エルメート・パスコアルの世界 参加アルバム
最終更新日 2011年9月4日



Pascoal 参加アルバム

ここではエルメート・パスコアル(パスコアール)がメンバーやゲストとして参加しているアルバムや、プロデュースなどで関わっているアルバムを紹介しています。




conjunto som 4 Conjunto Som 4 / Conjunto Som 4 (1964)
1.Consolacao 2.Samba Novo 3.Minha Namorada 4.Deus Brasilerio 5.Maria Moita 6.Deixa 7.Esse Mundo E Meu 8.Inutuil Passagem 9.Balanco Zona Sul 10.Nana 11.Samba De Verao 12.Louco De Saudade
共演ミュージシャン:
Papudinho(tp), Hermeto Pascoal(fl,p), Azeitona(b), Edilson(ds)

若きエルメートが参加した「コンジュント・ソン・クワトロ」の唯一のアルバム。エルメートは、フルートにピアノに大活躍しているが、まだ自作曲は無く、ボサノバの有名曲を演奏している。意外にジャズ色が強く、今聴くと随分おしゃれな感じがする心地の良い音楽だ。エルメートも若ければ、ボサノバというジャンル自体も若い時代の作品で、サウンドは落ち着いていながらも躍動感があり、不思議な魅力に満ちている。


NOVO QUARTETO NOVO / QUARTETO NOVO (1967)
1.卵 2.神と不仲に 3.みんなの歌 4.綿花 5.歌えマリア 6.まとめ 7.ミストゥラーダ(混ざり合ったもの) 8.サンターナからやってきた 9.ポンティオ(ボーナス・トラック) 10.オ・カンタドール(吟遊詩人)(ボーナス・トラック)
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Airto Moreira,

パスコアルが1967年にアイアート・モレイラらと組んだ伝説のカルテット、「クアルテート・ノーヴォ」の唯一のアルバムだ。伝統に則った土着的なスタイルを持ちながらも斬新な音楽が展開されており、パスコアルの音楽的なルーツを確認する上で、極めて貴重な記録だといえる 音楽的なイニシアチブはパスコアルがとっていたらしく、作曲で2曲にクレジットされてる他、フルートとピアノの演奏もしている。スキャットしながらのフルートソロは迫力があるし、作曲で関わった曲では耳慣れたパスコアル節が聴ける。フルートをオーバーダビングして和音にしている曲などもあり、この当時から彼独自のスタイルすでに出来上がっていたようだ。牧歌的でありながらも、妙に緊張感のあるサウンドに仕上がっているのがパスコアルらしい。


Brazilian Octopus Brazilian Octopus / Brazilian Octopus (1970)
1.Gamboa 2.Rhodosando 3.Cancao Latina 4.Pavane 5.As Borboletas 6.Momento B-8 7.Summerhill 8.Gosto de Ser Como Sou 9.Chaye 10.Cancao de Fim de tarde 11.O Passaro 12.Casa Forte
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal(fl), lanny Gordin(g), Aparecido Bianchi(p,org), Carlos Alberto de Alcantara Pereira(fl, sax), Douglas de Oliveira(ds), Joao Carlos Pegoraro(vib), Nilson Carlos Ruiz Matta(b), Alemao(g)

フルート、オルガン、ヴァイブなど様々な楽器が多彩にアレンジされたハッピーなアルバムだ。イージーリスニング的にまったりと聴ける感じで、トロピカルで気持ち良いサウンドだが、一曲目から5拍子で始まったりと、一筋縄ではいかぬところもあり、発表された当時は先鋭的に響く部分もあったのだろうなと思う。パスコアル作曲の2曲は、まるでらしくないというか、ファンのぼくでも言われなきゃ気づかないほどお馴染みの曲調からは離れているし、フルートもいつもの激情型ではなくアンサンブルの一翼を堅実に担う落ち着いたプレイ。きっとアレンジ面での貢献が大きいのでしょう。何故かフォーレのパヴァーヌをやっていたりする。


Live=Evil Live=evil / Miles Davis (1970)
Disc 1 2. Little church 5.Nem Um Talvez
Disc 2 1. Selim
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Miles Davis, Jack Henderson, Jack DeJohnette, Airto Moreira, John McLauhglin, Gary Bartz, Dave Holland, Keith Jarrett, Herbie Hancock Chick Corea, Steve Grossman

ぼくはこのアルバムでパスコアルの存在を知った。 初めて彼の曲、演奏を聴いた時、計り知れないほど大きな衝撃を受けた。 ぼくが生涯追い求めているテーマの一つに「美しいクラスター」というのがあるのだけど、このアルバムのパスコアルが参加している曲でそれを聴くことが出来る。 それにしても、ここに収められている曲の美しさは尋常ではない。 しかも、この美しさにはどこか不吉な凶々しさがあり、それが楽曲を一層忘れがたいものにしている。 ちょっと気になるのは Disc2 の "Selim" はマイルス作とあるが、これは紛れも無くパスコアル作の "Nem Um Talvez" だ。 また "Little Church" の作曲者もマイルスとクレジットされているが、この曲も実質上はパスコアルの曲ではないかと思う。 まぁ、エバンスの"Blue in Green" がマイルス作とクレジットされちゃってる例もあるけど、ここらへんはキッチリして欲しいものだ。


Tide TIDE / Antonio Carlos Jobim (1970)
4.Tema Jazz
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Antonio Carlos Jobim, Ron Carter, arranged by Deodato

ジョビン名義ではあるが、デオダート色の強い、CTI的なフュージョンサウンドのアルバムだ。パスコアルは、フルートで一曲のみの参加だが、彼のフルートソロが始まると、ラテンフュージョン調で爽やかな曲の雰囲気は一転し、悪魔が舞い下りたかのような狂気的な空気に支配される。 悪魔が来たりて笛を吹く…ってか?(笑)。 一体誰がパスコアルを呼んだんだろ? 実にアグレッシブな演奏だが、いわゆるアウトはしていないというか、律義にコードの流れを追っており、音使いも意外とシンプルだったりする。 それまでクールな演奏をしていたリズム隊がパスコアルにつられてビミョーに熱くなってるのが良い。


edu lobo CANTIGA DE LONGE / Edu Lobo (1970)
1.CASA FORTE 2.FREVO DE ITAMARACA/COME E DORME 3.MARIANA,MARIANA 4.ZUM-ZUM 5.AGUA VERDE 6.CANTIGA DE LONGE 7.FEIRA DE SANTAREM 8.ZANZABAR 9.MARTA E RONAO 10.RANCHO DE ANO NOVO 11.CIDADE NOVA
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Edu Lobo, Claudio Slow, Airto Moreira, Jose Marino

エドゥ・ロボ初期の名盤。パスコアルはフルートとピアノの演奏に加え、アレンジなど音作りの面でも深く関わっているようだ。後ろに一歩退いた控えめな演奏ながら、例によって強烈な個性を発散させている。それにしてもこの存在感は異様だ。喩えるなら、あらぬ場所に顔が写ってしまった心霊写真のようなものだ。それがどんなに楽しく美しい写真であろうと、ほんの片隅に小さく写った顔が写真全体を異様なムードに包み、その一点から目を逸らせなくなってしまう。当サイトの性格上、どうしてもパスコアル中心に語っているが、エドゥ・ロボの音楽性も素晴らしい。パスコアルが参加していないアルバムも是非とも聴いてみてください。


Electric Byrd Electric Byrd / Donald Byrd (1970)
3. Xibaba
共演ミュージシャン:
Airto Moreira, Bill Campbell, Donald Byrd, Duke Pearson, Frank Foster, Lew Tabackin, Mickey Roker, Pepper Adams, Ron Carter, Wally Richardson

ジャズトランペッターのドナルド・バードによるエレクトリックでファンキーなアルバム。1970年という時代のカラーが色濃く出ている。パスコアルは1曲のみフルートで参加。同曲はアイアートの"Natural Feelings "にも収録されているが、ここではテンポルバートで始まり全体に妖しげなムードにアレンジされて、別の曲のように仕上げられている。ミステリアスに蠢くエルメートのフルートソロが非常に官能的。完全にリーダーのドナルド・バードを食っちゃってます。


natural Feelings Natural Feelings / Airto Moreira(1970)
1.Alue 2.Xebaba 3.Terror 4.Bebe 5. Andei 6. Mixing 7.The Tunnel 8. Frevo 9.Liamba
共演ミュージシャン:
Airto Mreira(ds, perc, vo), Flora Prim(vo), Hermeto Pascoal(p,fl,org), Ron Carter(b), Sivuca(g, accord,org), Dom Um Romao(perc.)

アイアート(アイルト)・モレイラのファースト・アルバムだが、エルメート色も非常に強い。1970年ニューヨーク録音。妻であるフローラ・プリムやロン・カーター(好演している)など有名ミュージシャンが目につくが、シヴーカにも注目。白髪にヒゲを生やした容貌や、アコーディオンの他にオルガンやギターも演奏するマルチプレイヤーぶりもパスコアルと共通している素晴らしい音楽家だ。リーダーのアイアートを始め卓越したミュージシャンが集い、そこに1970年という時代の風も吹き込んで、奇跡の名盤が出来上がってしまった。ちなみに3,4,5,7,8曲目がパスコアルのオリジナルで他はアイアート(&フローラ)の曲。パスコアルの代表曲”Bebe”はこのアルバムが初出のようだ。このサイトを見に来るような人なら気に入ることは間違いないので、もしまだ持ってないならすぐに購入することをお勧めします。


seeds on the ground Seeds on the Ground / Airto Moreira(1971)
1.Andei 2.O Sonho 3.Uri 4.Papo Furado 5. Juntos 6.O Galho da Roseira 7.O Galho da Roseira,Pt.2
共演ミュージシャン:
Airto Mreira(ds, perc, vo), Flora Prim(vo), Hermeto Pascoal(p,fl,org), Ron Carter(b), Sivuca(g, accord,org), Dom Um Romao(perc.)

"Natural Feelings" と同じセッションによると思われるアルバムで、メンバーは一緒で、サウンドのカラーや雰囲気も極めて近い。"Natural Feelings" と本アルバムが 2 in 1 のカップリングになっているCDもあるので、もしまだ "Natural Feelings" を持っていないならそれを手に入れる方がお得だろう。ちなみに 2 in 1 のCDは、アルバムタイトルが"Seeds on the Ground" だったり "Essential" だったりしてちょっとややこしい。いずれにせよ音楽的には素晴らしい内容で、ファンは是非とも持っておきたい名盤。


cal tjader Amazonas / Cal Tjader(1975)
2.XIBABA 3.MINDORO 8.CAHUENGA 9.CAHUENGA(long version)
共演ミュージシャン:
Cal Tjader(vib), David Amaro(g), Dawilli Gonga(key), Egberto Gismonti(key), Luiz Alves(b), Robertinho Silva(ds)

ヴィブラホン奏者のカル・ジェイダーによるブラジリアン・フュージョン。変名で参加しているジョージ・デュークのカラーが非常に強く、アナログシンセが大活躍のファンキーなアルバム。エルメートはフルートで4曲に参加。M-2,M-3,M-8では、メロディーとオブリを吹く程度で比較的おとなしいが、M-8のロングヴァージョンであるM-9では、後ろから煽るピアノと相俟ってなかなか白熱したフルートソロを聴かせてくれる。


egbert-nana JazzBuhne Berlin / Duo Gismonti & Vasconcelos(1975)
3.O Berimbau 4.Selva Amazonica
共演ミュージシャン:
Egberto Gismonti(p,g),Nana Vasconcelos(perc), Palle Danielson(b), Daniel Humair(ds)

アルバム名義は、エグベルト・ジスモンチとナナ・ヴァスコンセロスのデュオみたいになっているが、曲によってエルメートのフルートや他のミュージシャンも加わっている。ベルリンで行われたライブのラジオ音源らしく、音はかなり悪いが、演奏の熱気は良く伝わってくる。アルバムとしてのリリースは1984年だが、録音は1975年のようだ(たぶん)。詳細な情報は正直よくわからない。3曲目は全員が加わっての演奏で、エルメートの呪術的なフルートとナナのパーカスが独特の雰囲気を醸し出している。4曲目は、エルメートのフルート、ジスモンチのギターによる10分をこえるデュオで、お互いかなり自由にインプロヴァイズしていて聴きごたえがある。


Home Cooking Home Cooking / Sergio Mendes & Brasil 77 (1976)
4. Emorio
共演ミュージシャン:
Sergio Mendes, Dave Grusin, Chuck Rainey, Louis Johnson, Claudio Slon, Harvey Mason, Michael Sembello, Gilberto Gil, Paulinho da Costa, Hermeto Pascoal, etc.

エルメートはオルガンとフルートで参加。ライナーの書き方が不親切で、誰がどの曲で演奏してるか分かりづらいが、"Emorio"でフィーチャーされてるフルートがエルメート。コテコテファンクビートにのって、メロディーを食いそうないきおいでオブリガード吹きまくりです。バックでうっすら鳴ってるオルガンも彼のようだ。それにしてもセルメンの節操の無い音楽性には笑ってしまう。共演ミュージシャンの面子から想像つく通りのサウンドというか、70年代後半のファンクフュージョンそのまんま。ブラジョンのスラップがンペンペ言ってるうえで、チープなアナログシンセが煌びやかにピュンピュン。正直こういうの大好きです。カッコいいです。やっぱりクインシー意識してたのかなあ。


Open Your Eyes OPEN YOUR EYES YOU CAN FLY / Flora Purim (1976)
2. TIME'S LIE 3. SOMETIME AGO 4 SAN FRANCISCO RIVER 5. ANDEI(I WALKED) 7 CONVERSATION 8 MEDLEY: WHITE WING(aka ASA BRANCA) 〜BLACK WING
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Flora Purim, George Duke, Ron Carter, Ndugu, Alphonso Johnson, David Amaro, Egberto Gismonti, Airto

これはカッコイイ! チック・コリアが数曲提供しており("Sometime Ago"含む)、プリムのボーカルに、アイアートのパーカス、そしてフェンダー・ローズのバッキングの上にパスコアルのフルートが乗っかると・・・、そう、まるでRTFじゃないか! しかもベースがアルフォンソ・ジョンソンなので、ファンク度が増して、実に渋いサウンドに仕上がっている。 パスコアルは3曲を提供している他、エレピやフルートやパーカスなどの演奏で大活躍。 「毒気」は気持ち少な目だが、いつもながら彼が携わった曲には不思議な魔力が宿っている。パスコアルのファンはもちろん、70年代のフュージョン、クロスオーバーが好きな人は即買い!


Encounter Encounter / Flora Purim (1977)
2. LATINAS 3. URI (THE WIND) 4 DEDICATED TO BRUCE 7. ENCOUNTER
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Flora Purim, Raul De Souza, Airto, Hugo Fattoruso, Ron Carter, George Duke, Googie Coppola

一曲目はChick Coreaの "Windows" から始まり、おっ普通に良いアルバムじゃないかと思っていたら、パスコアル登場と同時に彼のムードになってしまった(笑)。 パスコアルのエレピ、歌声は、非常にプリミティブというか、自分の内にあるものを自然に表出させているという感じ。 そして混沌とした音群の中から茫洋と立ち上ってくるメロディーのシンプルで美しいこと! パスコアルによる、ジャズ的な語法とは違うエレピソロもたっぷりと堪能することができる。ファンなら何としてでも手に入れるべし!


Marcio Montarroyos Marcio Montarroyos / Stone Alliance (1977)
5. Menina Ilza
共演ミュージシャン:
Steve Grossman, Gene Perla, Don Alias, Marcio Montarroyos

ストーン・アライアンスは、ジーン・パーラ、スティーブ・グロスマン、ドン・アライアスからなるアグレッシヴなトリオ。本アルバムではアルバムタイトルにもなっているブラジル人トランペッター、マルシオ・モンタローヨスが大きくフィーチャーされている。パスコアルは自作のMenina Ilza一曲のみの参加で、ピアノとフルートを演奏。2004年の来日公演の際、みんなで合唱したあの曲です。フローラ・プリムのアルバム"Encounter"では、"Latinas"というタイトルで演奏されている。静かに美しく始まるが、後半に向かいヒートアップしていくさまが圧巻。


Montreux Montreux Jazz Festiva / Elis Regina (1979)
7. Corcovado 8. Garota De Ipanema 9. Asa Branca
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Elis Regina

パスコアルとエリス・レジーナのデュオが収められている。 コルコバードやイパネマの娘(少年)という大スタンダードをパスコアルがどういう風に料理するのかと興味津々で聴いたら、これが恐ろしく濃い演奏で大爆笑。 こんなにアグレッシブなイパネマの娘は他では聴いたことない。 パスコアルのピアノは力が漲っていて、ブラジル的なリズムをキープしつつも、セシル・テイラーを彷彿とさせるような暴力的な奏法から、一瞬のちにはフランス印象派のような繊細なラインを紡ぎ出すという離れ業をやってのけている。まあ一口で言ってしまえばアホアホなんだけど(笑)、 しかしファンとしては、このアホさ加減が堪らないんだよなぁ。


Speak No Evil Robertinho Silva / Speak No Evil(1991)
10.O Gaio Da Roseira
共演ミュージシャン:
Robertinho Silva(ds), Hermeto Pascoal(Arr, Piano, Sanfona), Zeca Assumcao(b), Mauro Senise(Sax, Flute), Aleuda(vo)

ブラジル人のドラマー、ロベルティーニョ・シルバのソロアルバム。ミルトン・ナシメント、ジョアン・ドナート、ルイス・エサ、ウェイン・ショーター、エグベルト・ジスモンチなどなど錚々たるメンバーが参加している。ガッドにブラジル要素をプラスしたようなドラムスタイルで、豪華メンバーの参加も肯ける素晴らしいドラマーだと思う。パスコアルはラストの曲でアレンジ、ピアノ、フルートで参加。エルメートのファーストソロにも収録されている陽気な曲だが、ここではテーマはAleudaのボーカルでほのめかされる程度でフリーなインプロヴィゼーションが展開していき、全く違うムードに料理されている。


Brasileiro Brasileiro / Sergio Mendes (1992)
11. PIPOCA
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Sergio Mendes, Jovino Santos Neto, Itibere Zwarg, Varcio Bahia, Carlos Malta, Fabio Pascoal, Prenambuco, Michael Shapiro, Luis Conte, Gracinha Leporace, Kevyn Lettau, Joe Pizzulo

セルメンといえば「マシュケナダ」やビートルズのカバーが有名だが、このアルバムはラテンのリズムに乗せたラップのような曲があったり現代的でかなりカッコイイ。 パスコアルは、楽曲を1曲提供しているのだが、面白い事に、その曲だけパスコアル・グループが丸ごと参加しており、パスコアル・グループにセルメンが加わったようなトラックになっている。こんな大胆な起用の仕方をしているのは、きっとセルメンがエルメートの音楽性に惚れ込んでいるからにちがいない。音楽的には極めて複雑でありながらも可愛らしい雰囲気を持っている曲で、メロディーが印象的。この曲は矢野顕子もカバーしている。


ao vivo [DVD] AO VIVO / HERMETO PASCHOAL/ZIMBO TRIO/EGBERTO GISMONTI (1994)
1. Este meu Piano 2. Impro 1 3. Impro 2
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal

「リーダー作」と「参加作」のどちらにするか迷ったが、こちらの方でご紹介。エルメートのソロピアノと、エグベルト・ジスモンチのグループ、ジンボトリオのライブ映像が収められているオムニバスDVD。それぞれが別個のライブで共演は無い。詳細な情報が無く、詳しいことはよくわからないが、大きなホールでのライブなので、ジャズフェスか何かなのだろうか。エルメートはピアノソロによる演奏を披露する。真摯にピアノに向き合っており引き込まれる。曲目はインプロとだけしか表記されていないが、彼のファンには耳馴染みの曲が次々に演奏されていく。全編がモノトーンの非常に落ち着いた色調の映像だが、エルメートの映像作品は少ないので貴重なDVDといえる。パスコアルのアルファベットの綴りが一般的なものと少し違うので検索の際は注意が必要。


Oceano OCEANO / Sergio Mendes (1996)
9. Capivara 11. Vale da Ribeira
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Sergio Mendes, Jimmy Jonnson, Cesinha, Luis Conte, Steve Tavaglione, Paul Jackson Jr., Marzuinho Lobo, Bill Watrous, Gracinha Leporace-Mendes

"Brasileiro" に引き続きパスコアルは楽曲を2曲提供している他、エレピとアコーディオンも演奏している。ただこのアルバムでは「ブラジレイロ」の時のような自身のバンドが丸ごと参加するような事はしていない。2曲とも"PIPOCA" の延長線上にあるような陽気でポップな曲調で、ちょっとしたファンなら一聴して彼の曲だと分かるだろう。同じフレーズを2回ずつ繰り返すという作風もお馴染みのものだ。 Capivara は、7/8拍子だが、変拍子であることを感じさせない自然なメロディー。2曲とも素朴で美しいメロディーと、極めて高度なコード進行を併せ持っているパスコアルならではの名曲。


Orerenda MINIATURES 2 / Morgan Fisher(2000)
25. Feira de Asakusa (Asakusa Market)
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal

モーガン・フィッシャーのプロデュースによるオムニバスアルバム。「ミニチュアーズ」というアルバムタイトルが示すとおり、60組のアーティストが1分間という制約の中で、それぞれ個性を発揮した約1分の楽曲を提供している。エルメートのみ空気をよまず(?)1分半におよぶ長めの楽曲となっているが、これは日本人ファンとしては是非とも聴いておきたい。例の、話し言葉をメロディー化する独自の手法で、浅草の「バナナのたたき売り」の口上を見事な楽曲に仕上げているのだ。日本語ゆえ大変わかりやすいので、家族や友人に聴かせてみるのも面白いでしょう。


Orerenda OFERENDA / ALEUDA (2000)
1. OFERENDA (OFFERING) 2. CASINHA PEQUENINA (SMALL HOUSE) 3. GALOPE (GALLOP) 4. PASSARINHO (BIRD) 5. JUREMA 6. CEARA 7. FOFOCA (GOSSIP) 8. Rede (Hammock) 9. GALOPE (GALLOP) 10. CASINHA PEQUENINA (SMALL HOUSE)
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, Aleuda, Zeca Assumpcao, Robertinho Silva, Frank Colon, Mauro Senise, Andre Dequench, Jaunho Morelembaum, Junior Homrich, Ze Americo

パスコアルが全曲のプロデュースとアレンジをしている他、半分以上の楽曲を提供しているので、当然パスコアル色が非常に濃厚だが、何と言っても女性ボーカルがメインの歌物アルバムなのでポップで聴きやすい。 途中でドシャメシャになってしまう所があるのは、如何にもパスコアルらしいが(笑)。 とにかく曲は良いし、もちろん普通のポップスとは一味違ったユニークなサウンドなので、パスコアルファンなら是非とも手元においておきたい一枚。


Curupira Curupira (2001)
5. PARADA EM ITAPIPOPC
共演ミュージシャン:
Hermeto Pascoal, André Marques, Ricardo Zonhyo, Cleber Almeida

キーボードのトリオによるフュージョン。パスコアルはアルバムのプロデュースをしている他、一曲だけアコーディオンで参加している。バンドはテクニカルでタイト。ブラジル人らしくパーカスが前面に出ており、作曲面ではパスコアルからの影響が顕著だ。おそらくキーボーディストがパスコアルのファンで、プロデュース(とゲスト参加)を頼んだのだろう。メンバーは上手いし曲もユニークで、とても良いバンドだとは思うが、とにかく度肝を抜かれたのはゲストのパスコアルの音の存在感だ。バンドリーダーの André Marques もアコーディオンを弾いているので、二人の演奏を聞き比べてみると、パスコアルの演奏は気合い一発で荒っぽさが目立つのだが、ところが音に宿る生命力(あるいは魔力)や存在感が桁違いで、パスコアルの演奏が始まった途端に生々しい肉声を聴かされたような印象を受けるのだ。


Serenata Serenata / Mike Marshall, Jovino Santos Neto (2003)
1. Sertao Alagoano 2. Quanto Mais Longe, Mais Perto 3. Serenata 4. july 17 5. Saudades Do Brasil 6. hino Da Princesa Eterna 7. os Guizos 8. Tertulia 9. Joyce 10. Roseando 11. Sept.1 12. Floresta 13. Santa Catarina
共演ミュージシャン:
Mike Marshall(g), Jovino Santos Neto(pf, flute), Hermeto Pascoal(bass flute, melodica)

ギタリストのマイク・マーシャルと、パスコアルグループのピアニストだったジョヴィーノ・サントス・ネトの二人による、パスコアル曲集。パスコアル本人もバスフルートとメロディカで2曲ゲスト参加しているほか、パーカッショニストが加わっている曲もある。パスコアルファンにはお馴染みの名曲がギターとピアノのデュオによって美しく繊細に演奏されているほか、未発表曲や、譜面集(calendario do som)に掲載されていた曲なども収録されている。メロディーや和声の美しさに焦点をあてたようなアレンジが施されていることに加え、殆どギター(マンドリン)とピアノとのデュオというサウンドの素朴さに、どのトラックもしみじみと聴かされてしまう。”Roseando”ではジョビーノさんがパスコアル直伝(?)のフルート多重録音も披露している。


rodacarioca Calendario do Som / Itibere Orquestra Familia (2005)
1. 24 De Janeiro 2. 11 De Marco 3. 01 De Novembro 4. 23 De Maio 5. 30 De Setembro 6. 02 De Dezembro 7. 22 De Outubro 8. 14 De Fevereiro 9. 16 De Maio 10. 26 De Dezembro 11. 05 De Junho 12. 23 De Dezembro 13. 24 De Abril 14. 18 De Novembro 15. 22 De Junho 16. 03 De Agosto 17. 18 De Agosto 18. 07 De Julho 19. 13 De Junho 20. 01 De Junho 21. 28 De Julho 22. 16 De Fevereiro 23. 21 De Julho 24. 11 De Agosto 25. 23 De Setembro 26. 21 De Junho 27. 19 De Marco
共演ミュージシャン: Itibere Zwarg(b), etc.

長年にわたりパスコアルグループのベースを務めてきたイチベレさんが、若いミュージシャン達を集めた大編成バンドのセカンドアルバム。2枚組。エルメートが一年間に毎日一曲ずつ作曲した366曲(閏年)が収められた譜面集calendário do somの中から、メンバーの誕生日にあたる曲を演奏しているという、もうこのコンセプトだけでもハッピーでワクワクしてしまうが、その音楽的内容も実に素晴らしい。エルメート本人も数曲ゲスト参加しているが、全体のアレンジやディレクションはあくまでイチベレによるものであり、彼こそがエルメートの音楽を正統に継承しているミュージシャンであると言えるだろう。そんなイチベレさんが若い世代との交流を積極的に行っているという事実もまた感動的。誕生日の曲ということは、良い曲だから選んだというわけでは無いはずなのだが、どの曲をとっても目を見張るほど素晴らしいのがたまげる。エルメートによる素材のよさと、イチベレのアレンジ、そして若いミュージシャンの瑞々しい表現力と、全ての要素が高次元で融合した奇跡のようなアルバム。カラフルなブックレットには、メンバーの写真に加え、譜面も載っているので、ちょっと楽器の出来る人なら実際に演奏してみることもできるという、こういう配慮も実に嬉しい。とにかく名盤です。


rodacarioca roda carioca / Jovino Santos Neto (2006)
1.Estrela do Mar (Starfish) 2.Marfim (Ivory) 3.Gente Boa (Nice Folks) 4.Nana 5.Festa de Ere (Childrens Party) 6.Coco na Roda (Coco in the Circle) 7.Homeopatia (Homeopathy) 8.Juvenal no Grumari (Juvenal in Grumari) 9.Rancho Azul (Blue Ranch) 10.Bach-te-vi 11.Cerca do Macaco (The Monkey Fence)
共演ミュージシャン:
Jovino Santos Neto(pf, flute, accor, perc.), Rogerio Botter Maio(b), Marcio Bahia(d)

パスコアルグループ脱退後、アメリカを拠点に活動していたジョビーノ・サントス・ネトが12年ぶりにリオでブラジル人ミュージシャン達と録音した作品。ピアノ、ウッドベース、ドラムのアコースティックなトリオを核に、数名のゲストが彩りを添える。ジョヴィーノさんのユニーク且つ意欲的なオリジナル曲が並ぶ中、師匠のエルメートも自作の一曲で7拍子に乗せてメロディカ、ユーフォニウムのマウスピース、水ブクブク(?)、ガムの包み(???)の演奏を披露。相変わらずの存在感ある怪演ぶりです。それにしてもジョヴィーノさんのピアノは上品で心地良い。実に良質なブラジリアンジャズアルバムであります。


gismontipascoal Gismonti Pascoal -A Musica De Egberto E Hermeto / Hamilton De Holanda - Andre Mehmari (2011)
1.Gismontipascoal 2.Sao Jorge 3.Intocavel 4.Frevo 5.7 Aneis 6.Palhaco 7.Bebe 8.Memoria e Fado 9.A Fala da Paixao 10.Chorinho pra Eles 11.Menino Hermeto 12.Santo Antonio 13.Loro 14.O farol que nos guia 15.Gismontipascoal(festa) 16.Musica das nuvens e do chao
Musician:
Hamilton De Holanda, Andre Mehmari,Egberto Gismonti, Hermeto Pascoal

ピアノのアンドレ・メーマリと、バンドリンのアミルトン・ヂ・オランダによるデュオ・アルバム。エグベルト・ジスモンチとエルメート・パスコアルの曲のカバー集であり、彼らに捧げたオリジナルも収録されている。素材(曲)が良いのはもちろんのこと、二人の演奏も大変素晴らしく、バンドリンの音色が独特のムードを醸し出している。カバーは変にいじくらずに元の曲の良さを引き立たせているし、オリジナル曲もエルメートの影響が明らかな曲調で強いリスペクトが感じられる。さらにジスモンチ、パスコアル本人もそれぞれ1曲ずつゲスト参加しているが、特にエルメートが参加した曲が大変素晴らしいのでファンには是非聴いてほしい。









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by ようすけ