自動車塗装の自分史とSL蒸気機関車写真展〜田辺幸男のhp
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・ハチロクの生き残る花輪線
278.  龍ヶ森 のハチロク  ・花輪線 /松尾→龍ヶ森

〈0001:2-5-6-6:初秋の龍ヶ森にて、昭和41年10月16日撮影〈
岩手松尾を発車してから10分も過ぎた頃にやっと登ってきたハチロク牽引の

〈0002:bQ21141:龍ヶ森にて〉



〈撮影メモ:昭和45年頃撮影〉
雑木林に囲まれた築堤を行く
後補機付の貨物。貨車は8両とみじかかった。
左から陽光が照していて向こう側の斜面に機関車の影が映っている。背後に白樺の木が二本並んでいるのが印象的だ。
注記:画像データは
国鉄時代、北海道の峠の中の1-08花輪龍ヶ森縮小。jpgにあります。

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〈紀行文〉
 昭和41年10月中旬、東北本線奥中山を撮った帰りがけに、花輪線を初めて偵察しようと試みることにした。そこで、宮区内から近道てある県道17号岩手平舘線へと左折して、七時雨山(ななしぐれやま)の西麓をかすめて、花輪線の平舘に出てから、ハチロク三重連で有名になっていた「龍ヶ森(りゅうがもり)」へと急いだ。
 この花輪線は東北本線の好摩から陸中花輪(今の鹿角市)を経て奥羽本線の大館に至る全長 106.9qの最北の本給横断路線である。
ここでまず、花輪線が横断している奥羽山脈の北端に当たる八甲田山系の山々の配置と地形について説明しよう。
その南から北へ並行する山(峠)は奥羽山脈の主稜と、そこから別れた七時雨山火山横列の二つの山並みであり。ろれらの間を流れる河川は東から北上川、安比川、米代川である。
その奥羽山脈の南端は秋田駒ヶ岳(標高 1,637m)、その東に主稜からは離れて岩手山(標高 2,038m)があり、戻って八幡平(標高 1,613m)を主峰とする高原を経て、旧鹿角街道の通っていた梨の木峠(標高 482m)、そして国道282号の貝梨峠(標高 451m)を経て、皮投岳(かわなげだけ、標高 1,122m)、そして秋田焼山(標高 1,366 m)から八甲田山(標高 1,584m)へと続いている。
この大分水嶺の主稜線の西側は米代川が北流して能代で日本海に注いでおり、この東側には八幡平の中の東にある茶臼山と安比岳の間を源とする安比川が北流して、北上山地から北流する馬淵川と合流して八戸で太平洋に注いでいた。
この安比川の東側の山並みは、八幡平の前森山(標高 1,304m)から分岐した尾根が「七時雨火山横列」へと続いていた。それは八幡平からの鞍部の国道282号・花輪線の通じている大場谷地峠(おおばやちとうげ、標高 509m)から、その先には旧鹿角街道の車之走峠(くるまのはしりとうげ、標高 709m)がつうじており、一日に何度も天候が変わることから名付けられた七時雨山(標高 1,063m)、そして田代山、西岳(標高1,018m)などが連なり、それらの東麓には広々とした田代平高原に続いていた。それらの山の東側は八幡平の東麓を源とする松川や赤川が合わさって南流する北上川に合流するまでの支流の流域であった。
 次ぎに乗り鉄を試みよう。好摩を出てすぐに左へカーブして、東北本線(いわて銀河鉄道線)と分かれ、岩手山を軸に反時計まわりに進んで行く。そして短いトンネルを抜けると、北上川の支流である松川に沿って丘陵沿いの田園地帯を走って行く。やがて、八幡平の中腹で硫黄や硫化鉄鉱を採掘している松尾鉱山からの川も集めて流下してきた赤川を渡って東大更(ひがしおおぶけ)に着きた。その後は左手に岩手山を見ながら広大な田園風景の中を西へ走り、やがて右へカーブして北へ針路を変えると松尾鉱山からの専用線の接続駅である大更(おおぶけ)に着く。山塊がどんどん近づいてくる。大更から北上し、やがて北西へ針路を変えると岩手山に別れて、八幡平の麓を登って行き、やがて平館(たいらだて)に到着する。その後も田園風景の中を国道282号と並走しながら北へ進み、赤川を渡ると、補機の付け替えが行われる岩手松尾(松尾八幡平)となる。岩手松尾を出ると、
狭いながら蛇行する長川の谷間をさかのぼり、やがて左手の山肌に取り付いて33‰急勾配の連続する区間に入る。この路線は簡易規格で敷設されているからであろうか、線路は等高線をなぞっているようで、地形に対してきわめて素直でありり、それ故に坂はきつくなり、カーブも曲率が小さくなる。列車はそんな線路を約7kmもじっくりと登り詰めて行くのであった。そして右側に小規模なゲレンデが見えてくると龍ヶ森駅に到着した。この山越えのサミットは大場谷地峠の下を抜けている龍ヶ森トンネル(長さ 504m)の中ほどにあり、このトンネルの手前の僅かな平地に龍ヶ森駅が設けられていた。ここは、花輪線での最高地点であって、標高は504mと、奇妙な事に、この標高とトンネルの全長とが等しい数値であったのだった。ここを出てトンネルを抜けると、その後は右側の山地に沿いながら、まだまだ国道282号と並走しながら安比川の谷を下って、赤坂田、そして全長67m、プレートガーター桁5連の安比川鉄橋をわたり、狭い谷を小屋の畑えきを過ぎ、小さな安代盆地に入り住宅が増えてくると荒屋新町駅へと進入した。ここにはこじんまりとした機関支区があって、ターンテーブルと4線だけの鉄骨鉄筋コンクリート造りのモダンな扇形庫などがあり、7〜10輛のハチロクが所属していた。ここのターンテーブルは明治36(1903)年にドイツ・ハーコートで製造され輸入された「50ft級の電動上路式転車台」だとされておりSL廃止後も保線車両の転向に使用されているとのことである。
この町には“日本一の品質を誇る漆(うるし)の生産地”としての顔があり、一方で盛岡から秋田を経て青森へ向かう津軽道、また安比川に沿って北上して三戸へ抜ける八戸道と分岐する交通の要であることは高速道路の開通した今日でも江戸時代と変わっては以内。さて、荒屋新町を発車すると左へカーブして国道に別れて田沢の谷間へと入り、まもなく横間に到着、そこを出た列車は25‰の勾配で打田内沢沿いを遡り藤倉トンネルでサミットの奥羽山脈を越えて米代川流域の田山駅となり、その後は蛇行して北流する米代川を何度も渡りながら湯瀬の山峡を経て、この鉄道の線名となった「陸中花輪」(現、鹿角市)へと到着した。この奥羽山脈を越えた鹿角地域は現に秋田県下であるのだが、江戸時代には南部藩の支配下にあったから“陸中”と云う国名が冠せられていたのであった。この地域では17世紀頃から鹿角金山が、その後に尾去沢銅山が開かれ、掘られた鉱産品は南部藩の財政を支えるほどであったようで、それらを盛岡城下に運ぶための鹿角街道が整えられた。そのルートは米代川をさかのごり、湯瀬、田山、梨の木峠、横間、荒屋、そして車之走峠で七時雨山の西麓を越えて、寺田、平舘を経て盛岡へ通じていた。その後、コノルートは陸奥街道と奥羽街道とお結ぶ脇街道に制定されて重要路となった。これに相当するのが国道282号・JR花輪線・高速自動車道路であり、お互いに重なる区間も少なくないのである。
 ここでお目に掛けた写真は昭和41年秋の撮影で、龍ヶ森のサミット近くまで登ってきたハチロク三重連牽引の貨物列車であったが、後補機が着いている前部重連であった。
この時点では、サミット手前の信号場は既に龍ヶ森駅に格上げされて客扱いを始めていた。クルマがやっとすれ違えるほどの岩手県主要地方道 7号盛岡十和田線(現、国道282号)から、さらに狭い小径(こみち)が駅に通じていた。スキー場のほかには何も無く、国鉄職員が住む官舎だけがあったぐらいの山の奥であった。ここは龍ヶ森スキー場の初心者向けゲレンデであったのだった。つまり列車から降りたらそこはスキー場なのだった。駅の横には、ダブルルーフのオハ31の車体が車輪と台車ごと外されて、枕木を組んだ台の上に載せられた形でキー客のための宿泊ロッジとなっていた。
最近では、昔、龍ヶ森駅と云った駅も、1988年に観光地らしい駅名として「安比高原駅」に改称した。やがて背後の前森山の中腹に安比高原リゾート群が開発されるに及んで、四季を通じて賑わうようになってきたようだ。その中の安比スキー場には、山頂からの長大な滑降コースなども作られており、雪質と共に最高級レベルのスキー場の名誉を誇っているとのことだ。ひるがえって、駅の方もそれなりの賑やかさを取り戻してはいるが、現在はクルマの時代、東北自動車道が花輪線沿いに龍ヶ森トンネルで抜けており、駅の信号場の設備は撤去されてしまい我々には寂しくなってしまっている。
最後に、ホームページ上で素晴らしい「ハチロク三重連」のビデオサウンドを発見したので「田辺のリンク集」から紹介しておこう。
039/・SL讃歌(蒸気機関車),ブロードバンド,ビデオ  
http://sl-sanka.main.jp/
 現役蒸機を写真、ムービー映像(ブロードバンド)と迫力サウンドで表現している前田茂夫さまのサイトです。
〈BL〉現役8620三重連(花輪線/龍ヶ森の8620三重連)
動画の「龍ヶ森のハチロク三重連」はシビレますよ。

撮影:昭和41年10月。

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・「ハチロクの生き残る花輪線」シリーズのリンク
036.大正の残映・石積みのトンネルと8620・花輪線/好摩−東大更
179. 冬の龍ヶ森ハチロク三重連・花輪線/岩手松尾−龍ヶ森(安比高原)