自動車塗装の自分史とSL蒸気機関車写真展〜田辺幸男のhp
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154. 「えぞひつじぐさ(睡蓮)」の花咲く頃 ・函館本線/岩見沢〜旭川

〈0002:33−29:睡蓮の花〉
33−29:睡蓮の花咲く頃の重連貨物・函館本

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〈紀行文〉
 東日本大震災の起きた2011年の春のこと、昭和49年7月上旬に道北に宗谷本線・名寄本線を訪ねた時のアルバムのフイルムを検討していた時のことである。その中で、「すいれん(睡蓮)」の花が沼の水面を一杯に埋めていた光景を前景に重連貨物列車を撮ったフイルムを見付けたのが、ここに掲げた作品である。この構図が、既にアップしてある〈224.朝の大沼公園駅発車・函館本線〉に“おまけ”として展示してある「睡蓮(すいれん)の花咲く大沼公園」と題する作品に良く似ていた上に、睡蓮の花の描写がより優れていたこともあって、すっかり再び大沼公園で撮ったものと早合点してしまい、昔の写真と差し替えてしまったのだった。
ところが、この写真を閲覧されたプロ写真家の長谷川智紀さまから、「架線柱が建っているので大沼公園ではないようだ」との指摘のメールを頂いたことから、あわてて再び元の写真に戻したのだった。
 しかし、お蔵入りにするには惜しい気がしたので、なんとか撮影地点を思い出そうと苦慮していたのだった。そこで、《米坂線の蒸気機関車》のサイトを主宰しておられる鈴木さまに画像を考察していただいた所、「確かに架線柱のようであり、また前補機は門デフを装ったC58であろう。」との教示を頂いたのだった。
これらの二つの示唆を踏まえて次のように落ち着いたのである。
先ず、架線柱であるが、撮影当時の北海道の電化区間は約5年前に完成した小樽−旭川間であったことである。一方のC58の配置については、函館本線との共用区間を持つ千歳線の貨物列車の補機仕業に当たっていた苗穂区のC58は既にその年に廃車となってしまっていたが、北見機関区には門鉄デフで知られるC5833を初めとして、北海道独特の「「北海道形切り詰めデフ」を付けたC58などの6輛が活躍していたのだった。これは前部デッキ部分に雪が溜まるなどの問題があったため、除煙板の前部を切り詰めたもので、門鉄デフとは趣が異なったモノであった。
それ故にC58が整備のために苗穂工場へ有火回送されるチャンスがあったであろうと思われたのであった。そんなことから、フエリーを苫小牧港で下船して、国道12号線を北上して道北に向かうドライブの途中の「どこか」で撮ったのであろうと推察しているのである。それにしても、北海道のC58が消えたのは1975年6月のことだから、これは奇遇のたまものと云えるだろう。
 さて、撮影場所の詮索はこれ位にして、ここからは「すいれん(睡蓮)」の話題に入ることにしたい。
「すいれん(睡蓮)の花」と聞けば、関東では群馬・新潟・福島の三県境にある「尾瀬沼」に咲く「ひつじぐさ」が名高い。これは「スイレン科」の多年生水草で、「スイレン」の原種の一つで、日本唯一の在来種であり、池沼、川に自制して、本州から九州に分布している。地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。葉は円形から広楕円形で円の中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る。葉の表面には水をはじく撥水性はない。多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、「スイレン」では葉の表側に分布する。夏になると根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5-10cmほどの白色花をつける。そこには多数の花弁がある。その名は、未(ひつじ)の刻(午後2時ころ)に開花するとして名付けられたが、実際は午前中に開花すると云う。花言葉は花の清楚な感じから『心の純潔、純情・信頼』であるとか。
一方の北海道では、先に述べた大沼公園に咲き誇る「えぞひつじぐさ」が有名であり、これは北海道や東北地方、そして東アジア・シベリア・ヨーロッパに分布している「すいれん」の基本類であるとされる。この種の葉の切れ込みは深く、花弁の幅が広いのが特徴とされるが、日本古来の「ヒツジグサ」との明確な判別をすることは難しいようだ。
これらの自然の中に自制する「ひつじぐさ」は白い地味な色の花を水面に咲かせているのに対して、私たちの身のまわりにある「睡蓮」は赤や黄色などの多彩な色の花だったり、水面から高く花を咲かせたりしているのを見受けるが、これらは熱帯種などを園芸種として出回っているものなのであった。この園芸種に付けられた「睡蓮(すいれん)」の語源は、日中に花びらが開き午後になると閉じる様を人間のサイクルに例えて、日中(開く=目覚める)、夜(閉じる=眠る)というところから、「睡眠する蓮」→「睡蓮」となったと云う。この水面を埋め尽くすように咲き誇っている花も、朝開いて午後に閉じることを3回繰り返す、つまり3日繰り返すと花の寿命は終わるのであるが、次から次に新しい花が登場するのだとは気が付かなかった。北海道では平地や海沿イから高原の湿原の水辺に自生の「すいれんの花」お楽しむことが出来たのだった。

撮影:昭和49年(1974)