棋力開発…明解 初級囲碁読本   基本編

 15 石を離して打つ恐さを克服しよう
   A 援軍があるツケ
石の連絡を保って打つことが大切ですが、次のステップとして、危険がない程度で石を離して打つことをマスターして下さい。 これは、石の能率を上げる為に必要なことです。石を繋げて打つ安全運転は、50キロの制限速度の道路を20キロで走るようなもので、返って危険なこともあります。 石を離して打つのは怖いと感じるかも知れませんが、状況を踏まえたものであれば、危険はありません。

<右上>
コスミは切られない形だからと、黒1に打つのは、スピード不十分です。

<右下>
この場合は、黒Q3の援軍がありますので、黒5が成立します。
右上より安定した形で、この形は双方互角で、定石とされています。

<左下>
白が12とハネダシて来た場合は、黒13と切ります。この形は「 切り違い一方を伸びよ」という格言の通りに打った形になっているので、黒有利の結果になります。

<左上>
白20と打って来た場合は、黒21と打ち白20の石をダメヅマリにすれば、取ることが出来ます。
もし、白24で、白25の方から打ってくれば、白20の石は取れないかもしれのせんが、その場合は、白は敗線(四線は勝線、二線は敗線)という第2線をハウことになり、黒大いに有利な分れになります。
<右上>
白から打つ場合も白1では不十分です。特にこの場合は黒O17が白の急所になり、白辛い形です。

<右下>
白5と打つのが定石になっています。
黒8は小さい様ですが、白がS2に打ってきても、S1と反発出来るし、眼形のしっかりした形として定石になっています。

<左下>
黒12は働きのない形です。

<左上>
黒14とツケることが出来ます。以下はツケノビ定石と呼ばれています。
(白が白19等で黒C13の切りを防いだ場合は、黒も黒20などと出切りに備えます。)
 15 石を離して打つ恐さを克服しよう
   B 切断をはかるツケ
相手の石を切断するにも、石を離して打つテクニックが役に立ちます。

<右辺>
白1に対して、白2子と切断しようと思って、コスミで攻撃するとうまく行きません。

<左辺>
黒14のツケにより、白2子との切り離しが実現します。
尚、白15で、白16とハネダシて来ることも考えられますが、黒E10と切断し、キリチガイで一方をノビた形になるので、黒の不利は考えられません。
この形は本来白O11は一路上にあるべきですが、白が捻った手を打ったところです。

<右辺>
黒1とコスんで切断しようとすると、白6までシノがれます。

<左辺>
この場合は黒7とツケて、黒7の石を犠牲にして、白B8の石を切断します。
但し、B8の石が無い時に同様の手を使うと、黒の石が取られた犠牲を取り戻せないので、疑問手になってしまいます。


 16 攻めはこうして得をする
   A 自然に地が出来る
攻めることは石を取りに行くことではありません。取るぞ、取るぞと脅かすことによって、利益(地)を生み出すのが目的です。地は囲おうとすると、相手は邪魔してくるので、なかなか思うように出来ませんが、攻めの手が地を囲う手と兼用になっていれば、簡単に地が作れます。

<右辺>
右辺全体を地にしたいところに白1と打って来ました。 攻める効果を知らない人にとってみると、迷惑千万なのですが、攻める効果を知っている人にとっては、歓迎したいくらいです。 黒2から8まで、全て、攻めの手で尚且つ地を囲う手になっていますので、右辺の一部こそ、地になりませんが、上辺、右下が地模様になってきました。

<左下>
黒10、黒12と打てば地が出来ます。でも、黒10の次は白番なので、当然邪魔してくることが予想されます。では、どうしたら、思うように囲えるでしょう。

<左上>
黒14とハサミます。白15に黒16と打ちます。そして、黒18と打てば白19、21と打つことになり、黒は白の手に乗って受けているだけで、上辺が地になりました。 これが攻めの利益です。

 16 攻めはこうして得をする
   B 2つの作戦
穏やかに打つか、積極的に打つかという作戦の分かれ道があります。攻める要領を会得したいのであれば積極策を取り入れて下さい。

<右上>
穏やかな手は黒2又は黒O17と受ける手です。お互いに石が安定して、ゆっくりした進行になります。これは、これで立派な手です。
補足
黒2自体は自石を強化する手ですが、そのこと自体間接的に、白2を攻めているということも意味しています。従って白3を手抜きすれば、黒は白1を攻めるべきです。

<左下>
白5に対して、黒6とハサムのは積極的な手です。白7と飛べば黒8と隅を守ってよい調子です。
これも、白黒共立派な手です。
前図白別法
<右上>
黒のハサミに対して、白1と変化することも考えられます。白は隅の地を稼ぎましたか、黒も黒10と打って、外勢を得ました。

<左辺>
この配石で白11とかかってくれば、黒12が白へのハサミと左下のコゲイマジマリからのヒラキを兼ねて絶好の手になります。


 17 ツケは相手の石を強くさせる
   A ツケの目的
相手の石にツケる手の目的は
1.相手を攻める
2.戦いを避ける
のどちらでしょう。

多くの場合は戦いを避けるのが目的です。
ツケれば相手は、放置すると不利なので、ツケに対する手を打ってきます。そうすると、多くの場合、お互いの石が強くなります。つまり、ツケを打つ場合は自分の石を強化したい場合に打つことが多いのです。その時は、当然、相手の石も強くなります。
例外は、ツケコシ等の場合の様に、相手を切断する為にツケることがあります。これは、戦いを目指しているので、攻めるのが目的になります。

<右上>
黒1は 「隅の地を確保し、黒の石を強くする」 目的で打ちます。

<右下>
もし、白のQ5の石を攻める目的なら、白8の時黒9とキルことになりますが、このキリは黒無理で、隅の地を失うことになります。

<左下>
白E4の石を攻める場合は、黒17とハサみ、黒19と打つ要領です。
<右上>
黒1とツケる手も白R14を攻める手ではありません。白2、4が加わった3子はツケを打つ前の段階より、強い石になっています。 黒は白に対する攻めを放棄し、右上辺一帯の地模様を得る目的で黒1のツケを打ったことになります。

<右下>
白を攻めることは、黒7とハサむことにより実現します。

<左下>
黒11とカドに打つ手はツケではありませんが、ツケに準じた手で、やはり、喧嘩をしようとしているのではなく、左下隅を地にしようとするつもりで打ちます。

<左上>
白D14を攻めるには、まず、黒17と打って後に、黒19とハサむことで実現します。単にハサむと白C17等のサバキがあり、黒17はそれを回避しています。
 17 ツケは相手の石を強くさせる
   B 誤ったツケ
<右上>
黒1、3、5はツケの用法を間違えています。 黒はコゲイマで守っているのに、また黒1以下の手で強くする必要はありません。「過ぎたるは及ばざるごとし」で黒石の働きは悪くなっています。一方、白は丈夫になって、攻められる可能性が減少しています。この取引は黒損の取引です。

<右下>
黒7と打ち込んで、白を攻めるのがコゲイマに打った石を働かせる良い手です。

<左下>
黒9も同様の悪手です。

<左上>
黒15とハサみ、白16に、黒17と打って白を攻めるのが良い手です。


 17 ツケは相手の石を強くさせる
   C どちらへツケる?
自石を強くする為に打つツケについて、星の石に両方からカカられる場合、どっちの石にツケるのが迷う局面があります。 この場合、単に逃げることだけでなく、逃げながら相手を攻めるということを考える必要があります。碁は一石二鳥の手を求めなくてはいけません。

<右上>
黒1とツケるとどうなるか。ツケた方は強くなります。従って、黒1とツケると、両方が強くなって、失敗です。

<左下>
黒7とツケるのが正解です。ツケによって強かったF3とK4は、より一層強くなっています。逆に、白C6は、強くなった黒に囲まれて、より一層弱くなっています。

もし、白12と出て来たら、押さえても打てますが、難しくなるので、黒13以下の様に打つのがお勧めです。
尚、黒17が大切で、白のダメを詰めるC7は白17と切られて、黒のダメヅマリが不利を招きます。


 18 弱い石をむやみに作るな
   A ヒラキの必要性
石を攻めることの利益が分かったら、石が攻められることのマイナスを理解出来ると思います。
このマイナスを避ける為には、攻めの目標となる様な弱い石を作らないことです。
石を切られて、弱い石が一度に2つ出来ることは大きなマイナスだし、無理な戦いや、やきもちによる相手の地模様への無理な打ち込みで弱い石を作るのも、マイナスになります。

<右辺>
白1はR14の石が攻められない為に大切な手です。

<左辺>
もし、白3の様に相手の地を気にして手抜きをすると、黒4、6で攻められて、不利になります。

黒4のコスミツケは、部分的には悪い形ですが、下記の理由により、定石として良い手となっています。
黒がR15のコスミツケを打つ理由は白のサバキを封じることです。
右上の形で、黒がR15にコスミつけて、白がQ14にノビた形は部分的(黒のQ16、R15と白のR14、Q14)には、白の方が良い形です。それが、定石としてコスミツケが打たれるのは、下記の様な白のサバキを封じることが目的です。
従って、黒が弱くて、白がサバク必要がない場合等は、このコスミツケは白をより強くして、悪手になります。
尚、このコスミツケを隅を守るのを目的として打つ初級者が多いですが、コスミツケても、相変わらず三々の打ち込みは残っています。

<右上>
白1のツケで白は眼形を得ます。このツケで、黒白共に強くなっていますので、一方的に黒が損ということはありません。

<右下>
三々への振り替わりがあります。

<左下>
白15とケイマにスベリ、白17で根拠を持ちます。

<左上>
コウによるサバキもあります。
 18 弱い石をむやみに作るな
   B 切りの威力
石が切断されると弱い石が出来ることが多い。しかも、2つの弱い石になる可能性が高い。

<右上>
白1と切られると、両方弱い石となり、一方を逃げても他方が取られることになります。

<右下>
黒6とツゲば、周りの白石が弱くなります。

<左下>
追うはケイマ、逃げは一間飛び」という格言があります。逃げる白は白7と一間トビが正しい着手です。

<左上>
白9と逃げるのにケイマを打ったので、切断されて、白が大変苦しい状況になりました。

 18 弱い石をむやみに作るな
   C 根拠を持つ手
攻められない石を作るのには、根拠を持つ(眼形のある石)ことが必要です。特に、双方の根拠となる手は「大場より急場」と言って、何をおいても、先に打つ必要があります。

<右上>
黒1が急場です。白の眼形を奪い、黒の眼形を作っています。

<右下>
白から打つ場合も白2です。黒3のツギに白4と打てば、白の眼形は豊富、黒は、白6に打たれると眼形がありません。

<左下>
黒7は黒の眼形の急所です。

<左上>
白8と打たれると黒は眼形がありません。


 19 石はこうして取れる
   A 接触戦で
石を取るのは、交互に打つという前提だと、難しいことです。1つの石を取るのに4手かかるのですから、当然のことです。ところが、石は取られたり、取ったりは良く発生します。なぜか、この交互に打つということが、全局的には守られても、ある特定の部分では守れないことがあるから石を取ることが実現します。

<右上>
黒1と白Q17の石を取りに行きました。結果は逆に黒3子が取られてしまいました。取ることばかりに意識が行って、自石が取られることを意識してなかったからです。

<右下>
では、自石が取られない様に、黒17と打って見ました。 切り違い一方を伸びよの形になりました。
今度は白が黒R3の石をやみくもに取りに行きました。結果は、黒23のキリにより、逆に取られてしまいました。

<左下>
正解、つまり定石はどうなっているのでしょう。白32とアテて、白の弱点を白34で補強しました。
結局、当初の黒の目論見は成功し、黒37と取りました。この分れは黒が白石を取ったのだから、断然良い?
いいえ、この分れは互角なので、定石になっています。
それは下記の理由によります。
1.黒が先着していた。
2.打った手数は黒が1手多い。
3.従って、若干黒の良い分れになるのはやむを得ない。

<左上>
白E15以下の3子、又は白F17以下の2子のいずれかを取る。
これはいずれかという条件がついているので、可能です。しかし、取る石を指定されたり、両方取るということは出来ません。これは、石を取る時のポイントです。石を取る時に、この石を取るのだと考えて取りに行っては失敗することが多いはずです。この2(或は3)つの石のどれかを取るというつもりで取ることを考えれば良いのです。
黒39と、2子を取る手を打ちます。もし、白40と逃げれば黒41のシチョウで白3子が取れます。
 19 石はこうして取れる
   B 封じ込む
石を取るもう一つの方法は、相手の石を封じ込めた場合です。封じ込めが成功して、相手に2眼出来なくて、自石に2眼あれば、石は取れたことになります。この場合も、交互に打つのだから、封じ込めは難しいですが、複数の石の塊を目標にして、どれかが封鎖出来ればと考えれば、可能です。ただし、自石が封じ込まれる場合も出来ますので、注意が必要です。

<右上>
白1で封じ込め成功です。黒に眼形が出来なければ、大きな地になります。(3手抜き)定石参照。

<右下>
黒2と封じ込めます。

<左辺>
白C6以下の2子と白C12の1子のいずれかを封じ込めます。
黒16と打って、黒18と、黒17を見合いにすれば、封じ込めが出来ます。