お題サイト様からお題をお借りして拍手文を作っていく企画でした。
お題は次の10題。LINKのPageに貼ってある『ひやかし程度に10のお題』様からお借りしています。
1, 幸せですか?
2, もう少し待ってて
3, 大切なもの
4, 穏やかな時間
5, それはまるで、迷路のような
6, 今すぐにでも
7, 切り札として
8, 気づかないで
9, 大騒ぎ
10, 今は、まだ(現在最初の拍手お礼画面で公開中です)
過去拍手 お題8『気づかないで』
アルフォンスが学会に出席する為に家を空ける丁度そのタイミングで、研究所では気心の知れた仲間内で一年の締めくくりと称したパーティーが催された。酒癖の良くない俺は、「自分のいない場所でアルコールを口にするな」と常に弟に言われているから、それには元々出るつもりはなかった。それが職場から帰ろうとする俺を数人の仲間が取り囲み、強引に会場となるいつものパブに引き摺っていったのだ。不在にかこつけて勝手気ままに酒宴を楽しんだと弟に思われようものなら大問題だと、すすめられたグラスをことごとく固辞しつつも、そこは気の合う者同志が集まる場所だけに、俺は笑い声の絶えない話の輪の中に入り楽しい時間を過ごしたのだった。が、問題はその後だ。
事前に打ち合わせ済みだったらしく、各々持ち寄ったプレゼントを景品にしてカードゲームが始まった。順位の上の者が優先的にカウンターに並べられた景品から好きな物を持ち帰るというルールらしい。持ち合わせの品がない俺はテーブルの上に転がった酒瓶を数本使ってガラスの置物を錬成し、それを景品が並べられたカウンターに置いたのだが、どういうわけか俺の芸術品は一番最後まで残っていた・・・・。とにかく問題は、俺がそこで選んで持ち帰って来た、一見何の変哲も個性も無いプレゼント包装をされたこの箱だった。
帰宅後シャワーを浴び、弟のいないリビングのソファを独り占めしてゆっくりと身体を伸ばしていた俺は、傍らのローテーブルに置きっぱなしになっていたそれに目を留めた。あのメンバーの内の誰かが持ってきたものだ。どうせ中身は安物のマグカップか何かだろうと、何の期待も持たずにリボンを解き箱の蓋を開けたのだったが。
「な・・・・・んだ・・・・・コレ・・・・・?」
箱から出てきたのは、正体不明の物体。材質は合成樹脂だろうか。肌色がかった着色が施されたそれを手に取った俺は、首をかしげて唸った。
「ぬう・・・・・良く見知ったモノのような気もするし、そうでない気もする。なんだっけか、コレ?」
手にずしりとした重みを伝える、表面が滑らかな、一種独特の形をした・・・・・・モノ・・・・。
「ぎゃあああああああああ!!!!!!ざけんなッ!一体どいつだ、こんな悪趣味なモンを景品に出した奴は!?」
ソレが何なのかを悟った俺は、思わず部屋の隅に向かってそのブツを投げつけていた。
何故ならソレは見るも触るもおぞましき、男性器を模ったいわゆる『張り形』といわれる代物だったのだ。
「こんなモン貰って、男の俺にコレを一体どうしろってんだ!?」
よりによってこんな碌でもない物が入った箱をわざわざ選んで持ち帰ってきてしまった自分が呪わしい。正体が分かってしまった以上床に転がったソレを拾い上げる気にもなれず、俺はそのまま2階の寝室に引き上げようと階段を上り掛けたのだが、途中でその足を止めた。
待てよ。確かアルフォンスが出張先から戻るのは明日だったハズ。とすれば、帰った弟がリビングの床に転がったアレを見たら、一体どう思うだろうか。
こんなモノで一体何をするつもりだったのかと、嬉しそうに俺を虐めるに決まってる。それにこの入手ルートを聞かれた場合、弟の留守の間に酒の席に参加していたことがばれるのも上手くない。いずれにせよ、のっぴきならない事態になることは避けられないだろう。
ゴミ箱に捨てるか?いや、勘の良い弟は例え捨てても偶然にゴミ箱からソレを見つけてしまったりしそうだ。とりあえず今日のところは隠しておいて、後日確実に処分するのが最良の方法と結論付けた俺は、人差し指と親指で恐る恐る摘み上げたソレを箱に収め元通り蓋をすると、クローゼットの一番奥に隠しておくことにした。
翌日、学会が開かれたその地の特産品だという絹織物を土産に帰ってきた弟は、多少の疲れは見せていたものの始終上機嫌で、夕食のテーブルでも学会で見聞きした理論や研究内容を俺に熱心に話して聞かせた。やがて食後のコーヒーをすすりながら、会話の内容は自然に弟が持ち帰って来た土産物の話に変わる。
「随分とコシのある布だな。色もお前の見立てらしくて上品で、悪くねぇんじゃねえ?」
手に取った布は深みのある緑色で、滑らかな手触りと光沢を持つ中々の逸品だった。
「でしょう?兄さんのネクタイをコレで仕立てたらどうかと思ってね。ほら、去年の誕生日にプレゼントしたネクタイピンに、丁度合うんじゃないかな」
貰ったまましまいっ放しになっていたネクタイピンの存在を思い出した俺は、どこにしまい込んだのかすら直ぐには思い浮かばず、バツ悪く目線を泳がせた。その俺に仕方ないなという表情で笑った弟は腰を上げ、階段を上って行った。几帳面な弟は、そのネクタイピンの所在を知っているのだろう。
弟が戻る間、俺は暢気にもキッチンでコーヒーを淹れなおしていたのだが・・・・・・。
「ヤバ・・・・・!!!!ちょ・・・・待て・・・っ!アイツ何処にネクタイピンしまったんだ!?」
恐らくそれは、アレを隠したクローゼットの中ではなかろうか。だとすれば目ざとい弟があの箱を見つけてしまうのは時間の問題だ。
アル、アル、アルフォンス!!どうかお願いだ!アレに気付かないでくれ!!!
俺は脱兎の勢いで階段を駆け上がり寝室のドアを開けると、予想通り扉を開け放したクローゼットの方を向き此方を背にしている弟に声を掛けた。
「アル!分かった分かった!思い出した!俺、そこにしまってあるの見たコトあるんだった。ほら、ソコの棚の上の・・・・・」
例のブツを隠したのは床に直接積み重ねてある箱の一群の中だったから、俺は足元から弟の注意をそらそうと目の高さにある棚を指差したのだったが、無情にも時既に遅し。
優しい笑みを湛えたまま振り向いた弟の手の中には、アノ箱がおさめられていた。
何が天才だ。何がアメストリス屈指の錬金術師だ。浅はかな俺を笑ってくれ。
俺は自分が錬金術師だという事すらすっかり忘れていた。
そう、何も迷うことなど無かったのだ。
最初からアレを何か別のものに錬成、若しくは分解しておけば、こんな事態になりはしなかったのに・・・・!俺って奴は・・・俺って奴は・・・・・・!!!!
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ウチの兄さんは頭が悪いよ・・・・・(_ _)||||||||
次のお題、9 大騒ぎ に続きます。
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