私自身のギター製作に関するコンセプトは、まず第1点として単なる箱ものであるギターが楽器として
あるべき姿、つまりは最低限必要な性能を保持させることに重点を置いています。
(1)どのような環境においても壊れにくいという耐久性
(2)色々な演奏者に対応できる弾きやすいという演奏性
(3)どのような演奏スタイルでも応答性の良い広いダイナミックレンジ
(4)ウルフトーンをコントロールした各弦の縦方向・横方向の全体的なバランスの良さ
(5)音量と共に遠達性も考慮したパワフル性能
以上のような項目をクリアした上で主観的項目の範囲である音色の追求をしています。
逆に言い換えればこの部分が各製作家の個性として色々表現されることになり、好みとして
好き嫌いが分かれることになります。
第2点としてその主観的項目である音色に関する表現方法の基本コンセプトについては
(1)倍音成分の豊かな広がりを持つ明るく芯のある高音
(2)楽曲全体を支える意味での基音(最低音)に芯が感じられ厚みのある低音
(3)程よいサスティーン及び減衰率のコントロールによる和音の充実感
などを達成するために、各パーツの必要性及びその関連性を追求して音響学に基づいた振動形態を
コントロールする為のブレイスの配置やその剛性及び組み立て方式を確立することにあります。
その結果として不必要なぜい肉をそぎ落とされ、骨格を重要視した研ぎ澄まされた肉体美を持つ事に
よって、すべての要素において完璧なまでのバランスで構築されたギターが生まれてくるものと
考えています。
そのために必要な要素は、製作家本人が生涯を通しての飽くなき追求・研究と、そして何よりも
いかなる苦難や事象が起ころうとも絶対に諦めないという強い意志によってのみ達成できるのでしょう
これからも生涯現役でがんばります。