瞬く間の輝き
星の降る夜に空を仰ぐと、一筋の流れ星。
この僅かの間に願い事を五回唱えたなら、きっと夢が叶うだろう。 実にロマンティックな話ではないか。
願ひをかなふることの嬉しさ と言えば、不世出の逸材とも言うべきニキ・ラウダのグランプリ復帰だろう。
自動車史と共に歩んだグランプリにあって、正に彗星の如く駆け抜けた新技術「グラウンド・エフェクト」
これこそが、二年の月日の後に彼を奮起させた切っ掛けである。
ラウダと時を同じくして君臨した片方の雄と言えばジェームズ・ハントだが、彼はラウダとは対照的で
直感を頼りにする1950〜60年代にありがちな古いタイプの人間だった。ハントが1979年のシーズン半ばに消え
去ったのも頷けなくはない。
マシーンを理解し、充分にセッティングを煮詰めた上で限界に挑む。この秩序だった理詰めの手順が勝利を
導く。もはやドライバーが持つ天性の直感だけで勝負に勝てる時代ではない。その事を体現したのがラウダ
だった。「走るコンピュータ」と言われる所以である。後にプロフェッサーことアラン・プロストに伝承
してゆくセオリーだ。
グラウンド・エフェクトを利用したウイング・カーの寿命は確かに短かった。しかし車体底面を利用して
ダウン・フォースを獲得する試みは、その後に続くフラット・ボトムや、はたまたステップド・ボトムに
脈々と受け継がれてゆく。
物理学者と化したドライバーのみを勝利に導く新時代の象徴、グラウンド・エフェクト技術が生んだ功罪を
紐解いてみよう。 (Fulcrum 著)