碁盤の端の1線、2線の石、特に1線の石は働きが小さいのは事実ですが、戦いの場において、意外に手筋が発生しやすい地点です。 <右上> この形は星の石に白が三々に打ち込んでよく出来る形です。黒1のオリキリが隅の白に利いています。黒3のキリが手筋で、黒11まで。 隅のマガリ四目の形で白無条件死です。 一線の石が死活に一人前の働きをしました。 <右下> 隅の白6子は取られていますが、4子の方は白先でどうなるかという問題です。 この形は白12、白18が利いているので上方の白石とのワタリが成立します。白12、18を先に利かしても同じですが、絶対の利かしは最後まで残しておくという原則を守ると、こういう手順になりました。(黒17は一寸問題の手ではあります) <左下> 黒21は1線を黒の味方にしなかった為に10目近い損をした例です。 <左上> 黒が1線を味方にして10目近い得をした例。 黒29の時点でA14、A16の2地点は断点でも、1線なので切れない為ワタリが成立していて、白地は大きく減りました。 |
盤端は近くに石がある側の味方ですが、近くにあっても、相手の石数が多ければ、相手の味方になります。従って、接触戦で自分の方の石数が多い時は相手を盤端に追うのが好手になります。 逆に追われた側になったら、早々に諦めるのが好手です。 ただし、盤端に追おうとする場合の位置によっても結果は異なるので、その場合は読みの力を使って判断します。 <右上> 白2子をシチョウで取ります。2方向ありますが、盤端に追うのが正しい追い方です。 <右下> 中央方面にシチョウを追うと厳しいシチョウアタリを打たれる可能性があり、悪手になります。 <左下> 白4と盤端に追えば黒を取れます。 <左上> 4線の石なので、盤端に追っても取れません。 但し、取れなくても、白28までの形は白良しです。 | |
盤端の近くに打てば盤端を味方に出来るのですから、両方の盤端に近い隅が有利であるという結論が出ます。布石で隅を先着する大きな理由です。 <右上> 星の石は4線と4線の交点で隅を味方にしています。 白が3線の交点に打って来た場合、黒12までの形の評価はやはり、黒有利です。隅の白地と黒の外勢の比較に置いて、1手多いけれど黒の石の方が効率が良いと評価出来ます。 <右下> 参考.この形は白13から白17などの交換をすると隅の白に死が待っています。攻防に強い第1線右上の変化参照 <左下> 白19に対して相手を盤端に押し付けようと、自石の弱点を考えないで黒20と押さえると、白21と切られて今度は自石が盤端に押し付けられることになります。 相手が1線、自石が2線の取引は歓迎なので、どんどん2線をオシて下さい。 |
広い方に打てば、狭い方より大きな地が出来る可能性が高い。
但し、欠陥のある広い方という場合は、砂上の楼閣、張子の虎になり、例外です。 <右上> 黒1はR15でなく、広い黒1です。 <右下、左下> 白から打つ場合に白2は左下の白8の方が右下の白2より大きい。 広い方を打つということは、相手に狭い方に打たせることになり、相手を盤端に追うという考え方と通じるものがあります。 | |
広い方を打つという考え方は布石の段階で大切です。広い方へ打てば、相手は狭い方を打つことになります。 <右上> 白1に対して黒2の方を押さえるのが良い手です。 白は狭いところで生きることになります。 参考.黒14はシチョウで取っているという感覚ではなく、白15の逃げ出しに対しては黒16のカケで取ります。 注.「シチョウによる取り」と「カケによる取り」の比較 シチョウの取りは 1.取り方の効率性は高い 2.ダメが1手だけなので、利きは1回のみ 3.利きの内のシチョウアタリは重要性が高い 4.周りの相手の石が強いと取り跡がカケメになる可能性がある <左上> 右上の変化は白が隅に近すぎる白1の三々に打ったのが、工夫不足でした。この形は白25とツケるのが良い手で、右上に比較し、少し大きく荒らすことが出来ます。 |
広い方から打てば、大きな地、大きな地模様が出来ます。この広い狭いの判断は見た目の広さでなく、将来性も含んでの判断による必要があります。 白1が広い方。こちらからカカルのが正しい判断です。 | |
黒の地が気になり、白1からカカルと黒8までとなって、右下の地模様が大きくなり、上辺にも黒の地模様が出来そうになり、白の左上方面の地模様は出来ません。白大変不満の局面です。 | |
<右上> 白1の三々入りに対して、見た目が広い右辺を重視し、黒2と押さえました。黒6で後手になり、白7と打たれてみると、広さが無くなっています。 黒2の段階で、右辺に黒石がある状態であれば、黒2は正しい選択になりますが、無い場合は、将来の形を見据えてない選択となり、悪手になります。 <左下> 左辺に黒石がないこの形では黒8と打ち、白15に対して、他を打つのが正しい選択です。 |
外側に発展力を持った強い石を「厚み」と呼びます。
内側に侵入を許さない「地」と対照的で、「地」が確実なもの
であるのに対し「厚み」は流動的な働きを持っています。
厚みの多くは、相手に地を与える代償として得られる爲、その厚みが生きなければ、相手に与えた地は無償提供ということになります。 <右上> 高目定石で出来る形です。黒S15と打つと白S16と受けるところですが、その状態でも、この黒は上辺への力が強い形です。厚みが働くのは 1.大模様を作る時 2.戦いにおいて、相手の石が近寄って来た時 です。 <上辺> 白1のカカリに黒2と受けるのは、部分的には定石ですが、この配石では疑問手です。 白3とヒラかれると、この白は攻められません。 つまり、攻められないし、大模様も作れません。 <下辺> 白5に対しては黒6といっぱいにハサムのが左下の厚みを働かせる良い手です。白9の戦いになっては、左下の厚みが生きてきます。 | |
<上辺> 黒1、3と勢力を得る定石は、ここでは正しい判断です。 厚みを背景に、黒5、7と攻め、左上の模様を拡大します。 <下辺> この形で、黒9、11と厚みを築いても、働かせる場所がありません。 黒9では、C7等の方向が、白の正しい判断です。 |
完全で将来とも厚みの可能性しかない石は滅多にありません。 大抵は一時的で、相手の石が厚くなってくれば、補強しない限りは弱い石になります。 <右上> 白1の目外しに黒2のカカリから出来上がる形で説明します。 黒6までの形では3対3の五分の形です。 白7と補強した段階では白が厚く、黒の3子は厚みではなくなりました。上辺から白にハサまれれば、黒が攻められることになります。そこで、黒8が必然になり、定石形になります。 <右下> 白11でハサんで来たら、黒12と補強すれば堅実な形になります。 <左下> 白13に対して、黒14と打てば、白15と打たれ、黒の厚みは無くなっています。 <左上> 白が手抜きをすれば、黒16と打ち、白17に黒18と打てば、黒模様が堅固で立体的な好形になります。 | |
<右上> 白1とハサんで来た場合に、黒2とツケる手が成立します。 白3に対しては、黒4を利かし、以下、黒の外勢が有利です。白1が厚みに近づき過ぎています。 <左下> (空き三角なので)筋悪く、白11、13と戦いを挑んで来た場合は黒14のハネツギ、黒18のサガリ、黒20のトビを利かし、黒22と、もたれて戦います。 |
布石を理解するには、後に発生する戦いについての理解が予備知識として必要です。接近戦、接触戦の仕組みが分かった現段階で、やっと布石の説明が可能になりました。
シマリの特徴は下記の通りです。 <右上> 小ゲイマジマリは、隅をがっちり地にし堅実なシマリです。 <左下> 一間ジマリは、左辺に強く働きますが、下辺は裾空きのため隙があります。 <右下> 大ゲイマジマリは、地が大きくなる可能性はあるが、そのために隙が多い。 <左上> トーチカジマリは、参考図書「本筋の打ち方」にも出ていませんが好きな形なのでご紹介します。でも、実戦で使ったことはありません。3手かけているので、厚み、地とも十分な形です。 | |
<右上> 星からは2手で隅を守るシマリは有りません。コゲイマジマリは白2でもコウ生きが残っています。 <右下> コゲイマジマリからはもう一手黒11と打って隅が守れます。 3手かけるなら、上図のトーチカの方が優ります。 ただし、初期の段階で1隅に3手もかけていては、相手に大場に先着され、不利になります。従って、星からはシマリは急がず、大場、大場と打つのが良いのです。 シマリの効用は 1.根拠を持っているのでシマリ自体が厚みで、 攻められる可能性が少ない。 2.10目程度の地を持っている。 の2点です。 <左下> 白12に対しては、左下の厚みを背景に、黒13と攻めることが出来ます。 <左上> 白16についても同様です。 白12、16に白の援軍があった場合には、白12、16に対して黒が攻めるのは難しいのですが、その場合でも、黒のシマリは厚みなので、このシマリ自体が攻められる可能性は少ないといえます。 |
大場と呼ばれるのは主として、辺の星の周辺です。隅から展開して大きな勢力圏を築くのに好適な場所になります。 大場を占めるということは、相手が放置すると、大きな地が出来るということです。従って、相手は打ち込んできます。 碁は、打ち込んだ方が攻められる場合が多いので、打ち込まれる方は、打ち込んで来てもらって、「攻めの得」を得て、有利な形勢に持っていきます。 間違っても、模様に「打ち込んでこないように」願ってはいけません。願うなら、「打ち込んで来て」と願って下さい。 そうです。大場を打つということは、相手が打ち込んでくれるのを待っているのです。 <右辺> 黒1の星下のヒラキが大場。 白2と打ち込むのは黒3以下白の苦しい戦いです。 <下辺> 白8の大場に対しては黒9のツメを打ちます。ツメという援軍を送った後なら、黒N3や、黒M3の打ち込みが狙えます。 白10と打てば、その打ち込みを緩和(打ち込みに対して、白有利に戦いをすることが出来ます)し、白模様を広げています。 <左辺> 白12は模様の拡大を防ぐ手です。黒13と守って、地が固まります。 <上辺> 黒15はあいての模様を浅く消す常用のカタツキです。黒21が一つの形です。 白はヒラキとワタリを見合いと考えて手抜きも可能です。 | |
<右辺> 白1が右下からの白のヒラキの限度です。 これ以上に右上のシマリに近づくと、白7の様に2間にヒラク広さがありません。 <左辺> 白9はワリウチ。左下及び左上に黒の石がある場合に、中間点に打って上下どちらにも2間ビラキが可能になる地点に打つ手をそう呼びます。 |
地と厚みの両方の特徴を持つシマリを妨害するのが、カカリ(掛かり)です。後からの着手によって接近戦を挑むのだから、少し不利になる覚悟が必要です。 もし、相手が手を抜けば、自石の方が多くなるのですから、隅の領有分を多くしたり、勢力をより強くしたり出来ます。 <右上> 白1の小ゲイマガカリに黒が手抜きをすると白3等いろいろな手段を選択出来ます。 <右下> 従って、黒が白9に対して受けるケースが多くなります。黒10は自石を強化して、白9を攻める手、自己の勢力を拡大する手を見ています。 <左下> 黒14とハサンで攻めることもあります。左辺も下辺も打つということですが、黒16以降、黒14が攻められる可能性があります。 <左上> 黒に上辺を打たれたくない場合は、白19等と先着します。 この場合は、白17が攻められる可能性が出て来ます。 | |
カカリから始まる接近戦は、ともに一歩も譲るまいとすれば、接触戦になります。お互いに最善を尽くして出来上がった形を総称して「定石」といいます。これらを覚えておけば、最善の手が分かる訳だから、便利なものです。 定石はよく研究されており、戦いの上で効率的な石の使い方を示す「手筋」も多く含まれています。 <右上> 白は、黒2に対し、白3、5で自石を強化して、白7と攻めようという作戦です。 <右下> 上記が不満の場合に、黒10、12と出切って戦うことも考えられます。その後、お互いに1子ずつ確保した形は定石となっています。 <左下> 黒が左辺と下辺の両方を打ちたい場合の定石です。 |
星の定石の特徴は 1.カカリの方向を選択出来る。 ・辺に石が無い場合はカカリを打つ側が選択可 ・カカられる側は辺に打つことによってカカリの 方向を事実上指定可 2.隅の防御に甘い。 <右上> 上辺からカカっていますが、右辺からカカることも可能です。 カカッたままだと、黒4から、黒6のハサミが厳しい。 <右下> 従って、白9から、白11と守る手が定石になっています。 <左下> 白15の時、左辺へ打たせないことも可能です。この場合は、黒24とシチョウに取るのが、基本定石です。 シチヨウアタリを打たれない様に早い時期に白21の石を抜くのも、良い手です。 <左上> 左辺の定石を嫌う場合は、白27、J17或はK16と単にヒラクのも定石です。 | |
白1に対して、上辺にヒラかれるのを黒が嫌えば、黒2などとハサみます。この場合、白の対策は 1.三々に打ち込む 2.反対側からカカる。(両ガカリと言う) <右上> 三々に打ち込むケース。 尚、黒6をR15にハネると、黒不利になります。 <右下> 両ガカリのケースです。 黒は、黒16のツケ、黒O4のツケ、黒P5のコスミなどがあります。 白は、タイミングによって、三々に入り、一方の石を犠牲にし、他方の石につながります。 <左下> D10方面に黒石があると、三々入りの場合に、右上と反対の黒26と抑えるのが良い手になります。 左辺が良い模様になりました。 <左上> 左下の分れを不満に感ずる場合は、白33などと両ガカリをします。 |