棋力開発…明解 初級囲碁読本   基本編

 20 盤端は崖っぷちのようなもの
   A 第1線、第2線の石は弱い
石が盤端に追い詰められると、取られる可能性が大変大きくなります。出来るだけ相手を盤端に追い詰め、自石は追い詰められないようにするべきです。

<右上>
黒o19の石は白1の切りにより、盤端に追い詰められて取られます。

<右下>
黒T8の石は、周りが全て黒石なので、白13と切られても大丈夫そうですが、白17と、カケる手があり取られます。周りが黒ばかりに見えますが、白13の切りが盤端を白の味方にしたわけです。

<左下>
黒22と打つ初級者がいます。白23と切られると盤端はいっぺんに白の味方になってしまいます。

<左上>
黒32と打って、盤端を黒の味方につけ、白33に対しても、黒36と白E17の切りを防いで、盤端が敵の味方にならないようにするのが定石です。
 20 盤端は崖っぷちのようなもの
   B 第3線の戦い
第3線の石は第2線の石に比較すると取られにくいけど、条件次第ということになります。

<右上>
黒1と切って白の2子、又は1子を取ろうとしたらどうなるか。 結果は盤端に追われて取られるはめになりました。

<右下>
白のダメがP5の様に詰まっていると、結果は逆転します。

<左下>
黒15と切ってきた手に対して、白16と盤端に追って取ろうとしましたが、白は取るには石の力が弱いので、逆に取られました。 黒23は手抜き可を示しました。

<左上>
黒27に対しては、白28とアテて、白30とここの切りを防ぐ程度です。尚、白30は黒が放置すると、白31と打って黒の2子を取る手を見ていますので、黒31と取っておく手が大きい手です。
<右上>
白にQ12の石があると状況が変ります。
でも、白2とアテて、白4と押さえるのでは、Q12の石は働きません。

<左上>
白8とアテて、盤端へ追い、白10と押さえるのが、D12の石を働かせる手になります。

<右下>
味の悪そうな白ですが、黒15と切って、黒17と押さえても手になりません。

<左下>
この形では、白D6以下の2子、又は白C5の石のいずれかを取ると考えれば白地を食い破れます。
黒21と打って、白の2子を攻めます。白が取られないように白22と打ったら、今度は黒23、25と盤端に追って白を取ります。


 21 石の将来性に目を開こう
   A 外勢の価値
部分的なことに囚われて、碁盤全体を見るということがなかなか出来ないものですが、少しずつ視野を広げる様に意識していれば、序々に大局観を持てる様になります。
大局観を養うには、石の発展性、将来性に目を向けて下さい。

右上の分れをどう考えますか。
A.白が10目程度の地を持っているのに、黒には地がないので白有利?
B.黒は広々とした外に向かってこれから大いに働く可能性を秘めた勢力なので、白地の価値を越えており、黒有利?

盤全体を見ると、右上の黒の勢力が右辺、上辺、そして中央方面まで影響力を持っています。戦いが起きると黒の大きな味方になります。また、特に囲うことをしなくても、周辺に地が出来ることも考えられます。

白8の三々入りが時期尚早なので、多分プロの評価は黒有利だと思います。

 21 石の将来性に目を開こう
   B 働きの比較
頭を叩かれて育った子供は頭が悪くなるような気がします。 でも、頭でボールを打つサッカー少年は頭が悪くなることはないでしょうね。頭で叩きに行っているのだから?

碁では頭を叩かれると、石の働きが悪くなるものです。

<右上>
黒が白石を抜くと、アテられて、黒の形が悪くなります。 白4となった形は白がのひのびとしていて働きが良く、黒は狭いところに固まって、仕事をサボっている様に見えます。

<右下>
この形は黒5とノビるのが良い形です。これが働いた形。

<左下>
白がE7に打って来たところです。白6と打たれても、黒7で取れるからと、手抜きをする場合があるかも知れません。この判断はどうなのでしょうか? これを判断する場合に「白6の手」と「黒7の手」を比較します。
 白6 外に向かって打たれており、将来役にたつ石
 黒7 1眼作ったという価値はあるにせよ、将来性は無し
ということです。つまり、白6の方が働いているということです。

<左上>
従って、そういう不利な交換が実現しない様にする手が良い手です。それは、黒9と打つ手です。 右下の「黒5」や左上の「黒9」は初級者の方からは、軽視されがちですが、石の働きという観点から、大切な着手です。


 22 厚みは将来に向けての財産
   A 厚みの価値
地は数字として把握出来ますが、外勢の価値判断はなかなか難しいものです。地が現金とすれば、外勢は設備投資に例えられます。設備はうまく働かせば利益につながりますが、遊ばせておいては宝のもちぐされです。つまり、外勢は使い方次第です。 外勢とにも、強弱があり、強固なものは「厚み」と呼ばれます。

初級者は厚みの働かせ方が分からないので、厚みを軽視する傾向にあります。厚みというのは、意図的に働かせなくても、自然と働いている場合も多いはずです。例えば局後に、石が死ななかったのはなぜか、と考えた場合に、厚く打ってあったことなどが、思い浮かぶかも知れません。

左の図と左下の図を比較してみて下さい。
図の左辺は同じにしてあり、右辺は

左の図は白が厚くなっている状態(厚みが働くの左上の変化図参照)
左下の図は黒が厚くなっている状態

です。
この2つの図を比較して、上の図の左辺の黒3子と、下の図の左辺の黒3子は生きる上で、どう違うと考えますか?
上の黒3子は取られる可能性が高く、もし、仮に活きても、上下の黒に迷惑を掛けそうです。
下の黒3子は取られる心配はなく、逆に、上下の白を攻めることにより、左上や左下に黒地がつきそうです。
 22 厚みは将来に向けての財産
   B 厚みの活用
右辺と左辺に黒の厚みがあった場合の黒の厚みの活用について考えてみましょう。

<右辺>
黒が先着出来れば、黒2と掛かるのが良い手です。 白が先着の場合に、もし、白1と打って来たらどうするか? この場合は、黒2と白の間に割って入ります。白1は右上の黒の厚みが脅威で黒2を攻めることは出来ません。

<左辺>
白3と堅いコゲイマジマリを打ったら、黒は一杯に黒4と詰めます。白5と打ってくれば黒6と自石の強い方へ白を追い立てます。
黒が右上、左上に厚みを作りました。

<右辺>
白1に対して、厚みを働かせるにはどう打つのでしょう。
黒4から黒8まで、これは、厚みを働かせたことにはなりません。
格言に曰く「 厚みを地にするな

<左辺>
右辺の変化に疑問を感じない人でも、この左辺の変化を見れば、右辺の変化が如何に不十分かわかるのではと思います。 白3に対して、 自己の強い石に相手の石を誘い込み、また新たな地模様を作っていくのです。これが厚みを働かす極意です。


 23 シマリは何故大きいか
   A ヒラキに威力
この章から、布石の話になっています。ここが、他の碁の本と違うところで、まず基本知識を先に説明し、その理解の上に布石の話をした方が理解が早いからです。 布石では「一に空き隅、二にシマリ、カカリ」という原則があります。 小目のシマリを例として、何故シマリが大きいかの説明です。

<右上>
黒1がコゲイマジマリです。利点として 1.隅の地を確保 2.辺への勢力を伸ばす拠点となる この第2の利点が大きく、この利点を生かさないとツマリの効果を十分発揮したことにはなりません。

<左上>
「長方形の面積は、周りの長さが一定だと、正方形の時が一番面積が大きい」ということを学校で学びました。碁に応用すると、地は同じ数の石で地を作る場合に、正方形に近い形で作ると一番大きい地になるということです。
右上の形が正に、それです。
拠点となったシマリから、ヒラキにより、立体的な地を目指すのが良いのです。
<右上>
コゲイマジマリ
 欠点 大きな欠点は無い、中央への力は一間にやや劣る
    強いていうと、白P15。S16の様子見

<左上>
二間ジマリ
 欠点 C12、C17等、相手の石が近くにあると色々な利きを見られる

<右下>
大ゲイマジマリ
 欠点 P6、R4、O3に相手の石がある時にはR3が急所

<左下>
一間ジマリ
 欠点 G3の裾、他には欠点少ない、左辺への力が強い

 23 シマリは何故大きいか
   B 星からのシマリ
小目からのシマリは急ぎますが、星からのシマリはそれほどでもありません。星からのシマリはそれだけで、完成しないからです。

<右上>
小目からのシマリ、周囲に白石がない現状では侵略は不可能。

<右下>
星からのコゲイマジマリは白8により、コウ付ながら手がある。

<左下>
左下一帯は小目からのシマリなので、ほぼ黒地

<左上>
左下の形より一路のズレが白18の打ち込みを可能にする。

星からのシマリはもう一手が必要です。

<右上>
黒1がコゲイマジマリからのシマリ

<左上>
大ゲイマからのシマリ

<右下>
一間ジマリからのシマリ

<左下>
二間ジマリからのシマリ

本来、星打ちは、相手に打ち込ませ、それをきっかけに作った厚みにより、戦いを有利にしていこうという作戦なので、3手かけて隅を囲うのは、好まぬ作戦ということになります。


 24 カカリは戦いの始まり
   A ハサミで主導権
シマリとカカリは表裏一体の関係なので、シマリとカカリは全く同じ大きさです。つまり、シマリが10の大きさなら、それを阻むカカリも10の大きさなのです。
シマリを打ちたくて小目に打っても、交互に打つのだから、妨げられるのは当然だし、相手のシマリを妨げれば、次は相手の手番だから、ハサミ等で攻められるのは覚悟すべきです。
ここでは、まず、カカリの種類を見てください。

<右上>
白1はコゲイマガカリ
白R17、白R18等で隅に付け入りやすい位置のカカリです。

<右下>
白3は一間高ガカリです。 ゴゲイマガカリより1路中央に近いので、中央への進み方が速いカカリです。

<左下>
白5は大ゲイマガカリです。
小目の石より一路黒から遠いので、黒の反撃を緩和しています。

<左上>
白7は二間高ガカリです。
大ケイマガカリの性質に一間高ガカリの性質を加えています。それだけに、小目の石に対する付け入りやすさは少ない。

以上4つのカカリは、小目からシマル場合と同じ位置関係にあります。
<右上>
白1とカカリを妨げて来たら、黒2等とハサんで、攻めて、シマリの打てなかった代償を求めます。

<右下>
コゲイマジマリに対する黒のハサミは黒4から黒14までの6種類です。

<左下>
黒16はハサミと言いません。白17と2間にヒラク余地があるからです。
 24 カカリは戦いの始まり
   B 対応を楽しむ
カカリによってシマリを妨げられた代償を求める方法はいろいろ考えられ、周囲の配石を考えながら、どう打つかを検討するのが、布石の醍醐味です。

<右下>
黒1は、右上のコゲイマジマリからのヒラキと白へのハサミを一度に実現する一石二鳥の手です。

<左上>
白4の高ガカリに対しても黒5とヒラマヅメがあります。

ヒラキヅメは絶好とは言っても、後からカカっていった側としては、やむを得ないことです。ハサマレたからといって、それほど苦しくなる訳でもなく、後の打ち方如何です。
<右下>
白1のカカリは隅に少し甘いので、黒2と隅を確保する手もあります。この場合は、白も理想的な二立三析を実現し満足します。


隅を先着する場合には、小目に打たないで、黒8と目外し(モクハズシ)に打って、カカリを誘い、主導権を握るということも出来ます。

<左下>
黒10は白9とカカって来たら、白を圧迫し、下辺を黒の勢力とする意図です。

<左上>
黒14は高目(タカモク)です。黒16は白を隅で生かし、外勢を作ろうとするものです。