戻る

コラムもどきに戻る

前へ

次へ

ヴァナ・ディールと現実世界の幸福な関係


月2回の更新を目標に、今でもサイトの更新をしようと
思ってはいるのですが、
忙しいときには、なかなか書く時間がなく、
休日は、死んだように爆睡。
ちょっと暇になれば、外出・買物に始まり、
「何もしない」という贅沢な時間を楽しんでいる、
と言い聞かせる有様。

そんな中、このところあまり接点が無いのが、
RPG(ロールプレイングゲーム)です。
このコンテンツを書き始めたころは、
FF9について、いろいろ書いたものです。
しかし、わたしなりの流儀でRPGをするとなると、
学生レベルの膨大な「暇時間」が必要になるわけでして。

ただ、今はちょっとしないうちに、
今までとは、ちょっと違うものが注目されているようです。

それが、MMORPG(多人数参加型RPG)というものです。
いわゆるオンラインでつながった各プレイヤーが、
人間対人間のやり取りを楽しむRPGです。

わたしは、はじめこのタイプのRPGに非常に抵抗がありました。
というのも、以前も書いたと思いますが、
RPGのしていて何が楽しいのか、という点が
強くなる、アイテムを集める、謎を解く
というところから、「感情移入して」物語を楽しむ、
というところに、年齢とともに
シフトしてきたからです。

ところが、このMMORPGは、
その仮想世界の中での生活を楽しむ、
ということが中心であり、ある物語から何かを得るとよりは、
現実世界と同じように、自分で物語をつくっていく、
というRPGが現れた当初の、楽しみの原点に
回帰した印象があって、なかなかついていけなかったんです。

わたしは、ファイナルファンタジーが好きですが、
FF11が、MMORPGになるということで、
これは多分しないだろう、暇なわけでもないし、
と思っていたのですが、ASAHIパソコンの記事を読んで、
ちょっと気持ちが変わってきました。

どうやら、ただ単に別の世界を生きることを楽しむ、
ということ以上のものが、そこにあるような気がしたからです。

技術的な側面からいえば、インターネットという
システムを使って、多人数が参加できるRPGを
つくることができた、ということかもしれません。

しかし、MMORPGの重要な点は、
わたしが考えるRPGの楽しみ方の一方を
追求したRPGであるということだと思います。

まずひとつに、物語を楽しむ、
というスタイルがあると思います。
そして、もうひとつがゲームシステムを楽しむ
というスタイルです。

現在では、ファイナルファンタジーは物語を楽しむ
タイプのRPGの代表格のような存在ですが、
実は、はじめの頃は、ゲームシステムを楽しませる
のが中心のRPGだったような記憶があります。

そこから回を重ねて、物語の中の
メッセージ性を楽しんでもらうというような、
映画のようなものに近づきつつあります。
実際、従来からのユーザがこの流れに
そっぽを向き、ファイナルファンタジーから
離れていったことも事実です。

このような背景と、FF12は従来通りの
パッケージのRPGにするスクウェアの方針から考えると、
それまでの物語を楽しませるというやり方ではなく、
FF11は、逆にゲームシステムを楽しませることを
追求したゲームだと思えてきます。

FF11には、スクウェアなりのゲームシステムの追求の結果が、
多人数の参加による「自生的経済秩序」
によって、ユーザ自身を作っていくシステムの流れを
楽しむというスタイルであると思います。
これが、単にゲームシステムを楽しむことに
回帰したというだけではないと感じる点です。

驚いたことに、他のMMORPGでは、
プレイヤーを殺害することができたり、
さらには殺害したプレイヤーからアイテムや金を
強奪することもできるそうです。

しかし、協力することが行動基準の中心になる
世界にしたいというスタッフの考え方もあって、
FF11では、これらの行為はできないようになっています。

このような条件で、仮想世界で生きていくのなら、
プレイヤー同士で、財産を交換することで
基本的な経済システムが、形成されるのは当然でしょう。

しかも、より高い付加価値をつけて、
高価な価格で売ったり、他人から手数料を取って、
より高い技術で道具を改良したり、
より安全で高い利益の得られる狩場を
ガイドすることで他人から手数料を取ったり…

そのほかにも、アイデアしだいで、
つまり、その仮想世界を形成している
他のユーザに、どのようなニーズがあることを
察知することができれば、現実の経済社会と同じように、
成功することができるわけです。

さらに、わたしが驚いたのは、ASAHIパソコンの記事で、
この仮想世界のシステムを作った人が、
都市・社会設計担当、として紹介されていたことです。

ほかの職業で都市・社会設計担当という肩書きがつくとしたら、
それは公務員に他ならないでしょう。

特定のアイテムにプレイヤーの需要が集中するなど、
インフレが起こる可能性があるでしょうし、
消費の要素が少ないため、経済が安定しにくい、
ということもあります。

これを調整するのは、経済産業省や日本銀行など
経済を取り仕切っている公的機関であり、
経済調整の基本的な考え方は、共通するものも多いと思います。

また、特定の職業だけが
得をしたりすることのないよう調整したり、
消費を刺激する政策を立案したり、
他のプレーヤーを傷つけて楽しむユーザを取り締まったり。
まったく現実の公務員の仕事と似ています。

物語を楽しむものが、人生について、仕事について、
恋愛についてなどなど、様々なことを考えるきっかけになる
哲学的・文学的要素を含むものだとするならば、
ゲームのなかでのシステムを楽しむものは、
身の回りで必要とされていることが何であるかを見極め、
自分が関与できる範囲の要素を用いて、
どのように実現できるのかを楽しむものといえるでしょう。

手っ取り早く言うなら、世の中で成功するという体験を、
より現実世界に近い社会システムのなかで
実現させようというものなんでしょう。

わたしはいままで「仮想」世界と書いてきましたが、
これは、世界を構成する要素が
コンピュータ上の、つまりは、
プレーヤが触れないというだけで、
社会を構成する基本的なことが揃っている以上
仮に存在する世界ではなく、
実際に存在するもうひとつの世界
というほうが正確です。

これは、ネットでの人間関係が、
仮想的な関係ではなく、人間関係を維持するために、
人が手に取ったりすることのできない方法を使う、
というだけで、人間関係そのものが仮想的なのではない、
ということができるのと同じでしょう。

現実世界以上に努力が報われる、という意味で
「ヘロイン・ゲーム」といわれることもあるそうですが、
わたしは逆に、ここから経済の仕組みを学んだり、
企業が何を求めて行動しているのかを学ぶ場になるのではないか、
という感じをもっています。

それはまさに、このゲームの中の世界が、
誰か少数の人間によって、隅々までつくられているのではなく、
現実と同じような人間関係のなかで成立しているからです。

もちろん、その人その人がもっている、
余暇時間の大半を消費することになってしまうでしょうから、
他の娯楽に対する影響やその連鎖関係など、
影響は図り知れません。

ですが、このような「自生的秩序」のなかには、
ビジネスに必要な感覚を磨くような
生の現場に近いものがあるような気がするのです。

また、その世界を維持するためのスクウェアのスタッフは、
いってみれば、公務員それも世界をこのようにしたいという
熱意を持った公務員のようなものでしょう。

悪意のあるユーザを取り締まったり、
経済危機が起きないよう、経済の調整に当たったり。
社会を運営していくときには、
その構成員の意見をどのようの生かしていけばよいのかなど、
極論すれば、政治家にだって通じるところがあるかもしれません。

今後、スクウェアがFF11の世界を一緒に守っていく
メンバーを募集しています!
といったかたちで、社会の安定に携わるメンバーに、
現役公務員を採用してみれば、新たな発見があるかも知れないですし、
公務員の方にも、何かヒントになることがあるかも知れません。
# いくらなんでも、これはいいすぎかな(笑)

バーチャルな世界とリアル世界がどのように
うまく共存していくかということは、
ネット社会の重要なテーマだと思うのですが、
FF11で、現実のビジネスについての感覚を養ったり、
公務に情熱をもてるヒントを見つけたりするなんて、
すばらしいじゃないですか。

スクウェアのスタッフは、他のMMORPGが出現しても、
いずれは帰ってくるような、
そんな世界にFF11の世界ヴァナ・ティールをしていきたい
とのことでした。

それは、ひょっとすると世話になった母校に、
ちょっと懐かしい気持ちで帰りたくなるような
感覚に似たものかも知れません。

ASAHIパソコンの記事をきっかけに、
やりたいなぁとは思うのですが、
モバイルPCでやろうとするのは、
無謀なんでしょうかねぇ。

最近、モバイルというものについて考えることが
特に多いわたしにとって、
このような「仮想」世界とのかかわりこそ、
「いつでも、どこでも」が実現されれば、
おもしろいのかな、なんて思ったり。
# でも、ますます遊びすぎに注意しましょう、
# ってなことななるんでしょうかね。

2002-8-19


戻る

コラムもどきに戻る

前へ

次へ