教習所ネタ7
言葉にしての意思表示はなかったけど、彼の態度で想いが通じ合った事を感じ取った僕は、夢見心地だった。
ところが・・・だ。
さあ、存分に愛の言葉を甘く囁き、きっと恥じらいにうち震えているだろう彼を優しく導きながら二人で一つに溶けあって・・・・・と、ウットリ企てていた僕のプランは、彼のダイナミックな行動とあんまりなセリフで序盤から早くも暗礁に乗りあげた。
『なんでだよ!?ざけんな!ここまできといて今更オアズケもねぇだろうが!?ああん?おとなしくヤらせろよアル!』
この期に及んで、何という趣に欠けた言い様か。まるで合コンを抜け出してラブホに来たというのに、服を脱ぐ段になってから逃げ腰になる女の子に向かって吐くセリフだ。・・・いや、僕は女性に対してそんな乱暴な口はきかないが、一般論としての例えでそんなシチュエーションが脳裏をよぎったのだ。
男同士でいたす場合、『タチ』と『ネコ』という言葉がある通り、いわゆる男性役と女性役をそれぞれどちらがうけもつかという問題に直面する。根っからのゲイならば、きっと話は簡単だったろう。しかし僕もそして彼も、同性を性的な対象として見たのは多分これが初めてのことであり、男である以上好き好んで『突っ込まれる』側をやろうとは思わないのが人情だ。それに先ほどの車での彼のセリフからしても、きっとエドは僕に突っ込んでアンアン言わせるつもりでいるに違いないのだ。
ところが、彼のもの慣れない様子から、同性との性交渉が無いのははもちろん、異性との経験も浅いと踏んだ僕は、『いける』と確信した。
どんな女性でもものの数秒で腰が抜けてしまうとっておきのキスをお見舞いしてあげれば、案の定瞬く間に柔らかくなった身体を委ねてくる彼をベッドへ連れて行き、とにかく先手必勝とばかりに全てを脱がせてしまう。
・・・同じ男の体だというのに、彼の裸体は思わず生唾を飲んでしまう程の艶めかしさを持っていた。
夢で見たように、この身体を思う様むさぼって、開いて、熔かし尽くしたい・・・・・・!
強烈な欲求が頭を擡げ、僕の中で狂ったように渦巻くのを、歯を食いしばって耐える。
―――ダメだ。現実はそう簡単なものではないのだ。
きっと受け入れる側には相当の負担を強いてしまうだろうから、ここは自分の『欲棒』は後回しにして、先ず彼を気持ちよくさせてあげることだけを考えよう。
そう決めた僕は、ただひたすら念入りに彼の体に愛撫を施し、快感を導き出すことに専念した。
その間抗うような素振りはするものの抵抗にもならないそれは、逆に彼をより扇情的に見せるだけだ。
幾度も繰り返し『好きだ』と告げながら、身体のあちらこちらに僕の所有印を刻む。彼の体は驚くほど感じやすく、どんな些細な刺激にも初々しい反応を返しては僕を歓ばせた。
淡い色合いの彼の中心を優しく握りこみ思いの丈を込めて高みへと誘えば、ビクリビクリと背を逸らしシーツの上で身を捩じらせる。いつしか解けてしまった髪が乱れて広がり、シーツや彼の汗ばんだ肌に散っている。
やがて熱を弾けさせた彼のしどけなく横たわる姿がまた刺激的で、僕はそろそろ自分の理性に限界を感じ始めていた。
このままではきっと、彼を思いやる余裕もなく抱いて抱いて抱きつぶしてしまうだろう。
しかし、一度この場を離れ、水でも飲んで仕切りなおそうと思った矢先だ。
彼なりに自分の中でこの状況を納得するに至ったらしく、始めは抵抗すらしていた彼が今度は突然僕の股間のモノを握りしめてきたのだ。
な・・・・・なんということだ・・・!彼の細い指が・・・・小さな手のひらが・・・・・僕のモノに絡みついて・・・嗚呼ッ!!
もはや理性の糸は、ふつりと切れる間際だ。これが切れてしまえば、きっと彼は無事では済まないだろう。それだけは何としてでも避けなければ・・・!
必死にその手を止めれば、エドの口から発せられたのは件のセリフだ。もうムードもへったくれもあったもんじゃない。僕は泣きたくなった。
それでも若干二十歳の健康な男子の体はどこまでも貪欲で、中心部分はもう痛いほどに張り詰めている。これは出さなければ苦しくなる一方だ。しかし愛しい彼を目前にして、この『繋がりたい』衝動を抑える自信は全くなかった。
僕はヨロリと立ちあがり、ベッドを後にした。
仕方がない・・・・もうどうせロマンチックに事を運べる雰囲気ではなくなっているのだし、今更これに格好悪いオマケがついたところで構うものか。
「・・・アル?・・・・え?オイ、どした?」
僕の行動が読めず慌てた様子で聞いてくるエドに目を向けることもできないまま、背中で答えた。
「・・・・一回・・・抜いてくる・・・・・」
「うええええええええええ〜〜〜〜〜〜ッ!?」
折角この俺がその気になってやったというのに、一体コレはどういう了見だ!?
紆余曲折を経て迎えた合体の時を前にして、これまでノリノリの押せ押せだった相手がいきなり尻込みをするなんて、それはあんまりじゃなかろうか。
オンナの趣味に関して不本意ながら『ゲテモノ食い』の異名を持つ俺だが、流石に男はストライクゾーンから大きく外れている。にもかかわらず、アルフォンスだけは例外的に可愛いと思えてしまい、愛情みたいなものまでがっつりと感じ、故にチンコがぶらさがっていても引かずに勃つ事ができるだろうという結論にまで至ったというのに。いざその時になってみたら逃げるのか?そんなことが許されるほど、社会ってヤツは甘くはねぇんだよバーロー!
前屈みの姿勢で部屋から出て行こうとする背中めがけ、ベッドを踏み切り台にホップステップジャンプと三段跳びで喰らいつき、その場で寝技に持ち込んだ。
「ロープロープ!」
ローリングバッククラッチが完璧に決まり、アルフォンスがバンバンと床を叩いて降参の意を示す。しかしここで許してやる俺ではない。
「お、ま、え、が、往生際悪く逃げやがるからだろうが!これまで散々俺を束縛して口説きまくって、今日はとうとう大事なムスコにまで手をかけやがった癖に、俺がその気になったら途端にソレか!?落とすのだけが目的だったってことか!?ハ!だとしたらお前は俺を甘く見過ぎだったな。こう見えても俺は滅茶苦茶執念深いんだぜ。こうなったら一生テメエの背中に子泣きじじいのように張り付いてやる〜〜〜ッ!」
ブリッジして完全にクラッチさせた両脚をギシギシと揺さぶれば、アルフォンスが堪らず悲鳴のような声で叫んだ。
「違う!誤解だ!だって・・・・このままじゃ、僕はきっと手加減できずにエドに酷いことをしてしまうよ・・・!だから・・・頼むから少しだけ時間をくれ・・・!」
折角綺麗に決まったフォール技を解くのは些か惜しい気もしたが、その演技ではないらしい切迫した様子に、俺は仕方なくヤツの体を解放してやった。
脚をさすりながら半分涙目になっているアルフォンスは、いつもの破廉恥でハタ迷惑で、強引に我が道を行きながらもクソ可愛らしいお茶目な笑顔で俺を『まあいいか』という気持ちにさせてしまうちゃっかりした男と同一人物とは思えない哀れっぽい様子で訴えた。
「・・・・それは僕だって、一刻も早くエドとひとつになって、ベッドのスプリングをギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシいわせて階下の住人から苦情がくるような夜を過ごしたいと思っ・・・」「お前どんだけベッドをギシギシいわす気だよ?」
すかさずツッコミを入れながら、俺は早くも、この先アルフォンスと良好な関係性を保っていけるのだろうかと疑問を抱いた。
時々弱気な姿勢を見せる事もあるが、この男はどうやら万事が・・・・つまりアッチの方面までもがとんでもなくエネルギッシュなタイプらしいのだ。
・・・・・・どうしよう。俺って自分でもビックリするくらい淡白なタイプなんだけど・・・・・・・。
非常に言い辛くはあるが、こういう事は後に延ばせは延ばすほど言い辛くなるなるだろうし、ヤル気満々のアルフォンスに合わせて無理をする気など全くなかった俺は「あのなぁ」と口を開いた。
「・・・・今後のコトなんだが・・・。俺さ、もしお前が毎晩とか一日おきとかそういうハイペースでヤリてぇとか言っても、絶対無理だぜ?」
俺の言葉に、やはりアルフォンスの動きが止まった。見開いた金色の目にじっと見つめられながら、俺はこの始まりかけた関係が早くも立ち消えてしまうのかと思ったのだが、アルフォンスは男心を刺激するのが上手かった。
「エドのいいようにするのが、僕にとっても一番いい事だよ。だから無理なんてしないで、僕なら大丈夫だから。」
キュンときた。なんてこった!こいつ、可愛いにもほどがある!
俺のストライクゾーンは、ボンってしてボンってしてボンってしてるようなどこもかしこもバーンとしたオンナだ。基本的に『キュッ』はなくても別にいい。筋肉質ならなお言う事なしだ。そのあたりを考えると多少股間に余計なものがついてはいるが、アルフォンスはかなり俺の理想に近かったし、何より俺好みになろうというその健気な姿勢が最高だ。
こんな理想的な相手と結ばれる好機をみすみす逃す手はない。ここはガッチリと既成事実を作ってふたりの関係を明らかにしておかなくてはならないだろう。珍しく俺はヤル気満々になった。
「アル、もう逃げんな。お前は俺にとって最後のオンナ・・・・じゃねえ、男か。男だ!さあ、ヤルぜ。ベッドに戻れ!腰が抜けるまで可愛がってやる!」
俺の口説き文句が不満だったのか。それともまだ何か迷っている事でもあるのか。アルフォンスは肩を震わせながら、複雑な顔であいまいに頷いた。
「・・・・・・可愛がって貰うの?僕がアナタに?腰が抜けるまで?・・・・そ、それも何だか倒錯的で・・・・フフ・・・・素敵だけどね」
「?なにブツブツ言ってんだよ?何事も思い切りが肝心だぜ?」
俺のその言葉に、それまで床に座り込んでいたアルフォンスはすくっと立ち上がり・・・・・・。
「エド、目が覚めたよ。そう・・・・・思い切りは大事だよね!僕は何を怖がっていたんだろう・・・アナタの為ならこの兇暴な欲望も見事にコントロールして見せるとも!さぁエド!手を取り合ってめくるめく官能の世界へと旅立とう!!」
「いや・・・・・そこまで力まなくても・・・・うぎゃ!」
一度は逃げ腰になったアルフォンスだが、『思い切りが肝心』という俺の言葉をきっかけに突然針が振り切れる程のパワーを漲らせ、その勢いのまま俺を横抱きに抱えあげながらベッドへとダイブをかましやがった。つくづく行動が突飛で読みにくい男だ。
既に全裸だった俺に覆いかぶさってはむはむとあちこちに喰いついて来るアルフォンスは、まだ半分服を着たままだ。俺はそれが気に食わなくて、色々されながらも必死に前を開けた状態だったボトムごと下着を引っ張った。
「ああ、ごめんね。」
アルフォンスはすぐにそれに反応し、一度身を起こすとシーツに寝そべっている俺が見上げる前で、残った二つのボタンを外したシャツを床に落とし、続いてボトムも男らしいサバサバした仕草で脱ぎ捨てた。
アルフォンスは育ちが良いのか、普段部屋でも殆ど、上半身さえ晒して歩きまわった事がない。だから俺がヤツの裸をちゃんと見たのはこれが初めてだ。
着痩せするタイプらしく、思いの外厚みのある胸板に、見事な腹筋。引き締まったウエストにデスクワークの人間のものとは思えない立派な大腿筋。同じ男として嫉妬を感じてしまう身体に、俺も負けじと手を這わせた。
「エド、筋肉好き?」
クスリと笑いを含む言葉尻に余裕を感じてむっとすると、言い返そうと開いた口を塞がれた。駄目だ・・・・俺はこれに弱いらしい。瞬く間に力が抜けて、色々したいのに何も出来ない身体にされてしまう。
散々口の中を蹂躙され、その間に今まで感じるなんて知らなかった場所をいくつも探し当てられ、そこを否応なく攻められて、喘ぎ声を噛み殺すのがやっとだ。このままでは主導権を握られてしまうと危機感を抱いた俺は、生蛸の刺身のようにくにゃくにゃになった身体で抵抗した。
「は・・・・ッ・・・・・俺・・・・もう、良いから・・・・お前も・・・・・!」
「駄目、止まれない。・・・・たきつけたのはあなただよ、エド。」
「アア・・・・ッ・・・・!?」
耳朶を甘噛みされながら囁かれて全身がゾクリとわななき、聞いたこともないような恥ずかしい声が俺の口から飛び出した。アルフォンスの唇はそのまま首筋を辿って鎖骨をなぞり、乳首に吸いつく。その瞬間、またしても電流が全身を駆け抜け、俺の身体が勝手にビクビクと反り返ってしまい、アルフォンスの吐息のような笑いを含んだ声が降ってくる。
「凄い。なんて感じやすいカラダなんだろう・・・・・ん?エド、そんなに気持ち良い?可愛いね。まだまだこれからなのに、もうそんな蕩けた眼をして・・・・・困るよ・・・こっちは我慢するだけでやっとだ。」
屈辱的な事を言われているような気がするが、俺の脳はすっかりのぼせあがっていて、それに反応するどころではなかった。ただこのままでは男として全く役に立たずに、アルフォンスをアフンアフン言わせることが出来なくなってしまうのでは・・・・という危機感だけが渦巻いて、喘いでしまいそうな声を必死に抑えつけながら言った。
「アル待て・・・・・お前な、セックスはギブ&テイクという理念を踏まえた上でやらなかったら、二人で一緒に気持ち良くなるなんて無理なんだぞ?どうしてさっきから俺ばっかりをマグロのようにゴロっとさせるんだよ?俺にもちゃんとヤラシイことさせろ!」
「俺にもちゃんとヤラシイことさせろ」
この一言で僕は改めて、この場面における互いの立ち位置の認識が重複していることを実感した。
ああ・・・・・・しっかりハッキリと分かったよ。僕の禁断の鍵穴にあなたのその愛くるしい、ちょっと皮被り気味の鍵を突っ込むつもりでいるんだね、エド・・・!
エドと出会う以前は、同性に対して性的な感情を抱いた経験のない僕だから、同性といわゆる肉体関係を持ってしまう状況など想像すらしたことはない。よって自分が『女役』にされてしまうことだってないし、正直そんな状況に本能的な嫌悪感を強く抱く。だがしかし、相手がこの人だったらあるいは・・・・・・・と思ってしまう・・・・・・・・そんな自分が、なんとなく好きだ。
「でもね、こういうのはやっぱり痛いのがNGってのは勿論のこと、二人ともが気持ちよくならなきゃだよね、エド?そう思うでしょう?」
いきなりの問いかけに一瞬不意を突かれた表情をしたエドは、僕の装填済みの大砲に伸ばしかけていた手を止めた。危ないところだった。もし不器用そうなエドの手に力加減せずに握られでもしていたら、暴発する恐れすらあった。
行為を中断されたエドは子供っぽく唇を尖らせて文句を言う。
「なんだよ!なんでさっきからイイトコで水を差すようなことばっかりするんだよアル!さてはお前・・・・・」
妙な溜めをつくるエドをみれば、彼はオヤジ臭い仕草で顎をさすりながらニヤリと笑った。
「童貞?」
「違うからソレ!絶対違うから!ちょ・・・・・その嬉しそうな顔止めてよエド!ウワ・・・・・っ!いきなり股間がガオーッってなってるし!エド〜〜〜ッいきなり突っ込もうとしちゃ駄目だってば!!!!」
アメストリス自動車教習所のアイドル指導員エドワード・エルリックさんは、その可憐な外見に似合わず内面は結構オヤジな部分があった。まぁ、別にいいけど。
この世の中、ありえないことはありえない。
アメストリス教習所きっての人気指導員であり皆のアイドルでもある、あの繊細な美貌を持ちながら内面は男らしくしかし小さくてどんな宝石よりも綺麗な『エドワードさん』が今、雄の本能を剥き出しにして自分に襲いかかっている。しかしさらにありえないことに、彼を愛しているからこその弱みなのか、僕は男としての体面が危うくなっているこの状況にありながらもどこか陶然としている自分を感じていた。
エドは頬に血の気を昇らせ熱い息をせわしなく吐きながら、的を得ないむず痒い愛撫らしきものを僕の体のそこここに施しつつ、いきなり組み敷いた僕の臀部の肉を両手で鷲塚むと同時に掻き分けるように広げた。
「ちょ・・・・ま・・・・・!」
「逃がさねぇ・・・・・お前だけは絶対に逃がしゃしねぇよ、アル。逃げるな・・・・お前だって、俺が欲しいだろ?」
なんて、いつになく妖艶で不敵で男性的な笑みを作るものだから、仕切りなおして主導権を取り返そうとするのも忘れて魅入ってしまった。そればかりか、こっそりさりげなく隠し持っていたコンドームを差し出してしまうという致命的な失態までやらかした。
「サンキュ。気が利くな、アル。」と、僕のこめかみにチュっとしながら言うと、パッケージの端を咥えて破り取り出したソレを装着・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・エド・・・・?」
動きを止めたエドが首を傾げた。自棄に難しい表情を作り、自分の下腹部を探ってはまた首を傾げている。
「どうしたの?」
「・・・・・・・サイズがあわねぇ・・・・すっぽヌケそう。お前なにコレ?人間用?」
「一応。僕が持ってるのはこのラージサイズしかないんだけど・・・ダメそう?」
途端に僕に覆いかぶさるようにしていたエドの目に涙が堪り、次の声を出そうとした僕の額にゴッと衝撃が走った。
「さりげなく自分がマンモスサイズだって自慢してんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!俺だってなぁ!俺だってなぁ!」
目の前に星がチカチカと舞い、ズキズキと痛む額を押さえるのに精一杯になった僕の無防備な下半身は、一瞬で大きく足を広げられ、見事にガッチリと押さえ込まれてしまった。
エドはとうとうサイズの合わないコンドームを装着するのを諦めたらしく、取り去ったそれを後ろに投げ捨て、抜き身の状態の可愛いキーを涙ぐみながらも僕の鍵穴にあてがってきた。
まさか。
いきなりナマですか?しかも潤滑剤なしですか?あの僕、後ろはバージンなんですけど!ていうよりそこは決して自然には濡れない穴なんですが!何の準備もなしに非日常的な摩擦を加えられ傷つきでもしたら、明日から僕はどの穴から排泄すればいいのでしょうか!?
あまりに突然の展開に行動が追いつかず、脳裏を駆け巡るだけで口から出ることのない諸々のセリフ。
その部分にいまだかつて体験したことのない感覚を覚え、その気持ち悪さと未知の恐怖を紛らわそうと、僕は遠い日の記憶を手繰り寄せた。
子供の頃、解熱用に処方された座薬。確かに不快感はあったが、痛かった記憶はない。
彼のキーはほぼ100パーセント充填完了してもせいぜいスーパーの精肉売り場で売っているふた袋498円のソーセージなんかと大差ないサイズだ。だから恐らく此方が余程無理な力を入れなければ大丈夫なはずだ。
よし。
僕は覚悟を決めると、少し緊張しているのか強張って動きを止めているエドの汗ばんだ背に両手を回した。
「いいよ・・・・・・きて、エド」
愛してる。だからもう、自分の属性がどちらだろうと僕は構わない。あなたと結ばれることができるのなら、どんな形であっても僕は幸せなんだ。だから・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何時までたっても動きのない展開に焦れた僕は、さり気なくエドを促すべく、熱い呼吸を繰り返すエドの色っぽい唇に軽くキスをしながら言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの・・・・・・・エド・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・いいよ?入れても・・・・・?」
その瞬間、今度こそエドの両目から大粒の涙が溢れ出して僕の顔や胸元を濡らした。
「オレ・・・・・オレ・・・・・・・・もう、さっきから全部・・・・・・・根元まで入ってるんだけど・・・・・」
その衝撃は先ほどの比ではなかったらしく、今度は怒る気力も湧かないほど打ちのめされてしまったらしい。
よくよく感覚を研ぎ澄ませてみれば、確かに肛門が何かに押し広げられて異物を挿入されている感覚がある。そしてその異物が瞬く間にしおれていく感覚も・・・・・・。
しまった!!!僕としたことが大失態だ。こんな時にこんな場面で・・・・嗚呼!!!!!
一般的にオトコという生き物は、殊こういう事に関しては打たれ弱いものだ。初めてがこんな悲惨な状態で終わってしまえば、彼はきっとこの先僕と愛し合う行為なんて二度とはしてくれなくなってしまうに違いない。
冗談じゃない。そんな事態だけはなんとしてでも回避しなければと、僕はもう、恥も外聞も捨て去り狂ったようにエドをもとめ、煽った。
「待ってエド!萎えるな!復活させて!あ、あ、あ、感じるーアアン!ホラ、ホラ、ホラ、ホラ!凄いッ!エドの気持ちイイよ!アアー!すぐにイっちゃいそうだよー!」
少々棒読みな感は否めないが、そこはご愛嬌だ。
自分の肛門は今搾乳機なんだと言い聞かせつつ、プロの風俗嬢顔負けの腰使いで彼のソコを刺激し、勝手が分からないながらも締め上げるようにしてやる。途端に表情を変え、身体をフルリと震わせる様子にコチラの雄が疼く。
「ン・・・・・・ハ、アウ・・・・・・・・・・・!アル・・・・・・・あ、あ、あ・・・・・・・・動く、な・・・・・・あ、オレ・・・・・・ッ」
咄嗟に引こうとする細い腰に両足を絡ませ逃げられないようにすると、僕の横について自分の身体を支えていたエドの両腕がとうとう力なく崩れた。
繋がったまま体位を入れ替え彼をシーツに横たえると、僕は騎乗位で思う存分彼を攻め立てた。エドはもう殆ど自ら腰を動かすことさえできないまま、綺麗なラインを描く首筋をさらけ出しながら身体を仰け反らせ、可愛い声を上げ続けた。
正直なところ、後ろで快感らしきものを拾うことは出来ない。けれど、僕の身体で彼をこんな風に身悶えさせられるという状況が、僕にえもいわれぬ幸福感をもたらした。
自分の下でシーツをかき乱しながら快感に身悶えする愛しい人の姿を堪能するという素敵なシチュエーションなのに、後ろを出たり入ったりする感覚が、至福の境地へと至る僕の行先を阻害する。かくなる上は、一刻も早くエドに絶頂を迎えてもらって仕切り直しを・・・・・と思う間もなく事態は僕の望み通りに動いてくれた。
「あ、あ、あ・・・っアル・・・・・もう・・・・・!」
―――――――エド・・・・・・・早・・・・・ッ!!!!
口をついて出そうになった言葉をギリギリで噛み殺す。
挿入してからまだ1分経過するかしないかだというのに、陶磁器のような滑らかな肢体をひと際大きく仰け反らせ、彼は達してしまったのだ。
自分の内部で熱が弾け、やがてドロリとしたものが出口を求めて下へと移動する独特の感覚は、実にいただけないものだった。しかしこれが愛しい人の体液だと考えることで何とか叫び出してしまいそうなところを留まった僕は、ほぼ朦朧状態でぐったりしているエドを抱き上げてバスルームへと走った。
「うあ・・・・?アルお前まだイッてねぇだろが・・・・・」
「いいから、ひとまず黙って大人しくあちこち洗わせてくれ―――――ッ!!」
「お、オウ?」
ボンヤリとしながらも我にかえったエドを抱え込んだまま、全開にしたシャワーの下で鬼のように自分とエドの身体を洗いまくった。外側も内側も・・・・だ。ロマンスのかけらも見当たらないシチュエーションに、先ほどは暴走寸前にまで滾っていた僕の大砲はちょっと元気をなくしていたが、マックス状態で初めてのご訪問をするよりは余程彼にかける負担を少なく出来るだろうし逆に好都合だ。
自分でも恐ろしくなるほどの手際の良さで全てを終えると、大判のバスタオルでラッピングしたエドワード(初物)を抱えていそいそとベッドに戻る。
ベッドに降ろされたエドは蒼白になって後ずさった。
「アル、お前何!?俺のケツの穴まで穿って洗いやがって!まさか俺にも同じ事させろってんじゃねぇだろうな!?それはダメだぞ!確かにチンコがお前の予約済みになった件は俺の油断の所為だから仕方ねえとしてもだな、ケツの穴は譲れねェ!これは俺だけのモンだ!!誰にも触らせねぇし掘らせるつもりはねぇ!!」
しまった。迂闊だった。何故僕はあの日あの時、あの絶好のチャンスに、エドのアナルにも予約を入れておかなかったのだろう・・・・!!
「く・・・・・ッ・・・・じゃ・・・キャンセル待ちを希望す・・・・・・」
「アフォンダラ〜〜〜〜ッッッ!!一生キャンセルなんざ出るわきゃねぇだろうがウラ〜〜〜〜ッッ!!!」
なんとか僅かな可能性に縋ろうとした僕の下顎に、エドのドロップキックが綺麗に入った。
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