さて、エレベータでさんざん驚かせてくれた
ホテル・カブールだが、
ここでは1泊なので、今日で終わりだ。
このままだと褒めるところがないのだが、
朝食に出たハムがうまかった。
それだけ。
# 褒めるところがハムだけ、
# というのも、寂しいもんだが。さて、ホテルを出発し、ナポリ市内を観光…
と行きたいのだが、ナポリは特に治安がよろしくないらしく、
バスから降ろしてもらえないのだ。
しかたなく、車窓から眺める。ナポリに限らず、イタリアの大きな町の中心街は、
車道ですら石畳になっているところが多い。
これが、オペラ劇場や中世の古城などとよくマッチしていて、
とてもよい感じだ。
# 実際地元に住んでいる人は
# どう思っているか知らないけれども。バスの中で添乗員がいろいろ説明してくれている。
イタリア人は運転がうまいというか、
強引というか、路上駐車するにしても、
車間距離をぴっちりと詰めて、
前後のバンパーをぶち当てて
車道に出る人が結構いるらしい。それを実証するがごとく、
見かける車は、バンパーだけではなく車のボディでさえも、
へこみがたくさん見られるものが多い。
さらに、イタリア人は、車をあまり掃除しないようだ。
泥だらけの車の多いこと多いこと。
前後の窓ガラスも同じく汚れていて、
ワイパーが、ガラスを拭いた跡がくっきりと残っている。車を、一種のアクセサリーやステータスのように考えている
日本人からは、到底考えられない。
車にばかり、お金をかけすぎている人を知っているので、
もう少し車に振り回されずに、きちんと道具として扱わないと、
と思っていたが、ここまで来るとさすがに
もうちょっと大事に出来なのかいな、と思う。車をきれいにしすぎて、土足禁止!
なんてことをしている日本人がいると聞くと、
イタリア人は、「マンマミーヤ!(=なんてこった)」
と言って驚くだろうな。途中景色のいいところでちょっとバスから降ろしてもらい、
「お写真タイム」をとってもらった。
陽気なナポリ人ガイド・アントニオと
バスのドライバー・アンジェロと写真を撮る。さて、その後はポンペイ遺跡に向かう。
ポンペイは、ローマ帝国の初期の紀元79年、
近くにあるヴェスヴィウス火山の爆発で、
その火山灰で埋まってしまった街だ。はじめは何か単なる廃墟のようで、
なんだかなぁと思っていたが、
先へ進むにつれ、いろいろとおもしろいものが現れてきた。ポンペイの町のほとんどは石で作られている。
もちろん、歩道も。
その歩道は、少しくぼんだかたちになっていて、
所々、家々をつなぐ横断歩道のように、
石が出っ張っている。ナポリ人ガイドのアントニオの話では、
これは大雨が降ったときに
足元をぬらさずに、歩くためのものなのだそうだ。
しかも、石と石の間は、ちょうど馬車の車輪の幅になっていて、
晴れている日に、馬車の通行を妨げないようにもなっている。
また、その歩道に現代でいう、
反射板の役割をする石が、多数はめ込んであった。この時代は、歴史家の中には、古代を歴史の大きな節目と考え、
このローマ期を古代文明のひとつの完成像、
として見なしている人もいるくらいで、
生活の水準は現代人が考えるより、かなり高い。確かに、私用で独占できるのものは少ないが、
電気やガスといったエネルギー源を除けば、
水道などのライフラインも、きちんと整備されている。ポンペイで有名なのは、亡くなった人の人型である。
遺体の回りに火山灰が降り積もって固まって、
中の遺体が腐敗することによって、できたものだ。大多数の市民は、すぐに逃げて助かったが、
足腰の弱い人や、富に目がくらんで、
財産をもって逃げようとした人が、犠牲になったらしい。
# いかにも財産をかき集めてますよ、
# という人型は、見当たらなかったが、
# そんなのが後世に残ったら、恥ずかしいな。
死因はほとんどがガス中毒らしく、
展示されていた人型は、どれも鼻を押さえており、
非常に生々しい。何軒か住居が崩れずに、残っているところがある。
今回行けたのは、裕福な商人の家だけだった。
かなり広い台所や自然採光のために開けられた天井の窓、
雨のときに天井の窓から流れてくる水を配水する施設など、
かなり機能的なつくりになっている。しかも、壁には所狭しと壁画が書かれていた。
話によると、こういった裕福な家でなくとも、
その家の財政事情に応じてではあるが、
それほど裕福ではなくても、
絵を壁に書いてもらう人は多かったらしい。そこでふと、Tが話しかけてきた。
「今も昔も人間の賢さは、そう変わらないのでは…」
まさに同感。
よく現代人は、こんな昔によくこんなものを発明できたな、とか、
やっぱり昔はこんなこともできなかったんか、
なんていって、過去の人類を過大評価したり、
逆に過小評価したりしがちだ。しかし、今我々がすごく高度な生活をしているのは、
何も自分の努力じゃなくて、
長い長い先人の発明や努力の蓄積
という恩恵に浴しているからにすぎない。もし、自分も含めたことだが、
現在でも、凡人のまま過ごして行くしかできないのであれば、
あの時代に生まれていたとしても、
やはり、同じような生活を送っていただろうと思う。その分、この時代に知恵を出して、
さまざまな工夫をすることのできる人間が、
今のような、さまざまな蓄積のある時代に生まれると、
それをもとにやはりすばらしい工夫をなしてくれると思う。まぁ、こう言うとなにやら人間の能力が、
先天的に決まってしまっているような
悪い印象を受けるかもしれないが、
そうじゃなくて、自分がどうにもならない、
ということを、時代のせいにはしたくはないな、と。その時代その時代の影響を受けつつも、
楽しく人生を過ごせるかどうかは、
やっぱり自分次第でしょ。
だって、人間が2000年や3000年程度で
潜在能力が変わったりしないと思うし。さて、そんな柄にもなく真面目なことを考えながら、
ポンペイを後にする。
が、高速のゲートの前でバスが立ち往生。
どうやらセンサーの調子が悪くて、
ゲートが開かないようだ。イタリアでは観光バスは、
政府にか、警察にか知らないけれども、
登録されてある。
なので、登録済みのバスかどうか確認されないと、
ゲートが開かないしくみになっているのだ。バスの中で文句をだらだらいているうちに、
ゲートが開いた。
途中、ブローチの工房によって、
ちょっと休憩したあと、ナポリに戻り、
船でカプリ島へ向かう。何でも、カプリ島というところには、
「青の洞窟」なるものがあって、
たいそうきれいらしい。
同じツアーに参加しているWさんの話によると、
3度カプリ島に来て3度とも、
青の洞窟を見ることができなかった人もいたそうな。雨が降ったり、水位が上がったり、
波が高いと、中止になるとはパンフに書いていたが、
それほど、見るのが難しいとは思わなかった。
が、当日はいい天気。
問題はなさそうだ。さて、この青の洞窟、カプリ島の断崖絶壁の下の方に、
ちょこっと、申し訳なさそうに、
口が開いているのがそれだ。そこまでは、ナポリから来たのよりは
小さめの船に乗って、間近まで進む。
そこからは、小舟に乗って、いよいよ青の洞窟に入る。
が、あまりに入り口が小さいため、
小舟の中で仰向けにならないと、入れない。目の前に入り口が見えていれば、そう怖くもないが、
進行方向と逆に向いていれば、
入り口が見えないだけ、怖いかもしれない。洞窟に入ると、先ほどの小さな入り口から
日光が入ってきて、その入り具合のためか、
どうにも表現しきれない青色に輝いていた。シャッターを切っていた人がいたので、
写真を撮らないと、と思うが、
もう構えている暇はない。
無我夢中で、1枚撮ったが、
どうにもこの美しさは捉えきれないようだ。ほんの数分だけだったが、
カプリ島に来た甲斐があるというものだ。
いや、よかった。さて、その後は車で島の一番高いところまで移動し、
レストランで食事、だ。
が、その前に自由行動ということに。水が無くなっていたので、まず水を購入。
1.5リットルのお徳用バージョンを。
あと何か買おうか、と思うが、
なんだかピンとくるものがなくて、土産物屋はすべて素通り。集合時間になりレストランへと誘導されると、
途中で、レモンリキュールの店を紹介される。
試飲させてくれると言うので、遠慮なく頂く。「うまい」
そう思った瞬間に、もう買おうと思った。
横にあったレモンのチョコも、またうまい。
添乗員の紹介するところなので、
ちょっと高く買わされているんじゃないか、と訝りつつも、
レモンリキュールとレモンチョコ二つをお買い上げ。
しめて、55000リラ(約2900円)。そのあと、昼飯と一緒にワインを飲んで、
いい感じに酔いながら、ナポリへの船が出ている船着場に戻る。
船に乗る直前、全然知らないイタリア人が、
写真に割り込んでくる。
こういうのは、やっぱりイタリア人らしくってよい感じ。さてさて、海風で酔いを醒まして、
バスへ乗り込み、ローマへ向かう。
途中、ローマやナポリでおかしなガソリンスタンド(?)を見つける。
いや、「おかしい」と思うのは日本人だからであって、
現地の人にとっては、おかしくも何ともないのだろうけど。高速道路の非常駐車帯のように
車道から歩道側へ少しへこんだ部分に、
ガソリンを入れる機械だけが置いてあるのだ。
# セルフサービスなのはともかく、
# そんなせっま苦しいところに、
# つくんなよっ!って感じか。また、これもローマでの途中で気づいたことだが、
イタリア(に限らずヨーロッパ全域かもしれない)の
清涼飲料水事情が、また興味深い。
ま、日本のように種類が少ないのは
しかたがないかもしれない。
# 以前、カナダへ言ったTの話によれば、
# 日本があんなに種類があるほうが
# よっぽどおかしい、ということらしいので。が、炭酸が多いのと、
甘ったるくない飲み物が水しかない、
というのは、どうにも納得できない。
それにコーヒーとかは一切ないし、
紅茶もストレートのやつがなくて、
かなり甘いレモンティーしかないんだな、これが。
# イタリア人よ、こんでええんかぁ?とかなんとか言っていると、
ローマに到着。
恰幅のよすぎるおっちゃんの
カンツォーネを聴きながらのお夕食。
# ここのリストランテ(=レストラン)の客が、
# 日本人ばっかというのが、興ざめではあるが。もう後は、ホテルへ行って寝るのみ。
おやすみ〜。