It lives in a vulgar town.

 

Vol01.Highllams
Vol02.Billy Joel
Vol03.榎木孝明
Vol04.谷口宗一
Vol05.古内東子

Vol06.coffee

Vol4. 谷口宗一

 ツナッキーがお送りする逸品の第2回目は、BAKUでデビューした谷口宗一。今ではSpiralLife、Airの車谷浩司がかろうじてアーティストの面目を保っていますが、宗一のあのがなりたてるボーカルと10代らしい詞世界は大切な想ひで。

1.『生きる』

 今を遡ること13年前。高3の時の事です。太宰じみた考えに獲り付かれるってことありますよね。自分もそうでした。まわりは進路のことであくせくとしてたころ、担任の再三の勧めにもかかわらず、受験も就職活動もまったくしませんでした。教師からはあきれられ、同級生からは思いもよらぬ敬意の眼差しを受けることに…。でもそんな学歴社会を一蹴するとかいう志があったわけではなく、ただ漠然と高校を卒業したら人知れず山の中ででも死にに行こうかなー、なんて思ってたのです。
 卒業後、少ないバイト代とロープなんぞポケットに、夜行になんか乗ってみたりして…。秋田、岩手、青森(なぜかこういう時って北国)を巡って、イッチョマエに自分の死に場所なんか探していたのです。下北を訪れた時、映像プロダクションに勤める女性に出会いました。ニホンザルを取材にきた帰りだとのこと。翌日町場まで電車で行く道中、「生きてりゃいいことあるよ。」と脈絡もなく言われました。旅行の目的なんてこれっぽちも言ってないのに。その一言が帰るきっかけになりました。というよりも何でもいいからきっかけにしたかったのかもしれません。
 しかし家に帰っても梁に紐をかけてみたり、しばらく昼夜逆転の生活を続けていました。でも結局、どの程度本気だったのかと今になって思います。そんな生活が「恥」とやはり心の隅で感じていたんでしょう。半年後には予備校に通い始めたんです。
 

 予備校に行きだして半月も経っていませんでした。同級生が自殺したって連絡がありました。オレが2年間好きだったヤツです。一緒に文化祭の企画したり、別々のバンドで活躍したり。
 高3の冬休み手紙を出しちゃったんです。好きですなんて直接的なことは書きませんでした。ただ2年間一緒のクラスになれて良かったって。でもそれでギクシャクしちゃって3学期一言も口を利かないまま卒業しちゃったんですね……。そいつが死んじゃったんです。理由は人づてに受験勉強に疲れたとか、失恋したとか聞きました。とてもじゃないけどそいつにも、同級生にも後ろめたくて最後まで見送れませんでした。だってそいつが亡くなる前日、別の同級生と会っていたんだけど、オレ、そいつんとこに電話してみようかなぁ、って考えたんです。でもそんな義理じゃないなって思ってできませんでした。
 
 しばらく、ずーと、ずーと頭を離れませんでした。仲がいいまま友達として卒業してれば…。あん時電話してれば、そうすればあいつの友人たちはあんなに悲しまずに済んだのにって…。
 そんな思いを抱えたまま二十歳を過ぎて、ある日ラジオから聴こえてきたのは、けっしていい声じゃないけど、懸命に歌う声。♪OK! 暗中飛躍♪ だって。BAKUだなんてふざけた名前のバンド。でも興味が湧いてこの『O.K.』が入ってるアルバムを買ってみました。『生きる』って曲名。「命」だの「死」だのが歌詞に多いなぁ。なんか訳ありのバンド? そしたらメンバーの一人が亡くなってたってことを知りました。オレよりちょっと年下の連中が、友達の死を悼んで歌ってるのをすごく応援したい気持ちになりました。

2.『太陽の君 三日月の僕』

 結局、BAKUもデビュー後2年程で解散しちゃうんだけど、ギターの車谷浩司は「渋谷系」ともてはやされたSpiralLife結成。ボーカルの谷口宗一はソロ活動へ。永遠に会えなくなったもの同士を太陽と月に喩えた楽曲でオレの気持ちを掴んで離さず。それに谷口宗一のこと好きになっちゃったし。小っこくて、ちょい丸で、タレまゆ。そのオレが2年間好きだったヤツも小っさいけど体格良くて、タレ目、八重歯。なくなったものの代償として、谷口宗一ほど適確な人物はいなかったかもしれません。
 

3.故郷に戻る

 その後彼は深夜のドラマに顔を出したり、バックを海外のミュージシャンにやってもらったりしたけど、2、3年でアルバムも発表されなくなり目立った音楽活動もなくなりました。
 そんな谷口宗一は、元吉本芸人で後に路上の詩人となった男と映画を創ると言い出したり、これまた元CCBのメンバーとTripWhiteHornetなるバンドを結成したりと地道に活動していましたが陽のめを見ず。オレ自身は10年の時が亡くなった友人と実生活との折り合いをつけてくれ、BAKUや谷口宗一のCDもラックに眠ることとなりました。
 

 でも再会は思わぬところからやってきました。オレは仕事の都合で栃木に行きましたが、栃木は谷口宗一にとって生まれ故郷であったのです。そう彼は栃木テレビで週1回『ジャガジャガジャガランタ』なる音楽番組の司会をはじめていたのです。ここで再会できるとは思ってもみませんでした。オレもそうだけど、谷口宗一もいいおとなになっていました。というか、いい年をしてマユを剃ったりなんかしている宗一はちょっと悲しかった。さらにおそらくTripWhiteHornetの曲だと思うのですが、そのビデオクリップがただ(これもまたおそらく)宇都宮の住宅街を早回しで映しているだけという有様で、さらに悲しさが加速しました。あんなに好きだったのに。BAKU時代もソロに移行してからのもCD全部持ってるのに。解散のときのシングル3枚組みや、ライブCDだってもってるのに……。

4.それでも

 オレの高校時代の思い出と、人を亡くした気持ちがいつまでも大切なように、あの時の、当時のBAKUや谷口宗一も大切なのです。CDはしまっておいていいけど、捨ててはいけないのです。捨てられないのです。今でも色あせない、そして宗一の秀作だと思う曲、アルバムsweet little heavenにおさめられている『スーパーマーケット』今日はこの曲を聴きながらお別れしましょう。では、また。
 

 追伸:忘れてはいけない、このsweet little heaven。アレンジャーはこれまた私が好きだった川村かおりに楽曲を提供していた高橋研。オレが好きになるとみんなポシャるのか?

 

復活可能度:★☆☆☆☆
うらぶれ度:★★★★☆
昔とった杵柄度:★★★★☆
AM度:★☆☆☆☆
J‐WAVE度:☆☆☆☆☆

ゲイ度:☆☆☆☆☆
ゲイ好み度:★☆☆☆☆
中古CD度:★★★☆☆
地域密着度:★★★★☆
オレ応援度:★★★★★

Copyright (C) 2000-2002 FancyOnline