2014年 山の手博物館 講習会「薄片作成」
日時:2014/08/09 13:00〜17:00、08/10 10:00〜17:00
去る2014/08/09-10(土-日)、山の手博物館 講習会「薄片作成」に参加してきました。
山の手博物館は、札幌市西区山の手にある私設の博物館です。小さな博物館ですが、鉱物鉱石を主に扱う珍しい博物館で、石好きの私は、過去にも地質巡検や顕微鏡観察等の講座に参加させていただいています。
薄片作成
一般に手に入る材料を使用して薄片を作成方法の講座でした。山の手博物館には仕事で薄片を大量に作成してきた方や元研究者がおられ、その方々が講師となり教えていただきました。薄片は専門設備を使用して作成すると短時間で作成可能のようなのですが、一般家庭でそれらを揃えるのは現実的ではありません。教えていただいた方法で、十分一般家庭で作成可能であると思えました。チップをいただいたので、後日、時間が出来た時に作成してみようと思っています。岩石カッター操作(一次切断、二次切断)のみスタッフの方が行いましたが、それ以外(一時研磨、スライドガラス張り付け、二次研磨、カバーガラス張り付け、クリーニング)は全て参加者が作業しました。個人的にカバーガラス張り付けは中学生以来だったため、新鮮でした。
作成した薄片
変質安山岩私が子供の頃は変朽安山岩と言われていました。グリーンタフ地域に分布する変質した安山岩で、通常の安山岩より緑色を帯びています。グリーンタフとは、狭義には緑色凝灰岩(Green Tuff)ですが、広義では、今から2000万年前頃に日本海が誕生した際の激しい海底火山活動の海底火山堆積物が、海底での続成作用により変質した岩石です。続成作用により、岩石内に緑色の粘土鉱物が生成されており、高変質のグリーンタフは鮮やかな緑色をしています。
右写真が岩石チップ。少し黄色ないし緑色がかっていて固く、見た目には低変質です。平和の滝付近でスタッフの方が採集したものとのことです。札幌の裏山(札幌の南側に広がる山地)の基盤はグリーンタフ層なので、山の下の方であればグリーンタフ層が出ているかもしれず、平和の滝辺りはグリーンタフがあるかもしれないなと思いました。
右写真が上記チップから作成した薄片です。薄片は岩石をスライドガラスに張り付け、0.03mmになるまで削ります。ここまで薄くなると光を通すようになります。
完成した薄片をルーペで見ると、非常に細かな黒いブツブツを含む薄緑色の石基、透明で大きな斑晶、薄い黄緑灰色で小さな斑晶、真っ黒で不透明の小さな斑晶が見えます。石基が薄緑色なので、石基が少し粘土化しているのだろうか。
今回は博物館側でラベルを作成してくれていました。右写真がそうです。これらセットで保管します。もう1枚(花崗岩)を作成しました。先に花崗岩の方を作成したのですが、最終研磨で力を入れ過ぎ削り過ぎて薄片を消滅させてしまいました。そのため、2枚目の変質安山岩は最終研磨を慎重に慎重に行いました。
偏光顕微鏡で見てみる
帰宅後、自宅にある簡易偏光顕微鏡で見てみました。綺麗でした。感動です。オープンニコル
石基の中に斑晶が多数(斑状組織)あります。薄い黄色の斑晶はゴロンとしていて屈折率が高いようです。黒い斑晶は真っ黒。石基に非常に細かな黒いブツブツがあります。透明な斑晶には累体構造が見えます。
クロスニコル
薄い黄色の結晶はカラフルになり輝石のようです。黒い斑晶は真っ黒で磁鉄鉱。透明な斑晶は白と灰色の縞模様は斜長石。斑晶は変質しているのか、内部が黒いボツボツがあります。石基の黒いツブツブも真っ黒、黒いブツブツは粘土だとか。
所感
薄片作成は敷居が高い技術ここで言う薄片とは、岩石や鉱石のプレパラートのことを言います。薄片は、大学や研究機関における地質調査等で岩石や鉱石の中身をしっかり観察したい場合に作成するものです。作成には岩石を切断する設備を要し、工程が多く技術が必要で、時間がかかります。品質良くかつ短時間で作成するには、高い技術と設備が必要になります。設備はどれも高額です。趣味で岩石鉱物を肉眼鑑定で大よその同定をする趣味範囲ではほとんど必要ないので、一般人にとっては、趣味で岩石鉱物に興味があったとしても、実用性が低い技術ゆえ敬遠されがちと思います。一般人が薄片作成技術を欲する場合、単に興味だけではなく、その技術を使用する用途が本人にあるのかなと思います。
だからこそ貴重な講座
一般向けの薄片作成講座は、北海道では、北海道大学総合博物館、日高山脈館、そして、山の手博物館、この3館しか実施していないと思われます。各博物館共、ニーズが非常に低いにも関わらず企画し実施していることはすごいことだと思っています。私は、これら3館の薄片講座を受講してきました。北海道大学総合博物館は、北大で使用している専門設備と専門家が行う技術を教えていただけます。日高山脈館と山の手博物館は、敷居の高い薄片作成を一般家庭で行う方法を展開しており、薄片作成は地味なのえすが、個人的には面白い内容でした。
薄片から色々な情報が得られる
薄片は、石の内部を顕微鏡で見るため、肉眼では大まかにしかわからない鉱物構成や組織や構造が見て取れます。そのため、偏光顕微鏡で見るための技術と知識を持ち合わせていれば岩石鉱物を概ね正確に同定できるようになり、岩石鉱物の生成過程を想像できるようになります。ただし、偏光顕微鏡下でまともに鑑定できるようになるのは、詳しい方に教わりながらの相当の経験が必要であり、簡単ではありません。
趣味で採集し、大まかに名前を調べ、飾っておくのは楽しいことです。色々な石を採集していると、わからないことが多いです。採集したのがどんな石なのか、薄片を作成し、少しでも正確に知りたいと思っています。そうすると、フィールドで石を見た時に、より正確にわかるようになり、その地域の地質と考え併せると面白いと思います。
所感
岩石の切断は博物館等で行う必要がありますが、一般家庭でも作成可能な方法だと思いました。採集してきた気になる石を薄片にしてみて観察することにより、自宅での石鑑定等の役に立てようと思います。山の手博物館のスタッフの方々には丁寧に教えていただきました。ありがとうございました。