抜髄について



☆抜髄とは?


 虫歯が進行するなどして痛みが出てくると、やむを得ず抜髄する(神経を取る)ことが必要になることがあります。


 抜髄(ばつずい)とは歯の中心にある歯髄(歯の骨髄)を取り除くことを言います。


 いわゆる”神経を取る”ことを専門的に表現すると”抜髄する”ということになります。


 歯の本体には、歯根の先端部分から、痛みを感じる知覚神経だけでなく、栄養補給や細菌を退治する役目などがある血液も一緒に通っています。


 したがって、抜髄に際しては、知覚神経ばかりでなく血管も同時に取ってしまいますから、歯は圧倒的に脆くなります。


 歯髄のある歯とない歯の違いは、生きた木と枯れ木との違いを思い浮かべれば、わかりやすいかと思います。


 生きた木は常に栄養が補給されていますが、枯れ木は二度と栄養が補給されなくなるので、乾燥し折れやすくなったりするのがわかるでしょう?




☆抜髄後の根管治療


 歯髄は部品ではないので、直ぐに完全に取れるものではありません。


 したがって、何度かに分けて、虫歯菌に侵された歯の内部の消毒をしていくことになります。


 歯髄が壊死したりしていなかった状態ならば、歯の内部は抜髄をする前まで、歯髄の中を通る血液によって、24時間年中無休で消毒されていました。


 しかし、抜髄後は歯科医師の手によって消毒を行います。


 そのため、当然数回の消毒作業が必要となります。歯の内部に入れる薬には作用時間があります。


 薬の効力がある期間は限られています。


 薬の効力が無くなると、逆に歯の内部が細菌の住みかになってしまい、治療前以上に状態が悪化することもあるのです。


 歯の内部の治療のことを総称して『根管治療』(略して『根治』)と言うのですが、根管治療前と治療後にはそれほど劇的な目に見える変化が無いため、毎回同じことをやっていて治療が進まない、と勘違いする方もいます。


 しかし前述したように、元々は24時間年中無休で消毒されていた部分を、歯科医師の手によって消毒しているので、一度や二度では消毒できません。


 治療の度に、少しずつ綺麗になっていくのです。


 また、歯の根管の形や状態によって時間がかかったり、治療回数が多くなったりする場合があります。






☆抜髄する前に気をつけること


 ズキズキした自発痛がある場合、温熱に痛みを感じる場合(冷熱の時に比べて予後が悪い)や、歯に歯髄が外から見えるほどの大きな穴があいている場合などには、止むを得ず抜髄処置を行うことが多くなります。


 また、抜髄をする際には、歯の本体を大きく削ることになってしまうケースが多いため、抜髄後の治療方法までしっかり確認しておかないと、思わぬ出費を要求されてしまうこともあります。


 歯を削ってしまい、元には戻れなくなってしまった後で、「保険の効く銀歯にしますか?値段の高い白い歯にしますか?」と言われ、あまりの値段の違いに驚き「値段は妥当なんですか?」などと、インターネットなどで相談している人をよく見かけます。


 抜髄する前からこうなることはわかっているにもかかわらず、戻れない状態にしておいてから選択をせまる方法は、方法としていかがなものかと思いますが、この手法を疑問に思っていない歯科医師が大勢いるのも事実です。


 ですから、抜髄を決定するには慎重な診査や、納得できる歯科医師の説明を受けておくことが重要です。