日高山脈館ネイチャーセミナー2012「岩石地質講座 上級 地質巡検」

日時:2012.10.14 10:00〜16:00


日高山脈館は日高山脈の地質を紹介している博物館です。日高山脈館で紹介されている内容が私の趣向(北海道中軸部の岩石鉱物)と合致するため、日高町近辺へ出かけた時等には立ち寄らせて頂いています。

今年の日高山脈館ネイチャーセミナーの地質巡検は「ウェンザル林道」。
ウェンザル林道は、奥沙流ダムへ通じる、大型車両が通れるくらいの立派な林道ですが、奥に登山口はなく栓錠されており、あまり知られていないと思います。ですが、この林道、日高の地質をお手軽に知ることができる林道なのです。

動機:
まだ入ったことのないウェンザル林道。日高衝上断層を横断するというこの林道を、専門家の案内で説明を聞きながら見てみたいと思ったため。

なぜ、この林道を行くと日高の地質がわかるのか
ウェンザル林道は、日高山脈を東西に分かつ大断層を横断しているためです。日高山脈がどのようにして出来たかは、昨今は知られるようになってきました。北海道の東側の島弧が西側の島弧に衝上する(乗り突き上げる)と言われています。(詳しくは「札幌の自然を歩く」等、北海道の地質を取り上げている書籍等を参照ください。)


参考:日本地質地方誌 北海道地方 朝倉書店

上図は、私の俄か知識でイメージした断面図です。ざっくりこんな感じという程度のものです。島弧の東側(ピンク色の部分)が、西側(緑色より左側)の上に乗り上げて突き上げているらしいです。ウェンザル林道は、ピンク色の部分と、緑色の部分の境界を横断しているので、林道を歩くだけで、突然岩石ががらりと変化する様を見ることができ、日高衝上断層を手軽に体感できる数少ない林道なのです。

良かった点:
・出かける前に、島弧−海溝系のシステムの説明、変成岩の説明、実際に露出している岩石の説明があって、現地にって見て触れて採集し、帰ってきて衝上断層を位置を記入してみる。という流れが基本的に良かったと思いました。

気になる点:
・地質や岩石をあまり知らない人には難しかっただろうなと思いました。

所感:
今回の巡検は個人的に満足でした。今度は個人的に行って、もう少し細かく見てみたいと思いました。 単純に、日高変成帯の岩石は、これ、これ、ポロシリオフィオライトの岩石は、これ、これ、とはわかっても、なぜ、どっちの岩石かがわかるのか、なぜ、ここに、この岩石があって、この順番で並んでいるのか、なぜ、この林道がすごいのか、それを感じられるようになるには、悠久の島弧−海溝系システムの理解と、日高山脈の地質の理解、岩石の知識が必要だと思います。即効性はなく、色々知識が増えていくに従って、徐々に味わいが出てくるテーマだと思いますので、初心者に対して、数時間の巡検でそれを感じられるように組み立てるのは、難しかっただろうなと思いました。
また、岩石自体は地味で、目立った鉱物もあまり入っていなかったので、あまり知らない人にとっては、とっつき難いかと思いましたが、参加者は興味を持って講師の先生を質問攻めにし、その説明に面白さを感じている様子が伺えました。参加者は昨年と概ね同じだったので、参加者のレベルが昨年より上がっていたためではないかと思えました。話を聞くに、道内を広く巡り色々採集し、色々聞いて勉強しているということなので、なるほどと思えました。裾野が広がってきたかなと思いました。
石は動植物のように同種ならば同じ姿をしているわけではありません。図鑑を作る難しさと利用しづらい点はそこにあります。岩石は、色々な鉱物が混ざっていて、その混ざり方は連続的に変化し千差万別であるので、見た目がみな違います。それを分類するため、鉱物の組み合わせ、成分比、に閾を設け、ここからここまでが○○岩という分け方をしています。岩石を構成する鉱物も、様々な産状があり、見た目が違います。フィールドを歩き、様々な岩石や鉱物を見て、傾向を掴んでいくことが必要だと思います。

ペンケヌーシー岳(主に斑レイ岩で出来ている山)と紅葉が綺麗でした。