Grasshoppers 私的名盤20選
last update: Dec 29, 2001




「私的名盤 20 選」です。 なんとなく1アーティスト1作品で厳選してみました。




1000knives Thosand Knives / 坂本龍一 (1978)

Musician:
坂本龍一、細野晴臣、高橋悠治、浜口茂外也、渡辺香津美、ペッカー、山下達郎

ぼくは坂本龍一のアルバムについて客観的な判断をするのが難しい。 例えば、小中学校の校歌や、昔好きだったアニメの主題歌など、ひょっとすると曲の完成度は低いのかもしれないけど、思い出がいっぱいあって、音楽としての出来不出来は別にして「良い!」と感じてしまうようなところがあるでしょう。そんな感じ。 "B2-Unit", "オネアミスの翼"、"The Last Emperor", "音楽図鑑"、"未来派野郎" あたりのアルバムは、中学校から高校にかけて毎日毎日ひたすら繰り返し聴いたもんだ。もう曲の細部に至るまで刷り込まれてしまっている。もはや信者であるぼくの言葉に重みはないが、そんな中でも "Thousand Knives" は恐るべき名盤だと思っている。


The Mad Hatter The Mad Hatter / Chick Corea (1978)

Musician:
Chick Corea, Joe Farrell, Steve Gadd, Eddy Gomez, Gayle Moran, Harvey Mason, Herbie Hancock, etc.

ぼくの耳にはこれがチックの最高傑作( Friends も捨て難いけど)。作曲編曲演奏、全てにおいてチックの突出した部分がでていると思う。共演者の演奏も力が入っているが、特にHumpty Dumptyでのスティーブ・ガッド! これを聴いたのは高校の終わりくらいだったけど、衝撃を受けて、半年ほど駅前のヤマハにドラムを習いに行ってしまった。もちろんチックのソロもただ事ではないが、採譜してゆっくり弾いてみると、どこがそれほどカッコイイのか良く分からなかったりするのが不思議。良い曲、良い演奏だけでは名盤にはならない。何か言葉に出来ない奇跡が起こる必要がある。 The Mad Hatter には奇跡が詰まっている。


YANO Akiko S席コンサート / 矢野顕子 (1993)

Musician:
矢野顕子、Gil Goldstein, Mino Cineru, Toninho Horta

この作品のみ CD ではなくてビデオなのだけど素晴らしいので紹介する。表現をする喜び、仲間と共に音楽を作る楽しみに溢れているライブだ。ぼくも長年ライブ活動を続けているが、こんなライブは夢だなぁ。ドラムではなくパーカスを採用し、そしてベーシストを入れなかったセンスが良い。Hermeto Pascoal の "Pipoca" を演っているのも個人的にはポイントが高い。ライブビデオは、メセニー、チック、ハンコック、ブレッカー、キースジャレット等々、スゴイのを沢山持っているが、矢野顕子もまったくひけをとっていない。彼女のソロアルバムも殆ど持っているけど、どれも素晴らしいです。


piazzolla The New Tango / Astor Piazzolla & Gary Burton (1988)

Musician:
Astor Piazzolla, Gary Burton, Fernando Suarez Paz, Pablo Ziegler, Horacio Malvicino, Hector Console

日本でピアソラがメジャーになるだいぶ前の話、店頭でこのCDを見つけて、よく知らないミュージシャンだがゲイリー・バートンとの共演だからつまらないことはないだろう、と買ってみたらもうビックリ。こんな素晴らしい音楽があったとは! その後ピアソラ関係のCDは色々聴き込んだけど、最初の衝撃が大きかったせいか、今でもこのアルバムが一番好き。 余談だけど、初めてこれを聴いた時、どうしてもバンドネオンが欲しくなってしまって、散々苦労して(今ほどネットが発達していない頃だったから)、関西に一軒しかないというアコーディオン専門店を調べあて、訪ねた事がある。現在バンドネオンは極めて入手困難且つ高価(運良く見付かっても中古で40万以上)と知って購入は諦めたが、今思うとあの時バンドネオンが手に入らなかったのは良かったのか悪かったのか。


ravel Maurice Ravel Daphnis et Chloe / Cond. Charles Dutoit (1982)

Musician:
Charles Dutoit(cond), Orchestre Symphonique de Montreal

ラヴェルにはこだわりがあって、色んな演奏家や指揮者の物を集めている。 管弦楽曲では、全般的にはミンシュの指揮が好きなんだけど、一枚だけ選ぶとなるとデュトワ指揮の「ダフニスとクロエ」かな。 実はデュトワって特別好きな指揮者でもないし、このCDはみんな誉めるので、敢えて他のを選ぼうかとも思ったが、改めて色々聴き比べてみたら、やっぱり素晴らしかった。繊細でありながら暴力的な、知的でありながら狂気じみた楽曲が見事に表現されていて、細かいところにまで耳の行き届いた隙の無い演奏だと思う。ラヴェルの他の曲では「スペイン狂詩曲」「マ・メール・ロワ」などが好きだが、こちらはミンシュ指揮のものが良い。


Kind of blue Kind of Blue / Miles Davis (1958)

Musician:
Miles Davis, Bill Evans, Winton Kelly, John Coltrane, Canonball Adallay , Paul Chanbers, Jimmy Cobb

マイルスから一枚となると、ホントは Wayne, Herbie, Ron, Tony とのクインテットから選びたい気持ちもあるけど、熟考の末このアルバムにしてみた。 トラディショナルな4ビート作品としては最高峰に位置する傑作だと思う。 "So What" でのマイルスのスペイシーなソロと、エバンスのバッキングが素晴らしい。 そしてエバンスのピアノソロの不敵なカッコよさ! ぼくらが良くなじんでいるジャズ的な節回しとは全然違う。"All Blues" のエバンスソロ(こっちはちょっと惜しい演奏)と聞き比べると、これはかなり挑戦的な狙ったラインだったんじゃないかな。この路線をもっと深く追求して欲しかったなぁ。


morricone The Very Best of Ennio Morricone / Ennio Morricone (1998)

Musician:
Various Artists

モリコーネの代表作を網羅しているお得なベスト盤。「荒野の用心棒」と "Once upon a time in America" のテーマが目当てで買ったのだが、驚かされたのは「続・夕陽のガンマン」のテーマ。才気が迸っているというか、こんな曲が作れてしまう人の頭の中って一体どうなってるんだろう? 話は変わるけど、モリコーネが素晴らしいのは言うまでも無いが、イタリア映画音楽界は Armand Trovajori や Piero Umiriani など優れた作曲家の宝庫だ。しかしながら、当然レンタル店に彼らの音源が置いてあるわけがないので、CDを購入する羽目になってしまう。ただでさえ貧乏なのに、まったく困ったもんだ。


Vinnie Coraiuta Vinnie Coraiuta / Vinnie Coraiuta (1994)

Musician:
Vinnie Coraiuta, Sting, Chick Corea, Herbie Hancock, Michael Landau, Neil Stubenhaus, David Sancious, Pino Palladino, Steve Tavaglione, Dominic Miller, Mike Miller, David Goldblatt, Jeff Beal, Tim Landers, etc.

インストのロック・フュージョンなのだが、様々なアイデアがふんだんに散りばめられているのに全然うるさくなく、クールで知的なアルバムに仕上がっている。ゲストは豪華だし、ヴィニー・カリウタのドラムも文句無く素晴らしいが、それ以上に彼の作編曲、サウンドメイキングのセンスの良さが際立っている。どれくらい売れたか知らないけど、多くの人に聴いてもらいたいアルバムだなぁ(一般ウケはしないだろうけど)。やっぱりと言うか、キメのフレーズがフランク・ザッパを彷彿とさせるのが面白い。ちなみにM‐2でベースを弾いているピノ・パラディーノは、エレベでは最も好きなプレイヤーだ。


travels travels / Pat Methey Group (1982)

Musician:
Pat Metheny, Lyle Mays,

メセニーの素晴らしい作品群の中から一枚だけ選ぶのは非常に困難だけど、散々迷った末に "Travels" にした。 メセニーの魅力は、作編曲の素晴らしさやバンドのサウンドなど色々あるけれど、やはり彼のギターから紡ぎ出される音そのものが良い。 このアルバムでは一曲目 "Are you going with me?" のギターシンセソロが凄い。聴いていて息苦しくなるほどの切ない演奏で圧倒されてしまう。これは一世一代のソロだと思うけど、メセニーのギターは今の方が明らかに上手くなっているところがまた凄いんだよな。


chaka What cha' gonna do for me / Chaka Khan (1981)
(邦題:恋のハプニング)


Musician:
Chaka Khan, Larry Williams, Anthony Jackson, David Williams, Hamish Stuart, Steve Ferrone, David Foster, Michael Brecker, Hiram Bullock, Herbie Hancock, Arif Mardin, etc.

チャカ・カーンの初期3部作("Chaka", "Naughty", "What cha'〜")は全部好きなのだけど、1枚だけ選ぶとすると、3枚目にあたるこのアルバムかな。いつもながらチャカのボーカルは素晴らしいし、参加ミュージシャンもツワモノ揃いで、ハンコックの有名なシンセソロを始め、それぞれが好演しているが、このアルバムの最大の魅力は、楽曲の良さとアレンジの完成度の高さだと思う。緻密なアレンジなのに、こざかしく聞こえないのはスティーヴ・フェローンのドラムに拠る所が大きいんじゃないかな。 まさに適材適所。アリフ・マーディンのプロデュースセンスが光る。


Bill Evans Bill Evans Trio with Symphony Orchestra / Bill Evans (1973)

Musician:
Bill Evans, Chack Israels, Larry Bunker, Claus Ogarman(arr),

エバンスから一枚というのも難しい。リバーサイドの4枚はモチロン、Jeremy Steig, Tom Harrell, Jim Hall などとの共演盤や、自己多重録音作品、Marc Johnson が疾走する最後のトリオなど、もう全部好きだ。なぜこれを選んだかというと、オガーマンの弦が異様にカッコイイのと、コピーしたわけじゃないのにピアノソロを全部歌えるから(ちゅうか、エバンスの気に入っているアルバムは、どれもピアノソロを歌えるくらい聴き込んでいるんだけどさ)。アルバム冒頭の曲がカッコイイ。4曲目の "Time Rememberd" は、エバンスのオリジナルでは一番好きな曲だ。オガーマンの曲も非常に印象的。


Debussy Franck · Debussy · Ravel Violin Sonatas /
Shlomo Mintz · Yefim Bronfman (1985)


Musician:
Shlomo Mintz, Yefim Bronfman

ドビュッシーも好きな曲が多くて迷うが、ここでは晩年のヴァイオリンソナタを推す。今ではもっとも好きな作曲家だが、最初はソナタ集がきっかけで熱心に聴き始めたので思い入れが強いのだ。茫洋とした浮遊感のある曲が多い彼の作品の中では、力強く分かり易いメロディーが主導しており(ヴァイオリンソナタだから当たり前だけど)、初心者にも馴染みやすいと思う。ただ、この曲ならもっと優れた盤もあるに違いない。 というのは個人的にミンツがもうひとつなのだ。一方ピアノのブロンフマンの演奏は素晴らしいと感じたが、ライナーの解説は大半がミンツの紹介に割かれており、ブロンフマンについて詳しい紹介は無し。どうしてだろう? ちなみにミンツはシベ協も持っているが、これもピンとこない。ぼくとミンツとは相性が悪いらしい。他に良い演奏家のCDをご存知の方がいたら教えてください。 併録のフランクとラヴェルのソナタも良い曲です。


MINT JAMS Mint Jams / CASIOPEA (1983)

Musician:
野呂一生、向谷実、櫻井哲夫、神保明

大学時代、ぼくは軽音楽部でカシオペアの曲を20曲以上コピーしたが、他校とのジョイントライブでシリアスなジャズバンドに混じってカシオペアをやったら失笑を買ってしまった。 「おおっカシオペアか、よしよし」ってな感じ。 まあ、言いたいことも馬鹿にするわけも分かるが、初期〜中期の曲は本当にカッコイイし良く出来ていると思う。 どうも一種の叩き台というか踏み絵のようになっているような気もするけど、どうなんでしょうね。 ぼくはやっぱり好きだよ。


M M / 菊地雅章 (1995)

Musician:
菊地雅章

菊地雅章の素晴らしさは、和音の美しさと、「間」に漂う緊張感、それと手癖に依らないプリミティブなソロのラインだと思う(言いたくないが、あの唸り声もそれなりの効果を上げているかもしれない)。コードを見てアドリブする程度のことなら普通にジャズを勉強すれば誰にでも出来るが、ここにはよくある常套句は見当たらないし、こういうピアノはなかなか弾けるもんじゃないと思う。華麗な技巧が凝らされているわけではないのに、それでもじっくり聴かされてしまうのは、安易な手段を取らずに果敢にチャレンジしてるからだろう。このアルバム以外では、ヘレン・メリルと共演してる盤なども好き。


yes Close to the edges / YES (1972)
(邦題:危機)


Musician:
Jon Anderson, Bill Burford, Steve Howe, Chris Squire, Rick Wakeman

普段ジャズやクラシックを聴くことが多いけれど、たまにヘヴィで暴力的な音楽が聴きたくて堪らなくなることがある。でも普通のロックは、どうも物足りない…。 そんな時にはプログレだ! プログレといえば、変拍子や超絶技巧的な演奏ばかりに焦点があてられがちだが、YES の最大の魅力は作編曲の見事さ、ポップでキャッチーなリフやメロディーにあると思う。もちろん演奏も個性的で素晴らしいのは言うまでもないし、シンセマニアとしては、黎明期のアナログシンセが活躍しているところも見逃せない。ただ、やはりこの時代が絶頂期で、だんだんパワーが落ちていくのは否めないが。


EL&P Brain Salad Surgery / Emerson Lake & Palmer (1973)
(邦題:恐怖の頭脳改革)


Musician:
Kieth Emerson, Greg Lake, Carl Palmer

ぼくはキース・エマーソンのファンだ。当然「展覧会の絵」のビデオなども持ってる。彼らは上手いのか下手なのかよく分からないところがあるけれど、「凄い」ということだけは断言できるな(笑)。「タルカス」も良いけど、彼らの最高傑作は、やっぱりこれでしょう。特に「悪の教典#9 第1印象」の、歌から楽器のソロになだれ込み、そして高められていく緊張のなかで、ギターによるテーマが奏された時に訪れるカタルシス! いやぁ、やっぱりプログレはこうでないとね。大変アツイ演奏で結構なことだが、それ以上に作曲アレンジが素晴らしい。エマーソンといえば派手なパフォーマンスやテクニック面で語られることが多いが、作編曲家としても高く評価したい。


jamiroquai Travelling Without Moving / Jamiroquai (1996)

Musician:

初めて彼らの1stを聴いた時は、なかなか良いんだけどちょっとガチャガチャしてて作編曲がもうひとつ洗練されていないように感じた。2ndでは、うるさかった部分が削ぎ落とされ、よりバンド的なサウンドになったのもぼくの好みだったけれど、まだ強烈に心に残るような曲は少なかった。そして高まる期待の中、この3rdアルバムの登場! ポップなメロディーに無駄の無いアレンジ。90年代のポップ・アルバムの最高峰だと思う。 ちなみに4thアルバムは個人的にはイマイチでした。ベーシストが代わった影響も大きいんじゃないかな。


naxos 日本作曲家選輯 / 東京都交響楽団 cond.沼尻竜典 (2001)

Comporsers:
外山雄三、近衛秀麿、伊福部昭、芥川也寸志、小山清茂、吉松隆

NAXOS は、ぼくのような貧乏人には本当に有難いレーベルなのだけど、国内ですら蔑ろにされている邦人作曲家の埋もれた曲を CD 化するという企画は、もう素晴らしくて涙がでそうだ。しかし、こんなプロジェクトは、本来なら国が金を出してでもやるべきと思うけどなぁ…。 この第1集は、演奏は手堅いし、録音も選曲も良いが、白眉はやはり吉松隆の「朱鷺によせる哀歌」だろう。タイトルが喚起する視覚的イメージ、なんとも切ない旋律、音響効果など、どれをとっても文句の付け所が無い。超名曲。正直言って吉松の近作は好きではないが、「朱鷺」を始めとする初期の作品の美しさ瑞々しさは特筆に価する。こういう曲が海外に紹介される意義も大きいよなぁ。 NAXOS のこのシリーズには、今後も期待したい。


CD Sensyo 1978〜1980 CD 選書ベスト (1978〜1980)

Musician:
久保田早紀、山口百恵、岸田智史、松田聖子、シャネルズ、ジュディ・オング、ハンド・ドッグ、南佳孝、郷ひろみ&樹木希林、ショーグン、太田裕美、五十嵐浩晃、五輪真弓、中原理恵、渡辺真知子、ばんばひろふみ

結局、物心ついた頃から中学校くらいの時までに聴いた音楽というのは、特別な思い入れがあるし、一生忘れられないものだろう。ぼくにとっては、70年代後半から80年代にかけての歌謡曲は、今聴いても良いなぁと思ってしまう。 松田聖子とか中森明菜とか安全地帯とかCCBとか。歌謡曲に関するCDでは、「青春歌年鑑」という42枚組みのシリーズが最強だと思っているのだけど、流石に全部集めるのは費用がかかりすぎるので(ぼくは全部レンタルした)、廉価な"CD選書"のベストを紹介。筒美京平の最高傑作「魅せられて/ジュディ・オング」や、山口百恵の「いい日旅立ち」、坂本龍一がアレンジした「南佳孝/モンロー・ウォーク」など、おいしい曲が入ってます。


omni sight seeing omni sight seeing / 細野晴臣 (1989)

Musician:
細野晴臣、コシミハル

私見だが、細野晴臣ほど「天才」という言葉が似つかわしい音楽家は少ないのではないか? アルバム毎に作風もコンセプトもガラリと変わってしまう人なので、どれをもって代表作とするか難しいのだけど、このアルバムがもっとも聴きやすく且つユニークだと思う。しかし細野晴臣には、映画音楽やポップスのフィールドで、もっと活躍して欲しいなぁ。「銀河鉄道の夜」「源氏物語」のサントラは素晴らしかったし、松田聖子、中森明菜に書いた曲も良かったし、ベースも抜群に上手い。まだまだ過小評価され過ぎているような気がする。「人形劇 三国志」や「NHKニュース」のテーマなど掘り起こして欲しい音源も沢山あるんだけど、まとめてCD化してくれないかな。



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懲りずにもう20枚選んじゃいました






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by ようすけ