泥質グラニュライト granulite (浦河町)
採集日:2006/11/23
採集地:浦河町
日高山脈は、良く言われるように、島弧同士の衝突によって衝上した島弧の断片だといわれ、西から東へ、島弧の深い所から浅い所へと断面が見られると言われています。それでは、現在地上で見られる範囲で、日高山脈を作った島弧の一番深い所の岩石を採集してみようというのが動機です。近くに日高衝上断層がある所で採集したので、たぶん、目的は達したと思っています。島弧の地下20km辺りの岩石といわれています。これより深い部分は地上部にはないと言われています。日高山脈は、島弧の上部2/3くらいまでが地上にめくれ上がった状態になっているようです。地下に残された残り1/3の岩石は、部分的に取り込まれて日高山脈に露出しているようなのですが、機会があったら採集したいなと思います。
泥質グラニュライト
変成岩は変成される前の岩石が何であったのかで、泥岩系と苦鉄質岩系に分けられます。ざっくり元々「泥か玄武岩のどっちか」と思っています。グラニュライトは、泥岩系で最も変成度合いが高い岩石で、片理がなく薄く剥がれず、堆積岩だった頃の縞模様もあまりなく、鉱物の結晶が大きく再結晶しています。
地殻変動の痕跡
島弧の地下にあった時、とてつもない力に晒されていた痕跡が残っています。露頭にあった時の位置を記録していないため、力の方向はわかりませんが、見た目に左右に強い力がかかっていたことがわかります。石英が白くレンズ状に引き伸ばされ、薄片にして観察すると、ざくろ石の周囲にプレッシャーシャドーが見られます。
構成鉱物
赤い部分:ざくろ石、黒い部分:黒雲母、白い部分:石英、ほとんど、この3種類からなります。
以下は、この岩石の岩石薄片の偏光顕微鏡写真です。
ゴロっとした真っ黒なのがざくろ石。派手な色(干渉色が強い)で短冊状のが黒雲母、丸みを帯びたグレーのものが石英。所々にクリーム色のがありますが、薄片が若干厚くて石英がグレーに見えていない部分です。ざくろ石の上下に黒雲母が集まっている箇所(赤丸)があります。引き伸ばしたようになっていて、プレッシャーシャドーが出来ています。グラニュライトが出来たとき、この薄片の上下方向に強い力がかかったことを示しています。
参考文献:日本地方地質誌 北海道地方 日本地質学会/地球惑星科学入門 北海道大学出版会