポレートカラーは、チサピーク・アンド・オハイオ(C&O)鉄道を中心に構成された“Chessie・System”(チェシー・システム)のものである。ミシシッピー河以東に路線を持つこの鉄道網は、1990年には更に進化して、淡いグレーをコーポレートカラーとする C S Xシステムになってしまったのは、残念なことである。
この黄色は, C&O鉄道が旅客サービスをしていた、1940年代の流線型特急列車にも使用されていたものである。このチサピークとは東海岸にある深く入り込んだ細長い湾の名前で、首府ワシントンのポトマック河もここに注いでいる。この入江には港町が多くあり、港町から西方へ、アパラチャン山脈を越えて、オハイオ河流域に達する鉄道という意味の命名が “C&O”なのである。ここの看板列車はワシントンを出発して、オハイオ河畔のシンシナティを経てシカゴ・デトロイトに達するものであった。
この黄色のディーゼル機関車の前面には、大きなCをデザインしたマークが描かれている。黄色地に黒で描かれたCの内側は、良く見ると子猫がベッドで昼寝をしている頭の輪郭で縁取られているのである。このマークはワシントンを出発する寝台車が、いかに快適であるかを象徴するトレードマークとして知られるもので、Chessie の優しさを思わせる発音と共に楽しいID(アイデンテティ)である。
線路脇で長い貨物列車を見ていると、各鉄道会社や新しい鉄道システム、または私有貨車など多くのコーポレートカラーで埋められているのが普通で、時には機関車さえも二つの鉄道システムが共同運用するために、異なる色のDLが重連を組んでいることも珍しくはない。新しいカラー・デザインのオンパレードは、とうてい日本の比ではない。
 さて、企業の自己主張の場として知られるものに、決算報告と同時期に発表される公益報告と云うものがある。これは企業が社会にどのように貢献したかを種々の面で世間に公表するものである。
鉄道は、沿線の市民に対して迷惑を掛けることが多いので、特に気を使って、この方面に力を入れている会社が多いのが特色で、鉄道サービスと市民生活との係わりの改善を報じている。この例として、大きな大気汚染源であるとされている大都市近郊の火力発電所では低硫黄炭を求めているから、最近開発されたケンタッキー炭やワイオミング炭を安価に運送するのは、鉄道の役割であることが強く P Rされていた。また、最近注目されているのは、トレーラーを連結してレールの上を機関車が牽引して走らせる方法で、毎朝、フロリダやサウス カロライナからの新鮮なフルーツを運ぶトレーラー・トレインがメガロポリスのスーパーマーケットを目指して到着するのには市民も大喝采を送っているとPRを忘れない。
このような自己主張の方法は、我田引水(がでんいんすい)と思われることはあるにしても、企業内にもモラルの向上と使命感への大きな励みとなり、貴重なモチベーション アップの手法であって、アメリカならではと感銘を受けたのだった。

撮影:1981年
撮影:1980年発表:「塗装技術」誌・1990年6月号表紙
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・蒸気旅客列車 “CHESSIE SEFTY EXPRESS” を追って」S・CSX鉄道網
004. 南オハイオを快走するC&O 614号・オハイオ州
005. 早暁のコロンバス機関区のC&O 614号・オハイオ州
015. リマ駅での楽しいひとときのC&O 614号・オハイオ州

070. 朝のカンバーランド駅出発のC&O 614号・メリーランド州

97. アメリカのスモール タウン“Flora”でのC&O♯614・イリノイ州