柳の下のドジョウ

 ドライバーとしては名声を博したアラン・プロストだが、チーム・マネージメントや経営のセンスには、

恵まれていない。彼の率いるプロスト・エィサーは 2000年度の最下位に甘んじた。「お金は寂しがり屋」と

言うらしいが、金持ちは更に太り貧乏人は乞食に落ちる。こうなると2001年度は強力なスポンサーが付かず、

エンジンの供給が何処から行われるのかも定かでない内から、新車の開発に着手しなくてはならなかった。

前のページで書いたが、サスペンションの設計・調整は、すべからく前後のバランスに依存する。にも拘わらず

リア・セクションを見せられずに、モノコックとフロント・サスペンションを設計しろと言われたって品質には

限界が出て不思議は無い。更に驚く事に、土壇場になって決まったエンジンの供給元がフェラーリともなれば、

この貧乏所帯とは釣り合うはずが無いだろう。

 

 フェラーリとの契約では、1年前のモデルを供給する事になっていたから、それこそ F1-2000 と同じ様に

設計すれば良いのだが、実際は案の定、AP04 は駄作だった。そこで F1-2000 AP04 を比較してみよう。

車体全体を横から見ても大差は無いが、フロント・サスペンションに注目すると、下側のアームの取り付け角が

AP04F1-2000 に比べて大きくなっている。これは上側アームの延長線と下側アームの延長線の交点が

前寄りとなる AP04 ではアンチ・スクオッドの傾向と共に、バンプ時におけるキャスター角の変化が大きく

なる事を意味する。リア・セクションが異なるため単純に比較できないが、ジョーダンの EJ-11 でも AP04

ほど極端に下側アームを吊り上げていないので、アームの延長線どおしの交点は前輪に近くない。

 上面から眺めると、フロント・サスペンションのジオメトリーが両車では異なる事が解る。F1-2000 では

上面から眺めた場合、下側アームが上側アームの影にすっぽり隠れるが、AP04 では下側アームが上側アーム

よりも後ろ側に伸びていて、アンチ・スクオッド傾向を助長している。

 

 スターティング・グリッドで横に並ぶ事が一度も無かったので、これまで比較できなかったが、同縮の模型を

並べてみると、AP04 F1-2000 に比べてホイル・ベースが明らかに長い。ホイル・ベースが長ければ当然

アンダー・ステア傾向が強くなる。これをフロント・ウィングのダウン・フォースだけでオーバー・ステアに

持っていくには、自ずと無理があるだろう。

 

 この駄作で三度の入賞、4ポイントの獲得という結果は、無冠の帝王ことジャン・アレジのドライブのみが

成し得た成果としか考えざるを得ない。

(Fulcrum 著)