根尖病巣について



☆根尖病巣とは?


 抜髄をした(神経を取った)歯に再び虫歯菌が押し寄せてきた場合、歯はどのような反応をするのでしょう?


 前にも述べている通り、抜髄した歯には、歯の最大の防御修復機構である血液が流れていません。


 したがって、抜髄してしまった歯の内部は、全く無防備な状態になってしまっているとも言えます。


 ですから、歯を上手に磨けているうちはいいのですが、少しでも歯の内部に細菌が入ってくると、もう抵抗する術がなくなってしまうのです。


 しかし、抜髄した際には、「神経を取る」という俗語が存在しているように感覚器官も除去しているので、当面は痛みが出ることはありません。


 痛みが出始めるのは、細菌が歯の内部(歯髄が存在していた場所=根管)を通り抜けて、歯の外側である根尖部分に到達してからなのです。


 根尖に溢れ出す細菌の量が多くなってくると、徐々に根尖部を圧迫するようになります。


 痛みが出る可能性があるのはこのあたりからですが、程度が軽い時はそれほど違和感がない場合もよくあります。


 根尖がこのようになってしまった状態を、一般に根尖病巣がある状態と言います。


 さらに状況が進んでくるとどうなるのでしょうか?


 抜髄する際には、根尖部で歯髄を切断しているので、当然その先の部分には血液が流れています。


 ですから、根尖病巣ができてくると、生体の防御作用として細菌と白血球の戦いが起こるのです。


 この炎症反応の際にできた白血球の死骸などを総称して膿と呼びます。


 この膿が多くなってくると徐々に圧迫が強くなり、根尖に痛みを感じるようになるわけです。


 抜髄した歯が激痛になるのは、ほとんどがこのケースです。


 神経を取ったのに何で痛いのだろう?などと疑問に思ったことはないですか?




☆根尖性歯周炎とは?


 根尖病巣に対する体の炎症を、根尖性歯周炎と呼びますが、歯周炎と名がついている通り、これは明らかな軟組織疾患です。


 歯の本体が欠けていくというような、通常の虫歯というものは明らかに硬組織疾患なのですが、歯髄というものは軟組織です。


 これが根尖部を通じ、体の深層まで繋がっています。


 ですから、歯の治療というものは、抜髄処置を始めた時から、軟組織疾患の治療なのです。


 表層部に近い軟組織ならば、直に手がつけられるので比較的治癒しやすいのですが、根尖性歯周炎の場合、歯の本体が邪魔になってしまい、なかなか治療ができません。


 しかも、何度も治療を繰り返す度に状況が悪くなっていき、結果として抜歯になるケースも数多くあります。


 歯髄を除去するとこのような過程を辿る確率が格段に上昇することは、抜髄する時からわかっていることです。


 だから、根尖性歯周炎にならないようにするためにも、表層部に一番近い軟組織である歯髄を、簡単に除去すべきではないと思います。




☆根尖病巣は古傷のようなもの


 歯の根尖病巣というものは、歯の深層部にできるものなので、一度できてしまうと痕跡ができてしまい、治療を繰り返したとしても二度と万全にはなりません。


 古傷みたいなものと考えるとわかりやすいかもしれません。


 古傷というものは、傷の痕跡が残っている場所なので、万全な部位と比べると多少抵抗力が劣っていることは直ぐに理解できると思います。


 ですから、そのような場所は、体が元気な時には問題なく過ごせていても、風邪をひいた時や、寝不足などで疲れが溜まった時など、様々な理由で体の抵抗力が落ちた時には、結果として丈夫な部分よりも先に、痛みが発現しやすくなるのです。


 抗生物質などの薬の力を借りて、抵抗力を上げるのも治療法の一つですが、何も処置しなくても、良く寝たら治った、なんていう場合もあるのです。


 どうしても完治させたいという場合は、原因部分の除去、すなわち抜歯という選択肢が出てくるのですが、古傷だと思えば、多少は我慢できるかもしれません。


 言い過ぎな例えかとは思いますが、足の古傷が痛むから足を切断してくれ、と言う人はなかなかいないでしょう?


 それはともかく、病気というものは、痛む理由がわかっていることが重要なのです。


 理由のわからない痛みほど不安なものはないと思います。