専門医について

☆専門医とは?


 厚生労働省は2002年、一定の基準を満たした学会の専門医資格であれば、病院の看板や電話帳で広告できるよう制度を改正しました。


 2005年3月現在、41学会が広告を認められており、患者にとって、医師選びの目安の一つになっています。


 学会が認定する専門医制度は、1963年に日本麻酔科学会が創設したのが始まりです。


 学会によって「専門医」や「認定医」などと呼び方は異なり、厚生労働省研究班の調査によると、03年末の段階で何らかの認定制度を持つのは計123学会に上ります。




☆専門医の認定基準とは?


 認定基準は学会ごとにバラバラですが、大半は指定の施設で実務経験を積み、学会への出席回数などによって認定試験の受験資格を得られます。


 実技試験を行う学会は少なく、中には会員のほとんどが専門医という学会もあります。


 治療実績などは関係無いことが多いので、専門医=名医、といった考え方は明らかに誤っています。


 結局のところ、専門医自体は国家資格ではないので、専門医たちがお互いを仲間として認めるための勲章のようなものと考えてよいでしょう。


 私も某学会の認定資格を持っていますが、実はこの学会へは参加したことはありません。


 セミナーの申込金を支払った後、キャンセルしたのです。


 申込金は戻ってこなかったのですが、そのかわりに学会メンバーに登録されたようで、しばらくしたら知らぬまに認定医となっていました。


 この例は、かなりいい加減な認定基準なのだと思いますが、他の学会も信用しすぎるべきではないと思います。


 同様の感じで、博士号などもこれと似た制度と言えるでしょう。




☆専門の中の専門


 専門家と呼ばれる多くの人は、その専門の中の専門というものを持っています。


 しかし、専門家だからといって、その全てを知っていると思ったら間違いです。


 非常に詳しい部分もあるし、全然知らない部分もあるのが常なのです。


 例えば医師の専門分野は数多くありますが、そのことを考えてみてください。


 全ての専門分野を把握している医師などは皆無であることが想像できるでしょう。


 ところが、歯科医師は専門分野が比較的小さく、知らないことがあると恥ずかしいとか思うためなのか、意外と知ったかぶりをして、適当なことを言うケースも多いのです。


 当然ながら、知らないことは知らないと、きちんと言ってくれる先生の方が信用はできると思います。


 知らない時は知らないなりに、その状況に応じた解決法を探してくれる場合が多いのです。


 だから専門家にモノを尋ねる時は、知識や技術の有無よりも、性格のいい専門家に聞くと、最終的に納得できる確率が上がると思います。




☆専門家は理想論を語ることが多い


 専門家というものは、明らかに特殊な人々です。


 その専門家の中でも、より多くの勉強をした人たちというものは、より特殊になっていく傾向があります。


 勉強を繰り返していき、ある部分での自分のレベルが高度になっていくにしたがって、そのレベルに達していないものや、勉強していないその他の理論などを否定し始めることが多くなっていきます。


 確かにレベルアップは重要で、それ自体は悪いことではないのですが、勉強した分野にのみこだわりが出てくるというのが曲者です。


 そのうち、自分の理想論を正当化するために、他の理論や方法を否定し始めることさえあります。


 専門医に限らず、多くの人たちに共通することですが、自分の得意分野のことが話題になれば、妙なこだわりが出ると思います。


 しかし、興味のない人たちから見れば、だからなーに?みたいな感じになるわけです。


 確かにその人にとっての理想論なのかもしれませんが、相手が求めていない部分にまで、自分の理論を押し付け、他の方法を否定しすぎるのはどうかとも思います。


 世の中というものには平均値というものがあり、ある部分だけが妙に突出していてもバランスが取れません。


 車に興味がない人に、注文販売の高級車を買うように薦めるのと似ているかもしれません。


 他の理論を否定しすぎていると、何かトラブルがあった時に、他の場所では治せないことにもなります。


 その人の理想の治療を求めて、はるばる遠くからやってくるような人に対処するのならまだわかるのですが、普段かかわっていない患者さんにまで自分の理想論を押し付けようとする必要があるのかは、甚だ疑問です。


 特定の専門家にとっての理想の治療ができる人はごくわずかであり、その理想の治療法ができる先生は、この世に1%以下しかいない、などと言われたら、どう思うでしょうか?


 大多数の患者さんが、理想と違う治療を受けていることになってしまいます。


 必ずしも「特定の専門家にとっての理想の治療=ベスト」な治療法であるとは限りません。


 ですから、医師というものは一つの治療法ばかりにこだわるのではなく、視野を広く持ち、何パターンもの治療法の情報を提供することも重要かと思います。


 理想論を語る医師は、自己満足のための治療をしていることが多くあります。


 理想の治療法を決めるのは、あくまでも患者さん自身であり、医師ではありません。


 患者さんが満足していれば、それこそが理想の治療法なのです。