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誰でもできること、でも…


昨今、わたしの夢の一つが叶いました。
といっても、ささやかすぎる夢の一つですが。

わたしは、お酒を飲み始めたとき、
実家に、ウイスキーがありまして、
ごく自然に、ウイスキーを飲むようになりました。

もちろん、好みが合わなければ、
実家にあろうがなかろうが、ダメはわけですが、
わたしの知り合いのなかで、
ウイスキーを飲み人がいないことを考えると、
実家になければ、飲み始めるきっかけが
なかったかもしれません。

とはいえ、学生のときは、
居酒屋に行くのが主流ですから、
たとえウイスキーが置いてあるところでも、
どこか場違いな感じが、なくもありません。
ウイスキーって、アーッハッハ!
とバカ笑いしているときに飲む酒ではないですからね。

というわけで、洗練された場所で、
ウイスキーをじっくり飲める、
行きつけのバーがあったらいいのになぁ、
なんていう、子供が背伸びをしたような、
夢を持っていたわけでして。

別にカッコをつけて、行くわけではないのですが、
Tシャツにジーパンでは、さすがにマズイので、
就職してからのお楽しみ、ということに
しておこうかと思っていたんですね。

ところが、わたしの職場は、
サラリーマンが一杯やっていく、というのに
うってつけの場所で、居酒屋や焼き鳥屋には
こと欠かないのですが、バーはあまりないようで。

また、先輩方も、居酒屋とか焼肉にはよく行くのですが、
そういう雰囲気の店に行きつけの店を
もっている人がいなくて、
先輩の紹介で行くこともできずにいたんですよね。

そこで、インターネットで調べて、
何とかめぼしそうな店を一店見つけ、
ある日退社後に、近くまで行ってみたわけですよ。

緊張、緊張。
なんか、ガキンチョの来るところじゃないよ!
みたいなオーラが出ていたんですけど、
おどおどしながら、潜入しました。

で、扉の先にあったものは…
これや、これ。
こういうところを求めてたんやって!
と自然に言葉が出てきそうな。

そこで、メニューを見て、
ウイスキーを頼むと、
まんまるの氷に、ウイスキーがとくとくとく…

いつも、日本のウイスキーを飲むことがほとんどで、
バーボンはニガテですし、
アイリッシュはすーっとすすんじゃうので、物足りず、
スコッチはいいけど、ジョニーウォーカーしか知らない、
といったありさまでしたが、
マスターに訊くと、いろいろ教えてくれました。

でも、バーは何がいいかといって、
マスターと話ができることなんだなぁ、
としみじみ思いました。

もちろん、ウイスキーを飲むのもいい、
2人か3人で、静かに語り合うのもいいかもしれない。
でも、マスターと話をしながら飲むというのは、
バーでしかできないウイスキーの飲み方だろうな、
と思いますね。

いわゆるバーテンダーとしてのテクニックを、
どのようにして学ぶのかは、寡聞にして知りませんが、
あの落ち着いた雰囲気の中で、
ラクに話ができたのは、とても気分のよいものでした。
個人的には、幅広い話のネタと、
話題の絞込みのタイミング、
などに、勝手に感心していたのですが。

ちょっと褒めすぎかもしれませんが、
わたしは興味のあることなら、
こっちが話してばっかりで、
あまり興味のないことに話を合わせるのが、
ほんっとにヘタクソだとよく思うので、
わたしには、とてもすごく思えます。
書くことと比べて、そんなに
頭が速く回らないという感覚です。

話すことは、最も基本的なコミュニケーションです。
それは、メールが普及しようが、
チャットが楽しかろうが、
電話料金がいくら安くなろうが、
人間は、話すことをやめることはできません。

ほんとに信頼している友人たちと、
話をしているとき、興味のある話題であるばっかりに
こちらばかり話していて、まずかったなぁとか、
ちょっと、話を合わせられなくて、
なんかムカツいてるんとちゃうか、という
雰囲気を作ってしまったり。

わたしは、話をする時にちょっと長めに間を取る
癖があるので、そういう誤解を招いてしまったり、
こちらが、妙な心配をする羽目になることが
けっこう、ありまして。

話すことは、誰でもできることですが、
話す、ということを十分に使いこなしている人は、
わたしも含めて、案外少ない気がします。

ひとつ、情報を伝える、
ひとつ、会話を楽しむ。

何かを伝えるというビジネスライクな側面でも、
整理立てて話さないと、思うことが
相手に伝わらないですし、
プライベートなときでも、その状況にあった
意思の伝え方があるでしょう。

やりとり自体を楽しむのも、
自分の好き勝手に話していたのでは、
互いに楽しむということはできないでしょう。

なにか、話すことって、
大切で、難しいことだなと思ったひとときでした。

2001-11-12


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