コウの価値


コウがあるから碁は面白く、難しい。
コウを争うには下記の様な点を配慮しなければなりません。
  1.二手打ちを条件としたコウダテ
  2.損をしないコウダテ
  3.コウによるフリカワリ
これらは、固定観念に囚われない、柔らかい頭が必要です。

コウは見方を変えれば、実に不思議なルールです。
ただ取れない、ただ取られない、どちらに転ぶかわからない状況で、後の打ち方次第です。
従って、恐れてはいけないし、恐れなくてもいけない。
一番悪いのは、コウを恐れて避けることです。コウを避けては損をするだけです。
コウで逆転も出来ます。コウを楽しむ様にして下さい。

   上記は林海峰九段著「コウの技法」(河出書房新社)の前書きを要約しました






コウの分類


コウの分類法は下記です。

1.種類
 A.本コウ
   ヨセコウなど1手でコウが解決できないコウと比較し、白黒共に、1手でコウ
   を解消出来るコウを指します。
 B.ヨセコウ
   コウを解消するために一方がコウを取ったり、ツイだりする解消の手以外に、
   ダメヅメ等の手入れが必要なコウ。
   1手ヨセコウはその手入れが1手のコウ、
   2手ヨセコウはその手入れが2手のコウ
   3手以上は「三手ヨセコウはコウにあらず」の格言がある。
 C.段コウ(二段コウ、三段コウ・・・)
   コウを解消する場合に、コウをツグことが出来ないで、またコウを取って、
   解消を図らないと解決しないコウ
 D.万年コウ
 E.両コウ
   両コウ3年の患い参照
 F.コウ尽くし
   「隅のマガリ四目」の別名

 G.三コウ、四コウ、多元コウ
 H.循環コウ

2.全局との関係による分類
 A.初コウ
   初碁にコウなし、「初コウにコウ無し」という格言にあるように、始まったばかりでは
   コウダテが少ないので取り番側が有利ということを示す。
 B.花見コウ
   コウの負担が一方に大きく、他方に小さい場合のコウ。
     コウを解消する手が一方の死につながり、
     他方はコウに負けても被害が小さくてすむケース。
 C.一手コウ
   ヨセコウや二段コウの様でなく、解消を1手で出来るコウ
 D.絶対コウ、天下コウ、天下きかず
   その碁の勝敗を決めるコウ、どんなコウダテにも受けないで解消するコウ。
 E.無駄コウ
   そのコウとは関係なく、石の生死や攻め合いの結末が決まっている場合のコウ。
 F.半コウ
   ヨセの場合に、コウの石を取って、ツナいで1目という場合のコウを指す。
   2手かけて1目の得をするので、1手は0.5目の価値だということから言う。

コウダテの分類

コウダテの分類は効果による分類、形態による分類が考えられます。

1.効果による分類
 A.損コウ
   その手自体が損なコウダテ。損コウは余程のことがないと打ってはいけない。
   損コウたてるべからずの格言がある。
 B.無コウ
   コウダテの価値のないコウダテ
 C.近所コウ、ソバコウ
   コウを争う意義と同様な意義を持ったコウダテ。
   例えば、白が黒の目を奪う目的で開始したコウに対して、別の場所で目を作
      ろうとする黒のコウダテを言う。この場合、白は黒の目を奪うコウを解消し
   ても、黒はコウダテのところで目を作るのだから、白はコウの目的を達成出
   来ないので、黒のコウダテはコウダテとして成立する。


2.形態による分類
 A.石を取るコウダテ
   a.相手の生きている石全体を連打によって眼無しにする
   b.殺す為、或は攻める為に、連打によって切断する
 B.死石を生きるコウダテ
   a.自己の死んでいる石を連打により生き返らせる
   b.      〃        生き石と連絡
 C.攻め合い負けを勝ちにするコウダテ
   a.手負けの攻め合いの石を連打により手勝ちにする
   b.      〃         攻め取りにする
 D.コウ移しのコウダテ
   コウダテとして、別の所にコウを作る手を選択した場合、そのコウダテに受
   けないで解消した場合、コウ争いは継続するが、最初とは別のコウ争いとな
   る。この様な場合をコウ移しと言い、そのコウダテをコウ移しのコウダテと
   言う。
 E.ヨセを2回打つコウダテ
   コウダテの大きさは争っているコウの大きさの2/3であれば良い。
   つまり、相手がコウを取る手と、解消する手の2手でその2/3を獲得するのだ
   から、自分の着手も2手でその2/3以上の大きさのヨセを打てば形勢は悪化し
   ない。



コウ争い十則


石田芳夫九段著「コウに強くなる本」(誠文堂新光社)より引用しました。
1 コウを仕掛ける時の注意 死活が絡んだような緊急の場合は別として、原則的には、コウの大きさと全局との関連を把握し、コウダテの数を確かめてから、成算を持って、コウを敢行する。
2 コウ材が足りない場合 コウ材が足りない場合は、コウ材が増えるまで待つか、積極的にコウ材作りをしてから、コウを仕掛ける。
3 コウダテは小さいものから使え コウダテの大きさを数え、小さい順につかうべきです。この順序を誤ると、振り代わりの段階で損をしたり、また後で発生するコウの時に不利になります。
尚、小さい方といっても、争っているコウの大きさとの関係を配慮します。→参考 9.コウダテの目安は2/3
4 コウを立てる場合の注意 コウダテの数が多くなるようなコウダテの立て方をする。 損コウ、無コウにも注意する。
5 コウを仕掛けられたら 前述のコウを仕掛ける側の注意点はもとより、コウを仕掛けられたら、コウを取れる場合は取るということが必要です。花見コウその他の理由で、コウを争えないので、譲るという場合でも、まず取れば、相手はコウダテを1つ使う必要があります。それだけでも、利益になります。
6 初コウにコウ無し 始まったばかりの局面では、コウ材は少ないケースが多いものです。この段階でコウを始めると、取り番側が勝つことになります。この点を考え、仕掛けたり、コウ味のある部分を評価します。
7 ヨセコウ、二段コウ、万年コウに注意 これらのコウはコウを解消するのに、手数が必要です。コウに勝っても、相手の複数のコウダテに受けなかったことによるマイナスが大きければ、失敗ということになります。つまり、全局的視野にたったバランス感覚が大切です。
8 コウを解消する時期 どこまで、コウを争い、どこでコウを解消するか、その時期を逃さないヨミが大切です。そのタイミング如何で、一局の成否が決まるコウ争いもあります。
9 コウダテの大きさの目安は2/3 コウの大きさの2/3の大きさのコウダテが振り換わりの目安です。
10 コウは勝負の一部分 コウに勝っても勝負に負けては本末転倒です。たとえ、部分的なコウに負けても、全局で得をするように心がけます。







コウダテの大きさの目安

コウダテはコウ争いの時に打ちますが、争っているコウの大きさによって、2手連打を前提とするコウダテの大きさの基準を知る必要があります。
つまり、小さすぎるコウダテを打って、相手にコウを解消してしまわれると、そのコウダテは適切ではないということだし、大きいコウダテは小さいコウダテに比較して、その数は少ないので、大きいコウダテをコウダテにするには限度があるからです。

ここではまず半コウの計算を説明し、次にその考え方の応用として、コウダテの大きさについての目安を説明します。
半コウについて
右上のN13、右下のN1のところが半コウです。
半コウと言ってもコウに勝てば1目の価値があります。ただし、その1目を得る為に1手以上の手数を必要とするので、半=0.5という表現になっています。つまり、大まかですが、2手掛けて、1目の得なので、1手では0.5目というところから半コウと言います。

この形、実際には、白と黒で、解消する手数が異なります。
黒は黒1の1手で解消出来、白は白2、白4の2手で解消出来ます。
右上の形は黒が2/3目(もく)の価値、白が1/3目(もく)の価値があることになります。そこで、黒1、白2、白3それぞれの手の価値は1/3目(もく)ということになります。確率論の応用です。

このことから、半コウに限らず、コウを譲る方は他に連打出来るので、1/3を2回つまり、争っているコウの大きさの2/3(=1/3×2)の大きさが、コウダテで得られればコウは譲っても良いということになります。(当然、2/3より少しでも多ければ勝利に近づきます)

左下のコウの大きさ
黒7とツゲば黒地が2目出来ます。白が白7と取り、白B2と取ると、白地は17目出来ます。従って、出入り計算により、19目の価値があることになります。
また、左上、白6と下がって、白8と打つ手の大きさは 白8により、白地12目となり、黒8により黒地2目となるので、出入り計算で14目となります。

上記で、コウ争いの2/3のコウダテで良いのだから、左上の白6のコウダテはコウダテとしては妥当な範囲の大きさのコウダテになります。
   19÷3×2=12.66  12.66<14
注.ここでは一般論として説明しており、そのコウダテで必ずしも勝てるとは限りません。その局面で、もっと大きいコウダテでないとダメなケース、逆のケースいろいろあります。一般論を踏まえた上で、その対局での最善を考えるのがベストなのは当然のことです。







コウダテの回数当て問題

問題1 
右上の白(右下も同じ)に対するコウダテの回数は何回?

<右上>コウダテ側の誤り例
黒1の1回というのは不十分でした。

問題1 正解
<右下>
黒3、5、7の3回が正解です。


問題2
左辺の白に対するコウダテの回数は何回?

<左辺>
黒9、11、13、15、17、19の6回が正解でしょうか?

正解は下図。
問題2正解

<右上>
黒1に対しては白2とツゲば、ここは1回しか利きません。
黒3に対して、白4と抱えると、黒3、5、7の3回なので、 合計4回が正解です。
この様に、白の受け方により、コウダテは減ることがあります。


問題3 <右下>
もし仮に、コウが出来て、右下で、5回以上のコウダテが利けば、そのコウに勝つと同時に、その碁にも勝てる場合、どうやって、5回以上のコウダテを作りますか?工夫して5回のコウダテを作る手順を考えて下さい。
黒9、11、13、15のコウダテでは4回です。これでは、その碁に勝てません。

問題3正解
<左下>
黒21が良い手で、黒17、19、21、23、25の5回のコウダテが出来ました。