石の上にも…
3リッター時代が幕を開けた頃のサスペンションの固さを考えると、バネ上、つまり車体の振動数は2Hz〜
2.5Hz内外という数字が弾き出される。ここで車体の全備重量を650kgとし、バネ上振動数が仮に2Hzならば、
2〜2.5Kg/mmの固さになるはずで、その他の因子に現実的な数値を振り込むとバネ定数は6.25kg/mmとなる。
しかしウィング・カー時代に使用されていたスプリングのバネ定数は71.4kg/mmであり、3リッター初期の
10倍にもなる。
290km/hで走行中のウィング・カーにおけるダウン・フォースは2トン以上に至るわけで、上記の71.4kg/mm
のスプリングを使用しても、17.5mmも車高が沈む勘定になる。このような条件下では、タイヤのたわみも無視
出来ない。仮にタイヤもサスペンションと同じ剛性を持つなら35mmも車高が沈む事になる。(これを解消する
手段として、90年代半ば以降にサード・ダンパーが出現し、現在に至る)
一般に機械の設計では、剛体(力は伝達するが自分自身は変形しない部品)が、関節で連結しているという
前提で作図するので、部品自体が力を吸収する事は考慮しない。(実際は部品自体で、僅かに力を吸収するが、
部品の剛性が充分であれば無視しうる。というより、力を吸収を無視出来る位の骨太の設計を心がける)
しかし、2トンを支えるロッキング・アームは、走行中にダウン・フォースに負けて、撓むそうである。
工夫を施さないわけではないが、ロッキング・アームに充分な剛性を与える事は難しく、現実はロッキング・
アーム自体がスプリングの代わりをしたらしい。そのためダンパーが有効に作用せず、バンピーな路面では
タイヤの接地性は良くなかった。
(Fulcrum 著)