穂別キャンプ場 〜 子供たちのパラダイス 〜

探訪日:2013.07.13-14


動機:
7月に入り暑くなってきたため、海の日を含めた3連休で、1泊キャンプをしようと思い立った。子供が体調を崩すことが少なくなり、アウトドアに対する抵抗がないようで、家族共々、時間的制約がなければ行けるようになってきました。ただし、3連休を全て使ってしまうと、家のことができなくなってしまう、かつ、キャンプから帰った次の日が会社というのは体力的に辛いため、3連休の前2日でキャンプに出かけ、3日目は家のことをする日とすることとした。

選択条件:
・1泊2日であるため、移動時間に時間を要し過ぎない2時間以内で行ける所。
・キャンプ中の買出しが不要な1泊キャンプのため、ロケーション的にキャンプ中の買出しがしづらい所(近隣に大きな町がない山の中など)。
・広いフリーテントサイト(100張り以上)があり、区画がなく、設営場所や占有面積の制約が厳しくない所。
・思い立ってすぐに行ってテント張れるところ。(予約が必須ではない)
・管理が適切にされ物騒ではなく、清潔で綺麗なところ。
・キャンプ場内で楽しめる所。(車で観光して回らなくても、キャンプ場内でのんびり楽しめる所)

良い点、気になる点

<< 良い点 >>:
1.自然の中で存分に遊べる
子供にとってここはパラダイスだと思いました。私も楽しめました。キャンプ場は国道に面しているが、穂別の町から20km程度離れた山の中にあり、自然一杯です。
   1-1.川遊びが安全で楽しい
キャンプ場内には川が流れており、小さな子供でも溺れる心配がない浅くて小さな流れから、小学生以上かな程度の流れまで様々。強い日差しを受けて川底が暖かく、ず〜と入っていられ、魚や虫を一日中探したり観察したりして遊べる。上流にはおそらくザリガニもいるだろう。
1-2.クワガタがいっぱい
場内を覆う森は、ナラ、クワ等の広葉樹で樹液が出ており、クワガタ等の甲虫がたくさんいる。実際、夜にキャンプ場内を歩いていたら、ミヤマクワガタのオスが飛んできたので捕まえた。家の近くのホームセンター等で買えば、1500円程度はする代物。クワガタが身近にたくさんいる所は、故郷の山以来だなと懐かしく思いました。
1-3.美しい星空
周囲に大きな町がない山の中ゆえ、夜が更けると、都会では見ることのできない見事な星空が広がる。等級の小さな星、星雲、そして、天の川もハッキリと見える。子供の頃、流星観測をした星降る夜空を思い出させてくれました。

2.売店が充実している
周囲に町がないためだろう。売店には、お土産はもとより、食材からキャンプの消耗品まで色々並び、多少のことなら忘れても買い足せると思わせるものがあります。アンモナイトの化石も売っていました。穂別は地質的に、白亜紀の前弧海盆堆積物(蝦夷層群)が分布しているため、恐竜の化石やアンモナイト等、白亜紀の化石が出土するためだと思うけれども、穂別で採集されたものかどうかはわからない。キャンプの翌日、穂別で新種の恐竜化石発見かもと新聞のトップ記事になっていました。北海道ローカルな道新ならではの扱いです。また、クワガタハウスという檻があり、中にクワガタがたくさん入っていて、さすがと思いました。

<< 気になる点 >>:
1.テント密度が非常に高い
今まで色々なキャンプ場を利用しているけれども、これ程に混雑しているキャンプ場は経験したことがないです。駐車場には、車が少なくとも200台程度は駐車していたため、テントやタープの数は、300張りはあっただろうと思います。混みすぎがマイナスポイントでした。うちらがテントを張った奥のエリアが空いていたのが幸いでした。

2.夜中に賑やか
クワガタは夜行性だし、夜通し飲んで楽しみたいと思うのは自然なのだろうと思いますが、深夜12時を過ぎて宴たけなわのエリアがあり(人気のキャンプ場はどこもそうなのかもしれないですが。。)、眠らない森になっていました。幸い、うちらの周囲は小さな子供連れのファミリーだったこともあり、夜は静かに過ごせました。

3.リアカーが不足気味
1日2回、午前と午後に、”リアカーが足りないので返却ください”という放送がかかっていました。終日キープしているのか、放置されているのか、そんなリアカーがあったので、気になりました。

4.トイレに行列が出来る
キャンプ場内には、オートサイトとフリーサイトがあり、オートサイトの方は水洗トイレ、フリーサイトの方は和式トイレでした。和式トイレには身障者用の個室の水洗トイレが一つあり、そこに行列が出来ている状態で、和式トイレはガラ空きでした。キャンプ利用客に小さい子供が非常に多いので当然だろうなと思いました。フリーサイトの方にも水洗トイレが複数あった方が良いなと思いました。


今回のチャレンジ

1.各人、料理を一品以上作る
うちのキャンプは全員参加型。みんなで荷物を運び、みんなでテントを立て、みんなでご飯支度をし、みんなでご飯を食べ、みんなで後片付けをする。今回のキャンプでは、子供も一品料理を作ってもらうことにしました。
子供担当:じゃがりこマッシュ お母さん担当:ご飯 お父さん担当:トマトスープ

2.テント近くにタープを張る
初めて、テントの近くにタープを張ってみました。
従来(タープなし時)の問題点:
従来は、テントの張り出し部分(リビング部とでも言おうか)に寝具・衣類以外の荷物を置いていました。そうすると、荷物で一杯となり、動かず座っている分には良いのですが、移動や調理等の作業がしづらく、調理中の火や包丁を使っている際や配膳中に子供がちょろちょろして危ないし、食事をこぼしたりしていました。
今回(タープあり時)の効果(非定量的ですが。。):
タープの下で広々とできるので、安全かつあずましく作業をすることができました。風通しが良く快適にくつろげました。
次回への課題:
もっとテントに近接してタープを立てることが必要と思いました。
理由は、荷物をテントからタープの下に移動するのが手間で、時間ロスに思えたためです。テント→タープの順で設営しましたが、タープ設営に慣れてないこともあり、タープを立てた後の距離感を掴めないままにタープを立てた結果、テントへの近接が足りませんでした。

気をつけた方が良いと思ったこと

1.夜露に注意
昼夜の寒暖差が大きかった。昼間は30℃前後、夜18時以降に急激に冷え始め、寝る頃には吐く息が白くなるくらいに冷えた。草はもとより、タープ、テントのフライシートは、内側外側と問わず、夜露がびっしょり付き、朝日が照り始めると湯気を立てて蒸発するくらいだった。そのため、夜、テントの外側(タープ下など)に荷物を出して置くと、夜露でびっしょり濡れるだろうなと思えました。また、テントの寝室部分は、フライシートがあった方が、テントの内側が濡れることがなく良いと思えました。

2.早めの行動
噂以上の混雑ぶりだったので、週末やお盆等の連休に利用する場合は、混雑する前に設営と撤収ができるようにした方が良いと思われました。穂別キャンプ場は人気が高く、今回は週末を含む3連休かつ天気が良さそうで混雑しそうなので、早めにキャンプ場に着いて設営し、帰りは早めに撤収した方が、テントスペースやリアカーの確保がしやすいだろうと、”早めの行動!”と意気込んでいました。しかし、毎度の事ながらのんびりしてしいまい、キャンプ場到着13時頃、撤収は朝9時頃開始となりました。キャンプ場到着時点で、手前のフリーテントエリアはテント林立状態でしたが、奥のエリアは2組しか入っていない状態で、テントとタープをゆったり設営できました。リアカーは1、2台しか残っていない状態でしたが、待つことなく使用できました。まもなくリアカーが足りなくなったようで、”リアカーを戻してください”と放送が入っていました。

小川の石を見て、穂別の大地に思いを馳せる

マイナーではありますが、川で石を観察すると、穂別の大地がどんなもので出来ているかがおぼろげにわかります。
穂別の地質は大きく三つのものから構成されます。
 @.海底に沈殿したものが、海洋底プレートに運ばれ、白亜紀の頃に海溝に掃き寄せられたり、地殻深くに引きずり込まれて変成作用を受けた地層。(色々な岩石が混ざっている)
 A.白亜紀の海底に沈殿した堆積層。(泥岩と砂岩):化石が出る。
 B.第三紀の海底に沈殿した堆積層。(泥岩と砂岩):石炭が出る。

@:専門用語で「付加体」と呼ばれる地質帯です。付加体とは、海洋底プレートの上部に降り積もった堆積物や海洋底プレート表層構成岩石(砂、泥、チャート、さんご礁の石灰岩、海底火山噴出部の玄武岩など)が、プレートが海溝から沈み込む際に、沈み込み側の陸地の際に掃き寄せられてぐちゃぐちゃに固まったものです。穂別には、1億年のはるか昔、この付加体が海溝から地下深くに引きずり込まれて、高い温度と圧力で変成した「神居古潭帯」と呼ばれる地質帯が通っています。鵡川沿いにある蛇紋岩を伴った地層が中心部で、そこには様々な岩石が見られます。キャンプ場の辺りは上記AとBの地層なので、付加体の岩石は少ないはずです。キャンプ場内を流れる川には、蛇紋岩や緑色岩など、付加体を構成する岩石が転石として見られました。

A:首なが竜やアンモナイトが出てくる地層で、白亜紀の頃の前弧海盆堆積物の地層(蝦夷層群と呼ばれる)ものです。キャンプ場内の川に転がっている石を見ると、泥岩と砂岩が多かったです。でも、化石は見つけれませんでした。センターハウスの売店にアンモナイトの化石が売っていました。また、亀甲石のようなものがセンターハウスに飾られていました。泥岩に水が通り、そこに鉱物が沈殿して出きるものです。

B:石炭が出てくる地層。石炭は夕張が有名です。夕張で石炭を含む地層は、穂別や厚真にも続いており、昔、穂別や厚真にあった炭鉱は、この地層にある石炭層を掘っていました。センターハウスには、石炭が展示されていました。

地質図を見てみる
以下に周辺の地質図を載せて、地質帯毎に区分けてみます。地質図を見ると、穂別キャンプ場は、青色の部分(第三紀の堆積層)と、緑色の部分(白亜紀の堆積層)の辺りにあることがわかります。キャンプ場を流れる川は、本流が274号線に沿って北から流れてくる川で、白亜紀の堆積層を削って流れてきます。支流は、西側から流れてくる川で、第三紀の堆積層を削って流れてきます。そのため、キャンプ場の子供たちが遊ぶ辺りは、白亜紀〜第三紀までの幅広い時代の岩石が転がっていることになります。実際は、泥岩や砂岩が多いです。

そうすると、穂別や穂別のキャンプ場が地質的にどんな場所にあるのかが概観できます。左側(西)には第三紀の堆積層、真ん中に白亜紀の堆積層、右側(東)に白亜紀の付加体の変成岩層、という順番で並んでいます。日高山脈より西側では、西から東に向って古い地層となります。北海道の中軸部の地質は、このように、南北に綺麗に分かれて分布しています。 地質調査所 5万分一地質図幅「紅葉山」をベースとした

色々な本を読んで、穂別辺りのドラマを想像してみます。大まかに、以下のような感じではないかと思います。

穂別周辺の大地のドラマ
穂別の辺りの大地は、大昔は海の底でした。時代は中生代のジュラ紀の頃、たぶん、今から2億年くらい前、日本列島はまだなく大陸の東端でした。そこへ東からプレートが沈み込んでいました。プレートの沈み込みにより、大陸の東端の海溝に付加体が作られていきました。
時代は進み白亜紀の頃、1億年程前、この付加体が後に地下深くに引き込まれていきます。引きずり込まれた付加体は、地下の高い圧力と温度で岩石が変成していきました。これが後の神居古潭帯になっていきます。
また、この頃、現在のオホーツク海の辺りにプレートが出来、それが西に移動するようになりました。このプレートには、今はなきオホーツク古陸という陸地が乗っていて、現在の北海道の辺りは、西に大陸、東にオホーツク古陸で挟まれた状態となり、その間の海は、プレートの動きにより次第に狭まり、双方の陸地より土砂が供給されて浅くなっていきました。この頃の海に生きていた恐竜やアンモナイトが化石となって現在出てきています。この地層は前述のA蝦夷層群と呼ばれています。
さらに時代は進み、第三紀、5300万年前〜3400万年前、挟まれた海は陸地になり、たくさんの植物が茂るようになりました。この植物が堆積した層が石炭となり、昭和の時代に採掘されました。この地層は前述のBで、幌内層とか石狩層群とか呼ばれています。
さらに時代が進み、新第三紀の中新世、今から2200万年程前、白亜紀の頃に地下深くで変成した付加体が上昇し陸地化し山になっていきます。これが現在の鵡川沿いの蛇紋岩で出来た山々で、現在、神居古潭帯(前述の@)と呼ばれます。

参考文献:
・札幌の自然を歩く 第3版 北海道大学図書刊行会
・道東の自然を歩く 北海道大学図書刊行会
・日本列島の自然史 国立科学博物館編 東海大学出版会
・日本地方地質誌 北海道地方 日本地質学会編集 朝倉書店
・5万分の一地質図幅「紅葉山」 北海道立地質研究所

所感

人気があるキャンプ場だと聞き及んでいましたが、予想以上の人気ぶりでした。人が多いことによる弊害はありますが、子供たちが川や森で遊びながらキャンプ場内でキャンプを楽しむには絶好の場所ではないかと思えるものがありました。静かにキャンプをしたい場合やクワガタをじっくり探したいのであれば、平日に行った方が良いと思います。(前日の金曜日は4組しかいなかったようです)キャンプ場外で子供たちが遊んだり観光したりする場所が近場にないので、キャンプ場内でとことん遊ぶ必要があり、それができるキャンプ場だと思いました。
また、初めてテントとタープを一緒に使い、改めてタープは良いなと思いました。炊事・食事が快適でした。