虫歯の治療は左右同時には行うべきではない
医療保険とは、いわゆる保険治療を行う際のルールブックですが、治療する虫歯の本数に関しては、あまり制約はありません。
例えば、一気に10本の歯をまとめて治療したとしてもあまり制限されません。
しかし通院が面倒だからといって、治療を一気に行うのは得策ではありません。
特に、左右の歯を同時に治療することは、一生後悔することにもなりかねない重要なファクターなのです。
単純に考えてみても、左右同時に治療した場合、治療している期間に物を噛む場所が少なくなり、噛むことに困ることが多くなるのは想像できると思います。
しかし同時治療の恐ろしい理由は別のところにあります。
その最大の理由とは「正しいかみ合わせの位置がわからなくなる恐れがある」ということです。
例えば、左側しか治療していなければ、かみ合わせの調整を行った後、右側がかみ合っていれば元のかみ合わせを復元できた、ということになります。
ところが、左右の歯を同時に削って治療していた場合、両側とも削っているので、どちらの歯を削れば元のかみ合わせに戻るのかが、全くわからなくなってしまい、基準の位置がわからなってしまうことがあるのです。
人間の感覚とはかなり敏感で、歯の隙間に物がはさまっただけでも、すごく違和感があるのは皆さんご存知の通りです。
そのような感覚がずっと続くようになってしまう、怖いと思いませんか?
時間のない人たちが集まるような都心部の歯科医院では、まとめて治療してしまうことがよくあります。
治療が早く終わったと喜ぶ人も多いようですが、治療後に正しいかみ合わせがわからなくなってしまい、ノイローゼになってしまった方を私は数人診ています。
もし、このような状態になってしまうと、微調整を繰り返していく方法くらいでしか、なかなか治せないのです。
少しの時間を惜しんだために、いつ治るかわからない状態に陥ってしまっている人もいるのです。
だから、できるだけ左右の歯は同時に治療するべきではありません。
患者さんの将来を考えてくれている歯科医師ならば、むやみに左右の歯をいじらないはずです。
いくら通院が面倒でも、ほんの数日、数時間の通院を無くすために、そこまでのリスクを背負うべきではないとは思いませんか?