棋力開発…明解 初級囲碁読本   基本編

 25 星と小目はこんなに違う
   A 星の長所
シマリという意味では、小目からは2手で隅を確保、星からは隅を確保するのに3手必要です。

では、星を打つ長所は何か?
 1.一手で隅の中心を占める。
 2.辺への展開にスピードがある。
 3.第4線なので、勢力を築くのに適する。
ということが言えます。従って、「厚み」で相手を攻めて、全局をリードして行く碁を打ちたい場合に適しています。

<左図>
黒が星中心、白が小目中心の布石です。
全局的な展開では黒がスピードで勝り、隅の地の守りでは白が勝っており、互角の分かれです。
星の一手だけでは隅が地にならないという「隅の甘さ」を衝いて、右上の様に三々に入ってきたらどうか?
定石通りの形が出来た左図の評価は下記の通りです。

1.白は10目程度の地が出来ました。

2.黒の厚みが、右辺から中央へ向かって、これから先大きな働きをすることが期待出来ます。

3.総合的に見て、このワカレは黒の方に軍配が上がります。

従って、白は隅を荒らすタイミングが難しいのです。
黒は白が隅に入ってくるのを牽制しながら、隅を地にしたり、隅に入って来た時に出来る厚みで白を攻めて、辺や中央に大きな地を作るという打ち方をします。

別項の星打ちの極意も参考にして下さい。
<上辺>
また、白1とツメて来た場合は、黒2と隅を守ります。まだ、白から隅に手を着けることも出来ますが、黒が一手いれてますので、上図の様に三々に入って10目程度の地を得ることは出来ず、ますます強い外勢を黒に与えます。

<下辺>
白3と打てば、黒4と白のサバキを封じた後、黒6と打たれ、白が攻められて、右辺の地が固まります。
 25 星と小目はこんなに違う
   B 隅の甘さは牽制出来る
左図を一手ずつ進めてみてください。
黒1に対して、白2、4なら黒5、白6に、黒7、白8に黒9、11と打って、黒13あたりで、3手目のシマリを打つ要領です。これより前に白が右上に打ち込んで来たら、白を攻めて得をするという考え方です。


 26 三線は地、4線は勢力
   A 高い、低い
布石で隅から辺にかけて地の構えを作る時は第3線、又は4線に打ちます。 僅か1路の差ですが、大きな違いで、盤端を地面、中央を空に例えて、「第3線は低い」、「第4線は高い」と言います。

<右上>
隅の場合の第3線の代表はの三々です。
白1と迫って来れば、黒2や、一路下のP17に受けます。地は大きくありませんが、白から荒らされるという可能性が少なく、がっちりした地を作れます。

<右下>
白5とカタに打たれると外勢を奪われますが、10目程度の地を持てます。

<左下>
第4線の代表は星。白13と入られると地には甘いのですが、立派な外勢を築けます。

<左上>
星に対してカタに打つと隅に30目程度の大きな地が出来ます。
従って、白25という手は考えられません。

シマリとカカリについて、3線の場合、4線の場合の違いを説明します。

<右上>
コゲイマジマリは3線なので、白1と打たれても、影響は少ない。

<右下>
一間ジマリは白3と打たれると、白からR4やS5と打たれる嫌味があります。一方白5と打たれた場合に黒6に対しては手が抜けません。 尚、コゲイマジマリだったら、P4に打つことで、脱出可能です。

<左下>
白9と3線のコゲイマガカリの場合に、黒10とハサまれても、白13、15で根拠を得やすい形です。

<左上>
白17の高ガカリに黒が同様にハサんだ場合は、白は隅に根拠が得にくい代わりに、白19と中央へスピードのある手があります。黒としては、黒12の様な位を保った手は打てません。
 26 三線は地、4線は勢力
   B 違いが現れる
左辺と右辺は黒R10の石が3線、黒D10の石が4線という違いだけです。1路違うだけなのですが、白の手が全く変わってくるので、1路の違いが大きな違いとなります。

<右辺>
3線の石に対しては、白1の4線からのカタツキや、5線からのボウシ等白の手は殆ど上からの手になります。

<左辺>
4線の石に対しては、白7など3線から望むことが多くなります。従って、黒は勢力を得ることになります。
星へ掛かられた時の受けに於ける3線と4線の選択

<右上>
三連星の配石で、白1と掛かられた場合、黒2と4線の一間に受けるのが、黒の勢力作戦が一貫しており、良い手です。黒R14とコゲイマに受けるのでは部分的には立派な手ですが、全体的に見ると三連星の思想が一貫してなくて、不協和音を感じる着手になります。

<左辺>
左辺の配石では黒4はコゲイマが妥当です。D14の一間受けでは、黒の勢力が生かしにくいし、裾開きを狙われます。


 27 死活の基本は3目ナカデ(中手)
   A 6目ナカデまである
布石、定石、死活、攻め合い、ヨセといろいろな知識が必要ですが、中でも死活は一番重要だし、死活問題を解くことが読みの力をつけます。スポーツでいうと、足腰を鍛えることに当たります。

<上辺右>
黒1により三目中手です。

<右辺上>
<右辺下>
<下辺右>
<下辺右>
<下辺左>  以上は三目中手

下辺左の三目中手の形で、死形かどうかの見分け方を示します。
1.外ダメが全部つまった状態を想定
2.白石に対し、アタリが掛かる形を想定
3.その形が三目中手等の中手の形であれば、中手が成立
4.例外的に中手の形でなくても、カケメや、ダメヅマリの為に取り 跡に手入れが必要になった場合、中手になることがあります。

<左辺下>
黒3により四目中手

<左辺上>  四目中手

<左上> 四目中手。白4と白が手入れをした段階で三目中手になります。 「集四形」と呼ばれています。

<上辺左>  四目中手

<右上>  黒1で五目中手です。

<右辺>
<右下>  何れも、五目中手

<下辺>  黒3で五目中手です。

<左辺>  
黒5で六目中手です。白が放置しても、黒は五目中手の形にすることが出来ます。また、白が白6と打てば、黒7で四目中手になります。(黒13の段階で四目中手)

<左下>  六目中手

<左上>
この段階で黒からD17と打つと六目中手になります。
また、白がD17に打てば下辺の形なので、五目中手です。従って、このままで、白死です。
 27 死活の基本は3目ナカデ(中手)
   B セキと3目ナカデ
セキの形と中手の形が紛らわしいので説明します。

<右上>
白はセキ生きです。
黒1と取りに行った形が中手の形になっていません。白2から生きとなりました。

<右下>
これも同様でセキです。

<下辺>
この形はどうでしょうか。
黒5と打っていると、白6と打ってセキになります。

<左下>下辺と同じ形
この形は黒7と打つと、白のダメが詰まった時に、黒3子を取らないといけなくなりますので、三目中手です。

<左上>
黒先白死の問題です。黒9は不正解。

<上辺>左上と同じ形
黒11が正解。三目中手となります。


 28 ヨセはクールに
   A ハネツギの計算
碁の仕上げのヨセでは、地の境界線を明確にします。
ヨセは大ヨセから小ヨセへと進んで行きますが、少なくとも小ヨセの段階では、ヨセの大きさを数字で表すことが出来ます。

参考.日本で一般的に使われている方法の 出入計算と、韓国、中国で使われている方法の 絶対計算 があります。

左の図の右辺と左辺は同じ形です。この図を使って1線のハネツギの大きさを計算してみます。

<右辺>
黒からハネツギますと、黒7目、白5目となります。

<左辺>
白からハネツギますと、黒6目、白6目となります。

つまり、黒がハネツイだ場合に比較して、白がハネツイだ場合は 黒地1目減、白地1目増ということになり、合計2目の手ということになります。

<下辺>
黒7と取る手は黒地1目+アゲハマ1目=2目 となり、黒1のハネツギと同じ大きさということになります。
第2線のハネツギの大きさを計算してみます。 尚、右辺と左辺の形は同じです。

<右辺>
黒1、3とハネツギます。1線は両方後手ヨセになるので、互角の権利ということで、それぞれサガリという想定にします。 ここで、黒地は11目、白地6目です。

<左辺>
白からのハネツギにより、黒地8目、白地9目です。

従って、11-8+9-6=6 6目の手です。

<下辺>
下辺で黒11と取る手は地2目+アゲハマ2目合計4目ですから、黒1のハネツギの方が大きいということになります。初級者の場合、石を取った方が大きいと思いがちですが、計算上は違うことが多いようです。
正しく、計算で出るのだから、ヨセの手の大きさを数える訓練をするべきですね。
 28 ヨセはクールに
   B 先手と後手
ヨセにも先手ヨセと後手ヨセがあります。一方が先手ヨセで他方が後手ヨセということもあり、ヨセの分類は
1.両先手 どちらも先手ヨセ、一番急ぐヨセ
2.片先手 一方だけが先手のヨセ、
      一般的には先手の方が打つ可能性が高い。
      後手側がこのヨセを打つことを逆ヨセといい、
      後手ヨセの2倍の価値と考える。
       例.逆ヨセ2目は後手ヨセ4目と同等に評価
3.後手  どちらも後手ヨセ
となります。

<右辺>
黒1、3とハネツグと、黒4が省けないので、これは黒の先手3目のヨセ。白からのハネツギは後手で、白地2目増、黒地1目減。

このヨセを白が白3とハネツグのを逆ヨセ3目と言います。

<下辺>
黒5、7のハネツギはどちらが打っても先手となる。
両先手4目の手です。

<左辺>
黒9、11のハネツギは後手ヨセではあるが、黒13、15の先手ヨセが約束されている。また、白からのハネツギも1線のハネツギは白の権利となるので、この2線のハネツギの大きさは、後手10目です。