北畠顕家奏状


第六条

原文 読み下し文 訳文
可被厳法令事

右、法者理国之権衡馭民之鞭轡也、近會朝令夕改、民以無所措手足、令出不行者不如無法、然則定約三之章兮如堅石之難転、施画一之教兮如流汗之不反者、王事靡民心自服焉、
法令を厳にせらるべき事

右、法は国を理(おさ)むるの権衡(けんこう)、民を馭(ぎょ)するの鞭轡(べんぴ)なり。近ごろ朝に令して夕に改む。民以て手足を措(お)くところなし。令出て行わざれば、法なきにしかず。しかれば則ち、約三の章を定めて、堅石の転(まろ)ばしがたきがごとし、画一の教を施して、流汗の反(かえ)らざるごとくせば、王事もろきこと靡(な)く、民心自(おのずか)ら服せん。
法令は厳粛にされるべきである。

法は、国を整える秤であり、国民を治めるむちとくつわである。

近頃、朝出された法令が夕方には改められるというように、法がすぐに変更されて、あてにならない状態となっている。それでは国民は身の置き所がない。

法令が出されても、それが行われないならば、無いに等しい。

即座に、大まかな取り決めをした簡単な法を定め、転がしにくい堅い石のように、画一した教えを施し、流れ出た汗が戻らないように、法の変更も無いようにすれば、王権はゆるぐことなく、民心は自ずから従うだろう。
注)約三の章=与父老約、法三章耳、殺人者死、傷人者及盗抵罪(史記、高祖紀)
父老(村里の主だった年寄り)と約束する。法は三章のみとする。すなわち人を殺した者は死刑、人を傷つけた者及び人の物を盗んだ者はそれ相当の罪に処する。
転じて法三章とは、法令を非常に簡単にすること、法律が極めて簡略なことを意味する。

平成15年(2003)5.10up
平成31年(2019)1.31原文追加
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