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更新日 2020-02-16 | 作成日 2020-02-16

歯科治療の多くは再治療である



☆口腔内は不潔域


 口腔内という場所は、体の中でも最も不潔な場所と言われていて、実は細菌が大量に存在しています。


 しかし、体に悪い菌だけではなく、体に良い菌も存在しているため、全てを滅菌する訳にはいきません。


 そのため、体に悪いとされる虫歯菌や歯周病菌に対しては、排除や、行動抑制が必要になってくるのです。




☆歯科治療をしても全治するものは少ない


 歯科の知識が少ない人に多いのですが、『歯科治療が終了すること=全治』と捉えている人がいます。


 しかし、歯科治療で目指しているものとは、あくまでも『咬合機能の回復』です。


 間違っても『全治』を目指しているものではありません。


 ただ単に、厚生労働省が医療保険のルールの中で、便宜的に『治癒』という呼称を使用しているため、歯科医師がそれに合わせて使用しているに過ぎません。


 一度削ったり、抜いたりしてしまった歯は、元には戻らないのです。


 多少の例外はありますが、歯科治療で『全治』することがあるのは、軽度の歯周炎等の軟組織疾患等です。




☆一度治療した歯は虫歯になりやすい


 一度も治療痕のない歯が虫歯になることは、生涯一度きりです。


 同じ歯が虫歯になる場合の多くは、二次ウ蝕(二次的な虫歯)という状態です。


 同じ歯の反対側など、同じ歯の別の場所が虫歯になることもありますが、歯としては初期の治療時には問題が無かった訳ですので、結果としては再治療ということになります。


 なぜ、治療した歯が再び虫歯になるのかというと、様々な理由はありますが、『元々虫歯になりやすかった歯であるから』という理由が挙げられます。


 上手にケアができていて、虫歯になりにくくしてある状態の歯ならば、そもそも最初の虫歯ができないなずです。


 虫歯ができてしまうような、ケアがしにくい場所であるから、再び虫歯になりやすいのであると言えます。


 体の他の部分だって、一度怪我をすると、同じ場所を傷めやすくなることと、似たような感じかもしれません。




☆歯科治療の多くは再治療である


 若くて知識の無い頃には気づかないことが多いのですが、歯科治療の多くは再治療です。


 前項でも述べた通り、口腔内は不潔域であることもあり、虫歯は再発しやすいものです。


 どんなに完璧と思えるような治療をしたとしても、歯が存在する限りは虫歯が進行する可能性を秘めています。


 「とりあえず(金属などを)外してみますね。」などという台詞をどれだけ聞いたことがありますか?


 技術的に自信を持っていて、同業者から見ても、治療をさせると確かに上手と言える歯科医師であっても、いつかどこかで改めて虫歯になってしまうケースが多いのです。


 風邪をひきやすい体質の人は、治ったとしてもまた風邪をひく確率は高いですよね。


 それはともかく、歯に関して予後が特に悪くなるのは、神経を取った(抜髄)後です。


 唾液が入りにくくする治療法(ラバーダム防湿)を推奨していて、さらに根菅内の細菌検査(細菌培養検査)まで行い、神経の治療(根菅治療)に対して自信や技術を持っている歯科医師でさえ、定期的な再治療が予想され、事実再発が頻繁に起こっていることを黙認しています。


 そして、再治療を何度も繰り返した後、もう無理だから抜歯しましょう、みたいな結論に至る訳です。




☆再治療を予期した治療法


 様々な意見はあるかと思いますが、結果として『歯科治療の多くは再治療である』という事実は覆しようがありません。


 ならば、再治療を見越した治療をしてみるのはどうでしょうか?


 ただし、医療保険ではそういった趣旨の治療法を認めていません。


 厚生労働省が歯科業界に求めているものは、あくまでも『治癒』であり、経過観察ではありません。


 検察官や裁判官でさえ、『全治するはずのない傷病』に対して『全治何ヶ月』というような認識を持っています。


 ですから、多くの歯科医師は法律に従い、毎度毎度、『全治』を目指し、二度と治療はしないつもりで治療を進めるのです。


 結果として、金属冠等で除去しにくいケースがあるのは、その典型と言えるでしょう。


 患者さん自身も直ぐ外れるような治療をされると、ヤブ医者扱いすることが多いのではないでしょうか?


 しかし、個人的には、『直ぐ外れる』ではなくて、ケースによっては、『直ぐ外せる』治療というものも存在してよいと思っています。


 いつかどこかで再治療の可能性があるならば、直ぐに外せる治療をしておくことによって、次回の治療時に歯を削る面積が少なくて済んだりします。


 ただ、前述したように、法律や、患者さんのデンタルIQの壁というものも存在するので、なかなか対応できないケースも多いのです。


 ルールを遵守した医療保険の範囲内で全てを治療していると、再治療の時に失う天然歯質は、間違いなく増えてしまうという現状があります。


 疑問を感じながら、日々の治療を行っている保険医(申請することにより、医療保険での治療ができる医師)も少なくないと思います。