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壁の穴から現れた巫女さんは、床に倒れた二人に目線を落として穏やかな声で言った。
「光の王ルミールに仕える者として、争いは見過ごせません」
よく見ると、まだ若い女の人、女の子といってもいいくらい。背は高めで、長い金髪を後ろにたらし、頭には白い髪飾りを着けていた。服も真っ白のゆったりした長い法衣で、右手に握りしめた金色の杖と、胸に着けている変わった形の銀色のペンダントが目立ってる。
倒れた二人は、もぞもぞと首だけ彼女のほうを向き、弱々しく答えた。
「はい……」
「それで、あなたたちは今なにをしていましたか?」
「へい……。その、ここにいるラドと酒を飲んでいたら、今日の大工仕事の話になって……。今日はラドが仕事でへまをやったんで、賃金を半分に減らされたんです」
「なに言ってる! あれはおまえが材木を切り間違えたのが原因だろうが」
「違うぞ! おまえがあの寸法で切れと言ったんだろ」
「言ってない!」
「いーや、言った!」
またしても二人は言い争いを始めて、周囲にいるあたしたちを無視してお互いにつかみかかった。
「おだまりなさい!」
巫女さんはぴしゃりと言い放ち、手に持った杖を一振りする。
すると、その杖から虹色の光がぱっとほとばしった。その光を浴びた二人は急にがくがくと震えだし、次に全身から力が抜け、身を寄せ合ってその場にくずおれてしまう。
「そのような争いがいけないのです。共同で行った仕事ならば、事情はともあれ責任は公平に負うもの。些細なことで互いに争えば、二人とも損をするだけです。日常生活の心得も、ルミールの教えるところです」
「で、でも……」
二人がなおも口答えしようとするのを見て、巫女さんは手に持った杖を空中に放り、何か短い言葉をつぶやきながら両手をすばやく空中で動かし、それから手をぱんと打った。すると両手の間から、輝く矢が四本出現し、そのままひとりでに手の間から飛び出した。
「ひっ!」
光の矢は二人の両脇をかすめ、そのまま向かいの壁に突き刺さる。
びかんずごごーん!
閃光と轟音が同時に起きた。光の矢が当たった壁には穴が開き、そこから石のかけらがぽろぽろと落ちてきた。
その矢を放った当の巫女さんは、空中に浮かんでいた杖をまた手に取り、すました顔で言葉を続ける。
「わかりましたね?」
呆然としていた二人はびくっとして、背筋を伸ばして答えた。
「はっ、はいっ!」
彼女はにっこり微笑むと、
「わかればよろしいのです。これからは仲間内で争いを起こさないように」
それから、胸のペンダントを両手で握りしめ、祈るしぐさをした。
「あなたたちに、ルミールのご加護がありますように」
……この人、怖い……。
ようやく立ち上がった二人は、壁の穴からあたふたと逃げていった。
巫女さんは二人が去って行ったのを見届けると、目を丸くして見つめていたあたしに向き直る。
ぎくりっ!
彼女はあたしを見ると、少し恥ずかしそうな表情で言った。
「ああフレイン様、なんともお見苦しいところをお見せしてしまいましたわ」
「あの……あなた、だれ?」
「は……? フレイン様、どうなさったのですか?」
床にうずくまっていたチャムがあたしに走りより、ぴょんと肩に飛び乗ると、あたしの耳にささやきかけた。
『この娘はローザ、光の王ルミールに仕える巫女だ。わたしとは旧知の仲だ』
「そうなの? じゃああなたが相手してよ!」
『そうは行くか! 今のわたしは猫だぞ。他人から見れば、そなたがフレインなのだ。そなたが話をするのだ』
「そなたが話って言われても……」
ええい、こうなったらやってやる。あたしも演劇部員。演技魂見せてやるわっ!
まず、鏡で見たフレインの容姿と、チャムの口調を思い出す。それで、だいたいどんな話し方をしたらいいか想像付くから……。
ちょっと頭の中で考えをまとめてから、あたしはその巫女さん……ローザに話しかける。
「ああローザ、あいかわらずその……元気そうだな」
ローザはぱっと顔を輝かせた。
「そんな、フレイン様のお言葉が私にとってなによりの活力剤。フレイン様にお会いできさえすれば、このローザはいつでも元気ですわ」
「それはともかく、その……わたしの屋敷が少々損害を受けてしまったようなのだが」
ローザはあたしの言葉に、あわててペンダントを握りしめて哀願する。
「ああっ、敬愛するフレイン様のお屋敷にこのような傷をつけてしまいましたこと、心からおわび申し上げますわ。でも、責任は公平に負うべしというのがルミールの教え。私の落ち度は教会の落ち度でもあります。お屋敷の損害は、ルミール教会の費用できっちりと修繕いたしますので、どうかご心配なさらずに」
……この人、けっこういい性格してるわ。
「そうですわフレイン様、お茶はいかがでしょう。本日はヴェルサムの町から上等の紅茶が届きましたので、フレイン様に差し上げようと思いまして持参してきましたのよ。そうしたら、そこの路地であの方たちが取っ組み合いをしておりましたので……」
「で、つい蹴散らしてしまったというわけか」
ちくりと皮肉をこめたつもりだったけど、ローザには通じないみたいだった。
「ま、蹴散らしたなんてとんでもない……。私、ルミールの生活の教えを穏やかに説いてさしあげただけですわ」
あれが……穏やかなの? やっぱりこの人、怖すぎ。
「ま、まあそのことはよしとしよう。ではその、紅茶をいただこうかな」
あたしが適当な返事を返すと、彼女はぱっと顔を輝かせた。
「はい! 私が用意してきますので、フレイン様はどうぞおくつろぎくださいませ」
そう言うと、あたしの返事も待たずに彼女はドアから出て行った。
あたしの肩に乗っていたチャムが言った。
『なかなかうまかったぞ』
首を横に向けて見ると、チャムは前足を口に当てて、いたずらっぽい目をして顔をプルプルさせてた。
……こいつ、笑ってる。
「あたし、これでも演劇部ですからね」
あたしの高校、女子高だからなぁ……。男役ばっかりやらされてきたのがこんなところで役に立つなんて、なんかフクザツ。
『演劇部……? というと、役者か。それは頼もしい』
にんまり。チャムは邪悪な笑いを浮かべる。
『その調子で、わたしの振りを続けてくれると助かるぞ』
「じょ、冗談じゃないわよ!」
『仕方がなかろう。わたしもそなたも、今から元の身体に戻ることはできない。特に、そなたの身体は既に死亡しているのだぞ?」
「あ、そうか……」
『考えてもみろ。そなたがわたしの身体に転生したことも、わたしが猫の身体になったことも、知っている者は他にいないのだ。そなたがフレインとして振舞ってくれれば、わたしたちに起きたことは誰にも気付かれぬ』
「そんなこと言ったって、いずれバレちゃうわよ!」
『なあに、少しすればわたしの振りにも慣れる。周囲の者もそなたの振る舞いにすぐ慣れて、わたしの性格が少々変わったくらいにしか思わぬだろう。困ったときにはわたしが助けてやる』
「……なんか、はめられたような気がするわ」
『これも世界の危機を救うためだ。頼んだぞ、魔術師のフレイン!』
そう言って……、チャムはまた、おかしそうに笑い出した。
……ローザもいい性格してるけど……。こいつも、いい勝負だわ。
チャムを連れて居間に行くと、ローザは既にお茶の用意を整えて待っていた。
白地に繊細な模様が入った陶器のポットが湯気を立て、その横には同じ作りのティーカップが二つ、それから小さなお皿が一つ、お湯を満たされてやっぱり湯気を立てていた。なかなか本格的。部屋には紅茶の芳しい香りが漂っていた。
ローザはカップの一つに紅茶を注いであたしに差し出し、それからお皿に少し注いであたしの横に置いた。そして自分の分のカップにも紅茶を注いで向かいの席に置く。
それから、丸くて粉のかかったパンを他のお皿に盛ってテーブルの中央に置いた。
あたしたちは席に着いて話を始めた。
といっても、本当に話をしているのはチャムとローザ。いったい二人が何を話してるのか内容がわからないから、あたしはチャムの言われるままにローザに話しかけ、質問していた。
「実は、しばらく旅に出ることになりそうなのだ」
あたしが(チャムの受け売りで)言うと、ローザはちょっと驚いたような顔をする。
「まあ、またお出かけですか……? こんどはどのような重大事でございましょう?」
「うむ……。先日そなたに話した疑念のことだが……」
「ゼインダンとの国境付近で、魔法を使った小競り合いが増えているというお話ですか?」
「その件だ。魔術師ギルドの者を使って調べたところ、どうやら事態は思ったよりはるかに重大らしいことがわかったのだ」
「と申しますと……」
「ゼインダンに、ディノクラの力を借りているものがいるらしい」
「!」
その言葉に、ローザは表情をこわばらせる。
「ディノクラ……。ルミールに仕える私にとって、その名を口にするのも汚らわしいことですわ。でも、でも……だれがかの者と契約しようなどという恐ろしいことを……」
う〜ん。
あたしは、目の前でお皿に入った紅茶をなめているチャムにこっそり質問する。
《ねえ、さっきから何を言ってるのか話が見えないんだけど、ゼインダンとかディノクラって何なのよ?》
『今わたしたちがいるこの国はザンジアという。ゼインダンとは、ザンジアのとなりにある大国だ。ザンジアはゼインダンと、もう一つの大国であるロイグリードの間に位置している』
《で、ディノクラっていうのは?》
『世界を支配する八人の精霊王の一人、闇の精霊王だ。このローザが仕えている光の精霊王ルミールとは、対立する関係にある』
《闇の王ってことは、その……悪いやつなわけ?》
『そんなに単純な話ではないが、この際そう思ってかまわない。どうやらゼインダンのだれかが、このザンジアもろともロイグリードを征服しようともくろんでいるらしいのだ。そのための力を得るため、その者は闇の王ディノクラと契約して、力を借りているらしい』
《それって大変なことなわけ?》
『無論だ。ディノクラと契約すれば、とほうもない力が手に入る。その力を使えば、ゼインダンはザンジアも、ロイグリードも征服できるだろう。しかし……おそらくそれだけでは終わるまい』
《っていうと?》
『世界を支配する精霊王ともあろうものが、簡単に人間に力を貸すと思うか? もしもそんなに簡単に力を貸すのならば、世界中の人間が毎日行列を作って力を借りにくるとも。とんでもない。ディノクラと契約すれば、結局は得た力以上の恐ろしい結果を招くのが常なのだ』
《どうなるの?》
『それはまだわからん。だが……、ゼインダンがディノクラと結んだ契約により、この世界に恐ろしい危機がもたらされるという予感がするのだ』
あたしとチャムの会話に置いてきぼりくらってたローザが、じれたように口をはさむ。
「あの……フレイン様、何をお話しなさっているのですか?」
あたし、チャムとの話をいったん打ち切って場をとりなす。
「ああ、すまなかったローザ。このチャムがいささか興味深い話を聞かせてくれていたものでな」
ローザは納得したような顔をする。
「そうですか。使い魔は主人としかお話ができないものですものね。私にはチャムが何を言っているのかわかりませんでしたわ」
あ、そうなのか。チャムの言葉は、あたし以外の人間には猫の声にしか聞こえないってことか。え、でも待てよ……?
《ねえチャム、それ本当? 使い魔は主人としか会話できないっていうの》
『うむ……普通の使い魔はそうなのだが、なにしろわたし自身が使い魔になったことはないのでな……この場合はよくわからん』
それから、チャムはわざと大きな声で言った。
『ローザ、聞こえたら返事してくれ!』
ローザは反応しない。
『うむ、やはりわたしの言葉はそなた以外には理解できないようだ』
《……でも、あなたにはローザの言葉がわかるのよね?》
『うむ。どうやらわたしが聞くことはできるようだ。普通の使い魔なら、主人の言葉しか聞こえないのだがな……。とにかく、わたしはそなたを通して話すしかないようだ』
これから、全部チャムの代わりに話さなくちゃいけないのか……。なんかめんどいけど、しかたないわね。
「うむ、そ、それではチャム。その話をもう少し聞かせてはくれまいか」
わざとローザに聞こえるように言ってから、またチャムとの会話に戻った。
《それじゃあ、あなたが言ってた世界の危機ってそれ?》
『そうだ。そのことについて、わたしが仕える風の王シファーに啓示をあおいだ。その答が奇妙なものでな、世界を救う力を持つ者を別世界からこの世界に転生させろというのだ。そして、その者を連れて「風の木霊する洞穴」に来いと』
《それって何?》
『風の王の聖地だ。この地上で風の王と直接対話できるただ一つの場所でもある』
《ふ〜ん……》
『というわけで、まずは「風の木霊する洞穴」に向かうのだとローザに話してくれ』
あたしは顔を上げて、チャムが言ったとおりにローザに伝える。
「世界の危機にどう対処したらいいのか、風の王シファーの教えを乞おうと思うのだ。そのために『風の木霊する洞穴』に行くことにした」
「まあ……シファーの聖地ですわね」
「そのとおりだ」
「それでは……」
ん? ローザが妙にわくわくした表情になった。
「ぜひ、私もご一緒させてくださいませ! フレイン様のいらっしゃるところでしたら、どこにでもお供いたします」
ぺし。
チャムがずっこけて、お皿の紅茶に顔を突っ込んだ。
《どうしたの?》
『い、いや……。そう言うんじゃないかと思った』
あ、なんか視線そらしてる。
《ローザが一緒だとまずいの? なんか怪しいわね》
『あ、その……。まずいというわけではないんだが』
チャムは人間みたいに胸の前で前足を組んで考えてから、
『ま、いっか。ローザを連れて行くことにしよう。準備を整えて明朝来るように伝えてくれ……』
う〜ん、あからさまに怪しい。何か隠してるわね。
「わかった。旅の準備を整えて明朝来てくれ」
あたしがそう言うと、ローザは満面に笑みを浮かべて答える。
「はい! フレイン様のためなら、このローザはたとえ魔界の底へでも喜んでご一緒する覚悟ですわ」
チャムがほとんど聞こえない小声で言った。
『……被害を受けるのはわたしではないしな……』
チャムの方をちらっと見ると、彼はあたしとローザの両方から視線をそらし、前足を口に当てて笑いをこらえてた。
……怪しい。怪しすぎる。
っていうか、この二人の相手するのって疲れる……。
その晩、あたしはベッドの中でぐったりしてた。
疲れた。
ローザが帰った後、チャムの指図で大急ぎで旅のしたくを整えた。
その後、この世界について知っておくべき最低限の知識について、チャムが延々と講義してくれた。最低限といっても、この世界の地理・宗教・生活などもろもろの話だ。聞いているだけで何時間もかかったし、一度聞いただけで覚えられるわけがない。
とにかく夜も遅くなったんで、後の勉強は旅に出てから少しずつということで、ようやく解放されて横になることができた。
ふう。それにしても……まさか異世界に転生して、世界を救う旅に出るはめになるなんてねぇ。勇者になって世界を救うなんてお芝居もやってきたけど、現実にそんな役目を背負うことになるなんて、思いもしなかった……って当然か。
考えてみたら、おもしろいかも。お芝居で演じることしかできなかったものを、現実に体験できるなんて。一瞬胸がわくわくした。
……でも、考えてみたら、世界を救う旅ってことは危険がいっぱい?
やっぱファンタジーもののお芝居や映画みたいに、ドラゴンが出てきて火をぼわわって吐いたり、剣や槍を持った兵士に襲われたり、骸骨や死体が動き回って戦ったりするのかしら。
ぞくっ!
今までじっくり考えるひまもなかったけど……、これってすごく危ない話じゃないの。もしかしたら、無事に帰って来られないんじゃ?
あたしは、横であたしを見つめているチャムに向き直った。
「ねえ、チャム……」
『なにかな?』
「世界の危機を救うって言ってたけど、それって危ないことなんじゃないの?」
『むろんだ』
「あたし、そんな危ない目に会いたくないんだけど。っていうか、そもそもなんであたしが世界の危機なんて救わなくちゃならないのよっ!」
『しかたなかろう。世界を救う力を持った者として召還されたのがそなたなのだ。それに、ザンジア魔術師ギルドの次期ギルド長候補、「風使いのフレイン」たるものが、世界の危機を前にして放置することなど許されぬのだ』
「それはあなたでしょ! あたしはただの女子高生なの! 世界の危機とか救うとか、そんな大げさな話はまっぴらなの!」
『しかし、世界を救うためにはぜひともそなたの力が必要なのだ』
「や・だ」
あたしがあくまで拒否すると、チャムは言った。
『そうか、どうしても嫌か』
「うん」
『……ならば仕方がない。そなたを元の世界、元の身体に戻すことにするぞ』
「えっ? だってあなた、あたしの身体はもう死んじゃったって言ったじゃないの」
『ああ、言った。しかしそなたがどうしても世界を救わないというのならば、わたしがやるしかない。わたしがその身体に戻ると、そなたの魂も元の身体に戻る。だが、そなたの身体は今頃どうなっているかな? 墓の下に埋まっているか、それとも火葬されて骨になっているか……』
チャムはにたりと笑い、とどめの一言を口にした。
『まあ、動く死体か骸骨としてよみがえらせることくらいはできるだろうな』
ぴきーん。
あたしの頭の中に、自分が死体や骸骨になって、お墓の土を掘り返して出てくる光景が浮かんだ。
顔から血の気が引く。
「………………」
『で、どうする? 元の身体に戻るかね? それとも世界を救うかね?』
「あ……あなた、あたしを脅迫してるわね……」
『はて、なんのことかな? わたしはただ、そなたに選択の権利を与えているだけだぞ』
「……わ、わかったわ。あたしの負け。世界でもなんでも救うわよ!」
『取引成立だな』
あたしたちの間にしばらく沈黙が続いた。
それから、チャムはあたしに背を向けてぽつりと言った。
『すまない……。そなたにこのような運命を背負わせてしまったことは心から詫びる……。だが、世界を救うためにはぜひともそなたの力が必要なのだ。わたしだって、世界を救うために、人間としての生活を捨てたのだぞ……』
「………………」
そう言われては、あたしも何も言い返せなかった。
まあ、なんとかなるか。……ってゆうより、しなくちゃならないわけね。先生が言ってたっけ。どんな状況になっても、その状況でできる最善をつくしなさいって……。
仰向けになって目を閉じたけど、なかなか眠れなかった。
『眠れないのか?』
「ええ……」
チャムはテーブルから飛び降りて、部屋の隅をごそごそ探ると、あたしの枕元に飛び乗って来た。その前足に、一本の鳥の羽が握られていた。
「なに、それ?」
『眠れないときに使う簡単な魔法だ』
あたしが目を閉じると、チャムはその羽であたしのおでこをそっとなでた。何回かなでられているうちに、しだいに眠気が襲ってきた。
眠りに落ちたとき、最後にチャムの独り言を聞いた気がした。
『……しかし、だれなのだ? 世界を救うために必要なもう一人とは……?』