録音講座
 4.機材について
 


1.マイク

 これが、音の入り口で一番肝心です。マイクといってもいろいろな種類があります。 価格ひとつとっても数千円から100万円位まで様々です。 一般の人が買われるのは数万円までです。 方式で大きく分けると「コンデンサーマイク」と「ダイナミックマイク」があります。他にもありますが一般的でないのでこの2種類とします。 そしてそれぞれに「単一指向性マイク」と「無指向性マイク」があります。(本当はもっと細かい分類があります)        
コンデンサーマイク
(電池又は電源が必要)
無指向性 ホールでの雰囲気を録ったりします。メインマイクとしてもよく使います。伸びた低域と、響きをよく録ります。
単一指向性 このタイプが一般的です。マイクによって指向性の鋭さの違いも有ります。
ダイナミックマイク 無指向性 インタビューマイクやタイピン型にこんなのがあります。
単一指向性 PAのボーカル、カラオケ、スピーチなどによく使うもの。

 普通、音楽録音には単一指向のコンデンサー型を使います。音楽録音はほとんどステレオ録音なので、これが2本必要です。

ステレオマイク 世の中には「ステレオマイク」などといわれる1本に見えて中に2本分入っているものもあります。これにも2種類あって左用右用の2本が1つのケースに入れられた方式と、正面用と両サイド用のユニットが入っていてマイクの回路で左右を出力するMS方式といわれるものとが有ります。前者は2本のペアマイクと同じことですが、後者は「中抜け」がおこらなくて使い易く、また、回路の調整で広がりを変えることが出来ます。一般用の価格は1万円〜5万円位です。業務用は数十万から100万円位のものもあります。もっとも一般の方がプロが使用するマイクを使ってはいけないという法はありませんが、ただ値段が高いので、多分そんなマイク買わないでしょう。
 
尚、ワイヤレスマイクは皆さんが買える価格帯(失礼)のマイクは音質的に音楽録音に向きません。たとえ4−5万円してもです。ちなみにテレビの歌謡番組などで使っているワイヤレスマイクは1本が数十万円もします。
マイクの取り扱いについて。
 マイクはデリケートなものです。特にコンデンサータイプのものは衝撃はもちろん、湿気も嫌います。使わないときには、ケースに入れて乾燥した場所にしまいます。乾燥剤などを一緒に入れるのもよいでしょう。 時々学園祭などで、テレビの歌手のまねをして、マイクコードを持って振り回していますが、やめてくれ〜!ですね。テレビの場合壊れても仕方ないという前提でやっています。学園祭などでは、おそらく学校か音響屋さんからの借り物でしょうから大切に扱いましょう。
 また、ファンタム電源仕様のコンデンサーマイクは、電源のスイッチを入れたまま、コードやマイクを抜き差ししないこと! 壊れます。 ファンタム電源を切って暫くしてから抜き差ししてください。そして配線が完了してからスイッチを入れてください。

《ファンタム電源》

 コンデンサマイクには必ず電源が必要です。電池を入れて使うタイプのマイクをご存知のことと思いますが、言ってみれば、その電池の代わりに、ミキサーまたは専用の電源装置などから電気をマイクに送ってやります。必ずスイッチがついていて、たいがい「+48v」という表示があります。
 ミキサー内臓の場合、チャンネル毎にスイッチがあるものと、まとめて全チャンネルまたは半分づつ入り切りするものとがあります。ミキサーの表示を良く見ないと、送ってはいけないチャンネルに+48vを送ってしまうことになります。場合によっては壊れます。


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2.録音機(レコーダー)


録音機といっても下表に示すようにいろいろあります。

アナログ録音機
カセットテープ オランダのフィリップス社とソニーが開発し、数年前までは録音するといえば「カセット」というほどでした
オープンテープ 最近ほとんど見かけなくなりましたね。一般には1/4インチ幅のテープですが、1/2インチのものもあります。
その他 オープンテープタイプのMTR(※)もあります(ました?)。プロのスタジオでは、1インチ幅のテープを使い、民生用でも1/2や1/4インチのものもありましたが、最近はデジタルMTRに変わりつつあります。
デジタル録音機
MDデッキ
  (エムディー)
  (ミニディスク)
数年前ソニーが開発し、その便利さから爆発的に普及しました。最近、終息に向かっており、機器もディスクも少なくなりました。
DATデッキ
(ダット)
(ディーエーティー)
音の良さからプロの間では定番になっていましたが、MDが出てからは一般には音にこだわりの人が使います。これも一部業務に限って使用される状況で、一般市場では終息に向かっています。
CDレコーダー はじめは業務用のみで数十万していましたが、最近は安くなりました。言ってみればMDデッキのCD−R版です。そして一般的にはパソコン内臓のCD−Rを使うことが多いかもしれません。
メモリーレコーダー 最近の簡単レコーダーはこれ。小型でバッテリーで作動し、マイクも内臓が多い。 「ICレコーダー」といわれる従来会議や取材録音に使われていたものも、最近は高音質でステレオ録音できるものもある。
その他 最近プロのスタジオではデジタルMTRをよく使います。テープを使うもの、ハードディスクを使うもの、最近はメモリーカードを使うものなどがあります。また、PC自体をレコーダーにすることもできます。

※MTR=マルチトラックレコーダー/一般には左右2ch(ステレオ)の録音機がよく使われますが、8ch、16ch、24ch・・・・などたくさんのトラックがあり、楽器ごと、パート毎など各トラックに録音して後でバランスを取ったりして加工し、最終的に2ch(ステレオ)にしてゆきます。
 
 最近はデジタル系の録音機が主流ですが、それなりの技術を持ってすれば、アナログ系でもなかなかよい録音が出来ます。デジタル系の明らかに良いところは、1)テープヒスノイズが無い。2)ダビングによる音質変化がほとんどない。(全く皆無とは言い切れませんが。―――この事については話が専門的で長くなりますのでここでは控えます) またアナログテープに必ずある回転むらがない。以上の3点です。

MDデッキ
 原音を圧縮して記録していますので、音質ではDATやCD-R、メモリーレコーダーに原理的に劣りますが(といってもCD/MDラジカセなどではその違いはあまりわかりません)、カセットテープが主流だった時代からすると、その操作性のよさで(片面で80分記録や、デッキの中で編集が出来る) ウォークマンタイプも含めて大ヒットしました。でも今はほとんど生産していません。

 
DATデッキ
 カセットテープやオープンテープに代わって、デジタル録音機として音のよさもあって一世を風びしましたが、これも現在ほとんど生産されていません。むしろテープライブラリーの多い方にとっては、貴重品です。完動品をお持ちの方はオークションにでも出されては(?)。いやいやデッキが正常な内に、早くCD−Rなどにコピーしておきましょう。

CD-R(CD-RW)レコーダー
 当初業務用として出ており高価なものでした。そのうち民生用として安い物が出てきました。ただ録音現場でブッツケ本番的に録音するには難もあります。編集が完成したもの、あるいは取り終えたものを、後で保存用に使う事をお奨めします。また、CD-Rは1回録音したら消すことは出来ません。CD-RWは消したり録音したり出来ますが、CD−RWが再生可能な機器でないとかかりません。もっともCD−Rも、それが再生可能な機器でないとかかりませんが。民生用CDレコーダーで使用するディスクは「音楽用CD−R」として販売しているものを使います。安過ぎるものには、エラーが多かったりしますので、ご注意。また、最近はほとんどのパソコンでCD-Rが制作出来るようになりました。この場合のCD−Rメディアはデータ用でかまいません。

                 
パソコンでCD−Rを作ることに関してはこちらで
メモリーレコーダー
 近年の主流のようです。小型で扱いやすく、マイク内臓で便利です。@内臓メモリーだけのもの、A内臓メモリー+メモリーカードを追加できるもの、Bメモリーカードのみのものがあります。ステレオタイプ(2ch)が主流ですが、4chや8chもあります。

※メモリーレコーダーの注意事項
1. メモリーカードはレコーダーメーカーが推奨するものを使ってください。特に安い(データ転送速度の遅い)カードでは録音が止まることもあります。

2. メモリーレコーダーは、録音レベルが「オート」しかないもの、「オート」と「マニュアル」の切り替えが出来るものがあります。音楽録音では「マニュアル録音」が原則です。

3.ホールなど広い場所の客席で録音する場合は内臓マイクのタイプが、「指向性マイク」のもののほうが、明瞭に録れます。「無指向性マイク」で録音すると、ステージに近ければよいのですが、遠いところではぼやけた音になります。特に手持ち録音の場合、手で擦る音、また聴衆の咳やプログラムをめくる音なども大きく録音されてしまいます。

4. データ形式がMP3ではなく、PCM録音できることが音楽用(=高音質)の条件です。MP3は元データを圧縮して、データサイズを小さく出来る点は良いのですが、音質が犠牲になっています。

5.外部入力(マイク入力及びライン入力)のついていないと、内臓マイクに不満が出たり、ミキサーを通した録音をする場合、使えません。デジタル入力もあれば、なおいいですね。

SONY PCM-D50
 実勢価格6万円程度

信頼性、音質、つくりともにすばらしい。マグネシウム&アルミ筐体で頑丈。5秒のPreRec機能で、音楽開始後の録音スタートでも頭欠けなし。マイクの向きも変えられる指向性マイク搭載。私も録音に行くときには、サブ機として必ずもって行きます。
SONY PCM-M10
 実勢価格3万円程度

D50の弟分で少し小型。各種設定もやりやすい。5秒のPreRec機能も搭載。無指向性マイク内蔵だが、タッチノイズがしないようにリモコン付き。
SONY ICD-SX813
 実勢価格2万円程度

いわゆるICレコーダー。本来は取材、講演会、会議などで使用する。小型でステレオでPCM録音も出来るが、オート録音のみ。ただオートでもこの機種はオート回路に工夫があり、簡易な記録としてはまあまあ使える。


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3.マイクスタンド
 学校の体育館や練習場、音楽室等で吹奏楽や合唱を録音するときには必ずマイクスタンドを使います。出来るだけ背の高いものを使ったほうがよいと思います。といっても一般のストレートスタンドは高くても2m弱のものしか有りません。実はこれではちょっと低すぎます。3〜4mはほしいですね。ただ、一般教室だと、天井の高さがそもそもも3mくらいしかないかもしれません。最低でも指揮者の頭より高くしてください。背の高いスタンドない場合は、しっかりした台を用意して高さを稼ぎましょう。不ぐらぐらするものはいけません。音で台が振動してマイクスタンドからマイクに直接振動が伝わるからです。また、スタンドのネジ類はきちんと締めましょう倒れたり、振動ノイズの元になりします。
← 高砂社 ハイスタンド「MF-40T」 
                (111,300円)

     伸ばせば4mの高さになる。
ブームスタンド →

 いろいろな種類があり、高さやブーム(腕)の長さがいろいろある。ブームを垂直に立てると3mくらいになるものもある。
 一般的なものの価格は数千円から2万円くらい。放送局などの重量級のものは10万円以上。

ブーム部分をはずすとストレートスタンドとして使えるものが多い。

 音楽ホールなどには「3点吊り」といわれる天井から3本のワイヤーでマイクを吊る装置が有ります。 スタンドでは高さを稼ぐ事が難しいのと、演奏会ではスタンド自体が邪魔になったりしますので、このような装置があるのです。私達がホールで録音するときに、この装置が無かったり、よいポイントに無い場合、ホールの天井裏まで上がって上から吊るす事もあります。(一般の方には安全性の面からホール側が許可してくれないと思います)
 さて、このスタンドを立てる位置についてはどうでしょう。ホールや体育館などで録音するときのマイクの前後の位置は指揮者の後方、というより演奏者の最前列から、マイクの種類により1m〜5mくらいでしょうか。マイクの種類や左右のマイクの距離や開き角度によります。
詳しくは、「マイクのセッティングについて」のページで。

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4.マイク延長ケーブル

 たかがマイクケーブルを延長するだけのものですが、されど・・・です。特にコネクター部分は接触不良になり易いので、注意して扱いましょう。また必要以上に長くしない事。ノイズの原因になります。

 もうひとつマイクケーブルを扱う上で重要なことがあります。コードをしまうときの巻き方です。大概、使い終わったら輪の状態で巻いて保管されると思いますが、(言葉で表しにくいのですが)ねじれが発生した状態で巻かないことです。というより、普通に巻いてしまうと、ねじれた状態になってしまいます。よく肘と手のひらとに、ぐるぐる巻いていらっしゃいますが、巻き終わって手からはずしてみると、8の字状に輪がねじれていませんか。この状態で保管すると、ケーブルに癖がつき、次に使用するときに、ケーブルが床に平らにならず、波打って浮いた状態になります。
 なぜ、このような巻き方がいけないかというと、ねじれによってケーブルが傷み、断線しやすくなるのと、ケーブルが浮いた状態のところに足を引っ掛け、マイクやデッキを倒してしまう事故につながります。また、一度ついたねじれ癖は、なかなか直りません。
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