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1年前のことばを胸に心機一転


とりたてて一か月に一度にしよう、というつもりはないのですが、
最近は、ちょっと忙し気味で、なかなか更新できません。

小学校から中学校にあがるとき、
中学校から高校にあがるとき、
高校から予備校を経て、大学にあがるとき。

そういう区切りの時期に、必ず親に言われたことは、
まず、はじめの一年をしっかりやれ。
そこで手を抜くかどうかで、大きな差が出る、
とよく言われてきました。

そういう言葉も思い出しながら、
この1年をわたしなりにがんばってきたつもりです。

ですが、学生の頃と社会人のときとは、違うことがあります。
それは、何かのビジョンをもって社会人になったことです。
こういう風になりたい。こういうことがしたい。
だから、この会社で、この職業につきたい、
という考えがあって、今があるはず、なのですが。

つい先日、わたしの部署に新人さんが入ってきました。
わたしのときとは違って、すぐに定型業務を開始し、
地道な作業から始めていたようでした。

やりたいことをするためには、その何倍もやりたくないことを
しなくてはいけないように、世の中はできている、
と誰かが言っていたような気がしますが、
その地道な作業からはじめるというのは、
ずいぶんと、彼を失望させてしまうことだったようです。

とはいえ、彼は、単にその地道な作業を
嫌ってのことではありませんでした。
彼は、研修のときの熱いモチベーションのもっていくところがなく、
心のなかで不完全燃焼を起こしていたようです。

そのとき、ちょうど1年前、配属されて、
徐々に仕事をこなしていくうちに、
思い描いていた姿との違いに、
ちょっとしょんぼりとしたことを思い出しました。

しかし、わたしは、はじめは仕事の全体像というか、
外側から見て、華やかにみえる部分を
中心にOJTを受けていましたから、
考えていた仕事像との乖離が感じられてきたのが、
比較的遅かったために、今年の新人さんとは、違って「愕然」とする
というほどではなかったのかもしれません。

熱いところにいきなり入ると、
それが熱いと感じられるけれども、
ぬるいお湯がだんだん温まって、
熱くなってくると、感覚が麻痺してしまうといった、
そんな感じだったのかと痛感しました。

研修を終えるときに、カリキュラムの中で、
自分への手紙というものを書きました。
そこでは、当時同じような気持ちにあった自分自身が、
そのモチベーションを高く維持できているか、
不安に思っていたのか、こう書かれていました。

…もちろん、1年後には成長していてほしいとは思う。
しかし、成長なんてありふれた言葉を期待するつもりはあまりない。
むしろ、この1年で変えなかったことの方が、よほど大切だ。

(中略)

…自分が楽しいと思ったことを、今までやってこなかったひとにも
広げていきたいと思ったことを憶えているだろうか。
もし、業務の学習・習得に専念し、こういう大切なことが薄らいでいるのなら、
もう一度思い返してほしい。研修の後に、同期と熱く語っていたことを
思い出してほしい。

(中略)

…自分が決めた筋を通し、自分でものを考える習慣をつけ、
なにか新たな楽しみを見つけているのなら、
何も文句はない。充実した1年であるように。

ちょうど、今の気持ちを見透かしたような言葉が並んでいました。
1年前の自分が見て、必ずしもがっくりすることはないと、
そう思えますが、かつての自分が指摘していた、
注意点がそっくりそのまま、当てはまっている現状には、
自分の甘さを感じずにはいられません。

わたしは、入社前の研修で、仕事とは何かという問いに、

  「やりたいこと」という動機と「ビジネス」という制約条件のなかで、
  自分がこれから出して行く答え。

と答えました。これは、
どのような立場であっても、どのような境遇であっても、
当てはまるもの、と今でも思っています。
その折り合いをどうつけるか、そこにポイントがあると思っていました。

しかし、この動機と制約条件は、
わたしが折り合いをつけさえすればよいのではなく、
絶えず、制約条件が動機を押し潰そうとしているということを
わたしは見過ごしていたように思います。

しかもそれは、徐々に近づいてきて、
気づかないうちに動機に覆い被さってしまう勢いです。

そういう気持ちをもって、
わたしの部署に配属されてきた彼を頼もしく思いました。
後輩を頼もしく思うなんて、なんて頼りがいのない先輩だろうかと
自分でも思うのですが、ね。

同期とは、よく電話で話をしたりして、
緊張感や積極的な気持ちを失わないように
しているつもりなんですけれど、
願わくば、彼らにもその気持ちを忘れずいてもらい、
切磋琢磨することができれば、なんて思ったり。

変に場慣れして、仕事に対して斜に構えるようになり、
創造力を(といっても、たいしてないけど)絞り出そうとする
努力を怠ることだけは、ないようにしないと。

ちょっと短めのコラムもどきでした。

2002-6-17


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