エルメート・パスコアルの世界 | カバー (19枚) |
他のミュージシャンによるパスコアルの曲のカバー | ||
エルメート・パスコアル(パスコアール)は、様々な音楽家からレスペクトされており、彼の曲をカバーするミュージシャンは数多くいます。 ここでは、パスコアルの曲がカバーされているアルバムを可能な限り紹介していきます。 ※パスコアル本人の参加作は、ある程度調査できるのですが、彼の曲のカバーまでは、なかなか調べきれないのが実状です。 ここにある以外でパスコアルの曲がカバーされているアルバムをご存知の方がいれば、ようすけまで連絡頂ければ幸いです。 |
Percepcao / Eumir Deodato (1972) 5. BEBÊ Musician: Eumir Deodato, etc. |
大編成のバンドによる演奏で、カラフルで非常に美しいアレンジ。詳しいデータが載ってないので詳細はわからないが、このレコーディングにはパスコアル本人は参加していないようだ。デオダートといえばCTIのクロスオーバー作品を思い出すが、このアルバムはジャズ的でもブラジル的というのでもなく、古い映画音楽を思わせるような流麗で美しいメロディーを持つ曲ばかりが収められていて、デオダートの美意識が強く出ていると思う。 |
500 Miles High / Flora Purim (1974) 6. Uri(The Wind) 7. Jive Talk Musician: Flora Purim(vo,g,perc), Airto Moreira(ds,perc,vo), David Amaro(g), Milton Nascimento(g,vo), Pat Rebillot( pf), Robertinho Silva(ds,perc), Wagner Tiso(org,pf) |
いかにもライブ盤らしい良い意味での荒々しさのあるアルバムだ。ロン・カーターの存在感が非常に大きい。パスコアル作曲の2曲は、両方ともアイアート・モレイラのSeeds on the groundが初出と思われる。フローラはUri(The Wind)をEncounterでもカバーしているので、彼女らにとって馴染みのあるお気に入りの曲なのだろう。Uri(The Wind)は、Seeds on the groundに近いアレンジ。10分近くに及ぶJive Talkは、前半がパーカスとボーカルのみのパフォーマンスで、中盤からバンドが加わってファンキーに盛り上げていくという構成になっている。 |
LATIN AMERICAN MUSIC / SEGIO & ODAIR ASSAD (1985) (邦題「ピアソラ:タンゴ組曲〜中南米のギター音楽」) 8. Bebê Musician: Sérgio Assad, Odair Assad |
ギターデュオのアサド兄弟による演奏。パスコアルの代表曲の一つである Bebe がカバーされているが、緊張感があり凛としていながらも、不思議に郷愁を誘われる演奏。名演。オーヴァーダビングしてないはずなのだが、一体どうやって弾いてるのかさっぱり分からんくらいの超絶技巧。 ちなみにパスコアルとは関係ないけど、ここに収められているピアソラのタンゴ組曲は、ヨー・ヨー・マの「リベルタンゴ」でチェロを加えて再演されている。 両者を聞き比べるのも面白いです。 |
Alma Brasileira / SEGIO & ODAIR ASSAD (1985) (邦題「ブラジルの魂」) 7.Série de arco Musician: Sérgio Assad, Odair Assad |
アサド兄弟のブラジル名曲集の第二弾。前作同様、素晴らしい技巧が凝らされていながらも落ち着いたどっしりした演奏で、埃くさい土のにおいが感じられる。様々な作曲家のユニークな楽曲が収録されている良いアルバムだ。ここに取り上げられているパスコアルの曲は、Hermeto Pascoal Grupo (1982)に収録されている。曲調やテンポの激しく変化する難解な楽曲だが、このギターデュオでもほぼ同じアレンジで演奏されていて聴き応えがある。というかライナーによると、もともとギターのために書かれた曲だそうだ。ジスモンチの "Frevo" のギターデュオヴァージョンもカッコいい。 |
Bird of Brazil / Yana Purim (1989) 2. Bebê Musician: Yana Purim, Luiz Bonfa, Airto Moreira, Hugo Fattoruso, Patrice Rushen, Steve Swallow, Pascoal Meirelles, Toninho Horta, etc. |
ボーカルのヤナ・プリムは、あのプローラ・プリムの実妹。主にブラジル国内で活動しているらしい。ということで義兄のアイアートをはじめ、ルイス・ボンファ、スティーブ・スワロー、パトリース・ラッシェンなどなど、豪華なゲスト陣が参加している。姉妹だけあって確かに声は似ているが、全体的に姉に比べると、かなり地味というかアッサリ味。肝心の "Bebe" は、ヤナが詞をつけて哀愁の漂うボーカルチューンに仕上がっている。ライトで耳触りの良いアレンジだ。 |
Sanctuary / Barney Wilen (1991) 11. Nem Um Talvez Musician: Baney Wilen, Philip Catherine, Palle Danielsson |
ドラムレスのトリオで、サウンドは地味ながら、名手が揃っているので、じっくり聴いて良し、BGMにしても良しの名盤だ。 パスコアルの "Nem Um Talvez" は、ボサノバ・アレンジで、どことなく爽やかな曲になっている。 素直にメロディーを奏でているだけで、アドリブは殆どないけれど、神秘的な美しさを湛える好演だ。 やっぱりこういうメロディー、コード進行の美しい曲は、ボサノバ・アレンジにするとその美しさが引立つね。 |
M.D. / Various Artists (1992) 2. Selim Musician: Miroslav Tadic |
Miles Davis へのトリビュート盤。 ウォレス・ルーニーの演奏が目当てで買ったのだが、家に帰って聴いている時にパスコアルの曲が入っていると気付いた。 このCDはワゴンセールで激安だったんだけど、運が良かったなあ。 日ごろの行ないが良いから(?)。 ちなみに "Selim" は、マイルス作曲とクレジットされているが、実際にはパスコアル作曲の "Nem Um Talvez" だ。 どうしてこういう紛らわしい事態が放置されているのか分からない。 肝心の演奏の方は、歪んだギターによる前衛的なアプローチで、ニッティング・ファクトリー的なサウンドといえば早いか。 こういう解釈は個人的にはとても好き。 |
Sound Circle / The Asian American Jazz Trio (1994) 7. Nem Um Talvez Musician: Kei Akagi, Rufus Reid, Akira Tana |
赤城ケイは好きなタイプのピアニストだし、Rufus Reid、Akira Tana 共に実力は十分でとても良いアルバム。パスコアルの曲では、ベースがアルコでメロディを取っている。ロングトーンを多用したメロディが美しい曲なので、こういうアレンジになったんだろう。 Miles Davis "Live=Evil" に収録されていた曲なので、赤城ケイがパスコアル本人のファンかどうかは分からない。このトリオはマイルスのバージョンに近いイメージの幻想的な演奏を披露している。 |
Elephant Hotel / 矢野顕子 (1994) 6. PIPOPCA Musician: 矢野顕子, Gil Goldstein, Valtinho Anastacio, Dave Bargeron |
ぼくは矢野顕子の大ファンなのだが、その矢野顕子がパスコアルの曲をカバーしているのでビックリしてしまった。但し、この曲はセルジオ・メンデスのアルバムに入っていた曲なので、彼女がパスコアル本人のファンかどうかは分からない。非常に複雑なコード進行を持つ曲だが、メロディーが強く耳に残り、思わず口ずさんでしまいそうになる。ギル・ゴールドスタインのアレンジも秀逸。ギル・ゴールドスタインが人のサポートをする時はホントに素晴らしい。 ちなみにこの曲は、ライブビデオ "S席コンサート" でも演奏しています。それにしても、ソロの取りづらそうなコード進行だこと。 |
magic labyrinth / Marc Johnson's Right Brain Patrol(1995) 9. Ne um talvez Musician: Marc Johnson, Wolfgang Muthspiel, Arto Tuncboyaciyan |
ぼくの一番好きなベーシストはマーク・ジョンソンなのだけど、彼もパスコアルの曲をカバーしているのを見つけたときも驚いたなあ。やっぱり好きなミュージシャンとか好きな曲とかは、自ずと似たような嗜好性で固まっていくものなのかな。このアルバムでは、ベース、ギター、パーカスのシンプルな編成で、ベースがアルコでメロディーをゆったりと情感豊かに聴かせてくれる。パーカスがミステリアス。 |
Laurita / Richard Galliano (1995) 1. LEO, ESTANTE NUM INSTANTE Musician: Richard Galliano, Palle Danielsson, Joey Baron, Michel Portal |
ガリアーノはアコーディオン奏者ということで、ジャズ界では、ややマイナーな印象があるが、オリジナルも、カバーの選曲も良いし、どのアルバムでも共演者共々素晴らしい演奏を聴かせてくれるので、もし聴いたことが無い人がいれば、是非購入をお勧めしたい。もちろんこのアルバムも非常に良い。ガリアーノはパスコアルのファンらしく、他のアルバムでも何曲かカバーしているが、特にアコーディオン奏者としての部分とブラジル的なリズムに魅力を感じているようで、そういう部分が強く出ているシンプルな曲を選んでいる。 まあパスコアルの曲はカバーしにくい変なのが多いから、選択肢は限られてくるような気もするが(笑)。 |
Caboclo / Jovino Santos Neto Quarteto (1997) 1. Viva o Rio de janeiro Musician: Jovino Santos Neto(pf,flute), Hans Teuber(flute, sax), Chuck Deardorf(b), mark Ivester(ds) |
70〜90年代のパスコアルグループを支えたピアニスト、ジョヴィーノ・サントス・ネトさんがリーダーを務めるカルテット。ゲストとしてアイアートが参加。冒頭のエルメートの曲以外は全てジョビーノさんのオリジナルだ。長年パスコアルグループでもまれただけあって、当たり前のように変拍子の曲があったり、どれも一筋縄ではいかない曲ばかりだが、全体の印象としてはとても上品。大人のブラジリアン・フュージョン。 |
Blow Up / Richard Galliano (1997) 6. CHORINHO PRA ELE 9. LEO ESTANTE NUM INSTANTE Musician: Hermeto Pascoal, Michel Portal |
このアルバムは凄い。アコーディオンとバス・クラリネット(曲によってバンドネオン等と持ち替え)という極めて異色な楽器によるデュオライブなのだけど、2人の気合いの入り方が半端じゃなく、殺気すら感じられるほどなのだ。 パスコアルの曲も、元は比較的のどかな(?)ポルカなのだが、ここでは丁々発止の壮絶なバトルが展開されている。 パスコアル本人の演奏は、たとえのどかな曲であってもどこか鬼気迫る異様なオーラを放っているが、この壮絶デュオは、ある意味そのオーラに迫る演奏だと言えるかもしれない。 |
French Touch / Richard Galliano (1998) 1. Bebê Musician: Richard Galliano, André Ceccarelli, Rémi Vignolo, Jean-Marie Ecay |
これまた好盤である。バラエティーに富んだ様々な曲調の楽曲が収められているが、 冒頭のパスコアルの曲が、アルバム全体のムードを支配するほどの圧倒的な存在感を持っている。 パスコアルにしてはシンプルで素直な曲だが、アコーディオンと口笛のユニゾンによって奏でられるメロディーが、なんとも言えない哀愁を漂わせていて印象深い。 "Bebê" は、パスコアルの曲の中でもカバーされることが多い人気曲なのだが、流石はガリアーノ、実に美しい仕上がりとなっている。 |
Miles Away / 橋本一子 (1999) 5. Nem Um Talvez Musician: 橋本一子、井野信義、藤本敦夫 |
才媛橋本一子がアコースティックなピアノトリオで真摯にジャズに挑んだアルバム。ありきたりなジャズピアノトリオとはちょっと違う感じに仕上がっている。マイルスゆかりの曲ばかりが採り上げられているなかで、ネン・ウン・タルヴェズも演奏されている。メロディーがスキャットでゆったりと歌われているが、曲と橋本自身の音楽性が上手くブレンドされて独特の妖しい雰囲気を醸し出している。 |
Balaio/Richard Boukas & Jovino Santos Neto(2000) 8. Hermeto 9. Vale da Ribeira Musician: Richard Boukas(guitar, voice, mandolin, cavaquinho, bass), Jovino Santos Neto(piano, flute) |
ギタリストのリチャード・ボウカスさんと、パスコアルバンド出身のジョビーノ・サントス・ネトさんのデュオアルバム。ボウカスさんは、ギターだけじゃなくベースやボーカルも素晴らしいし、ジョビーノさんもピアノだけじゃなくフルートも披露しており、とてもカラフル。パスコアルのカバーはもちろん、二人のオリジナル曲もとても良いです。 |
ブラジルの風 / 古澤巌 セルジオ&オダイル・アサド (2001) 8. O Ovo/Bebê Musician: 古澤巌, Sérgio Assad, Odair Assad |
ヴァイオリンの古澤巌とギターのアサド兄弟によるブラジル人作曲家の名曲集。ジョビンやカエターノ・ヴェローゾ、エグベルト・ジスモンチなど様々なミュージシャンの楽曲が取り上げられている。パスコアルの曲は、お馴染みの"Bebe"とクアルテート・ノーヴォで演っていた"O Ovo(卵)"を繋げるアレンジ。"Bebe"のパートは、基本的にアサド兄弟の"LATIN AMERICAN MUSIC"とほぼ同じで、そこに古澤巌が絡んでゆく。 |
DUO / DUO (2002) 1. Bebê Musician: 笹子重治、秋岡欧、城戸夕果 |
ギターとバンドリンによるデュオアルバムで、曲によってはゲストが加わるという構成。 清涼感のある爽やかなアルバムだ。 ブラジルのそれほどメジャーじゃないが実力のある作曲家の曲ばかりを取り上げてくれているのが嬉しい。 それにしても "Bebê" はギター(バンドリン)の音色が映える曲だな。 2コーラス目で城戸夕果のフルートで加わるが、このハマリ具合がこれまた見事で、もうこれ以外にはありえないんじゃないかというアレンジ。 |
Watershed / Henry Hey Trio (2003) 5. Nem Um Talvez Musician: Henry Hey(p), John Hebert(b), Jochen Rueckert(ds) |
新進気鋭の若手ピアニストのトリオ。カバーはエルメート作の1曲のみで、あとは全てオリジナルという意欲的な構成。現代的なサウンドで、プレイには若さが感じられるものの、オリジナル曲は意欲的で変拍子や複雑なキメも多用され、どの曲もとてもカッコいい。エルメート作のNem um talvezは、原曲のメロディーとハーモニーの美しさを崩すことなく丁寧に表現しており、数あるこの曲のカバーの中でも1,2を争う美しさと言っていいだろう。こういう言い方はダサいことこの上ないのだが、「もしぼくがピアノが物凄く上手かったら、こういうアルバムを作りたいなあ」と思ってしまうような内容で個人的にかなり気に入ってます。 |
El Calendario De Los Sonidos / Banda Hermetica (2007) 1. Banda Hermetica 2. 16 de Octubre 3. 10 de Octubre 4. 8 de Agosto 5. 14 de Noviembre 6. 20 de Julio 7. 24 de Octubre 8. No Llego 9. 2 de Septiembre10. 19 de Agosto 11. 3 de Septiembre 12. 12 de Octubre Musician: Marcos Archetti, Federico Nunez, Joaquin Perez, Bernardo Casagrande, Federico jaureguiberry, Mariano Cantero, Pili Peralta, Ana Archetti, Mariel Barrena, etc. |
アルゼンチンのバンド。エルメートの譜面集「音のカレンダー」に収録されていた曲を中心に演奏している(ちなみにイチベレのアルバムと曲の重複は無し)。曲ごとにメンバーが入れ替わったりゲストを招いたりと多彩なサウンドを展開している。全体的にややフュージョンっぽいかな。当然ながらイチベレバンドとの比較が気になるところだが、さすがバンド名にエルメートの名を冠しているだけあって、こちらも聴き応えのある奔放な演奏を繰り広げてくれている。しかも8曲目("No Llego")ではエルメートお得意の喋り声を音楽化する技まで! エルメートの有名曲のフレーズが次々にあらわれる最終曲にもニヤリとさせられる。エルメートへの愛に溢れるアルバムだ。 |
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