自動車塗装の自分史とSL蒸気機関車写真展〜田辺幸男のhp
SL写真展 ( INDEX )〜アメリカ & 日本現役

|  HOME  | SL写真展 ( INJEX )  | 田辺のリンク集 |
(メールは上の  SL写真展 ( INJEX )  にある送付先へドウゾ。)

…………………………………………………………………………………………………

・「カリフォルニア鉄道博覧会:1981年・サクラメント市」

088.  「“くろがねの馬”の唄のページェント」
(UP
844+SP 4448・1981サクラメント鉄道博覧会)

〈0001:〉
UP ♯844+SP ♯4448

…………………………………………………………………………………………………
〈紀行文〉
 ハリウッドの俳優稼業からカリフォルニア州知事、そしてアメリカ大統領となったレーガンさんの業績は沢山あるのだろうが、私がアメリカに滞在していた1980年代の始め頃に最も強く記憶しているのが次の二つの功績であり、何れも知事時代の布石であった。その第一は今では日本でも常識となっている“バラメリック制度”であり、救急活動の中で医師ではない救急隊員が最小必要限の医療を行うことができるとする制度で、心臓が停止した後でも、5分以内に適正処置が行われた場合の救命率が格段に高まるというものである。この制度を遂行するためにベトナムで活躍した看護兵らの協力を得て、救急隊員の中に特別訓練を受けたエキスパートを配置すると云う施策を推進することにレーガンさんは力を尽くしたと云うのだ。その頃東京都がこれを見習って採用を試みていたからであった。
その第二が、1981年に州都サクラメントに開館した“カリフォルニア州立”鉄道博物館の生みの親がレーガンさんだと云うことであった。しかし、官立を尊ぶことの少ないアメリカで、敢えて“州立で、しかも州都のサクラメントに建設するに至った理由は一体何んだったのかと云うのが私の極めて興味深い疑問だった。
さて、サンフランシスコから河を遡った内陸、その平野の中央に位置するサクラメントは1848年に、この河の上流で発見された砂金が引金となって「カリフォルニア・ゴールドラッシュ」が実現した。このゴールドラッシュの中心街として発展したのがサクラメントなのであった。
その後、1859年には東部の鉄道網がミズーリ川を越えてネブラスカ州オマハまで到達していて、さらに西部開拓が進む中、この鉄道の西海岸までの延伸を求める声が高まり、ロビー活動が展開された。一方サクラメントでも同様な機運が高まりつつあって太平洋鉄道会議が組織され矢張り連邦政府に働き掛け始めていた。それらに対して時のリンカーン大統領の英断がなされ、1862年に太平洋鉄道法が発布された。この背景には、当時南北戦争など分離主義の高まりもあり、広大なアメリカの連邦としての統合を維持すると云う政治的側面が強かったのであろう。当時は大西洋岸の東部とカリフォルニア州を駅馬車で1か月余をかけ、辛うじて連絡していたものを数本の鉄道の敷設によって、短時間約(85時間位か)で連絡ができるようにするための大号令であった。これにより、国策会社として、オマハから西に建設を行うユニオン・パシフィック鉄道(UP)と、サクラメントから東へ建設を進めるセントラル・パシフィック鉄道(CP)とが設立され建設競争が始まった。着工から6年後、UPは1,749 km(1,087マイル)、CPは1,110 km(690マイル)の線路を敷設し、線路は遂にユタ準州のプロモントリーサミットに達した。そして、1869年5月にはサミットで開通記念式典が開催され、最初の大陸横断鉄道が完成した。1872年には日本の岩倉使節団もこのルートの乗客となったと云う。
このようにして、鉄道の西の起点がサクラメントであった。そこで,この古い歴史的な町並を復元して保存しようという計画は、既に1970年に進行中であったと言われる。
この広大な北アメリカ大陸が、一つの国家として確固たる礎を築いた、そのことに大きな役割を果した鉄道の歴史、すなわち建国の一つの側面とも云える歴史を後世に伝えるのに、最も適当な場所がサクラメントであることの意義から、そのための説得力のある展示を目標に、州立鉄道博物館を創設することがレーガン知事にに陳情されたのだと云う。
その後、10年の歳月と2億ドルの費用、各企業からの歴史的な鉄道車両の献納、それに加うるに多くのボランティア活動の結果、1981年に、 RAIL FAIR(鉄道博覧会) の開催と同時にカリフォルニア州立鉄道博物館としてオープンしたのである。
このRAIL FAIR には,アメリカ西部の機関車に加えて、遠くイギリスのヨーク鉄道博物館から“ロケット号”、東部のB&O鉄道博物館からアメリカ初の国産SL“親指トム号”などが出品走行した。
そんな中で,何と言っても華々しい演出で注目を浴びたのが“くろがねの馬の歌のページェント"新装なった博物館の屋外に設けられたターンテーブル前に特設された舞台で、華やかに歌の祭典が繰り広げられたのであった。
その中での白眉は1869年5月10日に挙行された大陸横断鉄道の開通記念式典の模様を再現した一幕であって、当時準州であったユタ州のプロモントリー サミットでは、西から建設して来たCPの線路と、東から西進して来たUPの線路が記念の「金の犬釘(ゴールデン・スパイク)」を打ち込むことで接続開通し、双方向から東西を代表する蒸気機関車が登場して連結すると云う演出なのであったようだ。
その再現には、大陸横断鉄道建設を成し遂げたUPと、CPの後身であるSP(サザン・パシフィック鉄道)のそれぞれの特急旅客用蒸気機関車が東西から登場し、美事に連結すると云うRAIL FAIR にふさわしい凝った演出で、多くの観衆の喝采で沸かせたのである。いかにもヤンキー気質丸出しの情景ではあるが、そんな中にもフロンティア精神が力強く脈動しているのが、快く感じられたものである。
私も観客の一人として臨んでいたため、その場面の写真はアングルが得られなかったが、出演を終わって展示位置へ戻る際の一こまを撮影したのがこの一枚である。
ここでホスト役を果たした両SLのプロフィールを紹介しておこう。
SP ♯4448は既に、 『10.SP 4448・ストリームライナー “Daylight”(アメリカ・カリフォルニア州)』 で紹介済みなので、ここではUP ♯8444に焦点を当てて調べた。
  この♯8444は、1944年にup最後の新造蒸気機関車となったノーザン タイプの高速旅客機関車であり、グレー・ツートンのペイントの外装で急客サービスに活躍した。
  それは1869年に開通したネブラスカ州 オマハ(Omaha, Nebraska)からカリフォルニア州 サクラメント(Sacramento, Ca)までの 2,826 km(1,756マイル)の大陸横断ルートはオーヴァーランド・ルート(Overland Route)と呼ばれた。ここを通過する優秀列車は「オーヴァーランド・リミテッド(Overland Limited)」は、1887年にオーヴァーランド・フライヤー (Overland Flyer)として、UPにより運行を開始した。この列車は各鉄道を経由してシカゴ〜サンフランシスコの間を結んだ。例えば1953年の列車編成は寝台車4輌を含めた15輌を♯844が牽引して居たと云う。
旅客サービスがGL化した後は黒塗装一色の外装で1997〜1959ねんはネブラスカで貨物さーびすに従事、1960年の前面無煙化ではスクラップ化を免れた以後は、特別運転用として現役を続けている。その中での伝統的な遠足運転(Excursion)りは Sherman Hillの峠横断を行うCheyenne 〜Laramie( Wyoming州)であることは良く知られている。
それと外観敵には日本のSLに多く採用されているデフレクターが採用されている点はアメリカ型SLの中では異色的存在である。
1999年煙管、火室の損傷で、ワイオミング州で修理中とのことであるが、アメリカのクラスT鉄道における唯一の現役車籍から離れたことのない蒸気機関車として貴重なのであると云う。
UP♯8444の諸元
(元来の♯844が1962年に改番、その後1989年に元に戻る))
クラス:FEF-3
製造:American Locomotive Company
Serial number: 72791
車輪配置:4-8-4(ノーザン・タイプ)
軌間:(1435 mm、標準軌
動輪径: 80 in.
シリンダー径:25 in.
シリンダーストローク: 32 in.
Wheelbase 98 ft. 5 in. (locomotive and tender)
全長:114 ft. 2-5/8 in. Engine & Tender.
Weight on drivers 266,490 lb.
Locomotive weight 486,340 lb.
Locomotive and tender combined weight 907,890 lb.454 tons)(
燃料タイプ :oil, originally coal
テンダー・タイプ: 14-wheeled
Water Capacity: 23,500 gallons
Fuel: 6,200 gallons
Boiler 86-3/16 in. diameter
Boiler pressure 300 psi
Fire grate area 100 ft2 (grate removed in 1945)
Heating surface: Tubes 2,204 ft2
Heating surface: Flues 1,578 ft2
Heating surface: Firebox 442 ft2
Heating surface: Total 4,224 ft2
Superheater area 1,400 ft2
牽引力:3,800 lbf
粘着率:4.18

撮影:1981年
発表:「塗装技術」誌・1991年9月号の「表紙のことば」。

…………………………………………………………………………………………………
・「カリフォルニア鉄道博覧会:1981年・サクラメント市」シリーズのリンク
040. 復活したマレー式SL“チャレンジャー”・アメリカ/UP鉄道
010.ストリームライナー“Daylight”SP4448・カリフォルニア州サクラメント
041. 「クライマックス・ギャード・ロコ」の居る風景・ワシントン州