9.デジタルとは

 電波や音声、映像の世界ではすでにアナログ時代は終わったような感がありますが、デジタルについてどんな「イメージ」をお持ちでしょう。「コピーしても全く同じものが出来る」 「音質や画質が良い」などというところでしょうか。確かにその通りですが、いろいろ含みもありますので、少しづつお話したいと思います。


アナログとデジタル
 アナログからデジタルに代わったものとして、いちばん身近なものに、そしてわりと早くからあったものに、時計があります。デジタル時計です。数字を表示するタイプのものです。○○時○○分○○秒と表示します。電卓のような「8」は□を2個重ねたような表示をしたものが、デジタル時計だとイメージされている方が多いと思います。確かにそれはデジタル時計です。 では、壁などに掛かっている丸い時計、1から12までの数字が円周上に並んで、ものによっては秒の刻みがあるもの。これはデジタル時計でしょうかアナログ時計でしょうか? 実は、ここまでではどちらともいえません。あなたの家にある時計をよく見てください。秒針はどんな動きをしていますか。「カチッ、カチッ」と1秒ごとに瞬間的に動いていませんか。この場合少なくとも秒針は、デジタルです。秒針が音もなく、「スー」と動いていれば、アナログといえます。分針も同じことで、1分ごとに「カチッ」と動けばデジタル。秒針と共に、かなりゆっくりですが、「スー」と動いていればアナログです。さすがにいちばん短い時針は、「スー」と動いているように見えます。もっとも、時針を見ていても動いているかどうかわかりませんが・・。私は時計の専門家ではないので、不確かなことですが、時計にはギヤか使ってあり、ひょっとしたら分針が、1分進むごとに、時と時の間を60分の1ほど動いているのかもしれません。そうしたら時針もデジタルということになります。
 いずれにしても、この「カチッ、カチッ」がポイントです。即ち一般のデジタル時計では、1秒の次は2秒、その次は3秒です。しかし、世の中の「時」(とき)は、水が流れるがごとく、1秒と2秒の間にも、数値では表せない「時」の流れがあります。陸上競技などでは100分の1秒まで計測しますが、1000分の1秒もあれば、10000分の1秒もあり、・・・・・となるわけです。現在世の中に、どこまで細かく計れるストップウオッチがあるか知りませんが、この○○分の1秒という○○を無限にしたものが本当のアナログ時計ということになります。ただ、数値を発表しなければならない場合、アナログでは、小数点以下を無限に発表しなければならなくなり、発表になりませんし、そこまでの精度も必要がないということです。


 私はこの自然界の全てのものが、アナログであり、デジタルは人間が便利なように作り出したものであると思います。デジタルはある単位以下を切り捨てることによって、扱いやすくしたものです。時計の例で言えば、秒以下は切り捨て、下記のPCMデータも標本化のサンプリング周波数と量子化のビット数以下を切り捨てることによってデジタル化できるのです。ここまで書くと、デジタルは悲しげなもののように思えてきますが、時間も必要以上の細かい単位はかえって不便だし、音に関しても、人間の耳の能力には限界もあります。その限界ぎりぎりのところで妥協し、便利さを追求したものであるといえます。
 前置きが長くなってしまいましたが、以下、音のデジタル化についてお話したいと思います。


PCMとは・・
 デジタル音声といっても、アナログ信号をデジタル化する方法にもいくつか種類があります。代表的かつ一般的なものがPCMです。正確にはリニアPCM(LPCM)です。PCMとは、Pulse Code Modulation、日本語にするとパルス符号変調です。アナログ信号を標本化(サンプリング)及び量子化で数値化し、二進の数値データとして記録するものです。 と、言葉で書くと???ですね。2進法はさておき、標本化と量子化について説明しましょう

MP3とMD(ATRAC3)
インターネットなどで音データをやり取りする場合、よく使われるのが、MP3です。最近のウォークマンもMP3を主体としています。これは前述のPCMと意味合いが違います。元のアナログ音声信号をデジタル化すると同時に圧縮してあります。圧縮率もいろいろあります。MDに記録されているデータも違う方法で圧縮されたもので、「ATRAC3」と言います。(標準の他LP2、LP4などのバリエーションがあります。) 言ってみればMP3もATRAC3もデジタル信号ではありますが、圧縮技術の呼び名です。


標本化と量子化
図1をご覧下さい。
「音の基礎」でも出てきたアナログ音声信号です。上下方向が音の大きさを表しています。また、右方向が時間の経過です。

 復習になりのますが、赤いラインの横方向に密になるほど、音が高く、振幅が大きいほど大きな音になります。またこの図では、単純にするためにサインカーブといわれる波形を使っていますが、実際の音はものすごく複雑な形をしています。もちろん楽器など音源の種類によって大きく異なります。


図 1
 デジタル化するときには、(図2)のように縦と横に切れ目を入れます。横線が大きさの分割で、量子化といいます。縦線が時間方向の分割で、標本化といいます。
 量子化はビット数でその分解能を表します。8bit、16bit、24bitがよく使われます。8、16、24に分解ではなく、2の8乗〜2の24乗ですので、256分の1〜16777216分の1に細分化します。これは言ってみれば、音の大小に関係します。
 また、標本化は、サンプリングとも言いますが、44.1kHz、48kHz、96kHzなどがあります。これらの値は「サンプリング周波数」という言い方をします。1秒間を44100分の1、または48000分の1、96000分の1などに細分化するのです。
 これによって、高音域がどこまで再現できるかということにかかわってきます。理論上はサンプリング周波数の半分まで再現できます。即ち44.1kHzは22kHz、48kHzは24kHz、96kHzは48kHzまで再現できる事になります


図 2
 こうして細分化した升目と元のアナログ信号(赤線)の交わるところまでを、黒く表しています。この黒い部分がデジタル化された信号です。「なんだか階段状にデコボコしているけど、これでいいの?」 「音、悪そう!」  はい、ご心配なく、わかりやすくするために升目を大きくしていますから。、実際は見た目(耳?)ではわからないくらい細かいのです。もっとも、量子化が4bit、サンプリング周波数が22kHz程度だとわかっちゃいますけど。
 すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、量子化もサンプリング周波数も値が大きいほど、粒子が小さく、より滑らかな音になります。値を無限大にすれば、アナログになっていくということです。
 そして、「サンプリング周波数」分の1秒ごとに黒い部分の階段の高さを数値化し並べていったものがPCMのデータとなります。実際はもう少し複雑ですが、 その数値を2進法の数値に直し、CDに反射のあるなし(2進法)で記録してあります。ちなみにCDのサンプリング周波数と、量子化は 44.1kHz 16bitです。
 10進法の場合は、0〜9という10の記号で表しています。2から9というものはありません。2進法は、0と1という2つの記号で成り立っています。2つしかないというのがミソで、CDの反射の有無だけで数値が表せます。
図 3


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