日高山脈博物館ネイチャーセミナー2013「岩石地質講座 上級 地質巡検」

日時:2012.10.06 10:00〜15:00


去る2013.10.06 2013年の日高山脈博物館ネイチャーセミナーの地質巡検に参加しました。
天候も良く、清々しい秋の日和の中、落ち着いた雰囲気の中、お隣の、占冠村・鵡川町穂別を回るルートでした。過去に、日高町、平取町で模式的な観察地を探訪してきているためだと思われます。過去のイベント履歴は日高山脈館のホームページにアーカイブがあります。

動機:
日高町のお隣、鵡川町穂別にある鵡川岩体について、専門家の案内で説明を聞きながら見てみたいと思ったため。

鵡川岩体とは
インターネットで検索すると、岩体とは「ある範囲に連続してまとめって分布する岩石」「まとまって運動をした地質的な単位」等とあります。
今回の巡検で扱った地質帯は神居古潭帯。日高町にも同じ地質帯が通っています。神居古潭帯は、サハリンから北海道の中軸部を南北に縦断する付加体起源の低温高圧型の広域変成帯です。神居古潭帯には所々に巨大な蛇紋岩の塊が分布しています。その塊は非常に大きなもので、山全部が蛇紋岩というくらい巨大です。この巨大な塊にそれぞれ「○○岩体」という名前が付いています。

地質図を確認
図1は、5万分の1地質図幅「日高」をベースに蛇紋岩の地域を紫色に塗りつぶした図です(容量節約のため低画質)。鵡川という川が占冠村から鵡川町(旧穂別町)の福山に向かって流れています(青線)。鵡川を福山より南に辿ると、坊主山(蛇紋岩からなる山)の脇を通り、穂別の町を抜け、鵡川の町から太平洋に注ぎます。紫部分は断層(黒い線として図示されている)に沿って絞り出されているような感じに分布しています。

地質帯としては20万分の1地質図の方が分かりやすいです。図2は5万分の1地質図幅と同じ部分の20万分の1地質図です。神居古潭帯部分のみ明るくしてみました。紫色の部分に蛇紋岩が分布します。占冠村から鵡川町の福山にかけてと、日高町に明るい部分があります。占冠町と鵡川町にある蛇紋岩地帯は「鵡川岩体」、日高町から平取町に渡る蛇紋岩地帯は「糠平岩体」と呼ばれています。(図示している部分は岩体の一部で、もっと広範囲に分布しています)


蛇紋岩が風化していく姿
見学前の座学講義で、神居古潭帯を知るために、プレートテクトニクス、付加体、変成岩の基礎的講義がありました。現地では、蛇紋岩がどのように風化していくか、その過程でどのような鉱物が生成されてゆくかを、実際の蛇紋岩を例にとって説明していただきました。興味深かったです。

蛇紋岩が作った地形
鵡川町穂別に「八幡の大崩」という北海道地質100選に選ばれている、有名な蛇紋岩地形があります。
ここを訪れ、「八幡の大崩」についての説明を受けた後、蛇紋岩とそれに付随する鉱物の観察を行いました。ここは個人的には扇状地の下の方しか歩き回ったことがなかったのですが、色々歩き回ると面白いことがあるものだと、改めて思い直しました。

所感:
面白かったです。特に、蛇紋岩の風化の説明が興味深かったです。蛇紋岩の面白さは短時間ではなかなか伝わらないだろうなと思いつつ、少しでも興味を持ってくれる人がいたら良いなと思いました。

蛇紋岩は、かんらん岩が変質した岩石。かんらん岩とは対照的に、見た目は黒くて汚く、腐っているとも表現(様似町アポイビジターセンターの展示パネル)され、華やかさに欠ける岩石です。風化すると粘土化してドロドロになり、土木工事では、ズルズル滑り崩れるため嫌われています。この岩石は、先人の方々の努力により、少しずつ謎が解けてきているようです。その一端に触れながら、楽しく観察ポイントを巡ることができました。案内役の方々には色々と気を使わせてしまったように思っています。

私は個人的に、蛇紋岩という岩石に興味を持ち、趣味で、北海道内の色々な蛇紋岩とそれに関係する石たちを見て採集してきています。蛇紋岩程に変幻自在な岩石はないのではないかと思うほどに、場所によりみな顔が違い、関係する岩石鉱物が多いです。見れば見る程に「いぶし銀」的な面白さを感じています。