医療は部品の修理ではない
医療というものは誰のためにあるのでしょう?
医師の生活のためでしょうか?
そうではありません。
悩みを抱えている人がいた時に、その悩みを最善の方法で解決するようにお手伝いをすることが医師の役割だと思います。
医療とは部品の修理ではなく、患者さんや国民のニーズに応えるためにあるのです。
医師の相手はあくまでも人であり、その命を守り、生活を良くするのが医師の仕事です。
そのためには、知識や技術だけでなく、患者さんの痛みや苦しみを理解する「心」が求められるのです。
歯並びを綺麗にしたり、咬み合わせを改善するのも、国民のためでなくてはなりません。
現在、医療の世界で問題になっている過剰診療や、逆戻りできないような治療を、簡単に選択すべきではないということです。
「ダメならば諦めて、直ぐに抜歯や抜髄をする」というように考えるよりも、どうすれば患者さんが将来に渡って幸せに過ごせるか、というようなことを考える必要があると思います。
矯正治療だって、必ずしも歯を4本抜かなくても治せる、ということはほぼ解明されています。
それなのに矯正というと、歯科医師の思惑が優先されがちで、とりあえず歯を4本抜く必要がある、などと簡単に言うわけです。
インプラントにしたってそうです。
インプラント自体は悪いものではありませんが、インプラントをするために歯を抜くというのは本末転倒です。
ですが、インプラント手術をしたいがために、抜歯を薦める歯科医師も存在するのです。
かつては、虫歯の範囲が広がらないようにということで、かなり余計な範囲まで削っていた時代がありました。
多くの歯科医師が実践してきた、予防拡大というこのような処置法は、現在の新しい考えの流れに逆らっているだけでなく、本来は患者さんのために良いことではないのです。
一つのことの改善のために、それ以上の大きな犠牲を生じたり、新しい問題が出てくるとしたらどうでしょう?
医療とは、部品の修理ではありません。
治療法及び、その治療法のメリットデメリットを、お互いに理解しておくことが、本来は重要なのです。