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        黄てい鍼問答



 以下も問答は、ツボ研のホームページ開設いらい、福山の京都人さんと私の間で行われたこの掲示板上でのやりとりです。
本文で説明不足の点、分かりにくい点を実に鋭く、適切の取り上げていただき、多くの方の役にたつのではと思われ、読みやすい形にまとめたものです。


先生のHP表紙に記載された文の中程ですが

>従来の難経流の治法に使えば、12経の虚実を正確に把握する事ができます。(中略)
>(全身的治療が適応する疾患) はどう処置するのでしょう。。
>前述のように足の陰経をてい鍼で探って(後略)と有ります。

そこで
@この例の場合、黄帝鍼で探る場所は「慢性病だから、陰経のみを探ればOK」と
 考えても宜しいのでしょうか?
A愁訴を訴える部位は多いが 症状自体は急性期のモノを含む場合は
 陰経と陽経全てを探れば良いのでしょうか?





一般論としては、慢性疾患の場合は、陽虚即ち激しい症状をもたらす体力はもはやなくなっているケースが多いと思います。このようなケースでは、私の場合特に陰経を徹底して補うことをいたしております。

 黄帝鍼で各経を探っていきますと、陰経のなかでも特に足の陰経がそれも同じ経でも左右同じではなく、どちらかがより問題であることがはっきり分かります。その後も、要穴を器械的に使うのでなく、どの要穴が最も有効かは黄帝鍼が教えてくれると思います。今までとは違うと思いますのでなれるまでとまどわれることも多いと思いますが是非やってみてください。



 このようなケースも多いと思いますが、基本は前のケースと同様に考えてよいと思います。ということは陽経については特にチェックの必要はないと考えています。局所的な症状にかなりキツイものを持っている場合は、当然この局所的な処置に重点をおくのは重要だと思います。

 患者さんにとってはこの局所の症状こそが病気であり辛いわけですから、これをきれいに取ることが治療としては窮めて重要です。ここで黄帝鍼による取穴が威力を発揮すると考えております。 教科書的には不適応とされている炎症などの急性期的な症状の局所でも劇的な効果を表します。ぜひ追試をお願いいたします。

 説明が分かりにくい点もあるかと思いますが、ご不明の点はまたご質問いただきたいと思います。






>このようなケースでは、私の場合特に陰経を徹底して補うことをいたしております。
>黄帝鍼で各経を探っていきますと、陰経のなかでも特に足の陰経が
>それも同じ経でも左右同じではなく、どちらかがより問題であることが
>はっきり分かります。

このことに付いてです  基礎のキソの話なので恐縮ですが…

愁訴の発生は、臓腑が寒熱を受け、経絡に波及して起こるモノ…でしたですね?
基本証は肝(血)虚・脾(気・血・津液)虚・肺(気)虚・腎(津液)虚の4つで
その内 足に在る経は 木・土・水の3経で 金は手にのみ有ります…

先生に戴いた御回答は「陰経をメインに治療するのが基本」は納得なのですが
陰経のなかでも特に足の陰経を重視される理由をお聞きしたいなと…
さらに金と火の陰には どう対応して上げれば良いのでしょうか?

それは「手の陰経も診るけど 足に重点を置くんだよ」と考えれば宜しいでしょうか?
あるいは
「手の陰経は 金と火だから
  ・金は気を主催するが、気が大きく影響するのは初期症状だし 鍼灸にくる
   患者さんは多くが血が影響する慢性期だから、あまり必要無い。
  ・火については木土金水の共同作業で生まれて来るモノだから
   火自体診るより それら4つを診る方が火の調整には必要で 充分条件。
 そう発想すれば、足だけ見ておけば良いし
 金を診るなら例えば土中の金穴 火を診るなら木中の火穴で十分対応出来る」
との考えが浮かぶのですが これで宜しいでしょうか?




 まことにごもっともなご指摘、一般論としては井口様のおっしゃるとうりだと思います、特に黄帝鍼をお使いいただくと手足の全陰経のチェックもすぐできますので手の陰経のチェックもやった方がベターかもしれません。

 私も最初はそのようにやっておりました、しかしやっていくうちに同じ虚でも手足ではそのレベルが違うことを黄帝鍼が教えてくれました。
さらに誤解を恐れずに言えば、足だけ使えば日常の臨床には何の不自由もないという事まで考えるようになりました。

だんだん横着になり、症状から金 火 の変動が考えられる時以外はほとんど
手は診なくなってしまったようです。



 実に素晴らしい発想だと思います、私は長いこと患者さんの体だけ診てきたものですから、理論的にどのような機序でそうなるかは、よく分かりませんが、少なくとも、現象的にはそのようになるし、説明としては井口さまの説明で良いのではないかと思います。

結論としましては黄帝鍼を使っていただければ、他の診断法より簡単に正確に問題の陰経が発見でき、もし問題が手の陰経にあれば当然その経の治療が必要になってくることは間違いありません。 その後は全く私の経験からくる私見とお考えいただけば良いのではないでしょうか。







1)
> 手の陰経のチェックもやった方がベターかもしれません。
> しかしやっていくうちに同じ虚でも手足ではそのレベルが違う
> 足だけ使えば日常の臨床には何の不自由もないという事まで考えるようになった。

手と足ではレベルが違う… これについてイメージを持てませず、
もう少しだけ 御解説賜れれば有り難いです!

2)
> 症状から金 火 の変動が考えられる時以外はほとんど 手は診なくなってしまった
> 少なくとも、現象的にはそのようになる

「症状から『こりゃあ金っぽいねえ 念の為 足だけでなく手も診ておくか』
 ってな風に 治療を進めて行く或いは足を走行する木・土・水の三経いずれもSTが無い場合次の段階として 手の金・火・相火を診ていく

 臨床の場では 手の経はルーチンで診なくちゃいけないと絶対的な拘りを持たなくっても こんな風に出来るケースが多い」戴いた御説明を言い換えればこんなシーンをイメージしても宜しいのでしょうか?

3)
HPの表紙の「4」で刺絡の選穴について
「三焦経の関衝と大腸経の商陽を新型てい鍼黄帝鍼で診断することにより、
 正確な診断がたてられ、刺絡すべき井穴が的確に選穴できます。」と
お書きになっている事に付いてですが、僕はてっきり 全ての経を擦って
最もST具合の強い経の井穴に施術するのかと思っていたものですから
「こりゃあ 手間が減って助かる」と思ったものの 「でもなぜなの?」については
その理由を自分で見つけられませんでした。
「関衝と商陽がどうなっていれば、どの穴を選ぶ事になるのか?」
「その理論的な根拠は?」の2点について 御解説賜れれば 有り難いです。




感覚を言葉で説明することはなかなか難しいですが、各経を黄帝鍼の丸い球の方で軽擦した時のひっかかり方 重さの感覚は虚の状態が強いほど重く感じるようになります。重篤な疾患においては、しばしば手でてい鍼を引くのが困難な程重く感じることもあります。


そんな感じかと思います。


説明不足で分かりにくい点が多く申し訳ございません。これは、従来比較的
鍼灸がにがてとしてきた疾患例えば喘息 花粉症、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチなどの副交感性の疾患に対して井穴の刺絡で画期的な業績をあげられている浅見鉄男先生のご研究によるものです。

手足の第四指の井穴すなわち三焦経の関衝と胆経のキョウ陰の活用で上記の疾患に著効がえられることは、私も経験いたしております。

その他の疾患はほとんど、交感性の疾患ですからそれぞれに対応する経があるはずで、その経の井穴を使うのが本筋でしょうが、これも私のかってな便法でしょうが、大腸経の商陽と膀胱経の至陰をそれらの代表として使っておりますが、これはあまりお勧めできません。やはり黄帝鍼によるチェックは至って簡単ですから、全てチェックすべきものと考えております。

なお参考文献として浅見鉄男先生の著作を紹介しておきます。
【21世紀の医学 井穴刺絡学 頭部刺絡学】
私のHPの説明不足の点や分かりずらい点は福山の京都人さんだけでなくみなさん共通だと思います。その意味でこれらの説明は他の方の参考にもなると思いますので、この掲示板のやりとりを普通のページにしてアップしたいと思っています。






>>手と足ではレベルが違う… これについて御教授下さい
>軽擦した時のひっかかり方の感覚は虚の状態が強いほど重く感じる

確かに御教授戴いた通りです。
「金虚」「火虚」と思しき患者さんは足にSTが出ず 手のみに出るように感じますが
その場合でも「土虚」「水虚」「木虚」の「ネチャ」っとした感じとは違うような…
はてさて 自己暗示なのか リアルなのか 暫く追試を重ねてみます!

>>HPの表紙の「4」で刺絡の選穴について

【21世紀の医学 井穴刺絡学 頭部刺絡学】をアマゾンで探したのですが廃刊で…
止むを得ず ネットサーフィンで引っ張ってこれた程度の情報を元にしての質問ですから 底が浅いのは お赦し頂くとして…

血の巡りが悪くて申し訳ないです、確認させて頂こうと思うのですが「三焦経の関衝と大腸経の商陽を新型てい鍼黄帝鍼で診断することにより正確な診断がたてられ、刺絡すべき井穴が的確に選穴できます。」の意味についてです。

まず井穴における「ST」とは 井穴で粘るのでしょうか?
それとも腕関節辺りから 井穴に至る経脈上での粘りを判断基準にするのでしょうか?

次に具体的な判定ですが
「商陽」は交感神経の過緊張のモニターと考える一方
「関衝」が副交感神経の過緊張のモニターと考えて

この2穴を比較して 上記STの定義に従って STが出ている方が
・前者であれば交感神経の過緊張状態による疾患だからF5キョウ陰 H5関衝以外の 全井穴をチェックしてあげて問題経を判別するも良し先生の便法を頂戴するなら、大腸経の商陽と膀胱経の至陰をそれらの代表として使うのも またよし

・後者であれば副交感神経の過緊張状態による疾患だからF5キョウ陰 H5関衝に 刺激入力をすればOK  と

こう運用すれば宜しいでしょうか?

さらにその刺激入力の方法ですが 三陵鍼を使うのも良いのですがせっかく黄帝鍼が有る事ですし、元脳神経外科医の長田裕先生が考案した「無痛刺絡」なるテクニックが有る位ですから黄帝鍼で効かない訳はないと思うのですが…

そこで黄帝鍼を使う場合を想定しての質問ですが具体的にはどのようにするべきなのでしょう?
「ぎゃーっ」と叫ぶ位に 井穴を強圧迫するのでしょうか?
それともSTがでている 経脈を軽擦すれば 事足りるのでしょうか?
もっとよく効く「第3の道」が有るのでしょうか?



 まことにごもっともな質問私の説明不足を痛感いたしております。
副交感神経の過緊張のケースでは三焦経にひっかかりでてくる場合が多いように思います。その意味では,井穴だけではなく肘から先の部分も治療部位であることは間違いないと思います。

 しかし、治療経と治療井穴では歴史的にも使われ方が全く違うようです。普通の要穴がゴウ鍼で、井穴は三稜鍼でというのが定番の使われ方だというのはご存知のとうりです。 ただそれでも従来のように症状から使う井穴を帰納するのでなく、さわってチェックできることは黄帝鍼の大きな長所だと思っています。



 それで結構だと思います。さらにより臨床的にいうなら、手足の第4指だけチェックして問題なければ、普通の交感神経緊張性の疾患ですから、特に問題ないと思います。



 気をコントロールする道具としては、自信を持っており、問題の井穴をみつけたら、尖っている方で痛くない程度に、おさえていただけば結構だと思いますが、瀉血には、気をコントロールするのと違った独特の効果の有ることを、古代の医人は気がついていたのではないかと思っております。

ネットでチョッと見ただけでも、いろんな先生が三稜鍼に替わる方法を提案していらっしゃいますが、優劣は私には分かりません。
刺絡には法的な課題と実技的なやっかいさが伴い、できれば避けたいものですが、今のところ私は、重篤な疾患や激しい症状に対するあの独特の効き方に勝る方法はないと思っております。







1)中医学院留学組の先生達が良く仰る「響かせる必要性」の根拠についてです。

・難経七十八難は「不得気、是為十死,不治也」と語っている。 『内経』でも「気至病所」とある。
 つまり、ず〜んっと重い 得気した感覚が、気 が動いた際の感覚でこれ無しに治す事ができないと経典は教えているんだ正直言って「それはちゃうやろ!」と思ってきましたが 悲しいかな
急性、慢性の運動器障害についてなら 臨床の数には自信があってもこれに反論できるだけの、臨床例も理論立ても 僕には有りません…(恥

しかし現実 黄帝鍼を使う事で 症状の改善が有る事は間違いないですし当然無感覚であっても「得気」なされてるから その様な変化が有る筈です。この辺りの論拠は どう考えれば良いのでしょうか?

2)押手についてです

故小里先生は押手について「拇指と示指を重ね合わせたとき林檎を二つに割ってから再び重ね合わせた時の様に拇指と示指の接している面に隙間がないこと」を理想と仰っていたそうですが
これを若い頃聞いた時には 即「こんなモンでけるかあ!」と叫んでしまいました。
勿論今だって出来るわけでは有りません、威張って言える事ではないのですが…
これが出来ない限り、気の集散のコントロールが出来ず、従って「虚実」に対応する「補瀉」の手技にならないと言われるのですが…

この押手の必要性、重要性は 黄帝鍼の運用上 大きく圧し掛かって来る話なのでしょうか? だとすると 今晩から押手の練習を始めないと…(笑

あと先生は実際の臨床の場で 豪鍼をお使いの際に押手の運用でどのような注意をなさっているか 御教え頂ければ 大変有り難いです。




「それはちゃうやろ!」全く私も先生と同感です。もっといえば、得気した感覚を、ずーんと重い感覚だという事じたいに疑問を感じております。反論するための理論立てがないのは私も同様ですが、何の不自由も感じておりません。



「こんなモンでけるかあ!」これもまさに同感です。私も多くの名人、上手といわれる
先輩の手技を見るたびに、こんなもんおれにはできないと思ったものです。
名前は言えませんが、そのような先生の神技をみるたびに鍼灸を仕事にした事を後悔したものです。

 ただ、手技的な名人が、本当に治せるのかどうかはなはだ疑問だと思うに至りました。
鍼灸の実技は如何に美しいかではなく、如何に治るのかということでのみ評価されなければならないと思っています。
だからこそ黄帝鍼による、ツボに対する徹底的なこだわりが、新しい世界を開いてくれると思っています。





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