自動車塗装の自分史とSL蒸気機関車写真展〜田辺幸男のhp
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152.
道東の春「水芭蕉、ふきのとう、ねこやなぎ」
・室蘭本線
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〈写真とエッセイ〉
早暁の光に輝く室蘭湾を背景に室蘭駅を発車する列車を測量山の上から俯瞰するシーンを夢見て昭和49年の5月連休にクルマで出かけた。今回は下北半島からフエリーで苫小牧へ渡って室蘭本線を長万部へ向かうと云う撮影行であった。その沿線のいずこかで見付けた道東の春の風物詩を三題お目に掛けたい。実は撮影場所の記録を見失ってしまったので撮影の詳細は省かざるを得なくなってしまったが、その替わりに写真に続いて花にまつわる知見の探求を試みてみた。
《1》「みずばしょう(水芭蕉)」
〈0001:35-108:親子ずれの水芭蕉のむれ〉
ここは別に名もない沼地のほとりである。手前にクローズアップされている水芭蕉の群れは、親の根茎から伸びた地下茎によって周辺に増えた子孫たちであって、水芭蕉の増殖の一つのパターンであった。これに対して、遠くに散在して咲いているのは、花が熟して種子を地面にこぼれ落とし、これが水に浮いて流されて、運が良ければ定着して成長したものだと云うのであった。この撮影時期は水芭蕉の最も美しい時で真ん中の、花穂の黄色の濃さが目にしみた。
この水芭蕉は里芋科の多年草で、雪がとけると発芽直後の葉の間の中央から純白な「ほう」に包まれた大型の花を出し、湿地一面に咲き誇る美しさは魅惑的だ。この白い「ほう」は仏炎包(ぶつえんほう)と云うが、そのが仏像の背後にある炎形の飾りに似ていることから名ずけられたもので、葉が変化したもので花ではないのだそうだ。その中央にある円柱状の部分が小さな花が数十から数百ほど集まった花序(かじょ、肉穂花)である。その小花にはすべてが雄蕊(ゆうずい)と雌蕊(しずい)を持つ両性花である。仏炎苞が開いた時で、多くの小花は雌蕊が露出しており受粉可能である。雄蕊は花序の表面には現れていないが、開花の後数日すると、花序の表面を押し上げるようにして雄蕊が出現し、多くの花粉の放出を続ける。
風の媒介によって花が受粉後、花序は大きく成長し、緑色の肉質の果穂(かすい)になる。種子が完熟した果穂は、ぼろぼろと崩れ、果肉をつけたままで種子が散布される。果肉も種子も軽く水に流され、条件の良い場所に定着すると3年程度で開花するまでに成長すると云う。その葉は花の後に成長し立ち上がり、長さ80cm、幅30cmに達するが、この葉だけ見て水芭蕉だと気がつく人は少ないようだ。北海道では「牛の舌(べこのした)」の別名があり、この葉の形をを牛の舌に見立てたものである。花言葉は「美しい思い出」、「変わらぬ美しさ」とあった。
《2》「ふきのとう(蕗の薹)」
〈0002:35-77:綿毛に包まれた種子を飛ばす「ふきのとう」〉
残雪のすき間から芽を出す春一番から二ヶ月も経った五月初旬、「ふきのとう」は実りの季節を迎えていた。この
手前の原っぱ一杯に「ふきのとう」が育って白い花と見間違えるような綿毛を付けた種子を風に飛ばしていた。良くもこれだけ密生している「ふきのとう」を誰も採取しなかったものだと驚かされた。
早春、一番に出てくる「フキ」の「つボミ」が「アサギ色」を帯びた「フキノトウ」であった。まだ葉が出る前に「フキノトウ」だけが独立して地上に出てくるのだが、その時の寒さに耐えられるように、小さな花の「つぼみ」の集まりは何重にも「ほう」に包まれて地上に出てくるのである。この「ふきには雌株と雄株があり、それぞれ別々に「フキノトウ」と「柄の付いた葉」が生えて来るのだ。雌株は開花の時は草丈は5〜10cmだったが、受粉後には高く花茎を伸ばし30cm以上になり、タンポポのような綿毛を付けた種子を飛ばすようになる。雌株(雌頭花)は白色だが、雄株(雄頭花)は黄味を帯びた白色である。
春先のフキノトウが終わってしばらくすると、柄の長い大きな丸い葉の「ふき」が地下茎から生えてくる。しかし、茎は地上には伸びず、地中で養分を蓄え越冬し、この根茎から地中を走る枝(地下茎)を出して、盛んに増える。この地下茎の先に「ふきのとう」の花茎ができる。北海道では家畜が食べないので盛大に繁茂するようになるようだ。
「ふきのとう」の花言葉は「待望」だと云うが、寒い冬を耐えてやっと顔を出したと云うところか。
それに、「ふき」の名の起源は、早春の寒い頃、地上に頭を出す「浅葱(あさぎ)色」をした「フキノトウ」を、冬の葱、フユキと呼んだこと、または、冬に黄色い花が咲くことから「冬黄(ふゆき)」から転化したとのことだった。
《3》「ねこやなぎ(猫柳)」
〈0003:35-92:ドンピシャの「ねこやなぎ」〉
画面の右手前半分は「ねこやなぎ」が水辺に明るさを集めている。翌日、逆光で狙って見たが成功しなかった。
「ねこやなぎ」は広く土手などの水辺に自生している低木の落葉樹で、雌雄異株の柳科の樹木であって、早春に葉よりも先に、光を受けて銀白色に光る美しい花穂を見せる姿は春のうれしい風物詩である。
花芽は始めは赤色の厚い皮をかぶっているが、これが破れると絹のような光る白く長いい糸を密生する穂になって人目を引くようになる。やがて3週間で花をつけるようになると趣は一変してしまう。
雄の花序と雌の花序があり、開花中の花序の長さは雄花序が3cm〜6cmと、雄の花序の方がより太くて長めだ。雌花序は長さ2.5cm〜4.5cmほどだが、雌花序の方は、受粉後に長くのびてきて、初夏には10cm近くになり、それは猫のしっぽに似ているのだった。そして、反り返った果実は2つに裂けて、中から綿毛につつまれた細かな種子を飛ばして風邪に乗せる。
また一方、水辺の根本からも枝を出し、水に浸ったところからは根を下ろして株が増える。葉は細い楕円形でつやがない。昔は、この枝を火だねとして重く用いられたというのだった。花言葉は「率直」、「自由」、「気まま」であるのは猫の性癖から来ているのであろうか。
このホームページには、「木曽川の春」と題する中央西線南基礎の旧線での川辺で撮った「ねこやなぎ」の作品がアップロードされていますので、ご覧頂ければ幸です。
009.
木曽川の春
「
ねこやなぎ
」・
中央西線
/南木曾
撮影:昭和49年(1974)
あっぷろーど:2011−02.