北畠顕家奏状
第二条
| 原文 | 読み下し文 | 訳文 |
| 可被免諸国租税専倹約事 右連年兵革諸国牢籠、苟非大聖之至仁者、難致黎民之蘇息、従今以後三年、偏免租税令憩民肩、没官領新補地頭等所課同従 |
諸国の租税を免じ、倹約を専らにせらるべき事 右、連年の兵革、諸国の牢籠(ろうろう)、苟(いや)しくも大聖の至仁にあらざれば、黎民(れいみん)の蘇息(そそく)を致しがたし。今より以後三年は、偏えに租税を免じて、民肩を憩(いこ)わしめよ。没官領新補の地頭等の所課、同じく けん免に従い、その祭祀(さいし)および服御(ふくぎょ)等の用途は、別に豊富の地を撰び、以て供奉の数に充てよ。三ヵ年の間は万事興作を止め、一切に奢侈(しゃし)を断ち、しかる後、宮室を卑(ひく)くし以て民を阜(ゆた)かにして、仁徳天皇の余風注1)を追い、礼儀を節し俗を淳(あつ)うして、延喜聖主注2)の旧格に帰せば、拱(たたむき)を垂れて海内子のごとくに来り、征せずして遠方賓服(ひんふく)せん。 |
諸国の租税を免除し、専ら倹約を行うこと。 もし陛下の非常に深い恵みがなければ、連年の戦乱で苦しんでいる諸国の国民の生活を回復させることは難しい。 今後三年間は租税の免除を行い、国民の負担を軽くすること。旧北条氏の所領のような没収地に新たに補任した地頭なども租税を免除し、その祭祀及び服御等の費用は、別の豊かな土地を選び、それに従事する人々に充てること。 三年の間は、宮殿・寺社等の造営を止め、贅沢は一切止めること。このように、宮殿を質素にし、国民を豊かにして、仁徳天皇の仁政の遺風に追従し、礼節を重んじ、世の中を正しくして、醍醐天皇の政道に帰れば、何もしなくても国内は治まり、征伐することなく遠方の地域も服従するだろう。 |
| 注) | 1.三年間課役を免じて、民生を豊かにしたという仁政の遺風 |
| 2.公家政治の理想像とみられていた醍醐天皇の政道。後醍醐天皇、足利直義によっても延喜・天暦への賛美が行われていた。 |
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