今日はあいにくの雨だ。
といっても、フィレンツェの観光は、
ウフィッツィ美術館なので、大した影響はない。AとOは用意が悪く、
傘を持ってきていない様子。
が、美術館まで歩いて向かっていると、
白人ではない、おそらくは移民系の人が、
折りたたみ傘を持って、こちらに向かってくる。「はぁ、助かった」
とA・Oの両人が声を上げる。
お値段、10000リラ(約520円)。
物価が安めのイタリアにしてはちょっと高い気もするが、
日本の感覚では、まぁこんなもんだろう。Kは、一応傘を持ってきてはいたんだが、
傘を広げると、傘の骨がまともなヤツよりも、
折れているほうが多く、不格好にしか広がらない。
あんまりにも、みっともないので、
同じツアーのお姉さんに、
「ここで、買ったら?」
と言われ、Kも傘を購入。
# 持ってく傘ぐらい、どんなのか確認しろよっ
# と言いたくなったが、
# タイからの連続旅行ということを考えると、
# そんな余裕はなかったか。さてさて、ウフィッツィ美術館である。
ここは、世界三大美術館のひとつに数えられるそうだ。
かつてフィレンツェを支配し、
ルネッサンス芸術の強力な保護者となった
メディチ家のコレクションという。
# といっても、後の二つはなんだろう?
# 大英とルーブル、かな?所蔵されている絵がたくさんあるので、
ガイドは有名どころだけを、
なんだかんだと背景を交えて、説明している。今回のツアーで、この美術館を
楽しみのひとつと考えていたKとしては、
絵は別に説明してもらわなくても、
自分は自分の鑑賞の仕方があるんだから、
自分のペースで見たいらしい。確かに、それは同感。
が、しかしこれはツアー、だ。
ツアーの悲しさ、ここに極まれり。
ガイドの説明を無視して、
好きな絵を見ていくことはできても、
ガイドの説明が終わると、
ガイドの誘導について行かねばならぬ。ま、それでも気になった絵が少しあった。
まず一つ目は、フィリッポ・リッピという画家の、
『聖母子と二天使』。予習していった中にあったルネッサンス期の画家、
ボッティチェリの師匠に当たる人らしい。
この人、聖職者は結婚禁止なのに、
同じ教会の修道女と結婚しちゃって、
(もちろん聖職者を辞めて)
その妻と自分の子供をモデルに、
聖母マリアとキリストを描いている。
# ってことは、自分は神?でも、素直に、
「あっ、きれい!」
と思った。次は、フィリッポ・リッピの息子、
フィリッピーノ・リッピ、
『東方三博士の礼拝』。これは別に絵がどうのこうの
ということではなくて、
端に黒人が描かれているというのが、
気になった。ガイドの説明を少し聞きそびれてしまったのだが、
この絵が書かれた当時か、
それともこの絵の題材になっている当時かの、
どちらかであろうが、黒人と交流があった証拠になっているらしい。大航海時代を迎え、ヨーロッパ人が世界に進出していったとき、
彼らが、黒人をどのように扱ったかは、
歴史が示しているとおりであるが、
いつからヨーロッパ人の黒人に対する見方が
変わったのだろうか、
なんて、考えてしまった。世界史でなじみのあるボッティチェリの
『春』や『ヴィーナスの誕生』は、
見慣れているせいか、
「あぁ、あれね」
という軽い感覚で済んでしまった。さらに、全部回った後のわずかなフリータイムで、
Kと一緒に少し戻り、もう少し見て回ることができた。ある貴族が、火が燃え盛っている火鉢を指差している絵があった。
「なに、これ?」
と、Kが訊いてくるので、
「これを触るなって言っているここの事務員じゃないの?」
なんていうバカな会話を交わす。さらにそのとなり。
上空に聖母マリアやキリストが見えるのを、
民衆が眺めている絵がある。
が、関心はなぜか、右隅の男に向かう。…香取慎吾、だ。似てる。
目をつぶって、隣の男に何かを渡そうとしているのだが、
そう思いこんでしまうと、今にも
「おっはー」
とか、しそうな気がするのが、不思議だ。
# いや、これは自分だけかもしないけど。さて、美術館の出口の売店で
小さなガイドブックを買って、
二回目のショッピングタイム。ローマでもそうだったが、
ここでも店員はすべて、日本人だ。
特に、ここは大阪の人間のようで、
ベタベタの大阪弁で、営業パワーフル回転。
# イタリアの来てまで、こんなのはいらんぞ。同じところにいてもつまらないので、
Tと一緒に、フィレンツェの街を歩く。
途中、同じツアーに参加しているおばさんを見つけ、
Coinというデパートを教えてもらった。何だかんだと売っているが、どうもパッとしない。
が、最上階に行くといろいろ面白いものがあった。
まずは、携帯電話。ドイツでもイタリアでも
携帯電話で話している人は、たまに見かけるのだが、
なにせ持っている機体がデカイ。
日本じゃ、5〜6年前にあったようなヤツだ。それと着信音。
日本じゃ、着メロなんて当たり前、
最近じゃ16和音だとかなんとか言っているが、
イタリアは、未だに味気ない音だ。
ちょうどnikko81が生まれるちょっと前に流行ったらしい
インベーダーゲームの音声レベル、
というと分かりやすいかも。ま、さすがにここで売っているのは、
最新型なので、形は小さくはなっているが、
まだそれでも少し大きい。
いや、ひょっとするとヨーロッパ人は
手が大きいから、あれぐらいがちょうどいいのかもしれない。
# さすがに取り出してみるわけにもいかないので、
# 着信音は分からなかった。さて、その他。
ソニーショップは無視。
だって、日本と変わらんから。その向かい側でマウスを見つける。
機能的には、スクロール機能付の普通のPS/2マウスだ。
でも、形がおもしろくて、UFOのかたちをしていた。
見た瞬間、お買い上げ。
49000リラ(約2600円)。こういうの、日本でもあるんだろうか。
まだ、東京・秋葉原は行ったことがないけど、
大阪・日本橋ではこんなマウスは、見たことがない。
日本橋では、光学式マウスとか、
コードレス・マウスなんかに興味が行くので、
見落としているだけかもしれない。さて、集合時間まであと少し。
ちょうどいい時間だ。
下の場所に戻って、再び団体行動。
昼食を済ませたあと、バスに乗り込んで、
斜塔で有名なピサへ向かう。イタリアのドライバーは、
雨が降ったときも、
ヘッドライトやテールライトを点灯させている。
車の扱いはどうやら粗雑なようだが、
安全に関しては、手動が徹底しているのだろうか。高速道路を降りて、さて、もう着くな、
という、まさにそのとき。
出口を出てすぐのところで、
警察に捕まる。はぁ?
何も悪いことしとらんぞ?ドライバーのアンジェロは、バスを停め、
警察官と何か話している。
アンジェロは、何かを警察官に訴えているが、
警察官は訝しい顔をしている。そこで、イタリア語の分かる添乗員が外に出て、
事の顛末を聞いてきてくれた。それによると。
イタリアでは、バスの制限速度は100km/hと決まっているそうだ。
で、警察官は、100km/h以上で走ってきただろう、
と疑っているのだという。んが、このバスは元々、どれだけアクセルを踏んでも、
100km/h以上はでない構造になっており、
警察が疑っているようなマネは、構造的に無理だ。
さらに、バスの後ろには、CDみたいな円盤がはめ込んであり、
逐一、バスの速度をチェックするようになっている。
だから、それを調べれば分かるのだが、
そこで100km/hとなっているのに、それを見ても納得しない。そんなことで30分も、なんだかんだと話している。
当然車内からは、文句が出る。
そこで戻ってきていた添乗員が
イタリア語で言う悪口を教えてくれる。「バッファンクーロ!(=どっか、行け!)」
車内、バッファンクーロの嵐。
お、どうやらアンジェロも戻ってきた。
バスが動いて一件落着と思ったら、
そうではない。
100km/hで走っているかどうか見るから、
もう一度高速に戻って、アクセル全開で走れ、
というのだ。なにさすねん。
んで、しばし走ってまた取調べ。
どうやらそれでも100km/hという結果らしい。
# そりゃそうだ、100km/h以上出ないんだから。結局、後ろの円盤を新しいものに交換し、
それで走れ、とのこと。
やれやれ。
どうでもよさそうなところで、
イタリアの警察は厳しいなぁ、とこのときは思っていた。しかし、あとでよくよく考えてみると、
観光客を乗せたバスが特に厳しいのは、
うなずけなくもない。
というのは、もし観光客を乗せて、
140km/hとか150km/hとか、
スピード・オーバーで走っていて、事故がおきたら。観光業が重要な位置をしめるイタリアでは、
事故が起きたということで観光客が減ることは
かなりの痛手になるはず。
特にそれが、経済的に重要な日本人となるとなおさらだ。とまぁ、こんな具合で、ピサに着くのが1時間ほど遅れた。
予定では4時だったのだが、もう5時を過ぎていた。
なんとこのために、ピサの聖堂にはもう入れないらしい。教会が観光客の入ることのできる時間を5時に設定しているのは、
京都の神社・仏閣が同じく
5時ごろに設定しているのとは理由が違う。
京都の神社・仏閣の場合、
5時からお勤めが始まるとか、そういう話は聞いたことがない。
# いや、これは知らないだけかもしれんけどね。このピサの聖堂は、実際に5時からミサが始まる。
だから、観光客の入場はお断り、というわけだ。同じツアーの参加者の中には、
安いツアーで、ピサが入っているからこれにしたのに、
ピサの聖堂に入れんとは、
どういうこっちゃ、と怒り心頭の御仁もいた。
# そら、怒るわな。ま、とにかくピサの斜塔と聖堂へ向かう。
バスの駐車場から、そこまでは、
遊園地の中を走っているような、
まるで子供用みたいなバスに乗って行く。どうやらこんなのに乗るのは日本人だけらしく、
地元の高校生ぐらいの女の子が、しきりに笑っていた。
# それも笑顔ってんじゃなくて、
# うっわー、あっほちゃう、みたいなそんな笑い方。
# え?自意識過剰?そりゃそうだろう、誰が見たって笑うはずだ。
でも、乗っているほうからすると、
カッコ悪いことよりも両側に扉がないので、
危なっかしいことこの上ない。
# こんなバスが一般の車道を走っていいのだろうか?ま、何にせよ、ピサの斜塔が見えてきた。
入ったところからは、一番奥に斜塔が見える。
我々のツアーが遅れてやってきたために、
現地で待ち合わせていたガイドは、
もうどこかへ行ってしまって、そこにはいなかった。
なので、どうしてあの斜塔が傾いているか、
などは分からずじまい。
# 添乗員に聞けばいいのだが、
# そんなことは忘れてしまっていた。もうどうしようもないので、しばらく自由行動となる。
ここでじっとしてても、しょうがないので、
斜塔に近づいて、写真をとったりなんかして。
が、ある点まで近づいたとき。…!!!
えっっ〜〜!!なんと一本のワイヤーが、斜塔を支えている!
つまり、そのワイヤーがないと斜塔は倒れてしまうのだ。
ぃや、本当はワイヤーを張って
傾き具合の目安を図っているのかもしれない。
が、1時間遅れで到着した我々を、
ガイドさんが待ってくれてはおらず、何も分からずじまい。なんじゃ、そりゃ。ガックリ。
ホント、聖堂には入れないし。
踏んだり蹴ったりとはこのことか。斜めに傾いたコーヒーカップという、
ほとんどネタにしか使えないような土産品を買って、
すごすごと立ち去る。
はぁ。疲れた。
さっさとフィレンツェに戻ろう。もう日が落ちたフィレンツェでは、
街角が電球で飾られていた。
もう12月に入って、キリスト教圏では最大のイベント、
クリスマスを控えているためだ。写真を1枚…
っと、カメラをバスに置いて来た。
はぁ、まったく、どうなってんだか。まぁ、いい。
さっさとメシ食って、ホテルに帰って、
風呂にでも入って、さっさと寝よう。おやすみぃ。