お題サイト様からお題をお借りして拍手文を作っていく企画でした。
お題は次の10題。LINKのPageに貼ってある『ひやかし程度に10のお題』様からお借りしています。
1, 幸せですか?
2, もう少し待ってて
3, 大切なもの
4, 穏やかな時間
5, それはまるで、迷路のような
6, 今すぐにでも
7, 切り札として
8, 気づかないで
9, 大騒ぎ
10, 今は、まだ(現在最初の拍手お礼画面で公開中です)
過去拍手 お題3『大切なもの』・4『穏やかな時間』
「え?何、急に」
夕食を終え、いつものようにリビングのソファで本を手に寛いでいると、
自分の膝に頬杖をついて僕を覗き込む兄から脈絡のない問いが投げかけられた。
「いいから答えてみ?お前の大切なものって何?」
大切なもの。
僕は暫し考えこんだ。
だって僕の周りにあるものは、大抵大切なものばかりなのだ。
一言で『これ』と答えられるようなものではない。
兄は急かす様子もなく、ただじっと僕の目を覗き込んだまま黙って待っている。
僕も、その人の金の瞳を静かに見返した。
「・・・・・・・今、かな」
「ん?」
「こうして兄さんとふたりで穏やかに過ごしている今、この瞬間が、僕の大切なものだよ」
「・・・・・・・・・まったく、おまえって外さないヤツだよなあ」
そう言いながら僕の手から取り上げた本をぱたりと閉じてサイドテーブルに置くと、
僕の膝に跨って猫のように頬を摺り寄せてくる。
僅かに香る、ワインの香り。
「あ・・・・・珍しく甘えてくると思ったら、飲んだね?兄さん」
「へへ・・・・・一口だけだって。お前も飲む?この前、研究室のヤツから論文まとめんの手伝った礼にって貰ったんだ。結構イケルぜ」
「そう?じゃあ、ひとくち味見」
「う・・・・・・ん・・・・・・」
兄さんのほどける花びらのような唇に、最初から深い場所に愛撫を与えるキスをした。
アルコールに弱い癖に、その味を好む困った恋人は、飲むと必ず僕を求めてくるのだ。
濃厚なワインの味を残す熱い舌を絡めとり上顎をそろりと舌先で愛撫すると、
僕の肩にあった両の手が次第に力を失って二の腕を辿りながら下へと落ちていく。
そっと唇を開放してあげると焦点の合わない目を潤ませたその人は、
そのまま頭を僕の胸に預け熱い溜息を吐いた。
程なくして、腕の中の人から規則的なゆったりとした寝息が聞こえてくる。
ほろ酔い気分で甘えてきて僕をその気にさせておくくせに、
いいところで寝入ってしまうのはいつものことなのだ。
「まったく。毎度おなじみのパターンだよね。僕の理性も鍛えられるわけだ、困った人」
安心しきった顔で僕に身を預けて眠る人を抱きこみながら、一緒にソファに横になる。
もう少ししたらシャワーを浴びて、ちゃんと寝室のベッドで眠るつもりだけど。
今だけ、ほんの少しだけ、この幸せな時間を味わっていたい。
いつもより少しだけ高めの体温。
直接あわせた胸から伝え合う互いの鼓動。
髪の匂い。
かすかな呼吸の音。
力を抜いて、気を緩めて、何も考えず、ただ同じ時間と感覚を共有する幸せ。
過去でもなく、未来でもない。
ただ一度しかない今この瞬間を、こうしてあなたと過ごすことができる幸せ。
これが一番、大切なもの。
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珍しくお題通りにキレイに纏めた感じ?でもパンチが足りない。
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