日高山脈博物館 岩石地質講座 上級 第1回 / 日高の地質観察会 参加

日時:2014/10/19 10:00〜15:00


去る2014/10/19(日)、日高山脈博物館の岩石地質講座の地質観察会に参加してきました。今年も蛇紋岩地域を観察しました。

今回は日高町のお隣り町、平取町に足を延ばしました。平取町にも日高町に似た蛇紋岩の大きな岩体があります。そこを訪れました。

日東鉱山付近は色々な石を見れる

日東鉱山跡地
日東鉱山跡地には上記写真のように依然大きなズリが残っています。日東鉱山は当時、北海道のクローム鉱山の中では大きい鉱山の一つで、戦前に栄えた鉱山です。1960年まで稼業していたので閉山後半世紀以上経ちます。ズリは大きく残りますが、他の産業遺跡的痕跡は、選鉱場らしきコンクリート基礎、沢沿いにトロッコレールや坑木の残骸と石垣を残すのみです。鉱山街は植林されほぼ痕跡なしに見えます。
日東鉱山については、本ホームページ内の日東鉱山探訪記にも記載しています。
日東鉱山付近で見られる岩石鉱物
鉱山跡地には超塩基性岩(蛇紋岩、輝岩)が転がっていて、時々クローム鉄鉱が見つかります。クローム鉄鉱があると、それに伴われる鉱物たち(灰クロームざくろ石、菫泥石)が見つかります。また、この辺りの蛇紋岩の元岩は単斜輝石が多い超苦鉄質岩(レルゾライト、単斜輝岩)でカルシウム成分が多いからかロジン岩があり、ロジン岩があると、生成条件にもよりますが、カルシウム系の珪酸塩鉱物や炭酸塩鉱物が現れます。また、蛇紋岩の砂で出来た砂岩があり、中に化石が入っていることがあるなど、日東鉱山には結構色々な岩石や鉱物が見られ面白い所です。
クローム鉄鉱とかんらん岩
クローム鉄鉱、クロームの鉱石はクローム鉄鉱というクロームと鉄の酸化物です。この鉱物はスピネルという鉱物の一つで、かんらん石と共に塩基性マグマ(粘性が低く金属成分が多い)から最初に晶出する比重が高い鉱物です。サラサラのマグマの中で最初に晶出して比重が高いということは、地下深い所で晶出し沈殿しやすいので、マグマの下の方に溜まる感じになるんだろうと思います。日東鉱山の辺りの大地は蛇紋岩で出来ています。蛇紋岩は元々、地下深くで変質する前はかんらん岩だった岩石。日東鉱山の辺りは、元々、地下のかなり深い所にあったマグマやかんらん岩(ダナイトやレルゾライト)や単斜輝岩で、その中に巨大なクロームスピネルの塊がいくつもあったことになります。
右写真:ダナイト(全体の90%以上 かんらん石 でできている岩石)中のクロームスピネル濃集部(黒いブツブツがたくさんある部分)。見た目、かんらん石は蛇紋石に変質しきっています。クロームスピネルは変質に強く残っています。

所感

日東鉱山付近は何度か訪れていますが、今回は訪れたことのない場所へ案内していただき、新鮮に楽しく採集できました。日高町や平取町の蛇紋岩体は、色々な岩石や鉱物が見れて面白いです。講座を開いていただいた日高山脈博物館と学芸員さん、そして、案内役の方に感謝いたします。