「あー、ここすごい引っかかる!」「確かにこっちとは違うね!」
数年間、書籍でしか知らなかった経絡というものを、自分の手で確信できたのだから、この驚きは彼らにとっていわば“発見”に値するのだ。
反応に気をよくした私は重ねて言う。
「足の左右、どちらにも鍼を打つ必要はなくて、むしろ治療すべき側だけに鍼を打つほうがバランスをとるには効果的なんです。左右の経を探ってみて、ひっかかりが強い足を選んでみましょう」
受講生達は、パートナーの人が治療ベッドに放りだした足を左右交互にてい鍼で撫でながら神妙な顔をしている。
「どっちかといえばこっちだね」「○○君ははっきり分かるよ、左だよ」「どれどれ?あ、本当だ」とまたもや大騒ぎになる。
ひとしきり騒ぎが収まったところで、私はさらにこう言う。
「じゃあ今度は、その経の中でもどのツボを使ったらいいか調べてみましょう。その経の中で一番ベタっとしたところを見つけるんだよ」
ふんふん、と、みんな熱心にマドラーを動かし続ける。
「あ、ここてい鍼が止まる」「どれどれ?ホントだ!」どの人が探っても、同じポイントでてい鍼が止まることに彼らは感動している。彼らの興奮はよく分かる。それは、私がてい鍼でツボを見つけられることを発見した日の感動そのものだからだ。
「こんなふうにてい鍼でツボを探れば、必ず治療すべきポイントが見つかります。だから、今まで『どうやって治療しようか』と悩んでいた人は、これからはてい鍼を使って治療すればいいんだよ」
とてい鍼をかざしながら言うと、彼らの目が輝き始める。今後の治療に、一筋の光を見いだした、とでも言いたげだ。
後日、ある受講生さんがわざわざ私に報告しにきてくれた。
「先生、てい鍼でツボを探る方法を教えてくださってありがとうございました。
私は趣味でママさんバレーをやっているのですが、突き指や捻挫などのケガをした選手が出たとき、あるいは風邪を引いたという選手から『鍼灸を勉強しているんだから鍼で治してよ』と言われるのですが、どうしたらよいか分からず、いつも下を向いて『ごめんね』と謝るしかありませんでした。かえって悪くしたらどうしようと思うと心配で、うかつに手が出せなかったのです。
でも、先生にてい鍼を教わってから鍼が打てるようになりました。自分でもびっくりするほど効果が出て、仲間達に喜ばれています」とのことだった。
まさに、万人に使える治療システムが完成したのを確信できて嬉しかった。
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