日高山脈博物館 岩石地質講座 上級 第2回 / 顕微鏡で見る岩石 参加

日時:2013/11/02 10:00〜15:00


去る2013/11/02(土)、日高山脈博物館の岩石地質講座の岩石薄片作成講座に参加してきました。

私は、日高山脈博物館と北大の岩石薄片作成講座を受講してきました。岩石薄片作成は「スライドガラスの上に岩石を張り付けて0.03mmまで削る」という作業です。大学や研究者それぞれに流儀があるようでした。日高山脈館の岩石薄片作成講座の特徴は「身の回りで安価に手に入るものを用いて作る」ということに思えています。個人レベルで作成するノウハウを教えていただきました。

今回は石灰岩。学芸員さんが日高町で採集した石灰岩です。

石灰岩とは
日高町の石灰岩は神居古潭帯に代表される付加体という地質構造の所にあり、付加体の石灰岩は、元々は、遥か昔に南の海の島の周りに形成されたサンゴ礁の一部だと思われています。それがプレートの動きと共に北上し、日本列島にぶつかってくっ付いて押され地下に潜り、多少の熱と圧力で、サンゴの遺骸から方解石という鉱物の結晶の集合体になったものです。熱と圧力の程度が高いと完全に再結晶化して方解石の結晶が大きく成長し、方解石の結晶がキラキラした綺麗な岩石(大理石と呼ばれる)になります。

なぜ石灰岩
早く削れ、綺麗に見えるからのようです。方解石は複屈折率が高いため、偏光顕微鏡で見た時にカラフルに見えて綺麗です。方解石はモース硬度4の柔らかい岩石のため短時間で削れます。時間かけずにサクッと作って綺麗に見える。失敗してもやり直しがすぐでき、時間の余裕を持って進められる。作業は概ね遅れるものなので、半日程度の講座では妥当なんだろうなと思いました。

研磨工程から体験
岩石薄片作成の工程は4工程あります。
工程1.岩石をチップと呼ばれる厚さ数ミリの2cm角程度の板状に切断(1次切断)
工程2.チップをスライドガラスに張り付け、完全に固着させる
工程3.スライドガラスに張り付けたチップをさらに薄く切断する(2次切断)
工程4.0.03mmまで削る
前回同様、工程4のみの体験でした。半日で完成させるには時間的に工程4から。

実際作ってみて
短時間で完成(1時間程度でした)。削り易いため、厚みや片減りを肉眼や偏光顕微鏡でチェックしながら削り進めていく実感がリアルタイムに得られ面白かったです。右写真は撮影設備付き偏光顕微鏡で撮影したものです。削りすぎてしまいました。


余った時間で追加体験
全員予定より早く出来、工程2(チップをスライドガラスに張り付け、完全に固着させる)を追加体験できました。チップの乾燥と接着が1時間程ででき、かなり時間短縮ができていると思いました。この追加体験で作成したものを、自宅での復習用として頂くことができ、嬉しく思いました。

自宅で復習 (2013.12.09)
復習材料をいただいたものの、仕事が繁忙期で手が回らず、通販や近くのホームセンターで道具を揃え、講座から1か月後くらいに、わずかな仕事の谷間を利用し自宅で作成しました。日高山脈館で作成したものよりチップが厚く(倍くらい)、2時間程度で完成。右写真は自宅の簡易偏光顕微鏡で撮影したもの。


所感
岩石薄片は専門機関が実施する作業で専門設備がないと行えないというイメージがあります。岩石薄片作成講座は何度か受講していますが、復習材料を頂けたのは初めて。今回の講座で体験した方法を用いることで、ホームセンターで普通に手に入る道具を使い、自宅で、短時間で、作成可能であることが確認できました。ただし、以下についてまだまだハードルが高いと思えます。

チップの作成(一次切断)と偏光顕微鏡
岩石カッターの個人所有はほとんどの家庭で難しいと思えます。(価格、設置場所、騒音、必要性等、色々と問題が多い) 多くの場合、設備のある専門機関で実施する必要があると思えますが、設備利用には、それなりの理由と対価が必要になってきます。また、偏光顕微鏡については、しっかり観察できるものは高価です。

薄片の分析
岩石薄片の分析には専門知識と経験が必要です。偏光顕微鏡の機能や性能も影響します。趣味として、僅かな余暇を利用しての実施では、一朝一夕でできるものではないので、息を長くして、無理なく楽しみながら、マイペースに少しずつ積み重ねる必要があると思いました。

自分でも出来そうと思えることが大切だと思うので、このような企画は続けて欲しいと思いました。